満足度★★★★★
■ユニークかつシニカルかつディーセント!!
■役者さんたちのコミカルな動きが、それぞれの人間性のかけがえのなさを表現しているようで、まさに人間模様を見事に魅せる舞台だった。ユニークである。
役者さんたちも脚本家も社会の暗部から決して目をそらさない。いまの日本社会のなかにはびこる差別意識をコミカルに描きながらも、観客にもやんわりと問いかけを突き付ける。しかし、相手おもいのまっすぐさが演劇全体をつつんでいるので、親身さが伝わり、観客はおのずと自己反省できる。
深い慈愛がみなぎる。こまやかな想いが美しく描かれていて、感動をさそう。『たねまき』役の榊林乃愛の演技は純粋で細やかで力強い生命力を表現していた。『天狗』の河合しおりは気丈に振る舞いながらも、時折、心ぼそさを表現しており、感情の揺れ幅の大きさが役柄を魅力的にみせていて美しい。『静』役の山本あんなは、すなおさと快活さを自在に表現しており、前向きに生きる人間性を見事にみせていて可憐なイメージを余韻として残した。『女児』は、むくな人間性を明るく描きながらも、自分を見失う庶民のあわれさを丁寧にみせていて、たしかな演技力を披露していた。
『頼朝』役の酒寄拓は豪快さと気弱さをうまく使い分けながらも、策士かつ弟おもいの無邪気かつ矛盾した人間性の狂気をみせていて、感心させられた。『兄』役の古俣晨は、金儲けの亡者を怪演し、人間の鬼気迫る本音を体当たりでみせていて、爽快だった。『二次元』役の加藤淳也の明るさと、悩みの深さの移り変わる気持ちの描写は見事である。『部下』役の白幡貴一の走り回りかたは徹底しており、部下らしさを見事に表現していた。『部下』のチョンごうきの豪快さと存在感は圧倒的で、演劇全体を支えていた。
主役の『牛若丸』の折原啓太の立ち回りの力強い生命力と、想いがこもったセリフ回しと観客への配慮は礼儀正しく武人の潔さを感じさせた。仲間を大切にいたわる演技が気高く、かっこよい。
美術はていねいで細部までこだわり、照明も役者をうまく目立たせ、見事である。炎が燃え盛る様子を見事にみせていて感心させられた。本の飛び交う映像もよかった。音楽も観客の気持ちを盛り上げていて、よい選曲だった。衣装はおしゃれで近未来的かつ平安的で、いつの時代の人間にも共通する問題点をうまく説明していた。