ふじたんの観てきた!クチコミ一覧

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心中天網島

心中天網島

遊戯空間

上野ストアハウス(東京都)

2015/10/29 (木) ~ 2015/11/03 (火)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい!
『心中天網島』は,男と女の話だ。治兵衛は,意に添わない結婚で子どもまでいるが,気が付くと遊郭の小春に夢中になって身を崩していく。実の兄はひどく心配する。自分の娘を傷ものにされたと,おさんの父親は激昂する。二人は,世間の厳しい批判の中で,心中にいたることになる。

言葉の使い方が,特殊なので全体的にわかりにくい部分があった。しかし,それはそれでよく聴いているとなんとなく感じとれる。かえって,迫力があった。

今回一番の魅力が,三味線と,琵琶と,横笛だった。邦楽を聴く機会は意外と少ない。とりわけ,笛の演奏に興味がわいた。

近松門左衛門の世界は,歌舞伎とか,浄瑠璃の世界。そこは,少し敷居が高い。そちらの世界はマニアが,古典芸能を支持し,守っているところ。私は,たまにはのぞいてみたいと思うが,チケットが手にはいるか,心配がある。

彼女にとって無敵の世界

彼女にとって無敵の世界

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しいひとときであった。
ライオン・パームは,これで四回だ。最初は,王子で観た。このときたいへん印象的だった。その後,回を重ねてメンバーの顔もなじんでいる。この劇団の魅力は,ひとりひとりのキャラクターが強烈だということ。一度会ったら忘れないような濃い,なんらかの特徴があって,その寄せ集めだと思う。

今回は,非常におもしろかった。例のごとく突然会場から亀が出て来た。カメが,いじめられていつのまにか,竜宮城に。いじめの現場をYouTubeにアップすることで,手を汚さず警察権力を意のままに動かす,そんなことが皮肉られていた。このあとなぜか,太宰文学の世界に突入する。

走れメロスの世界観を,これでもかと思うくらい変形させていく。そこは,不思議のアリスがからむ。ただ,メロスをからかっているかと思うが,結構工夫されていておもしろかった。今回一番おもしろかったのは,歌上手なあやの演じる役が,頻繁に,女将さん役の女性と早変わりしたところだ。

ほかにも,ピストルのことは,はじき。など,ハードボイルドというか,サスペンス劇場という世界は,言葉の使い方に特徴がある。そのあたりをコントにいて笑いを取っていた。王子での,『タンパン』あたりのことも懐かしく思い出した。楽しいひとときであった。

2015生命のコンサート 音楽劇「赤毛のアン」

2015生命のコンサート 音楽劇「赤毛のアン」

DGC/NGO 国連クラシックライブ協会

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2015/10/16 (金) ~ 2015/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

花音さんが,名作『赤毛のアン』に出演
花音さんが,名作『赤毛のアン』に出演するということで,東京国際フォーラムまで出かけていった。花音さんは,なんと子ども時代のダイアナをやっていた。アン役の少女もたいへんいい感じだったが,花音さんのダイアナ役も堂々としたもので,いい演技だったと思う。

最近は小劇場の方が多かった。そのため,大変な人数で歌って踊る大舞台に圧倒されてしまった。このような大ミュージカルの世界に呑みこまれたら,すごいことになる。お金も続くとは思われないが,それ以上にチケットを取ることが仕事になる。実際,もう一つの『赤毛のアン』(TOURS)はどうやって観たらいいか,わからなかった。

生命のコンサートとか,日韓共同事業とか,詳しいことはわからない。でも,国を越えてこのような見事なミュージカルが開催できるなんていい時代だ。それを観ることは,さらに幸せなこと。劇団四季のマシューは良かったけど,今回のように実年齢のアンには勝てない。やはり,子ども役は子どもがやる!

音楽劇ということになっているが,いろいろな要素が観られて良かった。韓国スターのダンスも切れがあった。バレエ団も,オペラ歌手も,ヴァイオリニストも素晴らしかった。アンの朗読も。なかなか観る機会もないビッグイベントに結構感動した。思いのほか珍しく疲れてしまった。

少女仮面2015

少女仮面2015

新宿梁山泊

ザ・スズナリ(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/07 (水)公演終了

満足度★★★★

新宿梁山泊第56回公演『少女仮面』
新宿梁山泊第56回公演『少女仮面』

菅孝行『戦後演劇』によれば,戯曲の世界は文字文化で,それが,俳優の身体によって,劇場の舞台に成立することが重要であるとされていた。とりわけ,このことを徹底して表現したのは,唐十郎だ。とぎすまされた身体感覚があって,観客にも十分伝わるものがあるはずだという。そういう自覚のない演劇では,活字に代えて,意味作用の符号が舞台にあがっているだけになるのだと。

下北沢スズナリで,『少女仮面』を観た。過去二回唐十郎の作品は,いつも最悪の席だった。しかし,今回直前でだれかキャンセルしたらしく,ほとんど特等席だった。そのために,すべての出演者の表情が良く見えた。

松山愛佳という人は,松山英太郎が伯父さんとのこと。芸能人は,関係者がほとんど俳優・芸術家系の方が多いということなのかもしれない。舞台ではひときわ出番も多く輝いていた。ヒースクリフ!を連呼するのが印象的で,後半では,宝塚の男役的発声を見事に演じていたと思う。

春日野八千代を73歳で演じていた,李麗仙(イ・ヨソン)は,なんと唐十郎と結婚していた時期があり,大鶴義丹の母だ。今回の目玉は,彼女だ。

遭難、

遭難、

Arco iris

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2015/10/02 (金) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

本谷有希子『遭難、』を観る。
本谷有希子『遭難、』を観る。

この作品の中で非常におもしろい存在は,石原である。彼女は,同僚の里見が,子どもからの手紙を破棄していた事実をひとり知っている。江國は,クレーマーの母親から虐待されることに,むしろ快感を持つようになる。不破は,きれいな生徒に妄想を抱く変態で,結局,仁科と不倫に陥る。そのような中で,たったひとり正論を吐き続けた。最後は,ひどい乱暴を受ける。

池袋で,片桐はいりが出演していたものを見たが,その内容はほとんど忘れていた。しかし,次第にその内容を思い出す。二時間二十分ほどの大作だった。

とても良かったと思う。少し手を入れわかり易くしている。ときに,過去観た名作を別の企画で観ることもおもしろい。新しい発見が多い。

アニー

アニー

日本テレビ

新潟テルサ(新潟県)

2015/09/06 (日) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

これで私の2015アニー観戦記は終了。良い旅行でした。
三年前ゆうなっちは,千葉子どもミュージカルで主演だった。アニーに夢中になる七歳の少女は,その後演技に熱がはいる。ゆうなっちの成功の理由。

音楽にも取り組むが,それ以上にいくつかの訓練があった。漫才もやった。アクションスターのジムにも通った。ダンスの切れは,一回りおおきな子どもたちに混じって結構すごかった。

オーデションは,美少女系で,美声のものが今までは多かったのではないか。小劇場通の私は,演技が気になる。天性の演技,そんなものを今回の新潟公演でも感じた。それは私だけだろうか。

スタニスラフスキーの伝記は,オーデションからもれたようなタイプが本当はあとで伸びて来るという。しかしながら,アニー合格はそれだけですごい。昨年の宝田明さんもいた『葉っぱのフレディ』は,結構良かった。それを上回る今回の演技は,成長するスターなんだと思う。

最後のアニーでは,青木が子どもをほかって一時場面から消え,しばらくして復帰した。あれは,何か忘れ物でもあったのか。地方公演とはいえ,ほとんど同じセットだと思う。

木村花代は素晴らしい。ルースターも結構いい感じだった。ミュージカル『アニー』は,プロで脇をかため,子どもがあくまで主体。それに,おしゃれな楽隊がつく。三田村さんは,今後も続くといいと思う。結構あっているかもしれない。木村さんは多忙な人だから,来年は無理かもしれない。

これで私の2015アニー観戦記は終了。良い旅行でした。

転校生

転校生

パルコ・プロデュース

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2015/08/22 (土) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

たいへんよかった。
前から一度観てみたい企画だった。前回は、すでに満員でだめ。しかし、今回はややフィバーが収まったのか、当日券が残っていた。初めての劇場であった。<br><br>会場には、全員が出演中であってもなくても奥の席で待機していた。ほかのひとの演技を最後まで、ずっと相互に鑑賞するといったシステムだったわけだ。

あった方がよいのか、どうかわからないが、左右にスクリーンがあって表情が浮かぶ。中央には、親切過ぎるが、日本語の字幕まであって、スゴい!

内容は、高校生時代にあったようなハイレベルの悩みや、哲学的な会話。その一方ではあらゆる世間話からのうわさ。わたしなどは普通に、彼女たちの世界はなぞ。

こういう演劇も、現代的でいいなあと思う。学校にいるときのままの彼女たちは美しい。最終回には、こちらまで感極まった。上手な演出でした。

ステージに、あがるとき、一瞬変身するさまは、印象的でした。

人民の敵

人民の敵

オフィスコットーネ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/08/21 (金) ~ 2015/09/02 (水)公演終了

満足度★★★★

吉祥寺シアターで,イプセンの『人民の敵』を観た。
吉祥寺シアターで,イプセンの『人民の敵』を観た。正義にめざめ市長と民衆のすべてを敵にまわし,それでも「温泉の水は汚れている!!」と叫び続ける。時間がたてば,真実は明らかになる。当面,博士は一部の人たちにだけでも問題の本質を明らかにしたかった。しかしながら,怒りにまかせ,自分自身を失う。逆上し,毒づく博士はどこか哀れだ。科学者なら,もっと冷静になってほしい。愚民と同じレベルに陥ってしまう。

正しいことを思うこと,信念を持つ人もいなくてはならない。彼が,周囲から浮いてしまい,結果いじめになど会ったら最悪だ。逆境の中でこそ,人はその真価を試される。少し時間をかけて,策を持って,何が間違いで,何をするべきか,そのことを主張したい。イプセン作品の多くには,このような激しい,熱い性格はない。どこか冷めていて,人生に絶望しているようなところがある。ときには,イプセンも激昂するといった『人民の敵』だった。

サンモールの方が戯曲に忠実で良かったかもしれない。しかし,博士は,吉祥寺の方が饒舌だった。また,斬新な演出を好む人も多いだろう。

アニー

アニー

日本テレビ

愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県)

2015/08/28 (金) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

名古屋まで行って,ミュージカル『アニー』を観た。
名古屋まで行って,ミュージカル『アニー』を観た。愛知芸術劇場という大きなホールのせいか,舞台道具は東京公演とほとんど同じだった。名古屋では,三日間公演があった。私は,二日めのゆうなっちアニーだけ観た。前日の夕方,偶然に本物のサンディを見かけた。終演後,飼育係が二匹の犬を散歩させていた。舞台では大きく見えるサンディはやや小型に感じ,気がついたら通り過ぎていた。また,当日の朝近所の喫茶店で開演を待っていると,青木さやかさんが,ルースターか,洗濯屋かなんかと,入って来た。確認したら本物だったが,静かにしてあげた方が良いと,私はすぐにその場を後にした。

名古屋公演がいままでで一番声が出ていた。アニーを射止めるくらいの少女(そろそろ男の子で一度やってみてほしい)は,素晴らしい声量だから,比較は無駄かもしれない。でも,かなり良く声が出ていた。安定して,しっとりと歌い上げていた。コミカルな場面もいくつか結構のってやっていた。せっかくウォーバックスから新しいロケットペンダントをもらうも,いわれのある古いペンダントを捨てられない事情があるところも,やりとりで上手に表現されていたと思う。なかなかの演技達者で感心する。もって生まれたものなのだろう。共演陣もやりがいがあるのではないだろうか。

いよいよ,新潟公演となる。これで,すべての公演が終了する。記念すべき名演でしめくくって欲しい。ブラボーも三回くらいはいえたらいいだろう。

アニー

アニー

日本テレビ

アクロス福岡 福岡シンフォニーホール(福岡県)

2015/08/22 (土) ~ 2015/08/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

福岡まで行って,ミュージカル『アニー』を観た。
福岡まで行って,ミュージカル『アニー』を観た。今回初めて,スマイル組および黒川アニーの方も観ることになった。時間的に余裕があって,なおかつ,かろうじて当日券が残っていた。一日に二度も同じミュージカルを観ることになった。舞台装置は,地方省略版で,さらに簡易になっていた。

今回もゆうなっちアニーは,すごく良かった。孤児ゆうなっちは,役柄的にはいつも大人の顔色をうかがい,視線を気にしている子どもだ。相手の出方によっては,いつ殴られるかわからない。もしかして,いいことがありそうなら,絶対に見逃してはならない。だから,相手の顔は良く見るべきなのだ。

一方,黒川アニーは凄かった。絶対的な強い高音が会場内に心地よく響き渡る。そのような場面が何度もあった。セリフも一つも言いよどむことはない。アドリブも結構きいている。こちらのアニーは,模範的。優等生だと思う。好みの問題もあろうが,演劇派としてはゆうなっちの方が良い出来だ。

アニーの名場面

橋の下で,ホームレスの人たちを相手に,とにかく希望を持つべきだとアニーは言う。人生に絶望している人たちは,反論する。何ひとつ持ってないし,展望もない。それでも,アニーは希望を持ちなさいと言う。確かに,物事はなんでも考え方次第なのだ。いいところを伸ばして,悪いところは無視したい。

大統領官邸においては,アニーは唐突に歌を披露する。この歌にみな勇気をもらう。歌をうたえば,明日はいいことがきっとあるにちがいない。今,とっても苦しくても,大丈夫。心と身体さえあれば,明日は良くなる。大統領は,未来を拓く道を模索するのだ。公共事業で失業対策をしていこう。

アニーは,少しすつウォーバックスの心をつかんでいく。

ウォーバックスの依頼を受けて,クリスマスの夜彼のもと呼ぶべき子どもを探すのは,グレースである。このとき,グレース自身が,アニーに強い愛情を抱く。引き続き,なにげないやり取りをするうちに,アニーという子どもが非常に興味深いキャラクターであることに,ウォーバックスは気がつく。

アニーを理解するうちに,アニーが幻の両親を強く思慕している事実につきあたる。自分の養子にしてもいいが,生きているなら,実の親元に返してあげよう。自分たちは,たまに遊びにいけばいいじゃないか。そのような流れの中で,ハニガンの弟は,よからぬたくらみを開始する。

ドリアン・グレイの肖像

ドリアン・グレイの肖像

松竹/フジテレビジョン

新国立劇場 中劇場(東京都)

2015/08/16 (日) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

大阪・森ノ宮で,オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』を観た。
オスカー・ワイルドは,芸術家は美しいものを創造すれば良いという。

また,批評家は,じゃあ何をやっているのでしょう。美しいものから受けた印象を,自分なりに伝えればいいのです。彼は,そこには,美しいものを美しいと認めるべきで,倫理もどうでもいいし,ましてや,何か立証しようとはしない方がいい。

さらに,芸術の対象には,さまざまな意見はむしろあって良い。さほど役に立つようなものじゃないのが,芸術だが,作ったひとがほめられるのは,作品の出来が人々をおおいに感動させる場合だけなんじゃないだろうか。

今回,大阪・森ノ宮で,オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』を観た。

美を失わないものに,誰だって嫉妬する。バジルが描いた絵が,いつまでも美しい。しかし,生きている人間は少しずつ老いて醜くなっていく。絵が,年おいていく,かわりに,生きている私はまったく老けないってことは理想だ。この風変わりな夢が,現実になって主人公は苦しんでいく。

ピアノによる美しい演奏が何度かあった。巨大な肖像画を効果的にながめながら,劇は進行していく。出演者は,いずれも魅力的であった。演劇が終了して,スタンディング・オベーション。なかなか素晴らしい出来でびっくり。

マイソング

マイソング

ジョーズカンパニー

「劇」小劇場(東京都)

2015/08/14 (金) ~ 2015/08/24 (月)公演終了

満足度★★★★

下北沢のマイソングは、とても良い演劇だ。
下北沢のマイソングは、とても良い演劇だ。ストーリーも、バックミュージックも、豪華だが自分の知っている子どもが目立たないなんてことは、ここではない。なぜなら、子どもの出演度が100%に近い企画だからだ。たくさんのセリフを一生懸命に、みんなで覚え、自分たちで演劇をやっているのがわかる。さわやかだ。

何割かを、大人にまかせ、こどもを、飾り的に使ったものが圧倒的に多いのには意味がある。即興的芸術では、子どもたちばかりでやるとしろうと芸に見られがちだからだ。しかし、子どもたちが、子どもたち自身の世界を熱心に表現していると、それはそれで心に伝わってくる。楽しい演劇。

アニー

アニー

日本テレビ

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪府)

2015/08/13 (木) ~ 2015/08/19 (水)公演終了

満足度★★★★★

犬が歌う・・・そんなバカな!
地方にまでミュージカル公演を観るような習慣は私にはほとんどない。昨年,ゆうなっちが,葉っぱのフレディを蒲郡で主演したので一度だけ経験がある。そのとき思ったことは,東京とか,横浜とかでは,地方公演にはどの程度ちがいがあるのだろうか,ということがあった。

今回は,これまたほとんど知らない街大阪に,お盆休みを利用してミュージカル『アニー』Tomorrow組を観るために訪問した。会場は,雰囲気的には,アットホームでいい感じだった。冒頭,洗濯屋の車が見えない。ブルックリン橋の背景が省略されている。タップダンサーもやや減員。などちがいはあった。

でも,いざ舞台が始まってしまうと,見慣れたメンバーが自信を持って演技しているので安心した。とくに,子どもたちのぐるぐる回転ダンスは決まっていた。ストリートチルドレンの前転も抜群だった。饒舌な大統領が,一瞬いいよどむ場面があって,プロでもつまづくのに,子どもは全て元気だと感心した。

2015年『アニー』は,これで五回めとなった。おおむね,同じ場面の繰り返しを,じっくり観劇したことになるが,圧巻は,犬=サンディが歌ったということだ。最後で盛大に大合唱になったとき,確かに,サンディは歌っていた。その勇ましい有様に,三田村・木村花代・青木がほほを赤らめて笑っていた。

同じ舞台を何度も観ると,結構細かいシーンが気になったりする。ルースターは,前の席でないと気がつかないが,俺様はアニー消してしまえるんだ!とばかりに,ジャックナイフを手品で消してしまう。その場面をよく観察したが,見事にナイフは消えていた。誰でもできる手品なのだろうか。

ゆうなっち『アニー』は,歌唱も比較的安定し,笑わせる場所は思い切りおおげさに振る舞い,泣かせる場所では,心打つ名演技だったと思う。『アニー』役は,過去には再演という例もないではないらしい。しかし,ゆうなっち『アニー』は,あと数回を残して,泣いても笑っても完了する。悔いのない公演続行を祈ります・・・

フォルケフィエンデ ー人民の敵ー

フォルケフィエンデ ー人民の敵ー

雷ストレンジャーズ

サンモールスタジオ(東京都)

2015/07/23 (木) ~ 2015/07/29 (水)公演終了

満足度★★★★

素晴らししい演劇でした。
とりわけ兄と弟の対決は迫力ありました。

ネタバレBOX

私が観たイプセン作品は、人形の家など、人間関係とか、愛憎を扱ったものが多い。そのような物語とは、やや雰囲気を変えている。社会派正義ものとでもいえる。

地質学にも詳しい医者は、健康を害する公害を内部告発し始めるが、実兄である町長を敵に回すことになる。温泉施設の汚染水対策は、莫大な工事費用となるだろう。

汚染水を垂れ流すことは、地球環境を破壊するので放置できることではない。しかし、学者のデマカセに町の行政は振り回されるべきではないとされる。

彼は、職も失い、多くの友と喧嘩する。家族も巻き添えとなる。社会派正義の実現とは、実際にはもっと陰湿である。その意味では、悲劇というより喜劇だと思う。

いままでのイプセンで、もっとも激しく、ドタバタ劇だった。でも、勇気ある正しきものが、挫折してゆくさまは、あわれでやり切れないものがあった。
ペール・ギュント

ペール・ギュント

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2015/07/11 (土) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★

素晴らしい…
作品は、たいへん有名でもその内容は漠然としか知らなかった。横浜まで、出かけてゆくのが面倒で、当日券となったが運よくかなり前の席だった。

最初の場面は、少しなじめなかったが、時間をおって興味深い場面が増えていく。最後には、人生の深いなぞに迫るようで感動的であった。よいものを観た。

ネタバレBOX

イプセン現代劇集にならぶ傑作選は,いずれも夢も希望もないような社会悪とか,家庭内問題を,見事にえぐったような作品が多い。それに比べると,『ペール・ギュント』は,どこか夢物語で,童話的である。比較的若いうちに,イプセンが,まだロマンチックな面を持っていた頃の戯曲だからだろうか。たしかに,この『ペール・ギュント』で,イプセンが世界中に認められ,大成功を収めた。きっと,この作品を心に,その後の名作が生まれていったのだろう。

冬が過ぎ,春も去る,夏が来て,今年も暮れた。いつか,あなたは,私の胸に戻って来るであろう。約束どおり,私は,いつまでも,いついつまでも,ペール・ギュントを待っている。ソールヴェイが,長い物語の終盤で,老いて,やつれて,それでも,夫を待っている姿に,涙をそそられる。

イプセンは,比較的長生きで,人生の後半に有名な戯曲をたくさん残している。しかし,仮にもっと早く人生から退場していたならば,彼の傑作は,『ペール・ギュント』だったのかもしれない。そして,この作品は,彼自身が社会的に浮上していくまでの多くの苦難を,挫折を,怒りを,悲しみを一番正直に伝えているような気がする。今回の上演をずっと観ていて,ふとそんなことを思った。

『ペール・ギュント』は,夢の中のおとぎ話的で,実際に,メーテルリンク『青い鳥』のような,象徴主義的な雰囲気が多用されていたことに気が付いた。だから,トロルの話などもものすごく念入りだった。実は,トロルのようだとか,トロルだったら,とか,イプセン作品ではときどき耳にする。しかし,トロルそのものが,妖怪なのか,死霊なのか,さっぱりわからない,といつも思っていた。今回,その謎が,少し解けたと思っている。

五月のときには,新国立劇場で,『海の夫人』を観た。ステージは,かなり広く,デラックスだったが,イプセン作品は,ほかの劇場では,ほとんど目と目が合うような,息が伝わるほどの,小劇場,小舞台が多い。『海の夫人』は,ある種のゆとりのためだけに,あのバカでかいステージが用意された。しかし,『ペール・ギュント』は,少しちがった。大きな,大ミュージカル的な舞台が必要だった。想像力で補うような大スペクタクルも,今回の演出でわかり易くなる。

この『ペール・ギュント』は,とても良い演劇だと思う。最初は,爆音でびっくりさせたり,出演者の中でadidasジャンパーを着ていて目立ってしまっていたり,やたら卑猥なシーンが続いたり,やや引いてしまった。しかし,そのような前半の場面も,母親との死別場面などに至ると,だんだん落ち着いて来た。シースルーのビニールシートなどの大げさな演出にも,だんだん慣れてゆく。『ペール・ギュント』,現代的な演劇,とてもクール!だった。
非龍伝

非龍伝

非シス人-Narcissist-

サンモールスタジオ(東京都)

2015/07/08 (水) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★★

すごい迫力・・・
ナルシストの作品は、毎回すごい迫力がある。山崎は、妻も子どももいる中卒の機動隊長だ。しかし、その妻は学生運動家のリーダーで警察側のスパイを企むのだ。

なりゆきで、子どもまで作るが、最後には国会まえで夫婦決闘の場面になる。妻は、なぐり殺され、あとにはかつとしという名の少年が残る。勝利に何の意味があるか。

だいたい同じようなメンバーで、つか作品が多いが非常に完成度が高いと思われる。政治的にとくに偏向しているわけでもない。つか作品の魅力にこだわっている。

蒲田行進曲にも、兄弟子の女をあてがわれ、苦悩する男が出てくる。これと、テーマは似ている。なんだか、物悲しいが、共感する内容に惹かれるようだ。

透明人間

透明人間

劇団唐組

花園神社(東京都)

2015/05/09 (土) ~ 2015/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★

新宿・花園神社で,透明人間を観た。
新宿・花園神社で,透明人間を観た。過去に,花やしき裏で唐組のものを見た以来だった。ぞろぞろ,200人くらいの整列が出来,きれいに赤テントの中にぎゅうぎゅう詰めになって座った。吸血姫のときは,野外で寒さにふるえたのを思い出す。今回は少し蒸し暑い。せめて座布団くらい持参したかった。

唐十郎の演劇は,はっきり言って良くわからない。一世を風靡したという名作ばかりなのだが,ストーリーを追うと,ぼやっとする。ときどき,非常にインパクトのある役者の演技が目立ち,思わず笑ってしまう。だとすると,大衆演劇とか,エンタの神様みたいなものなのだろうか。

しかし,そこは,演劇としても迫力があって,素晴らしい。野外演出ということで,最後には,テントそのものが壊されたりする。ほかにも,実際に水の中に飛び込むとか,手品のように水が噴出したりしていた。

TAP DO! 劇場版13

TAP DO! 劇場版13

TAP DO!

博品館劇場(東京都)

2015/06/07 (日) ~ 2015/06/07 (日)公演終了

満足度★★★★

演劇・ミュージカルは,気がつくと,パフォーマンス志向になっていく。
タップダンスというのは,花やしきで初め見た。その後,アニーでもっと本格的なものを知る。今回は,銀座・博品館劇場にて,タップダンスをメインとするショーを拝見した。

もっとも印象に残ったのは,終わりの方で,全員が腰かけて行う演目だった。これは凄いと思った。どちらかと言えば,タップダンスは立って行うものと思っていた。しかし,楽しそうに全員で座っていながら見事に上半身を中心に動きがそろっていた。ウェーブ(波)まできれいに出来ていた。一か月ほどの練習で,参加者が全員マスターできるというのは驚きだった。

さて,ショーはいろいろな趣向があった。宝塚のパロディはたいへんおもしろかった。チアリーダー風のものもあった。大道芸人で見るような演技もあった。

演劇・ミュージカルは,気がつくと,パフォーマンス志向になっていく。だから,そのベースとなる技術をオンパレードで見せてくれたのは興味深い。

海の夫人

海の夫人

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★

素晴らしい!
自分が若い頃夫と結婚したのは,すべて,打算からではなかったのか。夫は,先妻の後釜に誰かを探していた。私は,恋い焦がれた相手の消息が不明でやけくそで結婚に踏み切った。お互いに,愛情なんかかけらもないのだ。ああ,あのときの,あの男がもう一度現れたら私は直ぐにこの家から出ていくのだが。

イプセンの人形の家は有名だ。その中で,ヒロインのノーラは,自分をお嬢ちゃんに育てた父親を恨み,人形を飾るように自分を家の中に招いた夫を軽蔑していた。そして,最後に,すべての復讐・決算として,産んだ子どもたちを育てる自信もなくし,家出していく。

これに比較して,海の夫人の結末は全く逆になる。確かに,ギリギリまで,医者である夫の偽善者ぶりを暴きたて,海の男に逃避するかのような流れはあった。しかし,最後の最後で,夫は目覚めた。人は,人を縛ることはできない。あってはならない。だから,妻は自由なのだ。ここで,海の夫人は正気に戻る。

この話には,パラレルになっている,教師と教え子の恋がある。こちらは,まさに,たいした愛もないが,選択の一つとして結婚に踏み切る二人がいる。この場面は,突如発生した地震のために二度観ることになった。イプセンは,きわめて理知的だ。とても貴重な名作を,名優が見せてくれたと思う。

ゴベリンドン

ゴベリンドン

おぼんろ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/06/07 (日)公演終了

満足度★★★★

とても楽しい時間をありがとうございました。
吉祥寺シアターは,ほぼ満員。と思ったら,さらに追加で10名くらいが来た。どうするのかと見ていたら,だんだんになっていた中央席を少し詰めてなんとか全員すわれた。今までは座布団なし,ペットボトル吊るし放題だったが,今回は結構普通の感じだった。

ビョードロはウィルス兵器,昨年度は食肉にされる動物,今回は,沼に住む怪獣の物語。内容は少しずつ違うものの,演出方法とか,やり方などに一貫したものがある。五人は不動のメンバーで,顔は毎回ちがう化粧だが,声に特徴があって懐かしい気持ちになる。

これは,視覚的にものすごく美しい演劇。少し催眠療法も加え,大人の童話になってゆく。必ず純真な子どもたちが出て来て,バックストーリーは結構えげつない。そのために,泣かされる。最初は,大の大人が初めて見ると,退屈なところもあるが,後半にわかに感動的に仕上がっていく。

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