海の夫人 公演情報 新国立劇場「海の夫人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    素晴らしい!
    自分が若い頃夫と結婚したのは,すべて,打算からではなかったのか。夫は,先妻の後釜に誰かを探していた。私は,恋い焦がれた相手の消息が不明でやけくそで結婚に踏み切った。お互いに,愛情なんかかけらもないのだ。ああ,あのときの,あの男がもう一度現れたら私は直ぐにこの家から出ていくのだが。

    イプセンの人形の家は有名だ。その中で,ヒロインのノーラは,自分をお嬢ちゃんに育てた父親を恨み,人形を飾るように自分を家の中に招いた夫を軽蔑していた。そして,最後に,すべての復讐・決算として,産んだ子どもたちを育てる自信もなくし,家出していく。

    これに比較して,海の夫人の結末は全く逆になる。確かに,ギリギリまで,医者である夫の偽善者ぶりを暴きたて,海の男に逃避するかのような流れはあった。しかし,最後の最後で,夫は目覚めた。人は,人を縛ることはできない。あってはならない。だから,妻は自由なのだ。ここで,海の夫人は正気に戻る。

    この話には,パラレルになっている,教師と教え子の恋がある。こちらは,まさに,たいした愛もないが,選択の一つとして結婚に踏み切る二人がいる。この場面は,突如発生した地震のために二度観ることになった。イプセンは,きわめて理知的だ。とても貴重な名作を,名優が見せてくれたと思う。

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    2015/05/31 01:58

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