ペール・ギュント 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「ペール・ギュント」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    素晴らしい…
    作品は、たいへん有名でもその内容は漠然としか知らなかった。横浜まで、出かけてゆくのが面倒で、当日券となったが運よくかなり前の席だった。

    最初の場面は、少しなじめなかったが、時間をおって興味深い場面が増えていく。最後には、人生の深いなぞに迫るようで感動的であった。よいものを観た。

    ネタバレBOX

    イプセン現代劇集にならぶ傑作選は,いずれも夢も希望もないような社会悪とか,家庭内問題を,見事にえぐったような作品が多い。それに比べると,『ペール・ギュント』は,どこか夢物語で,童話的である。比較的若いうちに,イプセンが,まだロマンチックな面を持っていた頃の戯曲だからだろうか。たしかに,この『ペール・ギュント』で,イプセンが世界中に認められ,大成功を収めた。きっと,この作品を心に,その後の名作が生まれていったのだろう。

    冬が過ぎ,春も去る,夏が来て,今年も暮れた。いつか,あなたは,私の胸に戻って来るであろう。約束どおり,私は,いつまでも,いついつまでも,ペール・ギュントを待っている。ソールヴェイが,長い物語の終盤で,老いて,やつれて,それでも,夫を待っている姿に,涙をそそられる。

    イプセンは,比較的長生きで,人生の後半に有名な戯曲をたくさん残している。しかし,仮にもっと早く人生から退場していたならば,彼の傑作は,『ペール・ギュント』だったのかもしれない。そして,この作品は,彼自身が社会的に浮上していくまでの多くの苦難を,挫折を,怒りを,悲しみを一番正直に伝えているような気がする。今回の上演をずっと観ていて,ふとそんなことを思った。

    『ペール・ギュント』は,夢の中のおとぎ話的で,実際に,メーテルリンク『青い鳥』のような,象徴主義的な雰囲気が多用されていたことに気が付いた。だから,トロルの話などもものすごく念入りだった。実は,トロルのようだとか,トロルだったら,とか,イプセン作品ではときどき耳にする。しかし,トロルそのものが,妖怪なのか,死霊なのか,さっぱりわからない,といつも思っていた。今回,その謎が,少し解けたと思っている。

    五月のときには,新国立劇場で,『海の夫人』を観た。ステージは,かなり広く,デラックスだったが,イプセン作品は,ほかの劇場では,ほとんど目と目が合うような,息が伝わるほどの,小劇場,小舞台が多い。『海の夫人』は,ある種のゆとりのためだけに,あのバカでかいステージが用意された。しかし,『ペール・ギュント』は,少しちがった。大きな,大ミュージカル的な舞台が必要だった。想像力で補うような大スペクタクルも,今回の演出でわかり易くなる。

    この『ペール・ギュント』は,とても良い演劇だと思う。最初は,爆音でびっくりさせたり,出演者の中でadidasジャンパーを着ていて目立ってしまっていたり,やたら卑猥なシーンが続いたり,やや引いてしまった。しかし,そのような前半の場面も,母親との死別場面などに至ると,だんだん落ち着いて来た。シースルーのビニールシートなどの大げさな演出にも,だんだん慣れてゆく。『ペール・ギュント』,現代的な演劇,とてもクール!だった。

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    2015/07/12 20:19

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