のぺの観てきた!クチコミ一覧

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べつのほしにいくまえに

べつのほしにいくまえに

趣向

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2024/05/23 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/25 (土) 13:00

価格1,500円

家父長制、共同親権、DV・・・「結婚」という古い価値観の中で、苦しめられている。オノマさんは新しい結婚制度が施行されたという架空の設定で、新たな視点を提示する。祖母のエピソードが好き。紅葉坂は片麻痺の私には少し大変だったけど、行ってよかった。

ネタバレBOX

・おばあちゃんと結婚したいというエピソード素敵でした!途中からメンタル不調を想像してましたが、お酒が好きなおばあちゃんという設定にしたことがとても良いと思いました。女優さんも素敵でした。
・大川さんがチラッと台詞で書いてましたが、ペットの視点は面白いと思いました。生き物がいることで救われる部分はあると思いますし、それは犬猫に限らず、蟻でも蛙でもパートナーだと思えば等価だと思います。
・役名を失念しましたが、お菓子の紙袋を被るところ、可愛かったです。
・知人とお茶したのですが、「おばあちゃんがアル中だと社会復帰が難しいですよね、施設に入るって言ってたけど、そんなお酒飲んで大丈夫なのかな?」と言っていて、また別の知人は「たぶん施設に入れるくらいだから、経済的に落ち着いた環境かもね」と言ってました。演劇って演劇の嘘って言われますが、都合の良い解釈ではいけないと思います。オノマさんはキチンと裏付けがあるし、質問すれば「これはこういう設定で、戯曲にこういう風に書かれています」と答えが返ってきます。なんちゃって裏設定はありません。私自身も聞き漏らしもあったと思いますが、演劇を思考するのは楽しいです。
・権力関係にいる人なら、通常なら泣き寝入りするものですが、べつのほしという他者の設定の中で、「それはダメ!」と容赦なく指摘が入ることで、幸福でもあるなと思いました。
・文字にすると関係を決めつけたがるんだと思いました。結婚って、パートナーって、見つめ直すきっかけになったように感じました
・外での芝居で県旗がはためいてましたが、日の丸にしないところが好きでした
・和田さんの身体性がキレキレで、素敵です。拡声器で喋るところ、詩のようでした。
・オープンダイアローグの中で「当事者として~」とくいった台詞がありました。他人事ではなく自分事として考えてとメッセージなのかと思いました。
・一人語りって危ないと思いました。あの権力を持ってる議員も(作劇上は状況説明のためにやっているのだと気付きました)長々語ってしまうことに自分が見えていない痛々しさを感じました。
・《観劇した知人の感想》まさか、ロビングッドフェローの正体が、前ちゃんと同じ妖精だったとは。お婆さんにロミオと名付けるのは、ジュリエット並みにユニークでした。まさに成せる技ですね。
女の子は死なない

女の子は死なない

TremendousCircus

シアターシャイン(東京都)

2022/09/30 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

トレメンドスの#女の子は死なない #実録演劇犬鳴村 を観てきた。とても面白かった。以下ランダムに。
・戯曲上手いなぁと思ったら、リアル葭本さんが登場。「本物の芸人さんだろうか?」と思うくらい達者な方だった。葭本さんが演出なら笑いの絶えない稽古場だろうなと想像した。
・ #アカバネさんがやたら面白かった。 「ざけんじゃねえぞ!」と聞いた瞬間、「ああ、吠える女子力だ……」と思った。
演出家は自分の感覚に合わず、役者に対して厳しい口調で(もっともらしく)叱責する行為がダメ出しという」という台詞ホントそうだなと思う。ハラスメントは人とのコミュニケーションである以上、対等に扱わなければならない。「提案なんですが」「個人的に思いついてしまったんですが」みたいな聞き方じゃないと通用しない。「演出家なんだから従え」みたいな言い草は滑稽だし、正解の無いものに向き合う姿勢が大切だと思う。極論すれば「自分のわがままを言っている」という謙虚な姿勢が必要で、演出という役割を与えられた以上はお客さんに伝わりやすくするにはどういう見せ方が適切なのか一生懸命考えて、提示する(当然資料を読むしそれに見合った努力をする)。上手くいかなかったら座組に相談。演劇は集団的想像力の結晶物なのだから、一人にせず全体の問題で協議する。そういう姿勢が大事だと思う。
・高校演劇教育確かにある。何があるって生徒が全員「よろしくお願いします!」と挨拶する場面。あるある。特に強豪校は。私はご縁があって5年間高校演劇の講師(審査員)をしていた。生徒に正解があると錯覚させてしまうことに、顧問も講師(審査員)も責任を感じる。
演劇って本来正解が無いもの。意見なんかバラバラだし、真逆のことを言ったりするから、信じなくて大丈夫だし、参考意見として聞いて欲しいと生徒に伝えないとダメだと思う。メモしちゃ駄目。正解は1つだと思い込んだらマジで危ない。そうしないと偉そうな立場(=権力)は伝わりきらないと思う。これ高校演劇は勿論あるあるだが、もう少し羽を広げると生徒の自主性を奪ってることも多々あると思う。吹奏楽とか…。芸術って何だろうと思う。みえないものだけに根が深い。
・出演者には魅力的な方ばかり✨ユーモア溢れるダンスシーン。くだけた会話。チャーミングな知乃さん。ニヤニヤしちゃって、お話ししてみたくなった。全部書ききれないけど、ロシア的な雰囲気だった佐藤瑞姫さんが気になった(私も露文です)。
・誤読も有るかもしれないけどTwitterで起きた小ネタが巧妙に込められているように思えた。しれっと個人名が明かされ、「これ、あのことでは……?」と思ってしまい、謎解きをするようで楽しかった。無理かもしれないけど誰か「演劇犬鳴村を語る回(告発有)」を開いて欲しい。(私もある)
葭本さんがモデルとされている朝子役の女優さんが終盤あることをするのだけど、それがものすごくカッコいい。群れずに1人の人間として行動する意志だと私は受け取った。このシーンを見て非常に胸のすく思いがした。実際問題高校演劇で顧問が厳しく指導していて、生徒は言うことを聞くばかり…というのは事実だからだ。正論を鮮やかに返すところが見事だと思う。
でも他人事ではなく、男性もまた問われている問題だと思う。「てめえに言ってんだよ!」と思うだろうし、そうさせてきたのは私たち。自分ごとに置き換えハラスメント研修を受けることが当たり前の世の中にしていくべきだと思った。直ちに受けます。
てんかんの発作もあるのに、スタッフが親切に案内していただき助かった。。終演後は感染対策のために役者面会が禁止なのは通例だが、当たり前に役者面会していて、お客さんを大切にしているな、嬉しいな、と思った。

盛況をお祈りしています!

人間と、人間と似たものと。

人間と、人間と似たものと。

TOKYOハンバーグ

座・高円寺1(東京都)

2019/11/06 (水) ~ 2019/11/10 (日)公演終了

満足度

鑑賞日2019/11/06 (水) 19:00

座席A列6番

価格3,420円

感想は書くまいと思っていたが、一言だけ。
初日を拝見したが、話にならないと思った。理由を以下に示す。
①ウイグル自治区の問題
「そもそもウイグル自治区って遠い出来事だ」という客観的な視点があるはずで、それをいかに身近な題材にするかを工夫すべきなのに、ド直球で演じようとするので、感情だけ先走って周りが見えてないと思った。Twitterでは「重たいテーマだった」という感想がやたら目についたが、重たいかどうかなんてはっきり言ってどうでも良いと思う。それがそこにいかに身近な問題として感じられて、「私たちの問題」として実感できるかどうかに掛かっているのだと思う。
「重たいテーマだった」という発言の裏にはそういう言葉は決して出ないと思う。決して他人事ではない、私の日常にも潜んでいるし、共感して観られるはずだと私は思う。
にもかかわらずラスト終盤で永田さんが「確かに伝わらないかもしれない。でも目を背けたくないんです!」とピュアなことを言い出すものだから、おいおい手法を選ばなくてはと思ってしまった。とある知人が「東京ハンバーグはEXILE芝居だ」と聞いたことがある。私はそれを観たことが無かったが、今回初めて拝見してEXILEと言われても仕方無いと思った。確かに泣かすテクとか台詞の技術は上手いかもしれないが、そこに流れる思想や作者の世界観が感じられず、共感して観られるものでは無かった。
他にも寓話劇とは言え、言語の壁や204?年という比較的近い設定であるにもかかわらず、なぜ極端なSF的な世界観を敷いたのか、どうしてこうなってしまったのか、そもそも人間のクローン技術って近い未來なのかどうかさえ、作者の世界観が見出だせなかった。
……とまぁ色々言ってきたが、今なおウイグル自治区が平然と弾圧を行われてきたことに震撼するし、よくぞ書いたと思う。中国の話題になると「でも一見成長著しいけど、ウイグルのこともあるしね」とフツーに思ってしまうわけだから。タブー視されるのが不思議でならないし、憤りを感じてしまう。
そろそろ近所の中華料理屋で話題にしてはどうか?「中国って卓球強いですよね~、ホントに…ところでちょっと芝居観てきたんですけど、ウイグル自治区って知ってますか?」と。そこから話題が生まれ、何かが変わる。非常に小さいことだけど、まずはそこから。演劇の役割はそれしか無いのだと思う。
いっそ横浜中華巡りとか始めませんか?

ロスト エンジェルス

ロスト エンジェルス

ヤパン・モカル

小劇場B1(東京都)

2019/10/31 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了

満足度

ヤパン・モカルの初日を拝見。
好意的なお客さんばかりだと思うので、正直な感想を言わせて頂く。
坂口理子さんの作品は過去2作品観た中でやはり肌に合わないなと思った。
・なぜ首を吊る?そのきっかけは?
・突然文字を声に出す意味は?
・増澤さんの翼を見た反応は?
・どこから連絡先を知ったの?時代をどこに設定した?
その事をとても気を使ってきた私としては、突き詰めれば俳優が自ら持ち込むしか無いと思うし、都合が良いとしか思えなかった。
人物像についてもそうだ。
多少誇張しているとは言え、何だか漫画のようでプラスチックの人物像に思えて複雑な人間模様にはとても思えない。共感する部分が薄いと感じられた。
増澤さんについても施設に入所している人物だと後々明かされるが(読売演劇俳優賞を受賞されている私が言うのもナンだが)流石に小芝居がうるさすぎて苛立ちを禁じ得なかった。どうしてヘラヘラと振る舞うのか?ヘコヘコするなと言いたい。増澤さんは勿論素晴らしい俳優さんなのだから堂々としていればと思ってしまった。究極的には引き算だと思う。
坂口さんの本に関しては申し訳ないけれど片手間で書いてる感じがした。お題を与えられればさらっと書けてしまうそういうレベル。売れっ子は良いな、頭が良い人は良いなとつくづく思う。でも命を賭けて劇作に向き合って無いでしょとは思う。本当に人生を賭けて、いわば死ぬ思いして書いているのか?と問いたい。劇作家は「こんな台詞逆立ちしても一生書けないわ」と無力感に打ちひしがれて、地団駄踏む瞬間がある。まさに言葉の力だ。そういうものに出会った時、演劇の力を思い知らされるし、言葉の重みを実感する。
申し訳ないが、坂口さんにはハッとする台詞が一つも無かった。「まぁ多少気が利いた台詞だろう」と思うことはある。でも所詮片手間だ。70点くらいの台詞にしか思えなくて、「お仕事ってそんなに楽しいんですか?」と問いたくなる。そしてつくづく頼まれ仕事は何てつまらなくて退屈なんだと思ってしまう。
そして演出の林さん。偉大な映画監督を前にしてご意見を申し上げるのは誠に恐縮だが映像的な効果(例えば紙飛行機など)を多用し過ぎて舞台であることの表現が変換できて居ないように感じられた。紙飛行機が飛んできたからと言って果たしてどれ程の意味があるのかという気がしてしまう。
確かに映像は紙飛行機が通過する画が有り得る。でも紙飛行機を飛ばす行為はかなり重い意味を持つし、やりようによっては安直な印象を抱きかねない。それは戯曲上もかなり書き込む必要があるだろう。私の印象としては紙飛行機を飛ばす行為は安直に思えてしまった。何より戯曲が効果的ではないので。
3人の俳優さんは真摯に向き合っていた。それ故に痛々しかった。ヤパンモカルは2度と観に行かない。
私は以上だ。

ネタバレBOX

増澤さんがキャラメルボックスみたいな振る舞いに対してイライラしてしまいました。施設の入所している設定であるとは言え、そんなのは後付けで、恥ずかしい台詞のオンパレードだと私は思いました。これを聞いててうんざりするし、実際お金を払って観に行こうと思いますか?「でも演劇は苦しいことばかりだし、せめて演劇は元気が出るお芝居の方が私は好き」といった意見も中には居ると思います。でもそんなの本気で闘っていないと私は思います。そりゃ楽ですよ、大自然の雄大さだけ見せておいて、テキトーに決まりきったストーリーだけ垂れ流した方が。でも世の中を見渡すとそんなに単純ではなく、もっと事情は複雑です。いつまでフィクションを楽しませるのですか?シビアな現実を見詰めた上で、それでも懸命に希望を見出だすべきだと思います。これではフィクションだし、絵空事です。
一応フォローしますが、3人の俳優は素晴らしかったです。増澤さんが絶妙の間合いで台詞を語り掛けるタイミングとか完璧に近いし、関口さんも上手い俳優さんだなぁと思いました。剣持さんに関しても与えられた持ち場で精一杯演じていました。
ただ私は劇作家であり、同業者なので本気で格闘していないとバレてしまいます。だからこそしんどかったです。
いくら俳優が自ら真摯に演じて格闘したとしてもダメなものはダメ。片手間で書いています。事実「こんな台詞逆立ちしても書けないわ!」みたいなことは一つも無かったです。だって命を削って書いていないじゃないですか?
その程度かと思ってしまいました。
遺産

遺産

劇団チョコレートケーキ

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2018/11/07 (水) ~ 2018/11/15 (木)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/11/07 (水) 19:00

私の叔母は731部隊に熱心な人で、今から23年前、小学4年生の時に東北で初めて731部隊展を企画したことがあった。だから、森村誠一の『悪魔の飽食』や『黒い太陽』といった映画は見たことが実はあった。でも、今回の舞台だと真新しいことはほとんど無かった。それよりむしろ「細菌実験をした証拠は何一つ見当たらない」といった歴史修正主義者も存在するので、むしろ膨大な資料で徹底的に論破して欲しかった(笑)登場人物を見る限りだと「731部隊なんて幻想だ」といった人物が見当たらなかったので、無批判に受け入れて良いのか?という疑問がある。
チョコレートケーキは初めて観たが、よく知人で「歴史上の事実はとっくに知ってるよという気持ちになる」みたいな意見を聞くが、今回も同じことを思った。プラスアルファの部分だと思う。うーん、演劇って難しい。確かに人知れず日本語を習得していた設定は面白かったし、鏡の展開もグッときた。でもラストに至る展開は迷走している感が否めなかった。グッとくるけど、ハッとしない。劇作家の新たな言葉が聞こえない。バランス良く配置?そんなものはクソ食らえ!
また、京大チームのやり取りには噛み合っていないように思われ、狙い?あまりにエリート過ぎてアスペルガーだったオチなのでは?と思ってしまった。
このように人間の悪意を見ながら物事を見る生き物です(笑)以上売れない劇作家の感想でした。

『たかおとたかあき』

『たかおとたかあき』

三栄町LIVE

三栄町LIVESTAGE(旧フラワースタジオ)(東京都)

2018/07/11 (水) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/07/13 (金) 19:30

ゴミって過去の思い出が蓄積されてる作品だと思う。かなり思い入れがあるゴミだったり、実はたまたまお金を持っていて、何となく浪費していたゴミだったり。。
「そもそもゴミとは何?」と登場人物に価値が変わってくるとさらに面白くなると個人的には思った。

ネタバレBOX

無数にちりばめられたゴミの山に一瞬「おおっ!」と思いながら期待して開演。ランドセル、犬の首輪などそれぞれの体験が綴られる。
エピソードは興味深いが、いかんせんゴミが多いため、他のゴミのことは語られず。「もしや登場させただけなのでは?」と錯覚を覚える。「一見意味のないことでも、本人にとってはかなり思い入れが強かったりするんだよなあ」ということを思う。役の人物がやり取りをするなかで、認識が変わっていくのがセオリーだと個人的には思う。
興味深かったのがゴミ屋敷とおぼしき人物が生年月日を書き入れるところ。年月が経過していると記憶が曖昧だったりする。確かに自分も身内の年齢やましてや生年月日なんて言える自信がない。何らかの事情があり、家族も全てを失って、生年月日さえも真実か分からない瞬間があるんじゃないかと思う。
もし分かりやすいドラマにするならば、事件が起きるのが良いのではないかとふと思った。例えば立ち退きを迫られているとか。ホームレス支援に関わったことがあるので知ってるが、ゴミ屋敷に棲息していると、ほぼ十中八九立ち退きを迫られている。皆が助け合いながら仲良く暮らしているとだいたい狙われてしまい、悪質だ。「立ち退きまであと●日」という目下の目標があるので、一本柱があると話題になりやすいし、ドラマが深まっていくのではないかと思う。
一点惜しかったのが地域福祉課の職員。「そもそもなぜいるのか?」のリサーチが少し浅いように感じた。「ちょっと来ちゃいました(テヘッ)」と言うけれど、「そもそも業務だよね?」と頭をよぎった。例えば以下のプランが考えられる。
【A案】立ち退きを迫りに来たが、何らかの理由があり、休日を利用して(ボランティアで)ゴミ屋敷の元を訪れている。
【B案】純粋に立ち退きを迫りに来ている。

A案だとすれば自由度が高く、好きに書けるが、B案はきちんとリサーチをしないといけない。いずれにしても「なぜ登場するのか?」を決めた方がベターだ。台本はふらっとやってきたことを装って、実は意図的に描いているのだから。
高校演劇マルシェ

高校演劇マルシェ

高校演劇マルシェ

中野スタジオあくとれ(東京都)

2018/03/30 (金) ~ 2018/03/31 (土)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/03/30 (金) 14:00

このクチコミを見て私も初回を観た。正直このクチコミを読んでムッとしている。あの印象批評は何?関根麻帆?は?どうでもいい。
トークの際、篠原久美子さんが涙を流しながら「私が審査員なら、桃谷高校、最優秀にする!」と言ったのが忘れられない。桃谷高校の上演は本当に素晴らしかった。フィクションの形を装いながら、実体験に基づかれたエピソードは演劇の力を見せつけられた思いだ。ピアス多めの女子生徒の変態に誤解されるエピソード、学校に通えない男子生徒の大道芸との出会い等、どれも素敵なエピソードが散りばめられている(宣伝のように書いてるがもう終わってしまっている)
余談だが、私は劇作家女子会の公演の中でモスクワカヌさんの『だるまかれし』が断然好きだった。初めてアスペの問題に踏み込み、「よくぞ書いた!」と感動したものだ。その審査員の講評と言ったら(一応フィクションということになっているが)、本当に聞くに堪えない内容だった。てめえの演劇論はどうでもいいんだよ!もっと構造を語れ!と叫びたくなった。
そして『だるまかれし』ファンが「『だるまかれし』の上演が一番好きでした」と割と真っ直ぐな台詞を言った時、思わず泣きそうになった。演劇って何て理不尽なんだと、何度も何度も思った。
そして、この飾らない、おそらく取材に根ざした桃谷高校の台詞を目の当たりにした時、フィクションに出来ることは何だろう、演劇に出来ることは何だろうと頭を駆け巡った。
未だ答えは出ていない。
ともあれ、お疲れ様でした!ワカヌさんよくぞ構成したと思います。素晴らしい舞台をありがとう!

アベベのベ 2016

アベベのベ 2016

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

大傑作の予感
ブラックジョークから現象的なギャグまで「これでもか!」と笑いが盛り込まれた楽しい100分。

ネタバレBOX

2021年、都内某所のコンビニが舞台。現在の東京都の最低賃金を著しく下回っており、創り手の将来への強い危機感が感じられた。
惜しむらくはメインテーマである日本国憲法がコンビニの話から離れたところで、いささか説諭的に語られたこと。法学部の学生の改憲への疑問はもう一歩踏み込んで欲しかったし、凶悪犯罪が実は減っている話はもちろん憲法と無関係ではないが論点がずれた気がした。
コンビニ労働と憲法の繋がりがビビッドに描かれれば、大傑作になる可能性を秘めていると思った。
オーシャンズ・カジノ

オーシャンズ・カジノ

北京蝶々

王子小劇場(東京都)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/30 (月)公演終了

満足度

甘さ
美術が豪華だし、メインの俳優の熱演は見応えがあった。しかしそれが戯曲の甘さを際立たせていたように思う。

類型の人物とリアリティのない台詞、ありきたりな展開には何か意図があるのだろうと期待したが、最後までそれは見いだせなかった。


劇中、地名が出てきたり、政治や経済に関するトピックが出てきたりして、リサーチの跡を感じたが、作品世界にリアリティがないだけに、活きていないのが残念だ。

社会派としても、エンタメとしても、本気で取り組んでいる演劇人にとっては違和感がある上演だと思う。少なくとも僕にとってはそうだった。

これは下巣の勘ぐりかもしれないが、エンタメ好きにも、社会派好きにも気に入られよう(もし気に入らなかったら他方の要素で溜飲を下げてもらおう)という姿勢が感じられた。

一言で言って、志が低いと思う。

フツーの生活

フツーの生活

44 Produce Unit

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/06/18 (金) ~ 2010/06/23 (水)公演終了

満足度

「限界」に酔っている
内容が浅いというのは私も感じましたが、それ以上に「限界」を演じることに酔っていて、冷静な視点を持ちえていないことが気になりました。果たして悲惨さを悲惨に演じることが表現でしょうか? 観る人に強い印象を与えるために手法を選び、計算をする必要があるかと思います。
このことは例えば「笑い」一つとっても感じました。いったい何のための笑いなのか(皮肉なのか、批判なのか)が分からない場面がいくつかありました。
また「東京から疎開してきた女性」、「千葉の漁師だった脱走兵」など、作品世界を膨らませる可能性がある設定がほとんど生かされていないことも残念でした。
そしてラストですが、全員が生き残る話にすべきでは? と思いました。そうでないと何と比べて「フツーの生活」なのかが分かりません。生き残った人間が当時の生活を振り返るという構成にしたほうが、普通の人々の普通の営みに着目した意味も際立ったのではないでしょうか?

ハシムラ東郷

ハシムラ東郷

燐光群

座・高円寺1(東京都)

2009/11/20 (金) ~ 2009/11/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

満腹
3本の作品を一度に観たような満腹感を感じました。
実在しなかった人物の話という一見捉えどころのない試みですが、多角的に
描かれていたので、自分の知識や趣向から入ることが出来、大いに楽しめました。
色々な趣を見せる舞台美術と照明が素敵です。また、それに負けない存在感を示す演出と俳優にも魅了されました。
黄色い壁のシーンでは異世界に拉致されような不思議な感覚と好奇心をかき立てられました。

いわゆる分かりやすい話ではないですが、刺激を受けたい人、新しい演劇に興味のある人にはオススメです。

人間みたい。

人間みたい。

アタシト、

ギャラリィトウキョウジョウ(東京都)

2009/10/03 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

卵?
カラスのくれた卵とストライキと称して足を縛っているのが面白かったです。
基本的にはナンセンスコメディーだと思います。そういったことを考えると人物の背景はもう少し薄くても良かったかもしれないと感じました。

はちみつ

はちみつ

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2009/09/23 (水) ~ 2009/09/28 (月)公演終了

満足度★★★★

くびれた小指
初見の劇団でしたが、王子の空間をとてもよく生かしていると思いました。
俳優さんも非常に真摯にお芝居と向き合っていると感じました。

BUG 【美保純が降板⇒代役は西山水木】

BUG 【美保純が降板⇒代役は西山水木】

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2009/09/18 (金) ~ 2009/09/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

衝撃!!
こんな舞台を日本で観られることに大きな幸せを感じます。
出演者、スタッフとも限界に挑戦することで出来た舞台だと思います。
序盤は心に闇を抱えた男女の出会いが丹念に描かれていますが、「BUG」の発見により、平静が保てなくなっていきます。
人間が狂う舞台は何度か観たことがありましたが、これは人間の背景に社会の崩壊が確固たる形で存在しているように感じました。
また、狂うと狂いっぱなしでラストまで行くのが普通ですが、ラスト直前に1クッション(外部からの妨害)が入ることにとても興味が沸きました。
もう東京公演は終わってしまいましたが、愛知、大阪の近くにお住まいの方はご覧になることをオススメします。

朝霞と夕霞と夜のおやすみ(ご来場ありがとうございました)

朝霞と夕霞と夜のおやすみ(ご来場ありがとうございました)

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/05/09 (土) ~ 2009/05/20 (水)公演終了

満足度★★★★

面白い!
全編にわたってくだらない面白さに溢れている。
妙ジカル、ハマりそうです。
メロディが頭にこびりつき、夢に出てきそう……

余談ですが、抱きつかれてドキドキしました(笑)

針

メタリック農家

駅前劇場(東京都)

2009/05/06 (水) ~ 2009/05/10 (日)公演終了

満足度

この作品にお客が入ることの無力感
ネタバレボックスに書きます。

ネタバレBOX

・目が覚めると一国の王女になっていた
・幸せのための3つの法律を制定した
この二つが作品の核になる設定で、これが魅力的だと感じたからこそ観に行ったわけですが、前半での情報の提示も中途半端、かつ最後まで有機的に機能していなかったように感じます。
しかしそんな技術的な拙さは枚挙に暇がありませんし、これから語ることに比べたら大したことではありません。お客につまらないものを見せてお金と時間を浪費させたということを差し引けば、「下手だ」というだけの話ですから。

この舞台の最大の罪は在日ネタと「馬鹿な妹」に代表される軽薄さ、品の無さです。
不謹慎なことをやるのは構わないと思いますが、それには確固たる視座とそれによって人を傷つけるという覚悟が必要だと思うのです。
在日の問題は大変根が深いことでありながら、この作品は上っ面だけなぞり在日の人間を馬鹿にしています。もちろんそれが作品の本筋ではありませんし(むしろ無くても成立した設定でしょう)、問題の深さを語るべきだと言うつもりは毛頭ありません。しかし分かった上でやるべきだとは思います。それがネタにする礼儀というものではないでしょうか。
「馬鹿な妹」に関しては、馬鹿=知的障害者という認識で描かれた人物でした。百歩譲って知的障害者を笑いものにするにしても、「馬鹿な妹」という役名はあまりに無神経で、下品ではないでしょうか? そしてこんな役名をつけられて出演する役者にも疑問を感じざるを得ません。ここは人間を批評する場ではなく、作品を批評する場ですのでこれ以上は言いませんが、僕は心底悲しくなりました。

今までの作品を観ていないから何とも言えませんが、こんな作品で駅前劇場が満席になるということに無力感を覚えます。

少なくとも劇作と演出に関しては実力以外で売れていることを肝に銘じるべきだと思います。
人生のクライマックス

人生のクライマックス

劇団扉座

紀伊國屋ホール(東京都)

2008/12/02 (火) ~ 2008/12/07 (日)公演終了

満足度

初扉座
初めて扉座の芝居を観ました。
横内さんは劇作家として既に一定の地位を築いていると認知していましたが、正直作品を観てがっかりさせられました。
皮肉にもならない軽薄な世相ネタ、俳優の個人芸に頼ったギャグ、無意味に多いキャスト、収斂しきれていないラストなど、不満は数え切れません。チラシにもあった主人公が人知れず集めていたブランド服が明かされるシーンはエピソードとして秀逸でしたが、それもチラシを事前に見ている人間は分かっていることで、出すタイミングが遅すぎたと思います。
時折客席は沸いていましたが、あれは役者を前から知っている人間だから面白いのであり、初めて観る者としては一つも笑えませんでした。「あはは、○○さんがこんなことやってるぅ」という常連客の生温い視線に甘んじているのではないかと思います。
一流だと思っていたからこそ、小劇場すごろくのゴールである紀伊国屋ホールで公演をしているからこそ、今回の公演は誠に残念でした。こんなはずではないと思っていますので、次回作も観に行こうと思います。

となり町戦争

となり町戦争

ALGO

ザムザ阿佐谷(東京都)

2007/05/08 (火) ~ 2007/05/13 (日)公演終了

満足度

理解に苦しむ
真剣に「となり町戦争」の舞台化を考えてきた者として、大いに不満が残る。これだけ今日性を秘めた奥深い題材でありながら、どうしてこんなに底の浅い舞台(映画もですが)を創るのか疑問である。センチメンタリズムを表現したいのなら、わざわざこの題材を選ばなくてもいいはずだ。また、作品を手掛ける上で調査した形跡が見られない。この作品を扱うのにこんな怠惰がまかり通っていいものか。
とてもじゃないが5000円取れる芝居ではないだろう。

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