満足度★
ヤパン・モカルの初日を拝見。
好意的なお客さんばかりだと思うので、正直な感想を言わせて頂く。
坂口理子さんの作品は過去2作品観た中でやはり肌に合わないなと思った。
・なぜ首を吊る?そのきっかけは?
・突然文字を声に出す意味は?
・増澤さんの翼を見た反応は?
・どこから連絡先を知ったの?時代をどこに設定した?
その事をとても気を使ってきた私としては、突き詰めれば俳優が自ら持ち込むしか無いと思うし、都合が良いとしか思えなかった。
人物像についてもそうだ。
多少誇張しているとは言え、何だか漫画のようでプラスチックの人物像に思えて複雑な人間模様にはとても思えない。共感する部分が薄いと感じられた。
増澤さんについても施設に入所している人物だと後々明かされるが(読売演劇俳優賞を受賞されている私が言うのもナンだが)流石に小芝居がうるさすぎて苛立ちを禁じ得なかった。どうしてヘラヘラと振る舞うのか?ヘコヘコするなと言いたい。増澤さんは勿論素晴らしい俳優さんなのだから堂々としていればと思ってしまった。究極的には引き算だと思う。
坂口さんの本に関しては申し訳ないけれど片手間で書いてる感じがした。お題を与えられればさらっと書けてしまうそういうレベル。売れっ子は良いな、頭が良い人は良いなとつくづく思う。でも命を賭けて劇作に向き合って無いでしょとは思う。本当に人生を賭けて、いわば死ぬ思いして書いているのか?と問いたい。劇作家は「こんな台詞逆立ちしても一生書けないわ」と無力感に打ちひしがれて、地団駄踏む瞬間がある。まさに言葉の力だ。そういうものに出会った時、演劇の力を思い知らされるし、言葉の重みを実感する。
申し訳ないが、坂口さんにはハッとする台詞が一つも無かった。「まぁ多少気が利いた台詞だろう」と思うことはある。でも所詮片手間だ。70点くらいの台詞にしか思えなくて、「お仕事ってそんなに楽しいんですか?」と問いたくなる。そしてつくづく頼まれ仕事は何てつまらなくて退屈なんだと思ってしまう。
そして演出の林さん。偉大な映画監督を前にしてご意見を申し上げるのは誠に恐縮だが映像的な効果(例えば紙飛行機など)を多用し過ぎて舞台であることの表現が変換できて居ないように感じられた。紙飛行機が飛んできたからと言って果たしてどれ程の意味があるのかという気がしてしまう。
確かに映像は紙飛行機が通過する画が有り得る。でも紙飛行機を飛ばす行為はかなり重い意味を持つし、やりようによっては安直な印象を抱きかねない。それは戯曲上もかなり書き込む必要があるだろう。私の印象としては紙飛行機を飛ばす行為は安直に思えてしまった。何より戯曲が効果的ではないので。
3人の俳優さんは真摯に向き合っていた。それ故に痛々しかった。ヤパンモカルは2度と観に行かない。
私は以上だ。