まつがえの観てきた!クチコミ一覧

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Caesiumberry Jam

Caesiumberry Jam

DULL-COLORED POP

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/08/20 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

人間幸福の脆弱性とそれでもの希望
盟友谷賢一氏の劇団DULL-COLORED POPの再始動記念公演である。

再始動記念公演だから、気持ちを新たに新作をというのが普通人なら考えそうなことだが、谷くんは、再演を選んだ。

2007年の作品の再演だ。

もちろん、福島原発の事故があってという現状を鑑みての判断だろう。

しかし、作品で描かれる「人間幸福の脆弱性とそれでもの希望」は、福島の原発事故とは切り離されてそこにあった。

ネタバレBOX

当然、福島原発事故に遭遇してしまった現代日本の我々としては、この作品で描かれるチェルノブイリの事故に対して、作品内における書かれようとはまったく関係なく親近感というか臨場感を覚えずにはいられない。

だが、僕がハッとさせられたのは、堀奈津美さん演じるリューダを取り囲む物語と、その物語を背負うにふさわしい堀さんの青白く孤独に屹立した佇まいだ。

誰もが享受すべきささやかな幸せであったはずのモノが、1つの事故をきっかけに召し上げられる。

享受すべき幸せを召し上げられたリューダの切なる思いは、空間をゆがませるほどの磁力を持った…本来享受するはずであった幸福の到来を待つ思い…狂気に変わる。

その空間をゆがませるほどの狂気は不幸であるはずの現実を侵食し、ついには奇跡的な反転をもたらし…ハッピーエンドとなれば、「班女」に代表されるような能にいうところの狂女物の変奏となったところだが、この話では、そうはならない。

リューダの思念をもってしても、現実は反転しえない。

いや反転しえたのかもしれないが、それを許さない客観性…ゴゴの視点、あるいは作家自身の、あるいは観客の視線が、「本当はあんたは不幸なんだよ」とリューダの夢を覚まそうとおせっかいをやく。

最後は、そのお節介を拒否したリューダの世界が観客とゴゴを拒絶して幕は下りる。

リューダの思いに接続しかかった観客は拍手もない世界に押し出されて、客席=現実という本当の絶望の中に帰還する。

「Caesiumberry Jam」は原発事故の悲惨さを描いた話ではない…こともないのだろうが、僕はこの作品から、絶望すべき世界(原発事故があろうがなかろうが絶望的な現代)を前にしてリューダのように思念によって(あるいは演劇によって)これを反転させようとする谷賢一自身の企みを読みとり、しかしそれでも、その企みは敗れるだろうという諦めにも似た凍える現実認識を読みとった。

そして、これは原発問題やら何やらが起こるよりも前からの僕らの現状認識に他ならない。

なにをやろうが僕らは敗北するしかない。

再出発にあたって、なによりもまず深い現代の絶望を描いた谷賢一が今後どのように希望を描いて行くのか、とても興味がある。(谷賢一が希望を失っていないのは結婚したことからも明らかである。いや、あるいは希望を失わないためにこそ結婚したのかもしれない)

ますます目の離せない人物である。

それはそうと、堀奈津美さんが体現する静かで動くことのない狂気、「待つ」ことの狂気は刮目すべきであるが、それは何よりも彼女が本当に、自劇団の再開を「待ち」望んでいたこととも無縁ではないように思う。放射能の中で思念の子供(別の男の子供)として生を受けた新生DULL-COLORED POPの今後が非常に楽しみである。
谷賢一・田中沙織 結婚式

谷賢一・田中沙織 結婚式

DULL-COLORED POP

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/08/16 (火) ~ 2011/08/17 (水)公演終了

満足度★★★★★

演劇は永遠に結婚式に負け続ける
「谷賢一・田中沙織結婚式」8/16ソワレ観劇。

こんなに素晴らしい「結婚式」は観たことない。

「小劇場の芝居」と考えると8000円は高いと思うだろうが、

実際に見ての感想としては8000円以上の内容となっている。

笑いと感動と演劇的チャレンジ。

ネタバレBOX

ひょっとこ乱舞広田氏演出の式中劇も大変面白い。

広田くんご本人に演出の中で一番おもしろかったんじゃないかと酷いことを言ってしまったぐらい。

うちの劇団のナカヤマミチコも料理手伝いで頑張っている。

みんなのスピーチもぐっと胸に来る。

これを劇場でやってしまうことに谷賢一的素敵な悪意を感じる。

この感動以上の感動を芝居が与えられるのか。

与えられると谷くんなら言うのだろうな。

(その答えは来週から公演Caesiumberry Jamで目にすることになるだろう)

なにはともあれ、みんなの愛を感じた。

出演者スタッフ家族親族友人観客、みんなが祝福をしている。

僕もその1人となれたことがうれしい。

本当に結婚おめでとう。

そして残り2公演wがんばって。

というか今日も見たかった。

谷賢一が凄いと思うのは、結婚式という一回性の感動を、3ステにしてしまうこと。

一回性の感動を再現できなくては演劇は永遠に結婚式に負け続ける。

だから、今日こそが本番。

本当は今日も結婚式に行って、その成否を見届けねばとも思うのだ。
パール食堂のマリア

パール食堂のマリア

青☆組

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/07/29 (金) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

さなぎが蝶に孵るように
吉田小夏さんの作品は完成度高く商業にいつでも持っていけると言ってきたがそれが証明された。素晴らしい美術、万遍なく配置された人物とエンタメとして行き届いた物語、横浜の黄金風景を立ち上らせる魔術。猫のようにして人間たちを見つめる優しい眼差し。必見。

ネタバレBOX

私見だが、小夏さんの作品はぜんぶ面白いが、作品全てに「女」としての怨念がこもっていてある意味怖いと思ってきた。男たちの愚かさに対して先ず恨みの視線があるように感じていた。(身に覚えのある)男としてはぎゃーって悲鳴をいつもあげていた。しかし「パール食堂のマリア」ではこれが大いに変質していた。

男たちの愚かさに対する慈愛の眼差しがあった。男たちだけでなく人間の営み全てに対する慈しみの眼差しがそこにあった。女は女でも恨んだり憎んだり悲しんだりする女ではなく、醜くても可愛いわが子(あいのこ、ハーフとか)を愛おしむ聖母の眼差しで書かれた物語だった。

それはタイトルや物語の中に聖母の名前が乱舞することからも知ることができる。

吉田小夏さんの芝居は、舞台の規模が巨大になるにつれ、演劇的な色合いも、立派な商業性をもった物に変容したが、それだけでなく、作家としての美しい変容を感じた。今回公演、さなぎが蝶に孵った記念すべき公演となった。

とは言うモノの、今後は、たまにでいいので、男を追い詰める恐ろしさの芝居もまた書いて欲しい。マゾ的にはちくちく刺され、いたたまれなくなるあの客席も、たまにはうれしい。でも「たまには」でいい。基本はマリアのままでいて(笑)

終演後、小夏さんや、木下ボッコさん、荒井志郎さん、櫻井竜くんらに挨拶。ProjectBUNGAKUの仲間たちが元気に派手にやってるのが嬉しい。あれ?っと思ったけど櫻井くんは谷くんのに出てたんだっけ。小夏さんがさらに美しくなっていた。
推進派

推進派

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2011/06/08 (水) ~ 2011/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

興味ない人こそ行くべき芝居
燐光群の名前はだいぶ前から知っていた。

知ってはいたが、燐光群と言う劇団が、バリバリの社会派で、その演目の内容も難しいという評判から、足を運ぶ機会を逃し続けてきた。

ネタバレBOX

昨年、ProjectBUNGAKU太宰治なるイベント公演を僕が主催したのだが、その打ち上げの席で坂手洋二さんと初めてお会いした。

非常に気さくで優しく軽妙洒脱、またお酒が入っても論理を崩されずにお話しされる坂手さんの姿に素敵な方だなあ、どのようなお芝居を書かれるのだろうか、見てみないと・・・との思いを強くしていた。

また、その席では、僕のProjectBUNGAKUという企画アイディアも大変評価していただいた。

さらには、僕は今年の11月から12月に、小劇場劇団8劇団、学生劇団6劇団による社会派演劇フェスティバル「日本の問題」というのを主催するのだけれども、なおのこと、現代の社会派演劇の先駆者である坂手洋二さんの芝居を見なくてはならないという思いを強くしていた。

そんなこんながあり、今回、「初」燐光群体験をすることとなった。

衝撃を受けたのは自分が泣いたことだ。

物語は、沖縄、普天間の米軍基地移転問題を扱っている。

舞台は鹿児島県徳之島(劇作中ではサチノ島と名前を変えている)。

県外移転を公約した鳩山政権時に、移転先として脚光を浴びた島だ。

「推進派」とは島内基地移転を推進するトミオカという男が主人公だからだ。

終演後、飲みの席で、坂手さんとお話しする時間を得たのだが、この話、ほぼドキュメンタリーというか取材に基づいて作劇されているそうだ。登場人物にも全員モデルがいると言うことを言われていた。

というようなことだから、見る前は、沖縄の基地移転問題についてなるほどこのように入り組んでいるんだなあと、「理解」できるような芝居なのだろうとの印象だった。

もちろん、その点は予想通りに理解できる芝居なのであるが、それ以上のモノがあった。

推進派の、そして反対派の、それ以外の人たちの、切実な思いに満ちた芝居だったのだ。

とくに反対派の1人、鴨川てんしさんが演じたマエサコの言葉と思いにはひどく胸を打たれた。

僕も劇場に居ながら、サチノ島に滞在する人間の一人になっていた。

我田引水になるが、僕が「日本の問題」という企画を思いついたのも、この演劇のもたらす「当事者性」に注目したからなのであった。

歌や音楽は、理屈じゃない衝動を瞬間に呼び起すことができる。

それは演劇になかなか出来ないことで、ある言意味うらやましいこと。

演劇はある一定の長い時間、見る者を拘束しないと伝えられない。

しかし、それはなんだろう。

一定の長い時間を拘束してはじめて伝わるモノ・・・演劇にしかできないことって。

それは観る者を巻き込む力なんじゃないかと思ったわけです。

たとえば、歌で普天間基地の移転問題をうたうこともできる。

でも、それで伝わるのは雰囲気や気分でしかない。

一方、論文やジャーナリスティックな記事なんかでは、理屈っぽいことはだいぶ分かるし伝わる。

音楽で出来ないことをできる。

普天間基地問題の構造はよくわかるだろう。

しかし、それでは足りないモノがある。

それはその問題を自分のこととして切実に思わせること

つまり「当事者性」なんじゃないかと思ったわけです。

もちろん、総合芸術ですから、論文の良いところ、音楽の良いところも取り入れて

そんでもって、観客をその現場の目撃者にする当事者性もあって

というわけで、その演劇のすごさを見せつけてやろうというのが「日本の問題」の1つのテーマでもあるわけです。

ちなみに、映画映像と演劇の違いは一つには「普及性」の違いがあり

「当事者性」については非常に似てはいるが、やはり映画は演劇にはかなわない。

演劇は観客にリアルに水をぶっかけることができますからね。

ジェットコースターの映像だけでも脅えることはできるが、実際のジェットコースターに乗った時の脅えにはかなわない。

だから「普及性」については映画の勝ちだが「当事者性」については演劇の勝ちw

そんなわけで、演劇の特徴はなによりも観客を巻き込むこと、観客を当事者とすることにあると思う訳ですが、今回の燐光群の芝居はまさにその典型ともいえるものでした。

僕にとって、隔靴掻痒、縁遠い普天間基地の移転問題を、僕のこととして「痛く」感じることができた。

なかなか泣かないよ。泣けないよ。関係ない場所の人が基地移転問題で泣けないよ?

それが泣けるんだから、凄いってことです。

で、みんなに観に行って欲しいんだけど、とくに興味無い人に観に行って欲しい。

社会的な問題に関心のある人はさ、もともと興味あるんだろうから、そういう人はもう行っている。

行って欲しいのは、社会問題をわざわざ演劇で見るなんてメンドクサとか思っている人。

「普天間なんて俺に関係ねぇし」

って言う人に観に行って欲しい。

観終わった後、その関係ないはずのことが自分のことになっているのに驚いて欲しい。

原発の問題だって、デフレの問題だって、結局は人間の物語なんだ。

結局は、人。

そして悪人なんていない。

みんながみんなそのレベルで良かれと思って行動している。

結果、良いことが起こるとは限らないけど。

その悲痛な状況を知り悩み笑い涙する。当事者として。

「演劇」にはその力がある。

燐光群「推進派」

それをまざまざと知らしめる公演であった。

下北沢スズナリでは6月19日、日曜日まで

その後、兵庫、愛知でもやる。

沖縄問題なんて興味無い、そういう人はぜひ行くべき芝居である。
モリー・スウィーニー

モリー・スウィーニー

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2011/06/10 (金) ~ 2011/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

抜け出すことのできない流刑地
盟友谷賢一氏がシアタートラムにて南果歩さん、小林顕作さん, 相島一之さんという商業ベースで活躍する役者陣と芝居を作ると言うので早くから注目していたし、当然、初日に観に行かせてもらった。

ネタバレBOX

あらすじを見たときに、僕がすぐに連想したのは、谷くんがちょうど3年前の2008年の6月に作・演出した舞台DULL-COLORED POP第6回公演「小部屋の中のマリー」の物語との類似性だった。

「小部屋の中のマリー」という芝居の物語を大雑把に言うと、「父親によって色のない小部屋に閉じ込められて育ったために白黒の世界しか知らなかったマリーという女の子が、父親から救出されて、部屋の外に出て色のある世界に触れることによって引き起こることごと」というものであったと記憶する。

これは、谷くん本人が明らかにしているし、またタイトルからも明らかなように、「マリーの部屋」という哲学的思考実験から着想を得た話しだ。

この「マリーの部屋」という元話で重要なのは、白黒の部屋から色彩のある場所に移った時にマリーは何かを得るのだろうか?という話であった。もしマリーがsomething newを得るならば、そこにこそ「クオリア」が存在する。というわけである。

これを谷賢一はひっくり返した。

何かを得るのか?という質問自体がおかしい。むしろ、「得る」どころではなく何かを「失う」ことの可能性の方が大きいのだ。というわけである。

さてさて、あんまり突っ込むと「モリー・スウィーニー」のネタバレにもなってくる。

が、見た人なら分かるが、物語の構造はマリーもモリーも僕的には全く同じだ。

だから、見ながら僕は戦慄した。

谷賢一は一貫している、と。

一貫していることは天才にだけ許された永遠の遊び場であり、また抜け出すことのできない流刑地である。

「見る」「触れる」「世界に出会う」ということに関する徹底した生理学的精神医学的演劇的な興味。

人間の存在に関するこれまた徹底した絶望と、しかしそれでも絶望の果てに残るかすかな光。

3年前のすでに舞台にあったモノがそこにある。

そして、それが3年間の数々の演劇的なあるいは人生的な修羅場で鍛えられた谷賢一氏の演劇的な力によって鮮やかに塗り替えられ、確実も何歩も前に進み、まるで別物のような姿をみせながら、しかし変わらずにそこにあった。
怪物-カイブツ-

怪物-カイブツ-

ブラジル

駅前劇場(東京都)

2011/02/13 (日) ~ 2011/02/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

おそろしいほどの・・・
完成度が高い作品である。また役者をここまで活かせている舞台を僕はなかなか知らない。冒険はないかもしれないが、冒険ばかりでもつまらない。こういう巧い作品が小劇場でコンスタントに作られてこそ、見る人も安心して小劇場に足を運ぶことができるようになる。あとの細かい感想はブログに書いたので、そっちを見てください。

浮標(ブイ)

浮標(ブイ)

葛河思潮社

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2011/01/17 (月) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

誠実な愛の告白
本作は、主人公、久我五郎の妻美緒に対する「誠実」な愛の告白であるとともに、長塚圭史さんの演劇に対する真摯で「誠実」な愛の告白でもある…と僕は思いました。詳細ブログに書きましたので、よろしければトラックバックからリンクのブログをお読みください。あと神奈川芸術劇場良いところでした。

雨と猫といくつかの嘘.

雨と猫といくつかの嘘.

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2011/01/30 (日) ~ 2011/02/08 (火)公演終了

満足度★★★★★

個人的で大切な記憶
アトリエ春風舎は遠い。都心よりも気温が確実に3度低い(笑)

しかしその遠い道行きも、忘れ去った過去にさかのぼる時間と思えばこんなに楽しく愛おしい時間は無い。

今回の作品、僕はなんとなく独りで観に行って欲しいと思う。

もちろん誰かと連れだって観に行ってもいいが、独りで、自分の記憶をたどるようにしてあの世界にたどり着き、終演後はその世界をひっそりとカバンに詰めて持って帰る。

そういう個人的で大切ななにかを思い出させる全てがそこにあったから。

ネタバレBOX

アフタートークでラストシーンの風太郎がどうなったかとの話があったが、僕は、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のラストシーンを思い出しました。

阿片窟でデ・ニーロが恍惚として幸福だった少年時代の夢を見る。

あのシーンをぼんやり思い出しました。

だから「僕の解釈」では、今回のお話し、つまり風太郎のまわりで起こるすべてはぜんぶ夢だと思うのです。

老いて孤独な風太郎が見た美しいアルツハイマーの夢だと。

皆さんはどう思ったでしょうか。
演劇/空間の立ち上がる瞬間

演劇/空間の立ち上がる瞬間

DULL-COLORED POP

中野スタジオあくとれ(東京都)

2011/01/06 (木) ~ 2011/01/06 (木)公演終了

満足度★★★★★

最も知的な書物として
とても知的に刺激的であった。演劇を観るのとは違う刺激、最も知的な書物と出会った興奮と同じような興奮を僕にもたらしてくれた。

ネタバレBOX

ブログに書きました。
新年工場見学会2011『ヤンキーのニセモノ』

新年工場見学会2011『ヤンキーのニセモノ』

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2011/01/02 (日) ~ 2011/01/04 (火)公演終了

満足度★★★★★

楽しすぎる
初めての新年工場見学会でした。

なんとも2000円でこんなに沢山の物が見られたのは幸福です。

楽しいだけでなく、ちゃんと深い。

演劇の力を信じて全力を尽くすみなさんに、新年にふさわしく清々しい気持ちにさせてもらいました。

毎年行くべきだなあw

美しきものの伝説

美しきものの伝説

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2010/12/16 (木) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本の最高峰
ぜひ観に行ってください。演出的にも脚本的にも見るべき物が沢山あります。やはり蜷川さんは日本の最高峰と思わざるをえません。演劇史的なことを多少知っていると理解しやすいかと思います。ブログに書きました。ネタバレ的なこともあるので、そう言うの気にする人は見ない方が良いですけど。

国道五十八号戦線異状ナシ(再演)/国道五十八号戦線異状アリ(友寄総市浪短編集)

国道五十八号戦線異状ナシ(再演)/国道五十八号戦線異状アリ(友寄総市浪短編集)

国道五十八号戦線

サンモールスタジオ(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

冴えわたる演出
4.48サイコシス、人間失格と続く谷賢一演出の1つの集大成が見られた。
リアルな息遣いのまま登場人物を分かりやすくキャラ立ちさせる。
沖縄問題を越えて普遍的な「風景」を観ることができた。

母を逃がす

母を逃がす

大人計画

本多劇場(東京都)

2010/11/15 (月) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★

詩情と表層
初演は観ていないが、脚本は昔から持っていた。

惹かれたのはタイトル。

「母を逃がす」

この斬新なタイトルはなんなんだろう。

ネタバレBOX

全般的に笑えて、また胸を締め付けられる葛藤もあり素晴らしい。

が、若干、過剰に思えた。

表層的な笑いの部分を抑えても、タイトルに顕われている詩情を強調した再演でもよかったのではないか。

と個人的には思った。
演劇入門

演劇入門

青年団リンク 本広企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/11/27 (土) ~ 2010/12/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

「物語」の損失と「現代口語演劇」
原作は、累積7万部も売れている平田オリザさんの演劇HOW TO本。

興味の中心はそれで、つまり、物語ではなく、「演劇入門」というHOWTO本が演劇になると言うのが興味津々で観に行きました。

結果、ブログにも書きましたが日本の現在を思うことにたどり着きました。

脚本の岩井秀人さんの演劇観が色濃く反映している作品だと思います。

本広さんの演出手腕のおかげか、マニア向けの作品ではなく、万人に受ける作品となっています。

水×ブリキの町で彼女は海を見つけられたか【ご来場ありがとうございました!!】

水×ブリキの町で彼女は海を見つけられたか【ご来場ありがとうございました!!】

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2010/06/25 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

怪我の功名
加速度を増しているひょっとこ乱舞。
今回も想像を超える作品を見せてもらいました。
新作「ブリキの町で彼女は海を見つけられたか」
立ち見でもいいので観といた方が良い。

ネタバレBOX

「ブリキの町で彼女は海を見つけられたか」
僕は絶賛します。
広田淳一氏の作品は
最近
壁を突き抜けた感がある。
昔は、ダンスが物語に馴染んでなかった。
物語の中途半端を隠すようにダンスが盛り込まれていた。
おい、なんも結論付けないで踊って終わんなよ!
と僕は客席で突っ込んでいた。
おしい、感じだった。
が、最近は・・・
物語は相変わらず途中で投げ出しているけど
その投げ出しかたが「粋」になっているというか
投げ出しかたが名人芸の粋にたっしている。
ひょっとこ乱舞のダンス
物語の回収しなさ
音楽のセンスとタイミング
僕はこれを死ぬほどワクワク楽しんだ。
そして今回、ついにひょっとこはお笑いも手にしてしまったか
とアキラさんが書いていたけれど
ほんと爆笑
楽しい。
笠井里美って女優の魅力を広田淳一が知りぬいている。
そこがポイントだと思う。
新しい面子も面白かったよ。
でも、初めての出会いで笠井里美さんああを使うようなところまではなかなかいけない。
笠井里美さんも広田さんの演出を信頼しているからリラックスして演じている。
笠井里美という人の面白さが前面に出ていた。
彼女が楽しんで演じているのがわかり、それが僕を楽しくした。

チョウソンハさんが抜け、もろもろあって
心配の向きも多かったのかもしれない。

僕はこれを怪我の功名と呼びたい。
いつもひょっとこ乱舞を見ていて思っていたのは
劇団員に対する広田氏の愛情が強すぎるんじゃないかということ
戯曲や演出が1人の役者に集中しない。
劇団員みんなに愛を分け与え話が分散し冗漫になる。
だが、今回、
旧来からの劇団員が少ないため
(辞めた&もう1つの作品の方に出ている)
笠井里美という優れた役者に物語が集中した。
これはいままでのひょっとこに無かったことで
これこそが、いままでにない物語の集中を産み
新しいひょっとこ乱舞を作った。
僕はこれを怪我の功名と呼びたい。

とにもかくにも
「ブリキの町で彼女は海を見つけられたか」
は、現時点でのひょっとこ乱舞の最高傑作だと思う。
こうやって毎回最高傑作を更新してください。
ザ・キャラクター

ザ・キャラクター

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2010/06/20 (日) ~ 2010/08/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

闇の遊眠社
ノダマップ「ザ・キャラクター」の2日目を観劇してきた。

いつも以上に言葉と言葉遊びの洪水で、明るい笑いもたっぷりで、

「おお、遊眠社回帰か」

と、遊眠社ファンとしては小躍りしたが…

ネタバレBOX

物語が進むにつれ次第に

舞台は、「いま」という病に犯される。

そこに立ち現われたのは

あの明るくも元気な夢の遊眠社ではなく

闇の遊眠社だった。

フォーマットこそ遊眠社だが

そこに流される物語は「いま」という闇・・・病み。

開け放たれた現代のパンドラの箱には希望さえ残らない。

絶望に光さえ失われたあと

マドロミの中に残るのは祈りの言葉。

「パイパー」「ザ・ダイバー」…そして「ザ・キャラクター」

野田秀樹の戦争は続いている。

戦局はより泥沼化し絶望は深くなる。

いま観るべき物語…目をそむけてはいけない物語がそこにある。

アンサンブルがまがまがしくも美しい。
裏切りの街

裏切りの街

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

裏返された神話
これは裏返された神話である

セリフ、シチュエーション、キャラクター、なにもかも平凡であるのに神々しい。

ネタバレBOX

爆音で鳴り響く音楽はスピーカーの限度を超え音割れを起こす。

これは肉体という限界を超えて愛欲をうめく人間を現す。

愛欲だけじゃない。

愛欲の向こうにある透明な何か。

それを信じている。

ラストの銀杏ボーイズ「ピンクローター」に涙する。
ハコブネ【作・演出 松井周(サンプル)】

ハコブネ【作・演出 松井周(サンプル)】

北九州芸術劇場

あうるすぽっと(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

痛快なるプロレタリア文学の転倒
一言で言って、非常に面白く興味深いものであった。

松井周さんのブログに行くと、影響を受けた作家の一番に「楳図かずお」さんの名前があり、ああ、やっぱりというような感慨もある。伏線の回収にこだわらず、また筋立てが良い意味で野蛮だ。

ネタバレBOX

松井さんご本人が映画芸術のサイトのインタビューで、確率論について触れていたが、前半の確率的に高い筋立てで進む部分は、丁寧で、ああ、静かな演劇眠くなるぜという感じであったが、途中から、システムの暴走が始まり、確率論的に低いことが起こり続ける。ここは大変エキサイティングで、つまり、平均化されたものは確率論に回収されるが、一回性の人生は結局確率的にはありえないようなことの連続であり、それこそ「事実は小説よりも奇なり」なのである。その事実がそこにあった。

なによりもその確率論や事実をうそくさくしていないものは、人間を見据える力、裸の王様を告発できる力ではないだろうか。僕はありきたりになりそうな芝居を見るといつも、ひやひやする。どう裏切るのだろう。結局裏切らないのか?と。

で、今回の芝居、前半で長く、工場労働者と厳しく理不尽な工場の監督の関係が描かれ、途中、工場労働者の反乱が起こる。ここで、ええ、ああ?まさかプロレタリア文学か?(「蟹工船」を下敷きにしているのは後で知った)というような気分になるが、いやいや、そこで終わらぬだろう・・・と見続けると、痛快な出来事に出会った。どうとは書かない。見に行っていただきたい。そして僕はこの人間の描き方だけで、松井周さんが信頼できる。ありきたりなプロレタリア文学を望む世間に対して、いやいや、どちらかが明確な悪なんてそんな簡単な世界ではないでしょう、俺たちのいる世界は。と、ちゃんと正論を言っている。

ちなみに脱線になるが、若き日の太宰治がプロレタリア文学を目指しながら大成しなかった理由として、編集者たちから売れ筋の定番として求められた筋立て「かわいそうな労働者VS理不尽で傲慢なブルジョアジー」という図式を明確に描けなかったことがあると思う。彼はブルジョアジーの出身だから実地に、そのかわいそうな労働者VS理不尽な権力者という構造が嘘だということを見ているから、たとえ売れるためといえども嘘を書けなかった。結果として、プロレタリア文学の顔をした怪奇文学となり、評価されない。正直者の不幸が彼を傷つけた。

同じように僕らは売れるために嘘をつきたくなるが、そんなことあるわけないだろうとちゃんと言う、それは表現者としてはあたりまえと思うだろうが、現実にはなかなか難しいと感じる。それを松井さんはやっていた。売れることと、ちゃんと言うことを両立させるのは偉いことだ。

というわけで、松井周氏作演出「ハコブネ」は確率論として低い事実を描きながら、しかし浮つかない本当の人間と社会構造が痛快な形で描かれている素敵な芝居であった。

これが結論。お勧めします。
ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

MU

OFF OFFシアター(東京都)

2010/02/03 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

気品と泥臭さの音楽
13日13時の回、Bバージョンをみました。

他のバージョンを見ていないので以下はそういう人間の感想です。

まず気品がある。絶対王様の名作『ゴージャスな雰囲気』にも、ハセガワアユムさんご本人の『めんどくさい人』も岸田國士の小品の雰囲気がある。

気品だけでなく泥臭い破壊力も感じた。

気品と泥臭さなんて矛盾と思うだろうが、絶妙なコントラストを描き一つの音楽を成している。

おそらく作品から匂い立つ「気品」は作家・演出家の人間に対する温かいまなざしから生まれ、まき散らされる「泥臭い破壊力」は、徹底的に人間を信じるという作劇方法から生まれたのではないか。

伏線を張る、伏線を回収するなどという知恵を捨てて、ひたすら人間を見つめ、人間を追う、そこにドラマが生まれようがどうしようが、人間を信じる。そういう脚本と演出が生み出した作品ではないかと推察する。

とくにガチホモバージョンの『めんどくさい人』は笑えるだけでなく、男性性の持つ純粋性が涙を誘う。わかりやすいストーリーであるのに、先が読めない。人間のどうしようもなく愚かでそして逃げようもない業、愛すべき姿がストレートに描かれたすがすがしい作品である。

もはや、明日一日しかないが、よかったら見に行ってほしい。他のバージョンを見たことないからあれだけど、Bバージョンはおすすめである。

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

物語に飼いならされた…
演劇を、ストーリーを物語る「手段」としか考えない人は、本作を、わけわからないもの、おもしろくないもの、意味ないもの、残念なもの、期待はずれとしてとらえる。しかし、そういう評価を下すものがいるならば、それはいみじくも、評者自身が、「物語に飼いならされている」ことを表明していると感じる。

理解できないことを楽しむ度量があれば、もっと大きな喜びや楽しみや感動が得られる。

未来の日本演劇界のために、本作品における長塚圭史氏のチャレンジを受け止めてあげたい。受け止めてほしいという思いが止められません。

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