まつがえの観てきた!クチコミ一覧

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愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~

愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~

フジテレビジョン

新宿コマ劇場(東京都)

2008/12/02 (火) ~ 2008/12/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

死ぬほど舞台が好きで、ほんとうにそこに命をかけた人たちの話です。ぜひ観て欲しい。
ぶっちゃけ舐めてました。

TVドラマの舞台化、そして宝塚・・・

誘われなければ行かないでしょう。

で、観た結果・・・

すごく良かった(T_T)

王道を舐めてはいかんね。

何度も泣くのを我慢したが最後には決壊してしまった。

いろいろ品があるわけですよ。

こういう舞台を僕が作れるとは思わないけど

わかりやすく、しかし苛々せず

長いけど、長さを感じさせず

抑えるところをきっちり抑え

エンターテイメントとして観客を満足させる。

その見本のような芝居がここにあります。

東京は今日が最後ですが

地方公演はこれからまだまだあります。

しかし、コマ劇場って宝塚歌劇の生みの親の小林一三さんが作られたんですね。

そのコマ劇場最後の公演がこの「愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~」であることはほんとうに素敵なことです。死ぬほど舞台が好きで、ほんとうにそこに命をかけた人たちの話です。ぜひ観て欲しい。

ネタバレBOX

湖月わたるさん演じるトップスター・リュータンがかっこよくも可愛くて素敵です。

石井一孝さん演じる演出家影山の歌が素敵です。

大鳥れいさん演じる娘役トップのトモの美しく狂った感じが素敵です。うちの劇団の安川結花にはこの役をやらせたいなあ(笑)。
演劇/空間の立ち上がる瞬間

演劇/空間の立ち上がる瞬間

DULL-COLORED POP

中野スタジオあくとれ(東京都)

2011/01/06 (木) ~ 2011/01/06 (木)公演終了

満足度★★★★★

最も知的な書物として
とても知的に刺激的であった。演劇を観るのとは違う刺激、最も知的な書物と出会った興奮と同じような興奮を僕にもたらしてくれた。

ネタバレBOX

ブログに書きました。
夕空はれて ~よくかきくうきゃく~

夕空はれて ~よくかきくうきゃく~

こどもの城劇場事業本部

青山円形劇場(東京都)

2014/12/01 (月) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

リアルの立ち上がる臭い
2015年1月11日青山円形劇場がなくなる。その円形劇場で最後のケラさん演出舞台を見て来た。「夕空はれて」脚本は別役実さん。僕が円形とかルデコとか好きなのは、形が変で、もうそれだけでエンターテインメントであるということと、あと客席と演者が近いから嘘がばれやすい劇場だということ。嘘がばれやすいということは、本当のことをやらないと面白くないということで、ハードルが高い分、もしそれが達成した時には恐ろしい快感が得られると考えている。演劇って「芝居くさい」というのが見下した感じで使われることがあるように、非リアルな表現形態と考えられる事が多いように思うけれども、僕的には逆で、むしろ演劇は生身の人間がそこにいるのだから、動けば汗もかき臭いもするということで、映画なんかよりもよっぽどリアルなことが出来るはずだと思っている。別役実さんの「夕空はれて」は非常に難しい本だと思う。なにが難しいって、あのような会話をしたことのある人は世の中にいないはずだから。非リアルな会話劇だ。だから、これ下手な演者、下手な演出ではまず成立しない。さらに最も嘘のばれやすい青山円形劇場であるから尚更だ。ところが、面白いぐらいに、嘘のない舞台になっている。仲村トオルさんの困惑を共有しない人はいないし、同じように何が正しいのか分からなくなる。言葉は言葉に過ぎない。この素晴らしい劇はコクーンとかでは味わえない。青山円形劇場じゃなくてはダメな理由が強烈にある。そして、この公演を最後に青山円形劇場はなくなる。だから、なんとしてでも観に行くべきと思う。リアルが立ち上がる臭いをかぐために。12月14日まで。

ザ・キャラクター

ザ・キャラクター

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2010/06/20 (日) ~ 2010/08/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

闇の遊眠社
ノダマップ「ザ・キャラクター」の2日目を観劇してきた。

いつも以上に言葉と言葉遊びの洪水で、明るい笑いもたっぷりで、

「おお、遊眠社回帰か」

と、遊眠社ファンとしては小躍りしたが…

ネタバレBOX

物語が進むにつれ次第に

舞台は、「いま」という病に犯される。

そこに立ち現われたのは

あの明るくも元気な夢の遊眠社ではなく

闇の遊眠社だった。

フォーマットこそ遊眠社だが

そこに流される物語は「いま」という闇・・・病み。

開け放たれた現代のパンドラの箱には希望さえ残らない。

絶望に光さえ失われたあと

マドロミの中に残るのは祈りの言葉。

「パイパー」「ザ・ダイバー」…そして「ザ・キャラクター」

野田秀樹の戦争は続いている。

戦局はより泥沼化し絶望は深くなる。

いま観るべき物語…目をそむけてはいけない物語がそこにある。

アンサンブルがまがまがしくも美しい。
春琴(しゅんきん)

春琴(しゅんきん)

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2008/02/21 (木) ~ 2008/03/05 (水)公演終了

満足度★★★★★

「陰翳礼讃」は必読
「エレファント・バニッシュ」の光、「春琴」の陰。世田谷パブリックシアターの闇の中に、見てはいけないもの、本来あるはずの無い愛、永遠の白い肌をみる。「陰翳礼讃」を読んだうえで観劇することをお勧めします。

苛々する大人の絵本

苛々する大人の絵本

庭劇団ペニノ

はこぶね(劇団アトリエ)(東京都)

2008/04/11 (金) ~ 2008/04/26 (土)公演終了

満足度★★★★★

一本の曲線を生み出す母体としての「場」
タニノさんは、「はこぶね」というアトリエに、ある等高線図のようなうじゃうじゃした磁「場」だけを作り上げており、毎日の「初期値」は、その日の偶然で、ポトリと置かれるものなんじゃないかと想像されるほどのもの、いや実際そうなのかもしれない。もしそうでないとしても、そういう可能性を残してある演劇・・・つまりペニノの表現するものは、物語という「一本の曲線」ではなく、その「一本の曲線」を無数に生み出す母体となる「場」、その「場」のあり方なのである。

雨と猫といくつかの嘘.

雨と猫といくつかの嘘.

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2011/01/30 (日) ~ 2011/02/08 (火)公演終了

満足度★★★★★

個人的で大切な記憶
アトリエ春風舎は遠い。都心よりも気温が確実に3度低い(笑)

しかしその遠い道行きも、忘れ去った過去にさかのぼる時間と思えばこんなに楽しく愛おしい時間は無い。

今回の作品、僕はなんとなく独りで観に行って欲しいと思う。

もちろん誰かと連れだって観に行ってもいいが、独りで、自分の記憶をたどるようにしてあの世界にたどり着き、終演後はその世界をひっそりとカバンに詰めて持って帰る。

そういう個人的で大切ななにかを思い出させる全てがそこにあったから。

ネタバレBOX

アフタートークでラストシーンの風太郎がどうなったかとの話があったが、僕は、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のラストシーンを思い出しました。

阿片窟でデ・ニーロが恍惚として幸福だった少年時代の夢を見る。

あのシーンをぼんやり思い出しました。

だから「僕の解釈」では、今回のお話し、つまり風太郎のまわりで起こるすべてはぜんぶ夢だと思うのです。

老いて孤独な風太郎が見た美しいアルツハイマーの夢だと。

皆さんはどう思ったでしょうか。
新年工場見学会2011『ヤンキーのニセモノ』

新年工場見学会2011『ヤンキーのニセモノ』

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2011/01/02 (日) ~ 2011/01/04 (火)公演終了

満足度★★★★★

楽しすぎる
初めての新年工場見学会でした。

なんとも2000円でこんなに沢山の物が見られたのは幸福です。

楽しいだけでなく、ちゃんと深い。

演劇の力を信じて全力を尽くすみなさんに、新年にふさわしく清々しい気持ちにさせてもらいました。

毎年行くべきだなあw

顔よ

顔よ

ポツドール

本多劇場(東京都)

2008/04/04 (金) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

こうきたか。
所詮人間は顔だ。
なんてことで1本作品を作ってしまうのがスゴイ。

ネタバレBOX

最後の夢落ちについてはありがちっちゃありがちだけど、まあ、ありっちゃありかな。
あれから

あれから

キューブ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2008/12/13 (土) ~ 2008/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

観るべき☆
爆笑が起こりまくるわけだけど、同時に、激しく泣きたくなる気持ちもあふれてきます。ケラさん、やっぱすごいなあと思わされました。観に行ってない人はぜひ行くべきです。

ネタバレBOX

とくに僕がキュンキュンしたのは、主筋ではないのですが、赤堀雅秋さん演じる弟と渡辺いっけいさん演じる兄とのシーンです。赤堀さん素敵過ぎる。「立川ドライブ」はありきたりな話で「は?何ゆえこんなので評価されてるの?」と思った僕ですが、役者としての赤堀さんはかなり好きかも。いや赤堀さんというよりも、ピピという人物が僕が好きな人物なのかもしれないけど、赤堀さんがそれをうまく演じていた。「馬鹿」がマイブームになりそうなぐらい。
薔薇の花束の秘密

薔薇の花束の秘密

TPT

ベニサン・ピット(東京都)

2007/02/17 (土) ~ 2007/03/02 (金)公演終了

満足度★★★★★

充満する薔薇の香り
あの長い時間を代わり映えのしない空間を2時間飽きさせずそれ以上に世界に引き込ませるように演じきった安奈淳さん毬谷友子さんの2人芝居。すごいです。充満する薔薇の香りのようなお2人の演技で埋め尽くされた時間を楽しみました。

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

DULL-COLORED POP

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

祝福されたる未来の証明
ほとんどイスとテーブルぐらいしか何もない舞台で4人芝居。2時間半。音楽の使用も最小限だ(というかあったか?思い出せない)。そんなんじゃ、ふつうはもたない。空間的にも時間的にももたない。もちろん出演者が、寺島しのぶとかなら別だが、小劇場程度の人間がいくら出てもふつうはもたない。が、もたせた。そこがすごい。そして、あの世界がもった理由。それは、ひとえに、清水那保。そこにつきる。

僕は「小部屋の中のマリー」からしか谷さんの芝居を観ていない・・・あ、柏でやったロミジュリが一番最初か・・・まあダルカラを観たのは「小部屋の中のマリー」からなので、清水さんを観たのもそれからなのだが、僕は不思議な感慨をもっていた。

・・・谷さんは劇団の主演女優・清水那保をうまく使えていないんじゃないか・・・という感慨。

「小部屋の中のマリー」のマリーはハマリ役のように見えるが作りものな感じがどこかある。それはブランヴィリエ侯爵夫人も同じ。清水さんの芝居には常に作りものの感覚があった。谷賢一の要求水準(演技の要求水準ではなく物語にかかわる「存在」としての要求水準)があまりにも高いため、清水那保ががんばって背伸びをしているという感じが常にあった。

しかし、『プルーフ/証明』のキャサリン役。
今回はどんぴしゃりと過不足のないハマリ役になったと言っていい。
数式でいえば「キャサリン=清水那保」だ。

ネタバレBOX

(中略)

わからないが、谷賢一は、劇団活動を休止するギリギリにして、はじめて清水那保を100%使うことのできる演目を見つけることができたのかもしれない。nを無限大に飛ばした。これは偉大なことだ。毎回自分を100%出したり、他人を100%使えたりしているなんて思うバカは死んだほうがいい。自分が自分であることに人は迷い続ける。だが谷賢一はついに清水那保を発見した。あなたがあなたであることを示した。これはすごいことだと思う。最後のギリギリにそんな演目を間に合わせることがシャレている。谷賢一らしい。

清水那保=キャサリンという発見、その僥倖によって、ダルカラの、今後あるかないかわからない未来は輝かしいばかりに照らし出されることになった。だから僕たちは安心して谷賢一を、そして清水那保を待つことができる。今回の作品『プルーフ/証明』の成功こそが、彼らの祝福されたる未来のなによりのproof/証明なのだから。
『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

DULL-COLORED POP

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

瞬間の芝居
『プルーフ/証明』はわかりやすい。ストーリーがもう評価の確定した本である。とはいうものの誰がやっても面白いわけではなく、あの水準に、持っていった谷賢一は当然評価されるべきだ。だが、それよりも何よりも、『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』にこそ注目すべきである。

ネタバレBOX

ちなみに、これを観た後に僕が見た演劇は

ハイバイ『て』

砂地『ナノクライシス ポルノグラフィ』

五反田団『生きているものはいないのか』

五反田団『生きているものか』

だが、どれもすばらしかったが

そのどれよりも、素晴らしかったのは表題の

DULL-COLORED POP『心が目を覚ます瞬間 ~4.48サイコシスより~』

だと思う。

最近で言うと、野田秀樹の『ザ・ダイバー』日本バージョンに匹敵する。

つまり、世界標準であろうということだ。

そして谷賢一が、この演目を単体でやったのではなく

もうひとつの『プルーフ/証明』と抱き合わせ販売したというのがナメている。

演劇をなめきっている。

そしてナメキルだけの才能があることを証明した。しやがった。

このすごさがどれだけの人がわかるだろうか。

本人も総括を書いてしまったので、

なんだか後出しじゃんけんみたいなことになるが、

『プルーフ/証明』は連続時間の芝居

『心が目を覚ます瞬間 ~4.48サイコシスより~』は瞬間の芝居

その両方をやれますよーみたいな演劇を舐め切ったことをしたのである谷賢一は。

そして舐め切れることも証明した。ひどい(笑)

ちなみに、「連続時間の芝居」と「瞬間の芝居」をわかりやすく言えば、「ストーリーのある芝居」と「ない芝居」、あるいは「映画になる芝居」と「映画にならない芝居」というか「映画になるかもしれないがなったとしても人の入らない芝居」(笑)とでもいおうか。

それこそ、「連続時間の芝居」は丹念に表現することが求められる。そこに必要なのは忍耐であり、苦痛を我慢することであり、大人の目をもつことだ。一方、「瞬間の芝居」はすべての観念から自由になることが求められ、逃げ続けることが求められる。そこで必要なのは、わがままになることであり、少しの苦痛も我慢しないことであり、子供の目をもつことだ。

『プルーフ/証明』では、登場人物たちの心の交流変化、ストーリーに感動する。

『心が目を覚ます瞬間 ~4.48サイコシスより~』では、人間の想像力が自由であることに感激する。

僕は、谷さんと堀奈津美さんが服を着こんでいるところとか、風船を割るところとか、まきちらすところとか、思い出すだけでも泣けてくる。何に泣けるかというと、自由であること、そっせんして自由であること、自由には無限の可能性があること、だがその自由にさえ終りがあること、終りがあることなんて谷賢一は十分わかってる。わかってるがそれでも自由であろうという精神を体現しようとするところ、ドンキホーテであろうとするところ、泣きながら、そして笑いながら上りつめる、…いとおしい人間と言うちっぽけな魂を抱きしめようとする行為、僕は、あの瞬間に世界が終っても満足したと思う。そんな芝居であった。

谷賢一はもう演劇の世界に戻ってこなくていいよ。怖いから(笑)

モンキー・チョップ・ブルックナー!!

モンキー・チョップ・ブルックナー!!

アマヤドリ

シアタートラム(東京都)

2009/12/15 (火) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

80年代と90年代の幸福な融合、0年代の集大成
僕が観たのは初日なので、それから改善や変更などあるだろうから、僕の感想はそういう感想にすぎないのだけど、よかったです。ひょっとこ乱舞という形式が、より洗練され、より固まってきたという印象。そしてどの役者もうまい、キャラがたっている。あんだけキャラだちする役者がそろってる劇団もなかなかないんじゃないか?構成、セリフ、転換、すべてが小気味良く、音楽のようだった。

ネタバレBOX

チョウソンハさんのすごさは前から目についていたが、今作品については、彼は当然すごいが、まわりも負けず劣らずすごいということができる。チョウソンハが浮いてない。みんながレベルアップしている。

元来、広田さんは野田秀樹的なフィジカルシアター的なところから芝居を作ろうとしているのだろうが、近年の、ハイバイとかの青年団系(といっていいのか分からないけど)の成果を十分踏まえ取り込み、「ひょっとこ乱舞」的に昇華させたのが、本作品といえるのではないか。僕的には本作品を「80年代演劇と90年代演劇の幸福な融合、0年代演劇の集大成」と呼びたい。

乱舞が少ないとか、乱舞が邪魔だとか外野はいろいろ言うだろうが、これです。いまの広田氏の選択が正しい。これをどんどん研ぎ澄ませて言ってほしい。

問題を感じるとすれば、長所がひっくりかえって短所なりということなのだろうけど、こんだけ粒ぞろいの役者がそろうと、全員を立たせる芝居はなかなか難しい。書くのは簡単。だが、それを観客が受け入れられる形にするのは難しい。

こんだけ素敵な役者が集まった状況をどう活用していくかプロデューサーとしての広田さんの腕が試される状況なのではないだろうか。今後に注目です。
ハコブネ【作・演出 松井周(サンプル)】

ハコブネ【作・演出 松井周(サンプル)】

北九州芸術劇場

あうるすぽっと(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

痛快なるプロレタリア文学の転倒
一言で言って、非常に面白く興味深いものであった。

松井周さんのブログに行くと、影響を受けた作家の一番に「楳図かずお」さんの名前があり、ああ、やっぱりというような感慨もある。伏線の回収にこだわらず、また筋立てが良い意味で野蛮だ。

ネタバレBOX

松井さんご本人が映画芸術のサイトのインタビューで、確率論について触れていたが、前半の確率的に高い筋立てで進む部分は、丁寧で、ああ、静かな演劇眠くなるぜという感じであったが、途中から、システムの暴走が始まり、確率論的に低いことが起こり続ける。ここは大変エキサイティングで、つまり、平均化されたものは確率論に回収されるが、一回性の人生は結局確率的にはありえないようなことの連続であり、それこそ「事実は小説よりも奇なり」なのである。その事実がそこにあった。

なによりもその確率論や事実をうそくさくしていないものは、人間を見据える力、裸の王様を告発できる力ではないだろうか。僕はありきたりになりそうな芝居を見るといつも、ひやひやする。どう裏切るのだろう。結局裏切らないのか?と。

で、今回の芝居、前半で長く、工場労働者と厳しく理不尽な工場の監督の関係が描かれ、途中、工場労働者の反乱が起こる。ここで、ええ、ああ?まさかプロレタリア文学か?(「蟹工船」を下敷きにしているのは後で知った)というような気分になるが、いやいや、そこで終わらぬだろう・・・と見続けると、痛快な出来事に出会った。どうとは書かない。見に行っていただきたい。そして僕はこの人間の描き方だけで、松井周さんが信頼できる。ありきたりなプロレタリア文学を望む世間に対して、いやいや、どちらかが明確な悪なんてそんな簡単な世界ではないでしょう、俺たちのいる世界は。と、ちゃんと正論を言っている。

ちなみに脱線になるが、若き日の太宰治がプロレタリア文学を目指しながら大成しなかった理由として、編集者たちから売れ筋の定番として求められた筋立て「かわいそうな労働者VS理不尽で傲慢なブルジョアジー」という図式を明確に描けなかったことがあると思う。彼はブルジョアジーの出身だから実地に、そのかわいそうな労働者VS理不尽な権力者という構造が嘘だということを見ているから、たとえ売れるためといえども嘘を書けなかった。結果として、プロレタリア文学の顔をした怪奇文学となり、評価されない。正直者の不幸が彼を傷つけた。

同じように僕らは売れるために嘘をつきたくなるが、そんなことあるわけないだろうとちゃんと言う、それは表現者としてはあたりまえと思うだろうが、現実にはなかなか難しいと感じる。それを松井さんはやっていた。売れることと、ちゃんと言うことを両立させるのは偉いことだ。

というわけで、松井周氏作演出「ハコブネ」は確率論として低い事実を描きながら、しかし浮つかない本当の人間と社会構造が痛快な形で描かれている素敵な芝居であった。

これが結論。お勧めします。
裏切りの街

裏切りの街

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

裏返された神話
これは裏返された神話である

セリフ、シチュエーション、キャラクター、なにもかも平凡であるのに神々しい。

ネタバレBOX

爆音で鳴り響く音楽はスピーカーの限度を超え音割れを起こす。

これは肉体という限界を超えて愛欲をうめく人間を現す。

愛欲だけじゃない。

愛欲の向こうにある透明な何か。

それを信じている。

ラストの銀杏ボーイズ「ピンクローター」に涙する。
散歩する侵略者(再演)

散歩する侵略者(再演)

イキウメ

青山円形劇場(東京都)

2007/09/12 (水) ~ 2007/09/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

フィクションがリアルを越えた夜
ある人がいる。

たとえば、そいつが告白する。

「おれ宇宙人なんだ」

そんな言葉がリアリティを持つはずがない。

だが、この芝居はその言葉に背筋の寒くなるような、そして、胸のキュッと切なくなるようなリアリティをもたせた。

血の婚礼

血の婚礼

アトリエ・ダンカン

東京グローブ座(東京都)

2007/05/03 (木) ~ 2007/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

吹き荒れるスペインの熱砂のような
森山未來、ソニンという突き抜けた演技体が、白井晃の不器用さと合体してできあがった、透明で熱い舞台。

リア王

リア王

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2008/01/19 (土) ~ 2008/02/05 (火)公演終了

満足度★★★★★

リア王とは彼のことだ。
平幹二郎さんは国宝級の美しさを持っている。

というか

彼の存在は、「富士山」とか「摩周湖」とか「グランドキャニオン」とか、そういう自然の美的造形に匹敵する。

74年の歳月をかけて刻み付けられた、そして彼でしかなしえない演劇的時間、その積み重ね、その皺、その声、その空間支配力、美しき涙・・・。もうそれ自体が息を呑むような「美」である。

そしてその「美」を表現するにふさわしいお題目、それが「リア王」だ。

パイパー

パイパー

NODA・MAP

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2009/01/04 (日) ~ 2009/02/28 (土)公演終了

満足度★★★★★

帰ってきた野田秀樹
シスカンパニーを離れてのNODA・MAP第一回目の本公演。
そこに現れたのは野田さんが本当にやりたかった今の演劇。
その姿は、始まりの頃の野田秀樹に似て
それでいて、いままでの歴史をすべて包摂する。
ぜひ目撃されんことを。

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