としの観てきた!クチコミ一覧

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バナナはどこへいった

バナナはどこへいった

劇団 風来ズ

シアター風姿花伝(東京都)

2011/07/22 (金) ~ 2011/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★

愛と笑いの物語
待ちに待った、風来'Sの第2回公演。
旗揚げ公演ではひたすら笑わせていただいたので、今回も期待が高まる中、観劇。

前回は青春真っ只中のお話だったが、今回は30過ぎても演劇をやってる劇団の面々の話。

いつ売れるのか、結婚は、金がない、これからどうしていくのか。
そういった、舞台やってる人なら誰もが抱える問題に向き合っていく人々の様は、
同じくもうすぐ30になるのに演劇やってる自分としては、リアル。
笑えない話だ。
だけど、それでもクスリ、ゲラゲラときちゃうのが風来'S。

様々な問題に直面し、必死でもがいている人物たちは、愛しく、滑稽だ。
そして観ていて心が暖まる。
だから、好きだ。

ネタバレBOX

劇団の公演の一場面を実際にやってみるシーンが何回かあるのだが、前衛的にすら観えるその数々が、とても魅力的。

「無意味なものが重なって意味を成す」
というのは、一つの真理なのかもしれない。

ほぼ素舞台に近い空間を、役者が演技で切り取り、場面を動かしていく展開は相変わらず、演劇ならではの自由さ・ダイナミックさを持っている。
中盤くらいか、若干展開が重いな(リズム的なもので)と感じる箇所はあったが、
終盤の怒濤の超展開(しかし伏線はちゃんと張ってあるという周到さ)がそれを忘れさせてくれる。

混沌の中から芽を出す、愛と希望の物語でした。
【公演終了!次回公演は12月!!ザムザ阿佐谷!!】鋼鉄の処女

【公演終了!次回公演は12月!!ザムザ阿佐谷!!】鋼鉄の処女

劇団鋼鉄村松

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/07/22 (金) ~ 2011/07/24 (日)公演終了

満足度★★

微妙な所
ジャンヌ・ダルクと青髭公の伝説を絡めて紡がれた物語。
観に行く前、どんな劇団か知らなかったものでがっつり古典を想像してしまったのが間違い。

キメる所はちゃんとキメてるが、ほぼ全体的に、コメディ。
想像と現実のギャップに戸惑ったのは私の個人的な話。

だが、どうにも違和感。
作品全体にB級映画的良さをとても感じる。
役者も力を尽くしている。

ように思える。

のだが、どこかひっかかるのは、
「ひょっとしたらB級を狙ってるのかしら」
という考え。
狙ってるのだとしたら、作りが、演技が、粗い。
「学芸会みたいだった」と感想書いてる方がいたが、
それも一理ある。

全力の芝居だったらとても好感が持てる。
あのラインを狙って作っているなら、作りこみが足りない。

ただ、そこの所がどうにも読めない。
読めないし、演技についても、
観始めは距離感やコミュニケーションが半ば崩壊しかかっている所も多い台詞のやりとりにげんなりしてくるんだが、
芝居が進むにつれ、慣れてくると、
「面白いんじゃないか」
と思ってしまう。
だから、なんだか不思議な感覚。
しまいにはちょっと感動して涙ぐんじゃったりもしちゃう自分がいる。

ジャンヌ・ダルクの物語だから、ってのも一つにはある。
芝居を観る傍ら、脳内ではリュック・ベッソン監督の『ジャンヌ・ダルク』が再生されていた。
涙ぐんだのも、ひょっとしたらこれが原因かもしれない。
芝居に涙をそそられたのか、
はたまた単なる思い出し泣きなのか。

だから、非常に、不思議な気持ち。
なんとも言えない。

以下はネタばれとなります。

ネタバレBOX

ただ言えるのは、本が面白かった。

ジャンヌ・ダルクと青髭公の絡み。
そして、ジャンヌの人物設定と、それを支えるもう一人の存在。
これは純粋に面白い。

そして演出の発想。
戦いの場面をまるごとゲーム感覚で料理する、ってのはなかなか面白い。
基調としてスクウェアの名作『ファイナルファンタジー タクティクス』の音源を使っていたのも雰囲気に合ってよい。
そして、ゲームを思い出してまた、感慨深い思いになる。
あれ?やっぱり思い出し泣きか…?
話がそれたが、合戦シーン。
アイデアは良かったが、もっと面白い見せ方があるような気もする。

そして気になったのはやはり台詞の距離感。
良く通る声、といえば聞こえはいいが、
もっと違う音で聞きたかった台詞がいくつもある。
距離感出さないように、という演出方向だったにしてもそうでなかったにしても、
まだ芝居を練る余地は十二分にあるように思えた。


ただ、色々疑問点があるのだが、
最終的に、
感動していた自分がいたのは確かである。
おもいのまま

おもいのまま

トライアングルCプロジェクト

あうるすぽっと(東京都)

2011/06/30 (木) ~ 2011/07/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

選択の物語
飴屋法水の仕掛ける、選択の物語。
絶品でした。
休憩で帰りたくなっても、帰っちゃダメ!

ネタバレBOX

久々に行ってきました、あうるすぽっと。
なんか息苦しい額縁舞台だった記憶しかないので、客席入ってびっくり。
粋な装置。
家なんだけど、壁とかは作らず、柱だけでうまく作ってる。
あうるすぽっとの広い舞台空間を無理して埋めてる感もなく、音響スピーカーが山積みされてたり、脚立が立て掛けてあったりと、
「ここは劇場なんだぜ」
って感があって好き。
かっけー。

芝居は休憩挟んでの二部構成。
前半がとにかくしんどい。
高級住宅地のある一軒に、スクープ記事ばかり書き続けている二人の記者が侵入してくる、
ってのが大雑把なストーリーなんだけど、
この二人が、本当にゲス野郎で、観てて胸くそ悪くなる。
それだけ芝居うまいって事なんだけど、ほんとに、しんどいくらいゲス。
脚本もまたドギツイのでゲス度MAX。
大切にしてた道徳とか倫理観とかを目の前で粉砕されるような、言い様のない怒りが込み上げてくる。
芝居のクオリティとか役者の演技にいらいらする、とかではなしに、芝居の登場人物に対して怒りを覚えるってのは久々の体験かも。
それだけ引き込まれてたって事か。

前半が終わり、休憩に。
前半で、一つの芝居として完結している。
続けるとしたら、あの方法。
と思ってたら、やはり。

ラン・ローラ・ラン形式と呼びましょうか、
あるいはキラー・クイーン・バイ・ツァ・ダスト(敗けて死ね)形式と呼びましょうか。

この芝居の一つのテーマとしてチラシにも書いてあるのが、

「選択」

あの時ああしていれば、なぜあんな風に…

生きてる中でしている選択の数々は、未来を大きく変えてゆく。

その「選択」についての物語なだけに、後半も前半と同じ入り方をする。

この戯曲の仕掛けがまた、粋。
前半の展開から、少しづつ少しづつ変わっていく後半に、
完全に心をつかまれる。
なんともまぁ、ずるい展開。

前半のドギツさも、後半の為に過剰に盛られたスパイスに違いない。
前半でキツいからって休憩で帰ったら間違いなく損する芝居。

演出の、空気のコントロールが、巧み過ぎる。

後半は、佐野史郎らしい佐野史郎で少しほっとする場面も。

選択によって変化していく物語は、自分の選択を受け入れる物語でもある。
自分が選んだ道から目を背けながら歩んだり、後悔し続けながら歩む事は、なんとももったいない事なのだ。

あの時こうしていれば、な思考ではなく、
自分で選んだ道だから、と道を受け入れて歩む事。

「誰が選んだのでもない、自分で選んだ道ですもの」
森本薫『女の一生』の名台詞を久々に思い出した。

私も、「なんであの時…」って考えがちな人間なのだが、
この芝居を一つのきっかけに、久々に前向きな気持ちになれそうだ。

演出・飴屋法水のやり方にはびっくりさせられる。
演出・美術・音楽デザインとクレジットされているだけあって、美術・音楽の演出効果が半端ない。
特に音楽。
ノイズ的なサムシングが、生理的に嫌な部分を非常にうまく突いてくる。
芝居の空気感が、聴覚化されているとでも言おうか。
ヤバすぎる。
音で、会場全体がびくっとする光景なんてそうそう出会えない。

演出家・飴屋法水、凄すぎる。

この人が演出した『4.48 サイコシス』がべらぼうに評判良かったそうだ。
観てみたい。
ヴェニスの商人

ヴェニスの商人

劇団AUN

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/04/06 (水) ~ 2011/04/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

最高級のシェイクスピア
何を隠そう、吉田鋼太郎さんの芝居がたまらなく好きなのである。

好きな役者は?と聞かれたら、即答で吉田鋼太郎!と答える私である。
弟子入りしたいくらい好きだ。
ちなみに、次点はキアヌ・リーヴスだ。

なんだが、AUNの公演は一度、番外公演的なのを観た事があるだけ。

恥!あるまじき、恥!

なので、観に行きました。

吉田鋼太郎×シェイクスピアは最高の組み合わせ。

演技のスケールと芝居のスケールが見事に噛み合っている。
パワー×パワーで、舞台の魅力が何十倍、何百倍にもはね上がっている。
吉田鋼太郎はもちろんの事、彼の劇団AUNは、出演者が皆、底知れぬパワーを、そしてそれに裏打ちされた技術を持っている。
谷田歩さんもめちゃめちゃかっこ良かった。

凄すぎて、好きすぎる。

シェイクスピアで、しかもスタンダードな小田島訳で、あれだけ観客を笑わせられる劇団はない。
面白いのだ、シェイクスピアギャグが。
古典だ。
しかし、色褪せぬ新しさを見事に立体化している。
もう、毎公演観に行こう。

「ユダヤ人には目が無いか!手が無いかっっ!」

観劇から一ヶ月以上経つが、いまだにシャイロック(吉田鋼太郎)の咆哮が、咆哮としか言い様のないあの魂の叫びが、脳髄にこびりついて離れない。

私の愛する演劇が、そこにあった。

蛇姫様

蛇姫様

害獣芝居

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/02/03 (木) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★

害獣芝居の新境地。
独特の空気感はそのままに、
今回は、喋る喋る。

台詞の応酬に加え、身体表現、視覚的効果が加わって迫力アップ。
赤い糸綺麗。

なぞらえ屋~不思議底七歌~

なぞらえ屋~不思議底七歌~

La・Moon

前進座劇場(東京都)

2011/04/01 (金) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★

舞台にするなら、もっと
派手な舞台でした。
ストーリーの展開自体は熱いので観ててテンション上がるには上がるんですが、結構舞台ならではの痛々しさも目立ちます。
こういった展開はアニメの方がやりやすいんでしょうな。

舞台で、となるなら徹底的に、新感線的勢い、技術力が必要かと。
歌は、生で、歌ってほしい。

愛だろ、愛っ。【全日程終了しました】

愛だろ、愛っ。【全日程終了しました】

神と仏

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2011/03/26 (土) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

最高だよ
全力で鬼ごっこする大人を見たような爽快感。
とてつもなく、馬鹿な人たち。
こんな人たちと演劇したら、きっと面白い。

母アンナの子連れ従軍記

母アンナの子連れ従軍記

サラダボール

アトリエ春風舎(東京都)

2011/03/19 (土) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

それでも私は生きていく
ある観劇記を読んで、どうしても観ておきたくなった舞台。
当日券で観に行く。

『肝っ玉おっ母とその子どもたち』という訳が定着しているブレヒトの作品。
サラダボールは最近出た新訳で、『母アンナの子連れ従軍記』(光文社古典新訳文庫)を使っている。
「肝っ玉おっ母」から「母アンナ」への変化は意外と大きい。
個人的なイメージだが、
「肝っ玉おっ母」からは生命力の強い鬼ババア、
対して「母アンナ」からは、一人の母を、女性を連想させられる。

この公演には確実に、「母アンナ」がしっくりくる。

力強さと美しさを併せ持つ、長野海の演ずる、女盛りの母アンナが、ドイツ三十年戦争の中で幌車を引きながら、それぞれ父親の違う息子二人、娘一人と共に商売を続ける物語。

新教軍・旧教軍の戦火に呑まれ、息子を失い、娘を失いながらも幌車を引き続ける母アンナ。
その力強さ、美しさ、そして、愚かさ。
ブレヒトの描き出した母アンナは、時に身を守るため、息子を他人よばわりし、その亡骸を見ても涙を流さない。
その愚かさ。その愛の深さ。
完全に同情出来る訳ではない。
かといって、誰も彼女を責める事も出来ない。
ただそこには、事実がある。

ブレヒトの芝居は感情移入を拒絶する、なんて言葉をよく耳にする。

息子を失い、娘を失い、それでも生きるため、幌車を引き続ける一人の女がいる。

この事実が、空気感が、とても良く出ていた芝居だった。

ネタバレBOX

衣裳も装置も、無理に時代感を出す事は狙っておらず、時には吉野家の制服までもが登場する。
ケンタッキーのチキンが出たかと思えば、カップラーメンをすする者がいる。
しかし、物がすりかわっただけで、本質は何も変わっていない。
時にレディガガの曲が流れたりもするが、空気は一層引き締まる。
一歩間違えれば壮絶に、痛々しく破綻してしまいそうな要素を、実にうまく、効果的に使っていて、めちゃめちゃセンスがいい。

演技も、いかにも「古典」って感じの仰々しさ、暑苦しさが微塵もない。
簡素で、日常的な演技の方向性が、劇自体のダイナミックさを強調している。

スクリーンの使い方も嫌味がない。効果的。

観てると、生命の力強さが、躍動が、ビリビリとくる。
生きていく事への執着が。
とりわけ、母アンナ、長女カトリン(レシャード真す美)、娼婦イヴェット(ほりゆり)という、三人の女の力強さが。
男は結構、しょうもないやつが多い。
女が、生きるという言葉を体現している。

金持ってそうな男を巧みに利用するイヴェット、
戦争の恐怖で、幼い頃から口がきけないながらも、ここぞの時に底抜けの勇気を発揮するカトリン(カトリンが鐘鳴らすシーンが、まじに、絶品だった。台詞っぽい台詞の無い役だが、鮮烈に印象に残る。)、
そしてなにより、生きるため幌車を引き続けるアンナ。

ラスト、アンナの姿には、ふりかかる運命の火の粉に身を焼かれながらも、なお前に進み続ける、生きていく、気迫が満ち満ちていた。

演出家が、稽古に入る前に考えたという作品のキャッチコピー。

「それでも私は生きていく」

まさに、この一言が塊となってぶつかってくる。
から騒ぎ

から騒ぎ

夢幻舞台

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2011/03/04 (金) ~ 2011/03/06 (日)公演終了

満足度★★

シェイクスピア!
大学のサークルが、自分たちで翻訳してシェイクスピアを上演、
という所がまず大きな魅力。
なかなかこんな試みをやろうという劇団は少ないだろうから。
舞台装置はシンプルだけど、遊び心が満載でくすぐられる。

ただ、力量が試みについていってるかどうかという点では、
まだまだ稽古不足感。

ネタバレBOX

演出はオーソドックスな良さ。
ギャグや台詞なんかを所々現代風にアレンジして翻訳しているが、
役者の思い切りが足りない印象があり、いまいち面白くない。
ゆえに、どうにも悪ふざけ感が漂う場面もあり残念。
そんな中、笑えたのはアントニオ(=渡辺恒)とドグベリー(=ブルー玲)。
ドグベリーはもともとが面白キャラだが、アントニオの奇奇怪怪なアクションの数々には笑わされた。

ヒイロとクローディオというメインカップルが男女逆転。
どうしても何か意図があるように見えるが、特に何かあるわけでもない感じ。
単に、男女逆転、という事が目立つ感じ。

全体的に滑舌が悪く、シェイクスピアという言葉で押していく台本では、
少々観ていてしんどいものがあった。

が、とにかく、シェイクスピアを翻訳・上演という心意気が良い。
みんな、もっとこういう事やればいいんだ。
しゅーりん

しゅーりん

conne-colle

ART THEATER かもめ座(東京都)

2011/02/02 (水) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★★

元気になれる芝居
パンフレットによると、「秋霖」だそう。秋に降る、長雨。
それを「しゅーりん」に。

「秋霖」だとなんだか新劇っぽい感じだが、「しゅーりん」と聞くと意味わかんないけどとっつき易い。
作・演出は文学座の若松泰弘。
まさに、「秋霖」が持つ新劇っぽさと、「しゅーりん」が持つポップさを融合させたような芝居だった。
ポップだけど、しっかりと会話劇。現代版の岸田國士みたいな印章。

ネタバレBOX

飲み屋「つぼ九」を舞台に、店長やアルバイト、その親族の、人生を描く。
それぞれが悩み、もがき、何かに向かって進み、そして、仲間とお酒を飲む。
そういう姿が、観ていてとても元気が出た。
観て、元気になれる芝居を観たのはひさしぶり。

出演者の年齢の幅が広かったのも魅力の一つ。やはり、その年齢でないと出せない魅力というのはある。
坂口章三(=日戸秀樹)と坂口恵(=槌谷絵図芽)の、親子のシーンが印象的だった。
ますく

ますく

劇団言葉座

タイニイアリス(東京都)

2011/02/02 (水) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★

言葉を大事に
「小さな現実の希望を言葉座はあなたに送りたい」
と、劇団の主宰がパンフレットに書いている。

が、混沌とした芝居だった。

ネタバレBOX

大学のサークル同窓会が久しぶりに開かれる。
卒業して、都心に出たもの、地元に残ったもの、結婚するもの、
様々だ。
しかし楽しいはずの同窓会で、皆がひた隠しにしていた過去の事件が暴かれ崩壊に向かう。
あらすじはこんな感じだった。

あらすじにまとめてみるとなんだかダイナミックな展開だが、
台本・演技が荒っぽかったため芝居が噛み合わず、大切な部分を取りこぼし過ぎていて、結果、安いドラマ感だけが漂ってしまっていたように感じた。
力押しのギャグや力みまくりの演技が多かったが、
「言葉座」という素敵な名前の劇団なのだから、もっと言葉を大事にすればかっこいいのに。
内容も人間心理を抉るようなものだったから、余計に破綻が目立つ。

開演すぐの象徴的な感じのシーンや、度々登場するますくの男の見せ方なんかも、方向性が定まらぬ感じ。

脚本・演出が整理されれば、もっといい感じになりそう。

劇団の特徴なのか、音程をしっかり守って(というか、固執して)台詞言ってる役者が何人か。
全員そうならスタイルだが、そうじゃない人も大勢なので、なんだか違和感。
『トランス』

『トランス』

o3

サブテレニアン(東京都)

2011/02/26 (土) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★

少々…
というか、だいぶ、残念な出来だった。

鴻上尚史の脚本『トランス』である。
以前、第三舞台のものをDVDで借りて観た事があるが、
なかなか面白かったのを覚えている。

そしてこの『トランス』
千秋楽に行ったのだが、どうにも初日感漂う空気感。
なんとなく、落ち着いて観られない。
稽古日数が足りてないのかなんなのか、
どうにもイマイチ、というか、惜しい、というかな場面が多い。

割とテンポよく、パワーで魅せていくような場面が、
台詞が噛み合ず、個人個人の力みすぎみたいに見えてしまったのはもったいない。
台詞の核にたどり着く前に本番を迎えてしまった感じ。
なので、「いい場面」が
「クサくてくどい場面」になってしまっている印象。
もったいない。

ネタバレBOX

後藤(=沼田雄樹)が、綺麗すぎた。
乙女、だった。
良くも、悪くも。
ホテルロンドン

ホテルロンドン

国分寺大人倶楽部

王子小劇場(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★

パンチに欠けるか
国分寺大人倶楽部、初観劇。
劇場に入り、開演しばらくは、初めてポツドール観たときみたいなワクワクが続く。

ラブホテルの3部屋を舞台に展開するストーリー。

淡白だけど雰囲気ある台詞にのせて展開される、
微妙な問題を抱える人たち。
セックス。

ネタバレBOX

中盤くらいの場面転換には、それこそポツドール的なダイナミックさがあり、観ていてテンション上がる。
音響ガンガン、修羅場ガンガン、セックスガンガン。

が、そこがピークだったような印象も受ける。
微妙な問題たちは、微妙なままなんとなく流れてゆき、
そして終演。

淡々と進み、淡々と終わる。
味はあるが、もうちっとダイナミックな面も観てみたかった。
しかし、この淡々とした中に流れる共通の情念、
「イギリスでいい暮らし」
ってのには妙なインパクトがあり、
『ホテルロンドン』のタイトルを味わい深いものにしてくれる。

いい舞台だったが、パンチに欠ける印象。
けど、いい。

モリタ(=後藤剛範)がとても愛らしく、人を惹き付ける魅力に溢れていた。
また、ジニー(=えみりーゆうな)が、かなり、面白い。
夏の夜の夢

夏の夜の夢

明治大学シェイクスピアプロジェクト

アカデミーホール(明治大学駿河台キャンパス)(東京都)

2010/11/12 (金) ~ 2010/11/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

愛だよ、愛
すごく良かった。

本当に良い舞台に出会うと、まったく陳腐な言葉しか出てこない。

本当に、すごく、良かった。
楽しかった。

この芝居は、舞台への愛に満ちていた。



お前らもっと舞台を愛せよ!って言ってやりたい芝居が多すぎる中、
久しぶりに本物の愛に触れる事が出来て私は幸せです。

國語元年

國語元年

俳協

TACCS1179(東京都)

2010/10/28 (木) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★

良い本
とにかく、本の良さが目立つ。
有名な人の、有名な戯曲だけに、上演する側としては
「どのように」上演するかが肝となってくると思うのだが、
この芝居は極めてオーソドックス。

確かに台詞はきちんと喋ってるし、舞台装置もしっかり作ってある。
でも、それ以上の何か、を感じられなかった。
なんで「國語元年」なのか、ってのがいまいち。
情熱、とでも言いましょうか。
迫ってくる何か、が観たくて芝居を観に行くのですが、
額縁の中だけに留まってしまう舞台は結構多い。
なら家で戯曲を読めばいいか、って気にさせない何かが、やっぱり必要なんだと思います。

良く出来てはいるけど、印象に残らない舞台でした。

トロイアの女たち

トロイアの女たち

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2010/09/07 (火) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

満足度★★★

コロスが決め手
文学座アトリエ60周年記念公演の第一弾。
終始張りつめた空気の95分間。
それは良いのだが、観ていて疲れるといえば疲れる。

そんな中でベテラン陣の肩の力の抜けようはさすがの一言。
特にタルテュビオス(=坂口芳貞)は、
「ギリシャ悲劇っぽい」台詞回しから解放されて、
舞台にひょうひょうと存在していた。
肩の力を抜くってこういう事なのね、と観ていて納得。
観劇疲れも、タルテュビオスを観ているとふっとんだ。

それとは対照的なのが、
「群集役として開幕から閉幕まで舞台に存在し、物語のすべてを目撃する役割を担う(当日パンフレットより)」コロスだった。
ガチのギリシャ悲劇的演技。
個人的に大きい芝居は好きなんだけど、どうも観ていてすっきりしない。
内面と外面の大きさが食い違っている箇所が目立つように思えた。
「物語の目撃者」には見えなかったな。

このコロスが、ずっと舞台上にいるので、やはり、観てしまう。
そのコロスのエネルギーがこの芝居の空気感を握っているんではないかと思うのだが、
それがどうにも演劇演劇していて馴染めませんでした。
もっとさらりとやるとか、もっと怨念込めて、ってのも観てみたいです。
良い芝居には違いないのですが。

1960年のメロス

1960年のメロス

unks

サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)

2010/07/01 (木) ~ 2010/07/11 (日)公演終了

満足度★★★★

骨太な芝居に満足
久しぶりに、骨太な芝居を観たように感じました。
脚本は難解で、パッと観ただけではよくわからない所も多いのですが、
日数が経つにつれ、じわじわと味が出てくるように思えます。

1960年当時の時代の空気感、というのか、
そういう物が、
私はまだ生まれてないのであくまで想像の範疇ですが、
良く出ていたかと。

そして、難解なストーリーを、視覚的に楽しませてくれるのが、
舞台空間の巧みな作り方。

装置を作りこむのではなく、最低限の物のみ用意して、
空間をブラックライトの配置の仕方によって様々に変えていく。
うまい。シビレますね。

演劇観たぜ、って感じがとてもして、
芝居らしい芝居を観た満足感を味わえました。

君の立つ光跡

君の立つ光跡

オフィス櫻華

中野スタジオあくとれ(東京都)

2010/08/13 (金) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★

惜しい。
物語をしっかり魅せる感じ。

純なストーリーに好感は持てるし、
ガツンとぶつかってる感じはいい。

ただ、かなりテンポを早く、
ギャグも沢山盛り込んで、みたいな感じになっていて、
せっかくのストーリーがよく頭に入ってこない印象か。

ギャグにしても見せ場にしても、
役者陣が力みすぎていて、
かえってセリフが聞きにくい、そして、かえってアクセントのない感じになってしまっているのがもったいない。

『二人/狂う』

『二人/狂う』

重力/Note

テアトロ ド ソーニョ(東京都)

2010/07/01 (木) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★

観る側も頭使う感じ
重力/Noteを観るのはこれで二度目。
以前、『マリア/首』を観た時にはさほど感じなかったのだけど、この劇団の芝居、戯曲がすごくすんなり体に入ってくる。

役者の台詞や動き方に独自のシステム的なものがある感じで、
あくまで作品の一つの要素としての役者、という感じがとても強いように思えた。

それゆえに、感情移入して観る、とかでは全然無く、目の前に存在するものを観ている、という感覚が強い。

結果、「誰々の演技が〜だったね」とか「あそこの台詞は〜だったね」というような感想ではなく、
「この話、〜だったね」というような作品に対する感想が出てくる。

台詞回しが独特なので、何と言ってるのかはっきり聞こうと思い、結果、普通に吐かれる台詞を聞くよりも台詞が頭に残るような気がする。

目の前で起きる事態に、
「え?どうなってんの?」
という好奇心で食らいつけば、舞台空間で客も役者も創造的な関わりが持てるはず。

逆に、目の前で起きる事態に
「は?わけわからん」
となっちゃうと、まるっきり苦痛の演劇鑑賞になりかねないほど、スタイルは独特。


私は、役者が踏みしめる砂の音や、投げられる道具の転がり方なんかにとても興味が湧きました。



全体的に、「これぞ演出家の演劇!」って感じがしました。

組曲「空想」

組曲「空想」

空想組曲

OFF OFFシアター(東京都)

2010/06/16 (水) ~ 2010/06/22 (火)公演終了

満足度★★★★

たしかに短篇集「的」作品。
いやぁ、面白かった。
いくつもの話を続けて上演する形をとった、短篇集「的」な公演。
構成がうますぎて、もはや短篇集というか、一つの作品のように思える。
一つ一つの話も個性豊かで魅力的でした。

ネタバレBOX

核となるのは、どこかの人気レストラン。
存在感のある、チャーミングなウェイター(=中田顕史郎)の働くこのレストランには、様々な恋人たちが来店する。

色の異なる短篇が数本挟まれた後、舞台は再びこのレストランに移る、という作りで、
ウェイターが出てくる度に、観ていて、どこか懐かしい場所に帰ってきた気分になる。
芝居全体の案内役・観客と舞台との橋渡し的役割にも見えるこのウェイターの、抜群に安定感のある演技も、
こういった安心感にぴたりとはまっていた。

そして久々に観たハマカワフミエ。暗めの演技なイメージが強かったが、今回は暗くない。
素敵な雰囲気をまとったハマカワフミエと齋藤陽介のカップルの初々しさが良かった。

ラストシーンでは涙ぐんでしまいました。愛ですな、愛。

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