Speak of the Devil DJANGOⅢ
劇団S.W.A.T!
「劇」小劇場(東京都)
2008/12/17 (水) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
完結編にふさわしく満足
基本的にはコメディタッチ(どころか時として大笑い系?)ながら終盤では悪魔であるジャンゴが契約者を救うことになるという基本路線を踏襲しつつ新キャラも登場させ、さらに天使と悪魔の関係やジャンゴ配下の小悪魔たちの過去も語るのはいかにも完結編。
より強力な敵の出現によりライバル…いやむしろカタキ役と力を合わせるという展開はシリーズ3作目(あるいは完結編)としてオーソドックスではあれ、王道でもあるワケでこれも完結編にふさわしくて満足。
また、そこに至る前、いわばシリーズのゲスト主役的ポジションである次女が「ワタシはどうなってもいいから姉と妹を助けて!」と願った時にジャンゴが嬉しそうに「契約変更、受け入れた」(ともに大意にて言い回しは違うかも)と言うところはお約束とはいえ、イイんだなぁ。(ホロリ…)
チョコと可笑しな宇宙人
YANKEE STADIUM 20XX
アイピット目白(東京都)
2008/12/16 (火) ~ 2008/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
至福の時間
一人寂しく暮らし、笑顔を失うどころか家からも出ずにいた少女チョコが宇宙人とのふれあいによって笑顔を取り戻し、外出もできるようになる…というベタな(失礼!言い方を変えればコドモからオトナまで楽しめる)ストーリーながら、ある「縛り」を課しての上演で、そのアイデアが素晴らしい。
ホムペの公演概要に「宇宙人は日本語の台詞は一切無し」とあり、多くても2~3人かと思いきやこれが7人もいて前半で日本語を使うのはチョコとストーリーテラーとなる縫いぐるみだけ、後半で何人か日本語を使う人物は増えるがその出演場面は短いという…。
が、前半はチョコと宇宙人が次第に打ち解けてゆく様子をダンスやパフォーマンスを中心に見せ、後半ではチョコの外出とか1人である理由を描き、さらに「訪問者」も登場してドラマ性を高めるという二段構えの構成の巧みさもあって体感時間は2時間程度なのがまたスゴいところ。
笑いすぎての涙と感動の涙という2種類の涙も流させてもらい、至福の時間を過ごす。
空間ゼリーの『夏の夜の夢』
劇団たいしゅう小説家
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
紛れもなき夏夢の世界
舞台を日本の廓にした和風翻案バージョン。出だしは若干面食らったものの、次第に紛れもなき夏夢の世界に移行。約100分というコンパクトサイズにうまくまとめてこれもまた楽しい。
原典と異なり一組は悲恋に終わるのか?な終盤も遊郭を舞台にしているだけに十分あり得るってことで騙される(笑)んだな。お見事!
ただ、イージアスに当たる人物(パンフを買わなかったので役名不明)が廓を焼かれてしまうのはちょっと気の毒か?もっと悪者(強欲とか無理強いするとか)であったならともかく、そうは見えなかったのでなおさら。
プリンで乾杯
劇団競泳水着
インディペンデントシアターOji(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
コメディリリーフ的なシーンの配分が絶妙
ルームシェアをしている男女4人を中心とした恋愛模様、他人の恋愛事情を盗み見しているような、あるいは自分が相談を受けているような感覚で引き込まれるルーム内の主な流れと、コメディリリーフ的なバーのシーンとの配分が絶妙。
このバーのシーンで、年齢を重ねたマスターが口にすれば説得力のありそうな含蓄ある言葉を「あの」マスターがしたり顔で語るところが何とも可笑しい。
また、家族愛が弱点である身にとって終盤で兄が妹への愛情をサラリと口にし、元カレ(でいいのか?)に感謝するシーンがツボ。
あと、中央から上手方向にかけてのルーム、下手のバー、手前側の屋外と3つの場を同居させている装置を使っての映画並みに細かい場割りが心地よく、上演時間が短く感じられる。
それにしても各シーンが「寸止め」というか、普通ならもう少し語るところを敢えて切って想像の余地の残すのは巧いなぁ。ま、考えようによっては「生殺し」のようでもあるんだが…(笑)
龍宮物語~東京.ver
劇団BOOGIE★WOOGIE
d-倉庫(東京都)
2008/12/12 (金) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
初演とはまた別の味わい
07年4月の初演を観ていたので、入場するなりしわくちゃにした古紙に埋まった舞台が目に入って感歎。作品テーマを端的に示すと同時に、その古紙がいろんなものに見えるので複数の場所を表現できるワケ。
また、初演といえば結末がその時のダイナミックでいささかハードなものから静かに訴えかけるようなスタイルに変更されており、ちょうど X-QUEST の『エロドラマ』再演時(03年)のハードバージョン、ソフトバージョンのような感覚。
初演での照明による龍の表現や嵐の中の飛行シーンが見られなかったのは残念ではあれ、若干の切なさも伴う穏やかな幕切れはまた別の味わいがあり、これはこれでテーマを強く打ち出しているような気がする。
幽幻夢想
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/17 (水)公演終了
満足度★★★★
ナイスアイデアの続編
前日に観た『臥龍頂上伝』の数年後の物語。当日パンフで主宰が語っているように劇団初の続編もので、しかし前作を観ていなくても楽しめるよう独立した作品となっているのがミソ。前作の主人公がワキと言うかトリプル主役の一角にとどまっているのもナイスアイデア。
お得意の手法とヒーローものやアニメ、ゲームのネタをたっぷり盛り込んでの歴史劇、好きなテーマの1つでもある「憎しみの連鎖を断ち切る(キリのない報復をやめる)」系なので大いに楽しむ。
臥龍頂上伝
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/12 (金) ~ 2008/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
「正義とは何か」を問う
ワイヤーアクション風や『マトリックス』で使われた視覚効果をアイデアと体力を駆使して生のステージで見せるのはいつもながら見事で、もう1つの見ものでもあるネタ関連(笑)は新ネタも含めて序盤に満載。後半がシリアスなだけにこれは賢明?
また、冒頭から「正義とは何か」を問うており「武力による正義は正義ではない」なんて台詞が序盤で出てくるのもイイ…とか言って、最終的な決着は武力によるものなんだが。(笑)
初演の時は「“倒すべき相手”が次々と変わってしまい、全体としては軸がズレ続ける」と感じた展開も、考えようによっては R:MIX の「魔のシリーズ」と同様、勧善懲悪ではなくそれぞれの立場に一理あるという歴史ものらしさがあると言えよう。
蒼の残光
ACファクトリー
シアターサンモール(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★
スペースオペラ系
松本零士の描く女主人公を想起させる首領率いる4人組の女性宇宙海賊団を狂言回しにし、振ると「ヴーン」と音がする「光る剣」や「樽にドームをかぶせたようなロボット」も登場するスペースオペラ系。
アクションが1つのウリでもあるここ、今回は劇団名に冠したアルファベットのうち、C(コメディ)の要素も多分に取り入れ、映画のアレを舞台で表現するのが無理なことを逆手にとったロボットのチープ感や「高望み歌劇団」シーンなどで大いに笑わせる。(もちろん終盤ではアクション炸裂)
ただ、本筋とコメディ部分の落差が大きく木に竹を接いだような違和感があるのは残念。
軋み
ブラジル
新宿シアタートップス(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
座長まつり?(笑)
緊迫しているのにコミカルという二律背反的な要素が同居している出だしから基本的にユーモラス時にブラックで主人公の良心の呵責が見え隠れする中盤を経て「正しい結末」に導くという構成が巧みな上に、他劇団の主宰3人を含んだキャスト(座長まつり?(笑))も個性豊かで見せる見せる。もう時間の経つのがアッと言う間。
各論的には新しいアシスタントや宅配便配達人が「プロ」に見えてしまうことの見せ方が愉快で、しかも普通は「見えてしまう」のは殺した相手なのに、こうするところがまた上手い。主人公はある程度取り乱しつつも「死んだ人間がいるハズがない」と判断する理性は残っているということか?
しかし考えてみると保身のためにあれこれお膳立てをしてヘーキな顔をしている編集担当が一番コワいかも。
八つ墓村
劇団ヘロヘロQカムパニー
前進座劇場(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
見事な舞台化
紛れも無き横溝正史の世界、あのおどろおどろしくも妖しいムードもしっかり含んだ見事な舞台化。舞台でどう表現するんだろう?と思っていた鍾乳洞を筆頭に様々な場所を表現することを可能ならしめた装置と、テンポ良くまとめ、かつ落武者たちも効果的に使った脚本・演出の功績。
また、殺人の後に辰弥が落武者の幻を目にするとか、ラスト前の金田一の去り方やラストシーンの美しさもお見事。
ただ、金田一のにこやかなキャラクターはイイとしても、殺人が起きた直後の現場でも笑みを絶やさないというのはいかがなものか。クライマックスで真犯人と対峙した時のようにキリリとすべきではないのか?
飴をあげる
こゆび侍
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/12/09 (火) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★
「考えるのではなく感じる」べき?
チラシ記載の3編(短編2本+中編1本)に超短編「幕間」を加えたオムニバス、前半の2編と「幕間」は漱石の「夢十夜」にも通ずるフシギさがあり、ノベライズして「こんな夢を見た。」で始めれば「新・夢十夜」になるんじゃね?みたいな。
小学生の時に読んで以来「夢十夜」がアタマの片隅にずっとある身として、この雰囲気って好きだなぁ。
休憩はないものの主宰先導によるストレッチタイムを挟んでの後半「うつせみ」は、セミの世界のハナシとは言え専制君主の定めた規範に反発してのクーデターで幕を開けるために「何かの暗喩?」に始まり「いろいろ解釈ができそうだな」などと考えてしまう。
がしかし、この観方は間違いで、やはり「考えるのではなく感じる」ままに観れば良かったのかも…?
今日も、ふつう。
アロッタファジャイナ
新宿シアターモリエール(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
同時多発的悲劇
いくつかの断片的な場面で登場人物を紹介して、そのつながりを早めに明らかにしつつ1つの謎を提示する序盤でツカミはオッケー。
以降、序盤で示された謎が徐々に明らかにされて行き、行き着くところはロミジュリばりの悲劇。ちょっとした嫉妬や出来心(?)から起こった事件が10年の歳月を経て迎える哀しく切ない結末、的な。
また、中心となる澄川兄妹だけでなくその周辺の人物たち3組にも悲劇が訪れ、「同時多発的悲劇」の様相。
しかもこれらの悲劇が「ふつう(=日常)」と隣り合わせていて、ホンのちょっと歯車がズレただけで起こり得る「ふつうじゃない」状況なのが巧みなところ。
あと、それまで好人物でどちらかと言えば被害者側だと思っていた登場人物が実は…という終盤の展開にロベール・トマの『罠』も連想。
2
劇団
時代空間 遊庵 ねこじゃらし(東京都)
2008/12/05 (金) ~ 2008/12/08 (月)公演終了
満足度★★★★
「朗読」では括りきれない
前回公演『春の朗読まつり』ほどではないにせよ「朗読」では括りきれない内容のパフォーマンス、ほとんど民家のような会場と相俟って独特の味わいあり。特に殺陣とのコラボ「燃えよ剣」で読み手が殺陣担当者の刀を扇子で受けたりする演出には感服。
スーザンナ・マルガレータ・ブラント
劇団再生
Asagaya / Loft A(東京都)
2008/12/06 (土) ~ 2008/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
オモロー!
初見であった前作『Symphony#09 罪と罰、マジで大迷惑!』が原典のリミックス…どころかサンプリングの素材に使った、的な再構築具合で原典を知らないとわかりにくそうだったのが、本作は原典にアレンジものをかすかにオーバーダブさせたレベルなので非常にストレートでわかり易く、そこに得意の(?)メタフィクション風味も加えているのが面白い。
鬨、唾棄すべき
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
ザムザ阿佐谷(東京都)
2008/12/05 (金) ~ 2008/12/08 (月)公演終了
満足度★★★
「殺人」という行為とその罪深さ
1930年代の話なのに当時は無かった銃器や当世若者言葉が出てくるのは気になるが、テーマについては全面的に肯定ってか、好きなテーマの1つである「憎しみ・恨みの連鎖を断ち切る」系なので評価が甘くなりがち…(笑)
主人公が妹のカタキとして復讐を遂げた(と思った)相手は手を下した前首領を殺した男で、その彼も主人公が自分を殺しに来るのを待っていた、などというのは「殺人」という行為とその罪深さを物語るのに適した設定。
さらに、敵方は「首領を殺した者がその後を継ぐ」のが習わしになっていて、これが「殺しの連鎖」というテーマや幕引きの台詞にうまくつながるんだな。
ただ、もう少しそのテーマを早めに提示して、もっと前面に出しても良かったんじゃないかな?な感あり。
ま、そのじれったさ(?)があるから終わり近くの「16代で終わりにしような」という力強い台詞(これ、イイよなぁ)がより活きるのかもしれないんだが…。
鈴木家 の はなし#00
and Me
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2008/12/05 (金) ~ 2008/12/10 (水)公演終了
満足度★★★★★
絶品と言おうか完璧と言おうか
いつもながら…いや更に磨きのかかった会話が見事。
全体的な緩急のバランスや間の取り方から細かい言い回しまで含めてリアルだしほど良く笑いもまぶしているし、絶品と言おうか完璧と言おうか…。
さらに終盤で立った波を思いもよらぬオチでまとめるストーリー展開も巧みで、完成度高し。
また、一見ぐうたらそう(?)な長女が四女を叱るシーンは個人的にツボ。
レモンスター
散歩道楽
シアタートラム(東京都)
2008/12/04 (木) ~ 2008/12/07 (日)公演終了
満足度★★★
「変り玉」スタイル
ホムペなどの情報から「出る」と知ってはいたものの、ちょっと変わった出方な上に「それ」らしからぬキャラだったりしてコメディ風味なのが新鮮。
さらにシュールな要素も加わり独特の味わいがあり、終盤ではトーンが変わって立ち回り(けっこう本格的)まであるという「変り玉」スタイルなのでちょっとしたおトク感まであり?
奇しくも8日前に観た空ゼの日替わりゲストであった柴田あゆみと保田圭が中心的な役どころだったことからも察せられるように、通常の公演とは若干異なるらしいけれど、これはこれでアリな感じ。
その柴田演ずるヒロイン(でいいのか?)の存在としおつかこうへい演ずるところの「もう1人の(または真の?)主人公」の記憶が何のメタファーであるかいろいろ解釈する余地があるのも上手い。
アキストゼネコ
チェリーブロッサムハイスクール
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2008/12/04 (木) ~ 2008/12/09 (火)公演終了
満足度★★★
ハイブリッド系
同窓会ものの1バリエーションかと思いつつもホムペやチラシにそれらしからぬ情報もあり、どんなんかなぁ?という興味と共に観たら…
かつての仲間の結婚前夜、今は廃校となり個人所有である学び舎に集結した面々…という状況は確かに同窓会系ながら、うっすらと不穏な空気(?)が漂っていて、それが次第に「封印された記憶」「秘められた儀式(的なもの)」などに結実して行き、何ともフシギな味わい。
そもそもチラシやチケットに血判らしきもの(劇中で血判そのものと判明する)があるし、そしてそれが “逆「座敷童子(ざしきぼっこ)のはなし」” 的状況につながるあたりは淡いホラー風味でさえあるし…
一定のジャンルにひとくくりにできないハイブリッド系(?)の作品でありました。
何処かのオムニバスのための四重奏
ニットイット
千本桜ホール(東京都)
2008/11/29 (土) ~ 2008/12/01 (月)公演終了
満足度★★★★
やったモン勝ちのアイデア勝負
同棲中のカップル、捕虜と軍人、女性記者と科学者、引きこもりの青年、の4つのエピソードから成るオムニバスで、各エピソードの出だしを個別に見せた後、複数のエピソードが同時並行的に演じられるというユニークなスタイル。
内容がリンクするオムニバスは多々あれどこれは逆の発想で、内容はリンクしていないのに同じSEが複数のエピソードに共通だったり、電話中の会話(相手の声は聞こえない)と別エピソードの独り言がかみ合っていたり、PCのキーボード早打ちが銃撃音に聞こえたりと、事象がリンクしているワケ。
終盤での「世界はつながっていても人はつながっていないのだよ」という台詞はその総括あるいは作者のエクスキューズ?(笑)
アイデア勝負と言おうか、何度も使えるテでないが、やったモン勝ち。
玉青の行方
地球割project
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/11/27 (木) ~ 2008/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
一言で表現すれば立体リーディング?
役者が手にした明かりや「光るアイテム」を消すと本当の闇となる空間での「立体リーディング」。鐘と鈴の音を全体の句読点のように使いながら、闇のあちこちから声が聞こえ、時には演技も伴うという他に類を見ないスタイルが独特。