ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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罰符

罰符

NAKED SOUL PROJECT

space turbo gallery shibuya(東京都)

2014/03/15 (土) ~ 2014/03/18 (火)公演終了

女性のトラウマ
 渋谷のデリヘルで指名トップを争う2人。一人は店長のパートナー、若く美しいせりなで、これ迄ずっとトップであった。これに対して職人の夫の給料だけでは生活が苦しかったのでFXに手を出し、大きな借金を背負った主婦、つばき。借金返済に追われる生活に耐えきれず風俗の世界に入ってきたのだったが、客への思い遣りの心が、寂しい客達に受け、終に初めて月間トップに立った。(短い作品なのに遅れて行ったので、詳細は、後ほど調べてから。評価、星もまだつけない。悪しからず。)

ろだん

ろだん

643ノゲッツー

OFF OFFシアター(東京都)

2014/03/13 (木) ~ 2014/03/18 (火)公演終了

満足度★★★

何を表現したいの?
 結局、事件の顛末がハッキリしない。それを狙っているのかも知れないが、どれも中途半端で、作者の意図も良く汲み取れなかった。何が実際に起こっているのか、ろだんが何者で何の為に、頭の軽い女、上條を使って手の込んだことをしたのか? その動機もハッキリしないし、中国での争議との関係もはっきりしない。ホントに遠藤が身を隠す必然性があったなら、会社がクビにするわけはないのだし、筋の通らないことが多過ぎて、論理的に追えない。個々のエピソード自体は、案外簡単で予測も容易いのだが、全体の流れの中での意味が不明な為、全体として作品が見えてこないのだ。すっきりしない後味の悪さばかりが残った。

江戸系 諏訪御寮

江戸系 諏訪御寮

あやめ十八番

小劇場 楽園(東京都)

2014/03/12 (水) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★

不思議テイスト
 民話の古層に因縁付けて語られる現代に生きる地方名家に纏わる縁起物と言ったらよいのだろうか。不思議なテイストの作品である。旧家というものは、因縁話には事欠かぬものであるが、それが、鬼伝説と絡み、脈絡がホントに辿れるのか否かは別にして、あるかも知れないような因果・応報を定かならぬ伝承に強引に結び付けたような作品との印象を持った。

フリージアの不可知論

フリージアの不可知論

劇団霞座

ぶーふーうー(東京都)

2014/03/07 (金) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

地獄に生まれた詩
 この公演の後、霞座は暫く冬眠に入ると言う。冬籠り前の今作、力作である。いつも思うのだが、この劇団の作品は極めて詩的である。今作も、扱われているのは、紛争地の現実なので頗る厳しい状況が描かれ乍ら、同時に適度な抽象度を保ちあまつさえ詩のテイストを具えている所にこの劇団の特徴と良さがあるように思う。言い換えれば追求すべきものを追求し振り返らないという潔さを持っているということだろうか。恰も己の宿命を知る者のように。

ネタバレBOX

 戦争というものが、人間にとって何を意味するのか? それを東西ドイツやパレスチナ・イスラエル問題など紛争地の各々から取り出し、少年兵、外国人傭兵などに具体化して、戦場の実体を点描・透視する。絶え間なく変わる支配地域の中で、その時優勢な勢力に肩入れせざるを得ない民衆の多くと、肩入れした後の他の人々との運命、民衆の中でも自説を通した人々と折れた人々の間に生まれる齟齬。昨日迄の隣人が今日は敵となって殺し合い、できれば当たらないでくれと願いながら互いの陣地に向けて乱射するリアリティー。数々の混乱。纂奪やレイプ、暴力と虐殺で民衆を従わせようとしている兵士たち。その兵士たちに向けられた武器の前での民衆の選択、等々。一瞬と雖も気の休まる時も無い中で、戦闘を休止させる程の突然の豪雨。その雨をずぶ濡れになって受けながら、恰も、戦場の惨たらしい体験が、悪夢でしかないように思われる一時。ゲリラが潜むとされた村に突撃した戦士に家族を目の前で殺された子供が、襲撃してきた兵士が落ち着いてから、固いパンを分けて貰い、神の祝福の言葉と共に受け取った時の兵士の衝撃等々が、頗る高いテンションでぶつかり合い、乱反射する詩的な作品だ。
邯鄲

邯鄲

世 amI

タイニイアリス(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★★

実験
 視覚的なギャップをもっと強調しても良かったかも知れない。予算との兼ね合いなどで、無理も掛かると思うのだが、できれば、仮面をつけるとか邯鄲の精霊達の中にフリークスの役者に出て貰うとか、寺山 修司やシェイクスピアのA Midsummer Night’s Dreamの妖精たちのような衣裳、メイクを持ってくるなどの工夫があればもっとメリハリの効いた舞台になったと思う。また、次郎のキャスティングについても、70歳の役者で、純粋性はでたものの、若者の生意気な刺はなりを潜めてしまったのが残念。菊と次郎の関係は、実に微妙で、ある意味男性対女性の理想形の一つという気がする。聖母マリアとキリストと迄は行かなくても聖なる男女関係であり、男は、唯、甘えていればよい関係で、自立しない男にとっての理想の女性像なのだ。何故なら、乳母は、その男の甘えも生意気も総てをひっくるめて可愛いと見、それが、男にとって、そのまま安心して甘えていられ代理母という存在は、男女の関係の中で最も美しく清らかな関係でもある。
 但し、苦労するのはこの微妙な作品をどう舞台化するか? という点だろう。誰でも指摘するであろうことは、この作品と三島の幼児期体験である。部屋の折り紙を用いた飾り付けや積み木に纏わるエピソードなどは、三島の初期作品の中で、非常に大きな意味を持つもの達で、微妙な危うさ、緊張感のある会話が成立する物質的条件を為している。それは三島の頭脳であるよりは神経の秤のような気がしてならない。
 今回、どう舞台化するか、非常に難しい作品に挑んだ世amI、今後もどんどん様々な角度から斬り込み、チャレンジして欲しい。

ドラッグガール

ドラッグガール

Theatre MERCURY

王子小劇場(東京都)

2014/03/15 (土) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★

信 不信
 転換期という設定になっているようだが、徹底的に不信感しかないのではないか、と思う。但し、総てを疑う自己を措定できるわけでもなく、代わりに“愛”という手垢に塗れたコンセプトにすがろうとしてみるが、これもコマーシャリズムに利用されたプロパガンダの影響からか、最早、本能のレベルでは、コミットできない何かになった為か定かではないものの、恐らくは生きているという実感を求めて敢えて危険な、非合法乃至は脱法な演し物をぶつける。その中でドラッグも用いエキサイトする方向で自分達の抱えている空洞感を払拭しようと図るように見えたが。それが、首尾よく行ったとは思えない。また、不信なり、空洞感なりと徹底的に格闘して突き抜けた、という感覚も持てなかった。

ベイビィ・ポータブル・ロック

ベイビィ・ポータブル・ロック

劇団ハコイリムスメ

東京アポロシアター(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★

更に上を目指して欲しい
 若い劇団で今作で三回目の公演。その割には、シナリオもしっかりしている。まあ、女子の得意な恋愛をテーマとしている作品なのでそれも頷ける。

ネタバレBOX

 だが、幕開きから暫くは、動作に固さが目立ち、演技が不自然に見えた。中・後半の佳境に入ってからは、固さがとれて自然な感じの演技になったが。
 将来的には、恋愛絡みのみならず、自分達が、どのような国に住んでいるのか、ということについても考えて貰いたいのである。何れ、結婚して、子を持つであろうから、その子らがどんな国で育ち、どんな大人になってゆくのかをイメージすることは、矢張り必要であろう。
 ところで、舞台になっている小料理屋の2階には少女漫画家が住んでいるのだが、彼女のキャラクター設定が良い。
ちょっと待って誰コイツ!こんなヤツ知らない

ちょっと待って誰コイツ!こんなヤツ知らない

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

今回はオムニバス 様々な味付け つき
 毎回、奇抜なアイデアとサービス精神で楽しませてくれるポップンマッシュチキン野郎の新作。今回はオムニバス形式の作品だが、客入れパフォーマンスも、幕間に演じられるショートショートも、全体の構成、バランスの良さも、この劇団ならではのものだ。
 毎回、この劇団の作品は、笑わせてくれる。そのドライでバランスの良い、ちょっとシュールな笑いのファンは多かろう。時には、ブラックな笑いも鏤められながら、その根底にある人間的な暖かさと子供の妄想にも似た突飛な飛躍力が、そして、そららをハードな身体表現で演じてくれる優れた役者陣の力が、全体を見通しバランス良く配置する演出と相俟ってこの劇団の魅力だ。(追記後送)

楽屋

楽屋

劇団チョコレートケーキ

「劇」小劇場(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

シナリオの陰影を見事に表現
 若手演出家コンクール2012最優秀賞受賞記念公演として上演された、今回の「楽屋」。売り出し中のチョコレートケーキの番外公演という形をとっている。選ばれた作品は、清水 邦夫の名作「楽屋」。これまで多くの劇団、多くの役者、演出家が、挑んで来た作品を敢えて選んだチョコレートケーキの志の高さを先ず評価したい。
 良い舞台というものは、シナリオ、演出、演技は無論のこと、フライヤーにせよ、舞台美術にせよ、総てに亘ってセンスを感じさせるものだ。今公演も、そういった作品の系譜である。キャスティングが、良い。このメンバーで他のキャスティングは無いと思わせる所に収まっているのだが、それは始めから決まっていた訳ではないという。出演者が其々、役を回して収まるべき所に収まったということだ。それだけに実によく嵌ったキャスティングになっている。(追記後送)

「カレー屋の女」 2013→2014ツアー

「カレー屋の女」 2013→2014ツアー

ココロノキンセンアワー演劇部

タイニイアリス(東京都)

2014/03/10 (月) ~ 2014/03/11 (火)公演終了

満足度★★★★★

片道切符
 離島には、女ばかりが住んでいる。登場する女達は、カレー屋を営む一家の祖母、カレー屋のお上とその姉、お上の娘3人と舞台上には出て来ないが、姉の娘、店員らだ。今作で最も大切な要件は、この島は孤立しているということだ。そして、基本的にこの話は、3.11とも3.12とも繋がりは無い。原作は、和歌山県沖の島を舞台にしていると聞いた。然し、どういうわけか、東北の方々が演じると3.11、3.12が色濃く出ているように感じられたのである。同じシナリオなのに何故、こうも違うのか? (追記2014.3.18)

ネタバレBOX

 初演の舞台を拝見しているわけではないのでハッキリしたことは分からない。然し、3.11の後、川崎に住む自分は、3.12(福島第一原発人災)をより深刻な問題として考えて来た。放射性核種が実際に飛来して来たということもある。食物連鎖最上位に位置する人間の一員として、様々なレベルで汚染された食物の最終摂取者として、生体の体内濃縮のことも考え乍ら摂取する必要があるということもある。(御用学者は、このような見解を認めていない)
 然し、我々は既に知っている。この「国」では、本当のことを言うとパージされる。だから出回っている情報は、情報源が、政府だとか、一流のレッテルを貼られた大企業の場合は、嘘であるか加工されていると考えてよいということを。被災地の方々は、日々、このような体験をなさっている。自分が、2011年3月16日頃までには大筋を総て把握していたので、メルトダウンが起こっている可能性を含めて、身の周りの人間には、放射能の拡散予測データをメールに添付して拡散していた。無論、拡散データは、スピードによって得られたものではない。フランス在住の友人が、ヨーロッパで核に反対している物理学者、医師、市民団体などの予測データを送ってくれたのである。3月13日か14日には、そのメールが自分の下に届いていたので、原子力研究室などのデータ、議論を含めて自分なりに情報を収集後、拡散したのである。
 だから、政府関係者や、大手マスコミの発表より、爆発直後に現地入りした知り合いのジャーナリストからの情報や、普段から情報が正確な人々からのデータだけをコアに、また仙台で地元の人達の脱出を開始した研究者から、齎される生情報などを頼りにして来ている。新聞社では東京新聞の記事を基本にしている。何故なら、一番まともな記事を書き、読者が知りたいまともな質問をした為に、記者クラブを抜けることになったからである。この後、国税庁が徹底的に経理方面から東京新聞をいびった、という話も聞いている。ことほどさように、この「国」の民主(・・)主義(・・)というのは、実体を持たない偽物である。
 このような経緯を含めて、情報そのものを疑う必要が、あるのである。実は、3年後の現在迄に起こるだろうと予測したことの大筋は、残念乍ら、総て的中している。被災者の難民化と二重、三重の分断と差別である。無論、被災地へ帰ろう、帰れの大合唱も、人々の被ばく等歯牙にもかけない官僚や政治屋しかいない「国」のことであるから、頼るだけ無駄というのが、これも残念なことではあるが覚悟しておくべき原点である。水俣やカドミウム汚染、御嵩町産業廃棄物に纏わる事件等々、上げればきりが無い。薬剤エイズ事件などでもBSE問題などでも、国や担当官庁の無責任な対応はみての通りである。基本は、国など一切信用するな、である。実情を知っている倫理的人間なら、殆ど、総ての人が、自分の意見に賛成してくれるであろう。そのような闇を照らす作品である。


新しい等高線

新しい等高線

ユニークポイント

シアター711(東京都)

2014/03/11 (火) ~ 2014/03/18 (火)公演終了

満足度★★★★★

これからのこの国の姿
 ほぼ、大東亜戦争の時代を描いたハズの今作が、自分には、これからのこの国の歩みのように見えて仕方が無かった。

ネタバレBOX

 戦前の治安維持法より悪質な秘密保護法と言う名の情報隠蔽法が強行採決されたばかりで、今年は、共謀罪も狙っている自民党だから、当然、こういう懸念も出てくるわけだ。実際、この「国」の為政者ときたら、何らパースペクティブもないまま、阿保としか言いようのない選択を平気でしておきながら、一切、知らぬふりでしゃあしゃあとしているわけだから、また国民をミスリードすることは大いにあり得ることだ。その好例が原発再稼働へ舵を切っていることである。公約など最初から守る気もないことは、今迄の安倍や石破、菅らの発言を観ていれば明らかである。
 日独伊三国同盟を締結後の1940年11月から敗戦を迎えた1945年8月迄の足掛け6年間を地図出版社・色彩堂の動向を中心に捉えた作品。長引く対中国戦線で、日本は、かなり疲弊していたが、1941年8月のアメリカの対日石油輸出禁止などの動きは、硬直化した政治、軍に対英米の戦争を選ばせた。敵性言語の禁止とかで、ゴールデンバットの名も金鵄に変わり、野球などでも英語が排除されてゆく。これも阿保な話だ。孫子を持ちだす迄もなく、本当に勝つつもりなら、どんどん、英語を学んでその思考法のプラス・マイナス、特徴などを分析することが先決だろうに。対米英開戦反対派を押し切り、宣戦布告もせぬまま12月8日には、真珠湾攻撃が為され終に大東亜戦争が始まる。然し日本軍は緒戦を制したのみで翌1942年6月初旬ミッドウェー海戦で大敗を喫して以降、急速に制海権、制空権を失い、物資の調達や輸送さえまんろくに行えなくなった。戦死兵の数も日本軍は、戦闘による死者より病気や飢えで亡くなった兵の方が多いと言われる程だった。状況は悪化の一途を辿ったのである。1943年2月初めにはガダルカナルからも撤退。内務省は3月、本土決戦を見越してか単なる物資不足からか地図会社統合を要請、国家統制をどんどん強めていった。4月には山本 五十六も戦死。以後、連戦連敗。犬死にする為だけに万歳突撃などを繰り返し(1945年2月硫黄島での戦闘を除く)、1944年7月サイパンが陥落してからは、B29 の航続範囲に東京も入り、連日のように空爆に遭うようになる。
 社員の永井は、広島で一人暮らす母から弟を奪った赤紙の理不尽に天皇のばか、と手紙に記し、書き送った件で不敬罪を適用され特高に引っ張られた。それも、父亡き後、本人は、出征して障害者となり、最後に残っていた弟迄、赤紙一枚、一銭五厘で招集されたのが原因であった。郷里広島の実家は、母一人で守らねばならなかったのである。優しい彼は、それを怒ったのだ。その結果の不敬罪であったが、特高に連れていかれた当初、誰が、彼を連れ去ったのか、何があったのかも分からず、住み込み社員やお手伝いの純子らが、探し回って見付けられなかったのみならず、特高に引っ張られたと判じた後も、罪状すら分からなかったのである。
 秘密保護法という名で情報隠蔽法が強行採決された後、これからの日本は、総動員法が施工されていた頃の日本にそっくりという不気味な予測をしながらの観劇であった。
森本薫を読む!

森本薫を読む!

日本の近代戯曲研修セミナーin東京

「劇」小劇場(東京都)

2014/03/10 (月) ~ 2014/03/11 (火)公演終了

満足度★★★★★

薔薇 記念 生まれた土地
 3つのラジオドラマとして書かれた作品のリーディングを拝見。「薔薇」「記念」の演出は、shelfの矢野 靖人氏。「生まれた土地」の演出は青年座の須藤 黄英さんである。
 上演中なので、余りに詳しいことは書かない。一例として「薔薇」について書いておく。
 所謂、読みに拘ったリーディングではない。無論、それ以上である。科白を役者の身体や生活に落とし込んで、自然に動くように仕組まれた演出である。従って、頗る高度な演出でありながら、非常に分かり易く役者たちの素を舞台化し得ている。スタニスラフスキーでいえば、滲み出るような役作りができているということだ。のびのびと演じているので、間口が広いのだが、勘所をキチンと押さえているので、隙は無い。
 役者は、演ずる時には、無論、存在感を出さなければならないが、自分にスポットが当たっていない時には、様々な対応が要求される。存在感を消すこともある。弱めたり、邪魔にならないように控えたり、ケースバイケースでスポットの当たっている役者をひきたてながら千変万化のポジショニングを要求されるのであるが、その辺りも非常に気の利いた、知的でしかも豊かな感受性を示す舞台になっている。

東 京<reprise>

東 京<reprise>

THE TRICKTOPS

王子小劇場(東京都)

2014/03/07 (金) ~ 2014/03/10 (月)公演終了

満足度★★★★

東京駅は結構面白い場所なのだ
 東京駅という漠とした空間を、カフェ、インフォメイション、忘れ物預かり、タクシーなどと其処で働く人々と客、仲間同士の会話等で埋め、タウン誌編集者、何でも屋、電車に乗らない乗客、矢鱈に喧嘩するカップル、駅員、待っている女等、様々に特徴のある登場人物を巧みに配し、細かい所まで配慮した演出でヴィヴィッドに造形している。役者陣の丁寧な演技が、演出の意図をキチンと汲み取って自然な演技に仕上げているのも良い。

ネタバレBOX


 唯一、問題があるとすれば、それは、作品の問題であるというより、この国の文化の質、人間関係の作り方の問題と言ったらよかろうか。言い方を変えれば、誰しもが幸せを漠然と願わなければならないような状況がありながら(つまり実質、不幸せでありながら)、各々は、幸せの何たるかを定義できず、唯、雰囲気で何となく幸せらしい、とか。何とか飢えずに済んでいるのだから、幸せらしい、とか。隣の人より、良い物を着ているから幸せらしい、とか感じているだけのこの国の在り様に対する根本的な批判が無い点である。無論、この国では、歴史的にこのような不如意を思い遣りや慮りで何とか誤魔化してきた歴史があることを否定する訳ではないし、そのことに有効性がまるでない、と言うつもりも無いが、メンタリティーのみを問題として居る限り、この国の根本的な問題には手をつけることさえできないこともまた事実なのである。
 一例を挙げると、誰が見ても、破綻している“もんじゅ”によるエターナルなエネルギー計画が、政府の政治的判断でどうにでもなったり、原発のみならず、原爆を含む核技術そのものは、一旦暴走したら、現在の我々が持っている技術では制御出来ないことが明らかであり、その惨禍は、全地球の全生命を危機に晒すか絶滅させる危険、或いは、緩慢な死なり、遺伝子の劣化なりを齎すと考えられるにも関わらず、これを政治的に圧殺していることなどである。物理法則に則った絶対が支配する論理を基礎に置いて物を考えない、という態度は、馬鹿をしか意味すまい。無論、物理学の最前線は、理論的に確定していない部分が多いのは承知の通りだ。然し、地球物理学でニュートン力学が正しければ、現在、この地球上でそれは、絶対に正しい論理なのである。其処から帰納、演繹を正しくして行く限り、間違いが起こることは無い。日本は、宗教をも単なる衣裳とする国である。そうでなければ、異宗教間・異宗派間の論争は絶えないハズなのであるが、そんな論争はめったにない。あれば、寧ろ例外なのであるが、例外というからには、原則があるはずなのに、原則はないのだ。あるのは、唯、功利的な計算だけである。もう一つのケースが、個人的に、日本の限界を見切っている場合である。そういう個人は一種のコスモポリタンとして、日本のプリミティブな思考の埒外に立つことができ、世界に通用する論拠を持つことができる。今作で描かれた東京駅が、このような思考領域で何処へでも行ける“場”であって欲しいものである。
ごきげん!?アキラ

ごきげん!?アキラ

骸骨ストリッパー

ザ・ポケット(東京都)

2014/03/06 (木) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★

有言実行
 劇団の宣言通りの作り。約束を守るだけの力がある。更に上を目指して欲しい。更なる上積みを期待できると思うので、今回は、かなり辛めに星を打っている。だが、その分、高い理想を、掲げて欲しいのである。(追記2014.3.8)

ネタバレBOX

 地武羅学園の一匹狼、不動明 アキラは妹、さつきの親代わり。両親は既に他界し、さつき以外に親族はない。そのさつきが、地武羅学園に入学することになったのだが、アキラの強面に似ず、可愛らしい娘であるさつきは、既に、校内の注目株。応援団をはじめ、校内の誰彼からも注目を集め、既にミスコン出場との噂も流れている。人気のある妹を心配するのは、アキラである。何せ、親代わり、唯一の肉親なのだから、これも当然なのだが、思春期の妹には、妹の言い分がある。彼女は、素敵なボーイフレンドを見付けたのだ。名を白金という。
 然~~~~し、世の中、そう上手い話ばかりではない。赤ずきんちゃんは、必ず狙われるのである。まして、それが、デビルマン、不動 明(不動明アキラ)の妹であれば尚更である。
地武羅学園には、秘密があった。この学園創立以前、ここは、悪魔の集まる場所だったのだ。それで、今でもこの土地の地下には、悪魔の化石が埋まっている。そんな霊力のせいでもあるまいが、多くの私立高校が、経営不振に陥る中で地武羅学園ばかりは、人気校として名を馳せていた。生徒会長、服部の人気による、との説もあるが、彼女は、以前、化石から蘇った悪魔に襲われて顔を傷つけられ、今も大きな傷跡を残していた。因みに、この時、彼女を悪魔から救ったのはアキラである。以来、アキラは、彼女の憧れの人となった。だが、それを素直に表せない女心、彼女は、変身した姿のアキラを再び呼び出したいともがいていたのだ。アキラを変身させる為には、本気にさせなければならない。そこで、生徒会に与する異能力者や地縛霊を使ってアキラの変身を促すが、アキラとケリをつけたがっていたのは、何も服部ばかりではなかったのだ。
 ところで、今年度から新校長が赴任してきた。ミスコンの最中、校長は真の姿を晒す。それは、デビルマンのラストで登場したサタンを彷彿とさせるものである。生徒会グループ、さつきの親衛隊と化した応援団員、アキラそして校長らが、絡み合いながらバトルを展開。ドサクサに紛れて、校長は、さつきを拉致。タワーに閉じ込めてしまう。無論、この後は、救出劇だが、公演中なので、以降は省く。
 ただ、この劇団も面白く拝見したのだが、演劇が革命的になり得ることを示唆しつつも、真に革命的なイデオロギーは、作品に付与されていない。時代が、戦前の阿保な時代に無理矢理戻そうとされている。嘘ばかりついている為政者には、その方が都合が良いからである。安倍や党三役、安倍を支持する連中の言動を振り返ってみるが良い。嘘と欺瞞と自己中、金銭欲、支配欲、名誉欲等々とおいしい所取り、こういうズルを完璧に国民の目から隠す為に情報隠蔽を図るのが秘密保護法の正体である。こういうことをキチン、キチンとぶっ潰してゆく必要がある。志を高く持って頂きたい。単にエンターテインメントに徹底するのではなく。
タルチュフ

タルチュフ

夢幻舞台

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2014/03/07 (金) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★

世間
 モリエールの現代性というより、本質を見抜く目の鋭さ、的確さに感服すると共に、西洋の思考パターンの基本形の一つである弁証法的思考と演劇の形、ダイアローグの親密性をいやがうえにも気付かせる作品であるとの再発見をもすることができた。若い人達がこういう作品を卒業公演に選んだ着眼点も評価したい。

ネタバレBOX

 科白は多少現代風にアレンジしてあるものの、本質的な変更は無いので、曖昧だった点は翻訳本にでも当たって再確認してもらうとして、現代日本で生起している諸問題の根底に、タルチュフ程頭の回転は早くないにせよ、更に陰湿で恥を知らぬ詐欺師がわんさか居ることを覚えておく方が良い。自民党中枢には、こんなのがごろごろしている。政権にすり寄る野党にも掃いて捨てるほどいる。今や、政治家と言えば、単なる余計者に過ぎない。これが、まともな庶民の評価である。尤も、この米国の植民地でこんな現象は政治家に限らない。金融関係者、官僚、右翼政商、右翼、ヤクザ等々甘い汁に群がる下司共総てに及んでいることを知っておく必要がある。おまけに下司共は互いの利害が一致する為、協力関係にあることが多い。
 以上のようなことをつらつら考えさせる力があった。流石に時代と所を越えて残って来た古典である。同時に総ての登場人物を若者が演じている為に、爽やかな後味を残すタルチュフでもあった。今後も更に様々な古典と格闘しつつ、何が本質的問題なのかをキチンと掴んだ後、オリジナル作品に挑んで欲しい。
絵空ノート

絵空ノート

演劇ユニット「クロ・クロ」

テアトルBONBON(東京都)

2014/03/05 (水) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★

タイプの異なる歴史小説家とオズ
 できるだけ史実に忠実に、登場人物が限りなく喋りそうな表現で歴史小説を書こうとするアキオと同世代で史的事実は、骨組みとして用い、登場人物の性格設定などは、想像力の翼に任せて書くタイプのフクエ。2人が扱うのは、幕末から日清・日露辺りの時代。何も戦争ばかりでなく、女性解放運動なども絡め、ある意味ジャーナリスティックな手法を鏤めながら、スピーディーに展開する。これにアキオの娘の作品が絡んでくるのだが。(追記後送)

くろねこちゃんとベージュねこちゃん

くろねこちゃんとベージュねこちゃん

ENBUゼミナール

シアター風姿花伝(東京都)

2014/03/04 (火) ~ 2014/03/05 (水)公演終了

満足度★★★

にゃこにゃ~~~~~怒るで!
 公認会計士事務所を祖父の代から経営している一家の主人が急死した。娘が、父の遺言を発見、法的には、立会資格をもつ者の居る席で開封しなければならない。事前に遺書を用意したのは仕事柄、自分が扱ってきた案件を見ているからであるか、或いは自殺か? 理屈としては後者も可能である。然し乍ら、妻は、夫の死によって精神のバランスを崩し気味である。息子は現在劇作家の道を歩んでいるが、大学を止めで飛び込んだこの道での成功は、漸く端緒に就いたばかりである。そうは言っても父も成りたかったカメラマンの道を断念して公認会計士になった経緯がある。それ故にこそ、子供達の念を活かしてやろうとしたのだろう。逆に妻はそのような夫の職業選択と冒険の自由にあくまでも抵抗、普通の生活が一番難しいという固定観念に凝り固まって、己自身をも縛り、ヒステリーを起こさせる原因ともなっていたのである。固定観念が、大した哲学も無しに適用されれば、その結果がどうなるかが分からないとは、愚かであるが作家は、この愚かさを否定的に見てはいないようだ。
 寧ろ作・演出は、夫の急死などで、妻も半分リタイアしたような状況に猫の自由奔放なイマージュを重ねたかったようだ。然し、そのような遊びに興ずることができるのはディレッタントのみであろう。猫の優美を嘆賞し、遊ぶことができるのは、この「国」で言えば、梁塵秘抄程度は読んでいるレベルの人間達である。固定観念にがんじがらめに縛られ、脱却しようともせぬような精神の持ち主に猫は似合わない。少なくとも、猫は人間程愚かでないということは、多くの大詩人、一流作家も認める所である。遊びはここまでにしておこう。
 最後に消えて仕舞う猫達が、幻影や霊的な存在として出現する為の仕掛けを作っていない。いつの間にか猫が現れメインプロットに必然的に絡まるわけでもなければ、サブプロットとしてキチンと構成されているわけでも無い。この点を改善すれば、更に面白い作品になろう。今のままでは中途半端である。

ゴーストライターズ!!

ゴーストライターズ!!

企画演劇集団ボクラ団義

SPACE107(東京都)

2014/02/28 (金) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★

よくできたパズル
 小説家でもある有力政治家、大泉 大吾朗が、出先で急死。死因は心筋梗塞とされた。(追記2014.3.5)

ネタバレBOX

 然し、彼は、千葉県沖に計画のある大型プロジェクト案件の推進派中枢と見られ、反対の住民運動も起こっていることから、党重鎮、田上議員事務所から彼の死についての緘口令が布かれた。議員会館内の事務所には、大泉の長男も勤めているが、仕事はまるでできない。その代わり肉親の愛情については、人並み以上に純情である。
 然し乍ら、大泉のスタッフは、若い者が多く秘書としての経験も長くは無い為、田上議員が寄こした政策担当秘書らの手練手管に押し切られ、亡くなった大泉が存命であるかのように見せ掛ける為のスケジュール管理、メディア対策等重要案件は、総て田上らに盗られてしまった。残った仕事は、入稿予定だった雑誌掲載用の小説を書くことでだけである。然し、小説は、素人が簡単に書けるものではない。大泉の死を知らずに打ち合わせにやって来た編集者を巻き込んで小説を書こうということにはなったのだが、誰も、大泉程の才能は無く、実際に作品を書くなど覚束ない。
 そんな時、公設第一秘書の高柳が、一人のおじさんを連れて来る。彼は、タイムマシンを発明していた。だが、このマシン、時代設定も場所も指定できない。おじさんによれば、最も大切なのは、強く思うことだ。マシンは、搭乗者の深層心理に反応して、その場所、時代へ連れて行く。また、何度タイムトラベルをしても始めに行った場所と時刻にしか行くことが出来ない。
 厄介なことが起こった。スクープにジャーナリスト生命を賭けているTVディレクターに尻尾を掴まれたのである。スクープをこれまでにも何度もものにして来た彼は、当然、国会内にも議員秘書などの知り合いがおり、そういう連中から、大泉の事務所には、最近人の出入りが多いのに、本人だけはついぞ見掛けない、という情報が齎されたのだ。彼の勘は、何かある、怪しいと告げた。そう思えば行動は早い。彼はスタッフを引き連れ、突撃取材を敢行。対応した田上事務所に対して、マスコミが感ずいて、情報を嗅ぎまわっていることを認知せしめた。秘書に体よくあしらわれて、一旦は帰ることにしたが、嗅ぎまわるだけでも一種の圧力にはなることを充分計算している。
 一方、小説執筆チームでは、各々が、タイムマシンに乗って其々の時代・場所に行き、少しずつ歴史に手を加えることで、その後の歴史を微妙に書き変えていた。タイムマシンの発明者であるこのおじさん、実は、スクープを追い掛けることにジャーナリスト生命を賭けていたあのTVディレクターの67歳の姿だった。彼は、この一家とは、因縁があり、アイドルだった、舞が歌を歌うことを止めたのも、このおじさんのスクープの所為だったのだ。だが、彼は、3歳で舞の歌が好きだった娘の死を境にタイムマシン開発に関わり、いつか自分が傷つけた舞に会って、娘の為に歌を歌って貰おうと考えていたのである。
 各スタッフがタイムマシンで出掛けた先は、始めてんでバラバラで何の脈絡も無いように見えたのだが、田上の事務所を取り仕切っている連中の好みに合わせて、彼らの意識を書きかえることにチャレンジ。これが、功を奏して田上陣営の目論見と犯罪が明らかになった。同時に舞が歌えなくなったことで、父の執筆放棄い影響を与えたと悩んでいた父、娘の関係は、今作が舞を主人公にこの事件を扱った作品であったことから、また、出だしの3枚だけは、本人の原稿が残っていたことから、また、舞が完成させると父との約束が成立したことから完成することになった。同時に、大泉議員の死の真相も明らかになる。
座長芝居

座長芝居

ネコ脱出

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2014/03/04 (火) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★

結構、ありそう
 ネコ脱出、ガラ劇、円盤ライダー、outlaws、カプセル兵団、劇団龍門の各座長によるオムニバス。ガラ劇は、6日までと7日以降の出演者が異なるので注意。

ネタバレBOX

 ネコ脱出の高倉氏のシナリオ自体は、案外身につまされるものだが、これにダメダシが入って途中から、カプセル兵団系になってゆく。無論、吉久氏が、天井タッパも低く、スペースも猫の額ほどの舞台で飛んだり跳ねたりするものだから、中々インパクトが強い。寛いで観劇できるスタイルなので楽しめる。座長たち、存在感はあるのだが、自分の好みを言うと、もう少し様々な捻りが欲しい所だ。

夜明けとともに目が覚める

夜明けとともに目が覚める

劇団☆東京SaVannaT’s

ART THEATER かもめ座(東京都)

2014/02/27 (木) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★

レディース
 タイマン張ったらダチ。不良少年が、知らない町に行くと、エリアで名の知られた不良とタイマンを張る。無論、素手ゴロが基本だ。このタイマンで互いにキタナイ手を使わず、徹底的にやりあって、良い根性してる、と認め合えば以降ダチになるのだ。こうやってダチになっておけば、それ以降、互いにそれまでの仲間を紹介しあったりするので、余計な喧嘩はしなくて済むのである。一種の経済合理性だし、その為の喧嘩である。
 バブルムラマツ氏のシナリオは少年ジャンプ風のノリで知られるが、浮いた感じは無い。あくまで、人間に焦点をあてて、頗るつきの温かい目で書かれているからだろう。今作でも、その点は変わらない。直球勝負の良さと言ったらよいだろうか。
 今作は、レディース暴走族の話である。このシナリオ・演出が、演じている役者個々人にキチンと伝わって良い舞台になっている。座長が、劇団旗揚げの4年前にムラマツ氏に執筆依頼して初演シナリオを書いて貰った。残念なのは、これだけの舞台を作れる“東京SavannaT’s”が今作で、休演してしまうことである。

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