ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

2001-2020件 / 3201件中
キネマ狂想曲

キネマ狂想曲

シノハラステージング

戸野廣浩司記念劇場(東京都)

2015/01/20 (火) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

芸術とは
 売春の趣味だとBaudelaireは言った。

ネタバレBOX

だが、そうだろうか? Artとは、他の総ての世界に貢ぎを科し、それらの総てから収奪しかしない世界なのではないか? 
 而も、ヒトは、炎に喜んで飛び込む蛾のように嬉々として身を魂を捧げるのだ。芸術という名の炎に!!
 今作は、姉弟関係の近親相姦願望が、物語の底流を流れているのだが、この願望に表現する者というテーゼが被さることで成立している。姉は女優、弟は映画監督という立場である。結局、肉体的には清いままの姉弟の恋の煉獄は苛烈である。姉は、元アクション派女優として活躍、背骨に重大な疾患を抱えている。従って、曰く因縁つきの新作を撮ることは、命掛けの荒技である。だが、姉弟の愛を表現する者の括りで成就する為には、仕上げねばならない。資金、スタッフ、演者総てを巻き込んだ二人の愛の行方は?
APOFES 2015

APOFES 2015

APOCシアター

APOCシアター(東京都)

2015/01/16 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

 1人、1時間、
 休憩等で30分インターバルがあって次の演目、という具合に繋がってゆく形式の独り芝居フェスティバルである。ApocTheater5周年の企画なのだが、自分は、1日通しで3本を拝見した。もとより、独り芝居は、役者の力量が、もろに問われる形式だから、シナリオが良く、無理のない粋な演出であれば、後は、役者次第だ。一応、1作ずつ、評点をつけ、その上で全体的な評点をつけたい。

ネタバレBOX

 
 18時に開始されたのは、“わか まどか”さんの作品。能のような幻想的な世界観がベースになっているので、時空を自由に彷徨う手法に違和感はなく、彼女の演技の上手さも手伝って完成度の高い粋な作品に仕上がっている。今後もまだ、演じられるのでネタバレは控えるが、星5つ。
 19時半開始は、“富田 健裕”さんの作品。相手構わずナンパしまくる男を巡る、信じられない恋愛関係の縺れを描く。これ以上は書かないが、意外性がある。星4つ
 21時開演は、“池谷 駿”さんの作品。同級生の女子の赤白帽紛失事件を発端に、金太郎飴よろしく、延々と続く、主人公の憧れる女性の髪の匂いに関わるもの、先に上げた、帽子の他、カチューシャ、ヘアピン、リボン等々に対するフェティシズムと、それに絡む罪が呼び起こす事件等が、これでもか、という具合に偏執的に続くが、主人公は、この物神性を乗り越えることが出来るか否かは、観てのお楽しみ。星4つ。
夏葉亭 白馬会

夏葉亭 白馬会

夏葉亭一門

スタジオ空洞(東京都)

2015/01/19 (月) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★

まいどー
 役者が演る落語である。今回は、馬鈴薯、無花果、雛菊、仲入りを挟んで、みかん、白萩の5人が高座へ上がった。それぞれ、個性も出、話自体も面白く拝見したが、矢張り演劇を中心に観ている自分としては、落語は究極の独り芝居という感じが強い。無論、下げがあるのは、落語の特徴であるが、話と言っても、高座に上がった落語家は結構、様々な所作を作るのであり、その入れ込み具合なども、観客からの評価の対象となる。
具体的に一例だけ挙げておけば、亡くなった談志の「芝浜」などは、これに当たるだろう。間が大切な役割を果たすことなども共通している。シナリオの良し悪しが、作品の骨格を決めてしまう点も同じだろう。さらに、落語の扱う題材は、その殆どが庶民に纏わる話だという点でも、現代の劇に近いかも知れない。
 何れにせよ、とても似通った世界なので、落語という別ジャンルにチャレンジするというより、演劇の幅を広げる感覚でチャレンジして貰うのが良さそうである。関東の落語、関西の落語の差も、更に際立たせてもらいたい。というのも、関西の社長は、オーナーが多いのだが、東京の社長は雇われが多い。気質にも当然、差があるのだ。

瞳の中に写るもの

瞳の中に写るもの

劇団AugustBonus

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/01/16 (金) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★★


舞台には様々な思いが込められている。劇団の旗揚げから二度目の公演とあって、序盤、役者の役作りも、演出の意気込みも少し過剰になっていたようだ。気持ちは分からないでもないが、此処は、キチンと間をとって、如何にも自然に、というのが望ましい。

ネタバレBOX

 
 後になって出てくる印象的なシーンの伏線なのだから、尚更である。ケレンを演じるなら、別であるが。その場合は、もっと意図的に、わざとらしさを強調すべきだと考える。この後、尻上がりに内容が良くなってゆくので、全体のトーンはこれで良かろう。
 物語は、オンディーヌの呪い、という俗称を持つ、就寝中の呼吸不全/停止症を持つ僻村の医者と、この病の研究者との相克と淡い恋愛感情や信頼関係を築く迄の波乱に満ちた一部始終を描く。(追記後送)
千枝のMasquerade

千枝のMasquerade

pokan girls

銀座 pokan (東京都)

2015/01/18 (日) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★

うちわは良くない
 パート1、パート2の2部構成。間に20分の休憩が入る。Mcは、主催でボーカルの千枝が務めた。ゲストボーカルに矢張り、不定期でPokanに出演している“なな”と多方面で活躍する保坂 淳也。ピアノに広瀬 宗周、ベースに石橋 哲。ゲストバーテンダーに曽根田 雄。

ネタバレBOX


 自分が、納得したのは、保坂 淳也のみであった。千枝も音域内で歌っている分には上手い、と感じさせるものがあるのだが、音域を越えた選曲では、矢張り歌に説得力がない。“なな”は、プロとしては、芽が無いと思った方が良かろう。自分も、音楽は嫌いではないから、これまで、一流のミュージッシャンの生演奏や、生の歌を何度も聴いてきた。今日、出掛けたPokanの近くにあるシャンソンバーにも何度も通った経験を持つ。赤坂のシャンソンバーには大好きなレオ・フェレのサインがあった。神楽坂のGlee等にも聴きに行く。若い頃は、ハッピーエンドの生を良く聴いていたし、メンバーと休憩時間中、一緒に飲んでいた。その自分の耳に合格だったのは、保坂氏1人であった。残念である。
 曲目も、ライトな曲ばかり(中島 みゆきを除く)で、音楽的素養を余り感じなかった。国を代表するような名曲というのが、文化国家や歴史のある国にはあるものだが、そのような曲も選んで欲しい。
銷魂夜 / Haunting

銷魂夜 / Haunting

MY COMPLEX

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/17 (土) ~ 2015/01/17 (土)公演終了

満足度★★★★

中国語、台湾語の部分、字幕が欲しい
1942年、ビルマ。ジャングルの中で、所属部隊とはぐれた中国軍士官・及び兵士と矢張りはぐれた日本人士官と台湾人日本兵の邂逅を描いた作品。中国語、台湾語、日本語、英語混在で演じられる。(字幕無し)
 残念乍ら、中国語も台湾語も分からないので、多くの科白を理解できなかったが、逆に、実際の戦闘の中で敵の用いる言語が理解できないもどかしさを含めて観劇した。

ネタバレBOX

 
 印象的な科白を以下に挙げておく。
 日本人士官(大尉)と台湾人日本兵の会話である。大尉は、この兵士を生きて故郷に帰すと約束している。「大丈夫だ、戦争が終われば直ぐ帰れる」そこへ中国軍の最下層兵が「朝は来ない」という。「彼は何と言ったんだ」と大尉「朝は来ない」と。
 この科白に象徴されるように、どこからともなく襲い来る銃弾によって、一人、一人、と命を落としてゆく。中国軍士官と大尉は互いに英語で話しながら、意見の違いはありつつ互いの人間性を認めてゆくが、部下を失い、最後は自分達も命を落として行く。その過程、糧食も水も疾うに無く、大尉は、亡くなった台湾兵士を故郷に連れ帰る為に、彼の死肉を喰らい、まだ息のあった中国軍士官にも分け与え、何とか生き残った者同士、窮地を脱しようと試み、台湾人兵士の体を自らの体の一部にして持ち帰ろうとするが、死神は、非常にも総ての命を奪っていったのであった。後に流れるのは、大尉の母が、いつも歌ってくれた歌。互いの名を告げ合い、故郷を明かした、両軍士官の思い出。開高 健が、亡くなる前に良く書いていた。戦争とは何ものかだ、という言葉の重さを、意味する所を示唆してくれた作品であった。
『タダノヤサイダ』

『タダノヤサイダ』

7millions-ナナミリオンズ-

小劇場B1(東京都)

2015/01/14 (水) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★★

日本人には何故インテグリティーが無いのか?
 極めて日本的な話だと感じる。インテグリティーの残酷な迄の欠如を語った物語だからである。それを意識して書いている訳ではない点で、少し批評性に欠けるが、その有り様を端的に描くことは、結果として、日本的在り様の弱点を描くことになった。

ネタバレBOX


 話の内容については、他に書く人がいるだろうから、割愛する。自分が、日本人にインテグリティーの欠如を認めるのは、桃山時代以降である。天正18年【1590年】に、豊臣秀吉の命によって実行された太閤検地によって、人民の人別帳が、権力者に把握され、その後行われた刀狩りによって、民衆が権力者に抗する為の武器が取り上げられた。これで、権力者は、どんなことをしても枕を高くして寝られる素地が整ったのである。その上、豊臣を破った徳川は、その支配イデオロギーの中心を朱子学に求めて、思想的に民衆が、権力者に太刀打ちすることを悪とするイデオロギーを大衆化することに成功する。無論、五人組だの何だのの連帯責任を負わせることによって、お上に楯突くこと、即ち犬死にすること、という事実を積み重ねさせてゆく。このような状況に数百年の間置かれた、日本の人民は完全に愚衆と化し、インテグリティーを失っていったのである。無論、支配層として君臨した武士階級も武家諸法度などでがんじがらめにされ、上には逆らわない、現代でいえば、社畜になり下がっていたわけである。このような時代に、お上に逆らった武士の総てが、陽明学を奉じたことも、偶然ではない。他に例証を挙げれば「葉隠」が、300石加増を、著者に許した背景でもあったと考えられるが、時代は、このような決死の覚悟を要求したのであった。
 一方、枕を高くした為政者は、見ざる、聞かざる、言わざる、という支配者にとって極めて都合のよいイデオロギーを愚衆に押し付け続けて来たのである。これが、日本人にインテグリティーの欠ける根本的な原因であろう。
マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015

マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015

劇団ショウダウン

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/01/15 (木) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

イマジネーション豊かな女優、遊眠
 林 遊眠は、不思議な女優である。可愛い顔立ちで、男性からも女性からも好かれるタイプだとは思うが、無論、それだけでは無い。いつの間にか、彼女の魅力に引き込まれて、応援したくなってしまうのだ。

ネタバレBOX


 今回も実際には決して大きくない体で10人以上の人物を演じ分ける。大海賊ティーチから、その副官ボネット、イギリス海軍提督、副官、最少年海賊キング、少年奴隷出身で軍人を夢見る仲間の黒人少年アジク、主人公ベラミーとその参謀になった親友ピエトロ、育ててくれた憧れの女性であり、女奴隷であった母なる女性、最強の女神モリガン、何度もベラミーの危機を救った逃亡奴隷のダガン等々。男性、女性、女神まで多くの役をなんなくこなすばかりでなく、其々のキャラクターを際立たせる、彼女のヴィジョンは、正確であるのみならず、的確であり、彼女のイマジネーションの豊かさを明かしている。また、このシナリオの持つ普遍的でブレの無い中にも、危険に身を晒し、ベラミーの指示如何で命を投げ出す部下たちの犠牲への、優しく強く人間的な悩み葛藤が、観客の胸を打つ。この内容に呼応して実にヴィヴィッドにイマージュを立ち上げる遊眠がいる、たった、一人で。これで虜にならない方がおかしい。彼女の演技の見事さである。
 蛇足であるが、物語の中で、神々は、その世界に入る者に厳しい試練を課す。それに応え得た者だけが、普遍の地で、自由の為に闘う尖兵として、人々の解放という希望を担う王として、欲に目の眩んだ為政者共への永遠の闘いに加わるのだ。が、それは、皆、一人、一人の個人としてなのである。
 シナリオの普遍性は、ベラミーの演説の普遍性にも支えられている。その高い倫理性と人間的で自由で誰もが憧れる価値を持った演説だからだ。更に、リーフレットの説明にあるように、ベラミーは実在した海賊である。シナリオにも史実からの反映が多くあるとのこと。なればこそ、余計に現在を生きる我々への熱いメッセージともなっていると言えよう。為政者共の横暴に負けるな! との熱いエールをも、自分は受け取った。
 9月には4日から6日迄、アウルスポットでの公演「ジャガーノート」が上演されるとのこと。こちらも是非拝見したい。
琥珀-elektra-

琥珀-elektra-

EgHOST

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/01/16 (金) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★

志や良し
 ソフォクレスの「エレクトラ」及びアイスキュロスのオレステイア三部作」をベースに作られた作品ということで、ギリシャ悲劇の立体的構造を、如何に現代に立ち上げ得るかが、大問題として演出家には立ち現れてくる舞台であろう、と予想される。

ネタバレBOX

 コロスの代替として、黒衣を纏ったダンサーによる身体パフォーマンスが演じられるが、コロスと異なり、無論、合唱などの言語表現が無い。ここに、作・演出家は、現代、このアメリカ植民地で若者たちが置かれている、声にならない不条理を表現したかったのかも知れない。であれば、第一次世界大戦でヨーロッパの芸術家たちが受けたショックを表現した、メシアンや、シェーンベルグの曲を背景に流すような演出があっても良かったかも知れない。
 今作で、大きな役割を演じている月の魔力を表すのには「月に憑かれたピエロ」を用いるとか、ラストの愁嘆場では、「世の終わりの為の四重奏曲」を用いるとかである。
 未だ、ギリシャ神話や、悲喜劇に対する理解が、不完全であるという感じは持ったが、果敢にチャレンジする志は評価したい。難しい作品群だからである。若いうちから背伸びしてでも難しい作品にチャレンジしてこそ、今後の延びシロに期待できるということでもあろう。
 演出効果の点では、オレステスが、自ら目を突くシーンで、血糊を用意して欲しい。当然、「オイディップス」が、皆の頭にある訳で、盲しいて、真実を発見しようとする人間的意志が、この行為に象徴されているからである。それが、パロディーであるにせよ、インパクトのあるシーンなので、これは是非。
 大きくて、深く、構造上も複雑な作品に挑んで、未だ消化しきれていなかったり、内包化できていなかったりという点があるので、今回は☆3つだが、今後に期待している。
 
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★

初日を拝見
元売れっ子役者、元ボクシング世界チャンピオンなどスターダムをのし上がり、頂点を極めた者が、そのまま引退することは極めて稀である。一方、下積みのまま消えてなくなる者は、星の数ほども居る。

ネタバレBOX


 今作は煌びやかな世界の影で起き得る事を若い小説家が作品化しているというスタンスを取って進行するので、メタフィクションである。一方、そのメタフィクションに登場人物たちが影響を与えるという設定も施されているので、これをモデルが、シナリオライターに与える影響と取ることもできるし、作家が複眼的に観、表現しているのだと取ることも可能である。
 但し、この作品構造が、露骨に見えるということではない。寧ろ、銀塩写真のように、一旦、ポジの世界をネガに反転し、更にネガからもう一度ポジに反転して世界を再現して見せるような不思議なテイストに包まれているのである。
 初日を拝見したばかりだから、これ以上、物語の内容には立ち入らないが、このネガで描かれている社会の影の部分の根深さを感じさせることには成功している。
開放弦

開放弦

劇団 弾丸コルト

テアトルBONBON(東京都)

2015/01/13 (火) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

今後も楽しみ
 初日を終えたばかりなので、詳しいことは書かないが。男女の機微を良く捉えたシナリオ、進行の上手さが際立つ演出、キャラの立った演技、舞台美術や照明、音響などの効果的な使い方、どれをとっても旗揚げとは思えない、息のあった質の高い舞台である。今後が楽しみだ。(追記は、公演終了後、詳しく書く)

空飛ぶコーポレーション

空飛ぶコーポレーション

HiRunder

ザムザ阿佐谷(東京都)

2015/01/13 (火) ~ 2015/01/18 (日)公演終了

満足度★★★

Aチームを拝見
犯罪者ばかりをリクルートし、警察が取り締まれなかった犯罪を解決する為に、作られた犯罪者による派遣会社のお話、

ネタバレBOX

というコンセプトなのだが、良い子のお伽噺に過ぎる。大体、ホントに、マッポや、公安が直接手を下せないようなヤバイ案件を請け負うなら、下らないセンチメンタリズムやガキっぽい正義感は法度である。にも関わらず、犯罪に居直る訳でもなく、正義に対して背理を用いる程度の論理や倫理では、悪の世界等到底描けない。お子ちゃま向けシナリオと言う他無い。もう少し、悪の何たるかを作家も演出家も学ぶべきであろう。これでは、一所懸命、演じている役者達が可哀そうである。
 役者では、キツツキ役の萩原 成哉のモズを捉えたシーンの演技、ホオジロ役の飯村 勇太の少し凄んだ演技、医者・カウンセラー役の高岩 明良のマッタリ感が気に入った。
Hiroshige Blue(ヒロシゲブルー)

Hiroshige Blue(ヒロシゲブルー)

ミヤタユーヤ

高田馬場ラビネスト(東京都)

2015/01/02 (金) ~ 2015/01/04 (日)公演終了

満足度★★★★

移ろうもの移ろわぬもの
 木組みで作られた舞台美術は、火の見櫓に見立てられたり、様々な家屋に見立てられたりと話の内容に応じて様々に変容するが、開演前から流されていたBGMとのコラボレーションで見ると、竹林とも感じられ、面白い表現であった。

ネタバレBOX


 ヒロシゲの母が三味線の名手であったことが語られ、ミヤタのダンスは、三味を弾く動作の模写から音楽そのものを表現する形に変わってゆくが、この転位が、今作の中心を為すダンスの主題だと考えられる。
また、今作では、葛飾 北斎が、仇でもあるように悪し態に語られてゆくが、これは、其々の芸術家が、何を定規としたかによって変わってこよう。何れにせよ、観察することは、唯、対象を注意深く観ることではなく、事物の関係性を見定める点にあることや、表現の本質が、あらゆる偏見を廃し、真っ直ぐ見つめることに在る点等、本質的なことに踏み込んだ上で、どんな理念に従って定規を作るか。そこから先は、各表現者総ての価値観の根拠が、これに掛かる。力の優劣で、定規の基準が変わる大衆レベルではない。我々は心せねばなるまい、評判だけが評価を構築するのではないことを! 
タコの娘

タコの娘

ハイブリッド渾沌

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/01/09 (金) ~ 2015/01/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

聖史劇

 男に振られた祖母は、やけ酒を喰らって浜辺で寝てしまった。然し、満潮の海で溺れてしまった。それを助けたのがおじいちゃんであった。二人は恋に落ち、母を産んで育てた。

ネタバレBOX



 物語は、この母子の思い出として語られる。異種婚姻譚という不合理や、蛸の擬態が、単に体色を変えたり、海底の地形に合わせて体型を変えるに留まらず、人間に擬態するという非科学性もオープニングの時点で指摘して、科学的には好い加減であることを明かすことによって物語に引き込んでいるシナリオも良い。
 さて、話は、タコとのハーフだと、母が子供時代に苛められたことや、孫娘のアイデンティティー問題等様々なエピソードを孕みつつ展開してゆくのだが、祖父は、余り器用とは言えない営業マンとして家計を支えながら、緊急の出費や家計の危機には、自らの足を切り売りして凌いでいた。彼の足は、最高級食材として極めて高価だったのである。だが、祖母が、母を産んだ時、マイホーム購入、娘の学費等々で祖父の足はどんどん少なくなっていった。それでも祖父は常に笑いを絶やさず、生きていりゃ何とかなる、というのを母がモットーにする程に優しく逞しい生き方を貫いていた。
 母は、海へ帰りたいであろう父を慕いながら、生きて来て、矢張り、海外から出稼ぎに来ていた人と結婚した。彼は家族の為に、腎臓を1つ売って暮らしの足しにしていたのだが、それでも間に合わず、日本に出稼ぎに来ていたのである。祖父は、結婚費用と孫の出産費用の為にも、また足の数を減らしてしまった。だが、孫娘が3歳になった時、出稼ぎに来ていた父は、故郷の借金で首が回らず、夜逃げしてしまった。
 以降、母は、足が1本になって、殆ど寝た切りの父と幼い孫娘を抱えてストリッパーに転身した。全国を旅して回りながら、裸を晒すことと、全生命の故郷である海との連関に気付き、性を梃子に俗と聖を繋ぐ自らの在り様に意味を見出しつつあった母は、寂しい男たちに人気を博すようになってゆく。大した金はないけれど、それなりに幸せな生活を送っていた彼らに大きな試練が訪れた。孫が、大病に罹ったのである。多少、人気のあるストリッパーの稼ぎで足りる額ではない。ストリッパー仲間も手を貸そうとするが、とても手に負える額では無かった。祖父が、最後の一本を売ったのは、そんな経緯を知ったからである。その1本で殆ど何でもこなし、存在の誇りを守る最後の砦となっていた1本を祖父は孫娘の為に売って命を閉じた。
 成長した孫と母は、最後に残った祖父の頭部を海に戻す。
 キャストが格好良過ぎない点がグー。普通の人が、普通の生活をする為に、どれだけの苦労をし、その生活を支える為に、どれだけの者が、自らを犠牲にして、それらを支えているかを示しているからである。物語の中で、祖父が足を売る時、母もまた、愛娘のオペの為に、自分の腎臓を1つ売る覚悟をしている。それを実現せずに済んだのは、祖父がいち早く、自らの最後の足を売って金を作ってくれたからである。
 先にも少し触れておいたが、ストリッパーになった母は、秘所を晒して見せることで、胎児が其処で漂う子宮と羊水、海水の類似性を指摘して性・俗と聖性を同一視して見せた。無論、聖俗の一致は、今迄にも多くの知識人が指摘してきたことではあり、珍しくは無いかも知れない。然し、このように小さな劇場で、このような聖史劇が演じられることにこそ、意味があるのである。このような意味で、良く寝られたシナリオにマッチした演出、演技であった。中島 みゆきの“ファイト”が、実に効果的に使われていた点もグー。
「だいなし」/「本日昔噺」

「だいなし」/「本日昔噺」

劇団ウミダ

王子小劇場(東京都)

2015/01/08 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了

満足度★★★

本日昔噺
 2010年に旗揚げ宣言をしたものの、その後、一切活動をしてこなかった劇団ウミダの実質旗揚げ公演。旗揚げ2本のうち「本日昔噺」を拝見。

ネタバレBOX


 まあ、政治というものに、不信感しか抱けない、このエリアの植民地政府の日常を見ていれば必然的に生じる陰謀論的な噺なのだが、マリーインタアネット女王が領する“竜宮国”と隣国の“さるさるの国”は、当然のことながら、領土や権益を掛けて争っている。だが、それは、紛争や戦争の形を取っているわけではない。
 寧ろ、エンターテインメントを用いて、敵国領民の関心をどちらが引きつけ、様々な商売や不随的利益を自らの側に帰せしむるかについての争いである。竜宮国の既定路線はスタップというアイドル5人組なのだが、中核メンバー、キリシマは、さるさる国と気脈を通じている節があるとみられ、現在、メンバーから外れている。代わりに入っているのが、孫悟空である。滅法強いが頭が弱いのは、猿だから致し方あるまい。
 竜宮国では、他にも大衆操作と実益を兼ねる施作の一環として、女王に直訴する権利が与えられているのだが、直訴人は、どういうわけか皆、男で太郎と呼ばれる。直訴すると、女王直々に解決の手段が示され、解決の為のアイテムが与えられた後、太郎は、指定された部屋へ案内される仕組みだ。ところが指定の場所では、実は、強制労働が科されていた。彼らは一生、此処で奴隷労働に従事する仕組みである。
ところで、さるさるの国には、前田 前次郎という有名な歌舞伎者が居て、かどわかされた娘を救出する為、竜宮国に潜入してきていた。
更に、キリシマそっくりの林 虎之助なる者が同道している。だが、林は二重スパイの可能性もある。おまけに、太郎として、現在、奴隷労働に従事している質問太郎こと、ヨタは、反旗を翻し、クーデタを成功させた。生き返りの秘薬を持つ竜宮中心勢力、ヨタ、前田 前之助三つ巴の闘いの行方や如何に!
ビリーバーズイントウキョウ

ビリーバーズイントウキョウ

ぷぐあんず企画

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2015/01/10 (土) ~ 2015/01/11 (日)公演終了

満足度★★★

視点
 上演自体は通常の半分程の作品である。然し、反復が矢鱈と多い割に、良くも悪しくもインターネットで簡単に必要と思われる情報にアクセスできる時代感覚に慣れ切ってしまった我々には、ウザイ、としか感じられない演出には、もう一工夫必要だと思われる。観客は、批評しに来ているのではない。

ネタバレBOX


 そもそも、主要テーマと思われることが、女の戦略と男の戦略の話である。我々の体など、ちょっと乱暴な言い方をすれば、遺伝子が、己の役割を果たす為に用いる乗り物に過ぎないのであるから、♂の目指すべきは、できるだけ多くの異性に自らの遺伝子を配達することであり、♀の目指すべきは、できるだけ多様な遺伝子を自らの選択に於いて着床させることである。
 一夫一婦制を基本とする現在のこのエリアでは、人の倫理という規制が掛かるから、上記のように、人は中々振る舞えない。一方、本能の命ずる所は上記の如くであるから、そこには、矛盾が生じるのだが、これらの相克を描く為だけでも、単なる反復では、観客が飽きるのは当然と言わねばならぬ。何故なら、反復だけでは、アイロニーを感じさせることや、うんざりさせることに主眼が行ってしまうであろうからである。
 役者の力は、それなりであると思うし、志も高いのだから、更に演劇の様々な可能性を見出すべくチャレンジして欲しい。
Break a Leg!!

Break a Leg!!

劇団禄盟漢

シアターシャイン(東京都)

2015/01/10 (土) ~ 2015/01/12 (月)公演終了

満足度★★★★

小劇団の舞台裏
 小劇団、灯の車は、3.11と続く人災3.12で公演を中止せざるを得なかった。

ネタバレBOX

その後、3年10カ月を経て再演を果たすが、本番初日、主演の蓮司は足首を捻挫。何とか歩くことはできるものの、楽屋と舞台を結ぶ梯子の上り下りが出来ない。
 開演迄の時間は30分。シーンの入れ替えなどでデハケの調整をし、段取りの再確認を行っていざ、暗転。ところが、明展した舞台には、ヒロインが居ない! 辻褄合わせをして行くうちに、ストーリーは、完全にシナリオから外れてしまった。
 3年10か月前同様、途中で、中止するという方向に動き出したかに見えた舞台であったが、舞台監督の森島は、続行を強く主張、このシーンの演技の熱さが、今作のハイライトである。数々の破綻を必死に取り繕う内容と、原作を芥川作品として、それを翻案したオリジナル脚本にしていたことのみを観客にインフォメーションでながしていた、という設定になっている点が、大きな流れとしては、楽しめる作品にしている。
ミュージカル 毒薬と老嬢

ミュージカル 毒薬と老嬢

劇団ゆらじしゃく

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2015/01/10 (土) ~ 2015/01/11 (日)公演終了

満足度★★★★

因果律も
 1970年代のブルックリン。この街の郊外に住むブルースター姉妹は近所で評判のお人好しおばあちゃんである。何しろ、身よりがなく困った人が訪ねてくれば、部屋を無償で提供するばかりか、食事の世話迄してくれる。

ネタバレBOX


 おまけに小さい頃に両親を失くしたテディー、アメリの兄妹を引き取り育てているが、彼らは、彼女らの甥と姪にあたる。テディーは自らをヒトラーと信じているが、周囲は、彼に合わせている。アメリは、新進劇評家であるが、隣家の息子、ブライアンの恋人で、プロポーズされているのだが、仕事を取るか、恋を取るかで悩んでいる。
 というのも、彼女は、ブルースター姉妹の秘密を発見してしまったからであった。その上、10年間も失踪していた兄のジェラルドが、いきなり死体を連れて戻って来たのだ。
(追記するかも)
一句頂一萬句 -出延津記-

一句頂一萬句 -出延津記-

タイニイアリス

タイニイアリス(東京都)

2015/01/09 (金) ~ 2015/01/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

三位一体
心技体其々のレベルの高さが、中国の武術を含む身体の用い方、エネルギーの物理的・合理的な移動の仕方など節々迄現れている。つくづく演劇とは身体性であると感じさせる作りである。全体として芝居としてのバランスの良さ、椅子を身体の延長として様々な物に変じて見せるとき、観客のイマジネーションを自然に、目的の所迄誘う技術等、長い中国の歴史的遺産をキチンと受け継ぎ、キチンと身体言語化するという難度の高いことをさらりとやって見せている辺り、また、これだけの動きをしながら、誰ひとり、息が上がっていなかったのも見事だ。間の取り方等も見事である。何れも学生とは思えない質の高さを示している。原作は小説だというが、シナリオを起こしているのは、矢張り若い女性である。中国語での上演(字幕なし)なので、早目に行ってパンフレットに書かれている粗筋をキチンと読んでおくことをお勧めする。

「あいのおはなし」

「あいのおはなし」

Succeed Project

博品館劇場(東京都)

2014/12/27 (土) ~ 2014/12/30 (火)公演終了

満足度★★★

夢の甘さ
基本的にはかなりベタなシナリオ。

ネタバレBOX


 自殺未遂を図ったアイだが、心を寄せていたヒビキがすんでの所で延ばした手によって、最悪の事態は免れたものの、意識不明の重体である。24時間以内に意識が戻らなければ、万事休すだというのだ。ところで母手作りの人形、ジョージには、魂が宿っていた。24時間ギリギリでアイは心肺停止状態に陥る。このシーンを入れることで捻りが加わっているのはグー。ここから奇跡が起こる。ジョージが彼の魂をアイに与えることで、アイは蘇る。

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