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T Crossroad 短編戯曲祭 <花鳥風月> 秋

T Crossroad 短編戯曲祭 <花鳥風月> 秋

ティーファクトリー

雑遊(東京都)

2022/11/22 (火) ~ 2022/11/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#不協和音
#福寿奈央 #谷部央年
#伊藤麗(敬称略)初日
人は幾つもの顔を持つ。趣味趣向もさまざま。それがセクシャルなものであれば、ほとんど白日に晒されることはない。だからこそ隠微なソレは当事者にとって切実であり、他者にとって滑稽である。当事者が、その世界とはかけ離れた表の顔を持つのであれば尚更。いかにもな服装ではなく、至って普通の装いでアノ人がソレをするファーストシーンの衝撃と笑劇。そして、アノ人がソレをされるという告白が因果のようでもあり、人はみな同じモノを持っていると伝えているようでもある。演劇って凄い。俳優って凄い。
福寿奈央さんはやっぱりキュートだった。
開場の1時間ほど前、研修生時代から観ていた伊藤麗さんに劇場前で遭遇した偶然が、図らずも作品世界を広げてくれた気がする。演劇観賞は開演前から、いや家を出た時から始まっていることを実感した。

王国

王国

少女東京奇襲

スタジオ空洞(東京都)

2022/11/18 (金) ~ 2022/11/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#髙橋咲貴子 #荒牧奈津希
#石田茜子 #横手慎太郎
#花岡美月(敬称略)
剥き出しの感情に、剣山で皮膚を引っ掻かれたような痛みを感じる。夫婦でも分かり合えないことはある。いやむしろ、分かり合えないことばかり。それを飲み込んで苦しむのか、苦しいけれど吐き出すのか。躾も教育も優しさや思いやりを美徳とし、他人の身になって考えることや、他人の気持ちを考えること、そして他人に迷惑をかけるなと教え諭す。言わなきゃわからない。そして、言ってもわからない。それが人間で、言わなきゃわからないと言う相手と、随分とハッキリ言う相手とのミスマッチは、なかなかにしんどい。人間関係は第三者が鍵を握っていたりするモノ。二人の第三者が、片や大きく片やさりげなく揺さぶりをかける。
人は誰もが関わり合って変化しながら生きている。そんなことを改めて考える濃密な時間を堪能した。

猫、獅子になる

猫、獅子になる

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2022/11/04 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#岩崎加根子 #塩山誠司
#清水直子 #安藤みどり
#志村史人 #若井なおみ
#野々山貴之 #小泉将臣
#滝佑里 #髙宮千尋(敬称略)
初日■嗚呼……チクショウ、やられた。完全にKOされた。10カウントも必要ないほどに打ちのめされた。とんでもない作品が産み落とされたと言うしかない。
扉の向こうとこちらについて考える。目の前にあるソレは確かに目に見えて存在しているけれど、目に見えないソレも至る所に存在する。人はソレを叩き開けさせようとしたり、こじ開けようとしたり、時には乗り越えたり突き破ろうとしたりする。それらの行為が優しさを種に芽生えているから厄介モノ。思いやりという栄養が自分の正義を頑なに信じさせ、その暴力性に盲目となる……と、心なき他者が突き付ける。
閉ざされたソレには"痛み”という鍵がかかっている。その上、鍵は涙に濡れて錆び付いているから開く希望は薄い。
多感な中学生と毎日を過ごす大人が、彼らに向ける言葉に、ほんの少しだけ毒を盛る。彼らは時に傍若無人で聞く耳を持たず分からず屋でありながら賢かったりもして、不愉快にさせられことも少なくない。だから、ついつい言葉に毒を盛ってしまうことも分からないではない。むしろ共感する。同時に同情する。その僅かな毒で人生を棒に振る生徒がいるかもしれないことを、なかなか想像できないのだ。無頓着に生き続けることができる者は、自分が盛った毒で苦しんでいる人がいることを知らずに生きて行くのだろう。吉野弘の詩『夕焼け』の娘のように、やさしい心の持ち主は、受難者になるのかもしれない。それでも、固くなってうつむいている受難者にも夕焼けを見られる時が来ると信じたい。
人生には奇跡が起きる。そんな希望を与えてくれる。
人生を悔やんでいる人に観て欲しい。誰かを傷つけ、誰かに傷つけられた人たちに観て欲しい。家族との関係に悩んでいる人たちに観て欲しい。やさしい人たちに観て欲しい。

清水直子さんが、観る人の苦しみを全て引き受けてくれる。だからきっと、何グラムか心が軽くなって帰路に着けるはず。
志村史人さんの力強い言葉が、応援歌のように心の鐘を打った。

百日紅、午後四時

百日紅、午後四時

(公財)可児市文化芸術振興財団

吉祥寺シアター(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/27 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#市毛良枝 #陰山泰
#福本伸一 #朝倉伸二
#岩橋道子 #弘中麻紀
#瓜生和成 #平体まひろ
(敬称略)
2回目。
長年、共に作り上げてきた空気感というものは、確かにあると実感する。
ラッパ屋の皆さんが生み出す兄妹の阿吽の呼吸の安心感たるや。その流れるような柔らかく滑らかな空気がなんとも心地よい。それは勿論、市毛良枝さんや朝倉伸二さんといった、気心の知れた客演さんたちがより効果を高めていることは言うまでもない。そこに更に瓜生和成さんや平体まひろさんといった新しい力が彩を与える。素晴らしい演劇が確かにそこにあった。
往年の日活大スターのような瓜生さんに吹き出してしまったことは、もう隠せない。それでも、3枚の団扇の点と線を見つめる彼の葛藤は居間にあり続ける。

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

Antikame?

雑遊(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#日野あかり #高橋壮志
(敬称略)
被って見える位置に立つ男女。それは、かつて二人の気持ちは交錯していたことを表すのか。だとすれば、二人が別の方向を向いているのも、既にその時からスレ違っていたのかもしれない。
言葉と心は、いつだって裏腹で、男と女の宇宙の漆黒はどこまでも深く果てしなく広い。噛み合わない会話と自意識。二人でいるのに人気のない空間。そこに燃えるような恋はあるのか……かつてはあったのか……それももう定かではない。二人を苦しめているものは何か。一致しないそれぞれの苦しみの原因と場所と質。果たしてそれは共有すべきコトなのか、そもそも共有できるモノなのか。
屋根は雨を凌いでくれる。天井は疑念や苛立ちの高まりを抑えてくれるモノなのか。
目尻をかすめて頬へ落ちた女の髪のほつれが、二人の関係の破綻にも見える。
思い出も関係も精算してしまおうという気持ちを、行ってしまったゴミ収集車が戒めているとしたら、離れてしまった心の距離を、腹を割ると言うより胸の内を切り裂いて真っ赤な血を見せるように吐き出した言葉が縮め、真っ暗な二人の未来という宇宙に微かな光を灯してくれるに違いない。いや、そうあって欲しい。
痛みの滴となって紡がれる言葉。力があるモノローグ。力なく届かないダイアローグ。見つめる視線と逸らす視線。見つめ合うことのない二人。それでも二人が、真っ暗闇で道に迷いながらも、今はまだ見つめ合うことができなくても、並んで同じ方を向いているならば、かつて見つめていた時とは違ったとしても、それに似た、或いはそれに代わる何かを見出せるのかもしれない。

夫婦に見えた二人に最大限の敬意と拍手を贈りたい。
そして、演出・演技に見事に寄り添う音と光に、このチームの結束力の強さと確かさを感じると共に、派手なモノばかりが総合芸術の証明ではないことを実感している。

百日紅、午後四時

百日紅、午後四時

(公財)可児市文化芸術振興財団

吉祥寺シアター(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/27 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#市毛良枝 #陰山泰
#福本伸一 #朝倉伸二
#岩橋道子 #弘中麻紀
#瓜生和成 #平体まひろ
(敬称略)
物語には一石を投じる事件が必要。今作には同じ色のある二石が投じられる。少し風変わりな石と、破壊力抜群の石。
風変わりな石は場にそぐわず混乱させるけれど、少しずつ馴染んでいく。悪気のない個性というのは受け入れられていくという、なんだか社会に対する安心感みたいなものを感じた。
破壊力抜群の石は台風のようで、木をなぎ倒し、トタン屋根を引き剥がし、ポリバケツを吹き飛ばす威力。そして、台風一過には例に漏れず透き通るような晴天と清々しい空気が充ちる。
古き良きあの時代と言いたくなる昭和が、あの居間と縁側と庭に匂い立つ。
風速54m/s以上の台風を担った平体まひろさんが素晴らしかった。仏壇に気づいた時の表情でいきなりKO。二度目の上陸で全てを打ち明ける姿にみんな痺れるはず。スポットの中、瞳を潤ませ無言で佇む姿で見事に苦悩を滲ませた。
大好きな瓜生和成さんは、ラッパ屋客演に続いて若さを纏う。上司や父を演じることが多くなった中で、この立ち位置がなんだかくすぐったい。ツルツルの腕や脛で周囲との年齢の違いも可視化していた。乾杯で風変わりな石が缶ビールを飲み干す時、彼だけは口をつけず、新しい生活が始まった報告にも彼だけは表情を曇らせた。それらは彼の言葉や行動と裏腹で、苛立つ本心と思いやりが心の内でせめぎ合う葛藤を感じさせ、切なくなる。
終演の挨拶に瓜生さんと平体さんが並ぶ姿が感慨深く、拍手に自然と力がこもった。

追記
ラッパ屋を観るきっかけになったのは、G2作品で見つけた美女、岩橋道子さんを観るためだった。あれから何本拝見しただろう。相変わらずの美しさにウットリ。
もちろん今作は可児市プロデュースで、ラッパ屋ではありません。

一度しか

一度しか

ほりぶん

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2022/09/29 (木) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#川上友里 #墨井鯨子
#上田遥 #木乃江祐希
#藤本美也子 #櫻井成美
(敬称略)
ウォーミングアップという形で披露され散りばめられた幾つかのシーンと本編で出会う楽しさ。このアイデアに一本取られた気分。ここ何作か最初に作品を解説するスタイルを取っているけれども、その説明だけでも可笑しくて笑う。アッパレだなぁ。
ほりぶん……いつから観ているだろう。もう随分前になるけれど、可笑しさは色褪せないし、マイナーチェンジを繰り返しながらパワーアップしてる。認知度も人気も着実に上がっているのも感じる。緩さとわざとらしさが絶妙なバランスで笑わせてくれる。その中にチクチクッとするものが潜んでいる。

♬う●●にご〜用〜心〜
う●●にご〜用〜心〜🎶
脳内スパイラルが止まらない。

あゆみ

あゆみ

果報プロデュース

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#石森美咲 #稲田ひかる
#井上みなみ #小口ふみか
#田久保柚香 #山本沙羅
#橘花梨 #前田綾(敬称略)
【千秋楽】わが走馬灯には誰が出てくるのだろう。わたしは何人の走馬灯に登場するのだろう。誰の走馬灯に現れるのだろう。出会いに恵まれた人生だったと思う。でも、自己肯定感が凸凹で矛盾だらけ。きっと悔やんだことばかり映し出されるに違いない。大きな後悔の場面は、もうすっかりドラマとして何度も再生されているので、少しずつ色が足されて、既に原形を留めていない気がしている。それに引き換え、日常に埋もれそうな小さな過ちの中に、触れられない痛みを伴って封印されたモノがあって、ソイツがここぞとばかりに襲いかかって来るような気がする。
40歳になって間もなく、急に人生の残り時間を意識するようになった。枯れていくことの恐怖が芽生え始めて、その強迫観念が覚悟を迫るようにもなった。人生が登山なら、最後の瞬間が頂上で登り続けているのか、或いは40歳辺りで登頂し、後は下り坂を降りているのか……そんなことが実は頭の隅の奥の方でずっと燻っていることを認識している。
人生を綺麗に精算なんてできない。でも、仕方ないとか仕方なかったなんて言いたくはない。できることなら、緩やかに、そして穏やかに、登り切るのか降りるのか、その瞬間まで恐れずに歩みを進めて行こうと思う。

キャストが皆さん魅力的だった。

マニラ瑞穂記

マニラ瑞穂記

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2022/09/06 (火) ~ 2022/09/20 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2回目。どうやったって #下池沙知 さんしか観られない。洋酒の海に溺れる、神経をヤラレたヨレヨレ金魚をモナカや薄紙のポイででもいいから、なんとかして、文字通り掬ってあげたかった。イイ客が付かなかったイチを救い出したくて切なかった。
激動の彼の地で、揺らぎ逆転する信頼や主従関係。裏切りの畝りは個人の領域を越え民族全体の空気に。それはまるで現代のネット世論に左右される世界のよう。
そして戦争を誘導する政治家や資本家たちに振り回される国民、民衆の憐れさが、誰からも疎まれ蔑ろにされ忘れられるシズの姿に映る。
今こそ、観ておくべき作品。

とりあって

とりあって

かわいいコンビニ店員 飯田さん

OFF OFFシアター(東京都)

2022/09/08 (木) ~ 2022/09/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#安達優菜 #猪俣三四郎
#宇野愛海 #上蓑佳代
#小嶋直子 #小比類巻諒介
#鹿野宗健 #ししどともこ
#髙橋龍児(敬称略)
客席のザワつきをこんなに感じたことはなかった。終演直後……いや、直前のラストシーンに、いやいや上演中にも何度か、誰かの口からこぼれ落ちた呟きが聞こえた。それは本当に、思わず出てしまった類のモノで、そうなってしまうほどに観客の日常と地続きな作品が立ち上がっているからに他ならない。終演の瞬間に、小さな悲鳴にも似た「えぇ〜っ」という声が幾つか聞こえて、作品が導く現代社会の信じられない理不尽さと混乱の渦の存在を感じる。
作演出の池内風さんが、上演することにおけるコンプライアンスの一つとして以下のコメントを出されている。
https://note.com/iidasan/n/na31f3bdd1c6e
これは上演すること、作品を観客という"人”に差し出すことに対する真摯な姿勢によるもので、観客に対する最大限の配慮であり、敬意を表したい。
作品から見えてくる人間の愚かさに閉口するし、対立する場面もあるけれど、孤独の恐怖に陥ったりしない。我々は過剰に恐れずに観劇したらいい。
人にはそれぞれに立場があり考え方も違う。だから当然見えてくるモノも見えるモノも見ようとするモノも見たいモノも違う。だから正義が違う。自分の正義が他者の正義には当てはまらない。万能な正義なんて存在しない。誰だって人と仲良くしたい。好かれたいし、気持ちよく過ごしたい。その為に何をすべきかを考えることは素晴らしい。だからと言って、その為に過ちを無かったことにしたり棚に上げてしまうことが唯一の手段とは言えない。まるでどこかの総理大臣の私腹を肥やすために便宜を図った記録を改ざんさせたことも無かったことのようにしたり、明るみになっても責任を取らせることもできないどこかの国の情けない現状のようで、膿を出して真っ当な政治が行われる新しい社会を作るための一歩が踏み出せず、それどころか16億もの国費を投じて国葬を行おうとする愚かな国のことを想起した。
あの場所と、あの人たちと、この国の未来を憂いながら、せめて我が職場のあるべき姿については改善していかなければ……と考えている。

マニラ瑞穂記

マニラ瑞穂記

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2022/09/06 (火) ~ 2022/09/20 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

【初日】とにかく #下池沙知 さんを観てほしい。演劇好きなら観なきゃダメだ。登場したその瞬間から"いち"が"いち"だった。終演まで1ミリの隙もなく"いち"が生き抜いた。俳優とはそういうものだと理解してはいるけれど、それを本当に目の前で観られる奇跡に、誇張ではなく目が離せなくてずっと追いかけながら感謝した。
正直に言ってしまえば、彼女の"もん"を観たいと思っていた。ちょっと弱い面を見せる役がフィットすると思えたから。と同時に"いち"を観る予感もしていた。登場する女性の中で最も振り幅の大きい人物で、壊れていく人間の弱さが滲み、クルクルと表情を変える。下池沙知さんの雰囲気とはかけ離れた人物に思えるけれど、だからこそそのキャスティングは面白く魅力的であり、極上の演劇体験ができる。自分の存在価値や意義を見失っていき、人を羨み、他者を信じることもできなくなっていく"いち"。グラスを煽る度に、少しずつ、そして確実に落ちていく。人の心の奥底を見透かしてやろうとするような鋭い上目遣いを観ながら、恐れをなす我が心の穢れを実感する。
それでも、他者の秘密を暴きながら絶望の縁でジタバタする"いち"を救い出したくて、身請けする覚悟で、20日までにもう一度アトリエに行かなければならない気がしている。

何度か観てきた大好きな作品。美術も演出も真新しさや特別なことはないけれど、丁寧に創られていた。
その中で違いを一つ挙げるなら、シズの存在の意味や意義の深まりだろう。寺田路恵さん演じるシズの鋭い眼光がとらえた世界や人間の愚かさについて考えさせられる。とても印象的だった。

感染症に対する恐怖を乗り越えて観ていただきたいホンモノの演劇がココにある。観逃さないで。

きゃんと、すたんどみー、なう。

きゃんと、すたんどみー、なう。

やしゃご

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/07/07 (木) ~ 2022/07/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#井上みなみ #緑川史絵
#佐藤滋 #藤谷みき
#赤刎千久子 #海老根理
#岡野康弘 #清水緑
#辻響平 #とみやまあゆみ
#豊田可奈子 #藤尾勘太郎
(敬称略)
プレビュー。
DNAとか染色体とかを超えて、子は親から受け継いでいるモノ、受け継いでしまうモノがある。その多くは望まないモノ。いやきっと、望むモノは受け継いでいてもあまり意識することなく、望まないモノは気になるから意識してしまう。そしてそれは先天的なモノよりも後天的なモノの方が気になるに違いない。
二女が見せる母親に似た癖を嫌う三女。それを実は三女自身も受け継いでしまっていて……
「あっ‼️……そうだった……ありがとう……。」
終盤も素晴らしいけれど、この三女を演じる緑川史絵さんが切なくて愛しくて可愛くてたまらない。
人は望まれて生を受けたと誰しも思いたい。人生に価値を見出したい。生まれたことに意味があると信じたい。誰かを愛し、誰かに愛されたい。
大切な人を信じ、大切な人に信じられたい。
自己存在価値を感じ、自己肯定感を高めて生きて行きたいに決まっている。エゴと思いやりが摩擦を起こして熱を持つ。
藤尾勘太郎さんがスーパーヒーローの如く、たくさんの人を救ってくれた。ありがとう……って何度も心の中で呟いた。
ズシリと響く話だけれど、ユーモアが散りばめられ、楽しい観劇体験になること請け合い。
それでも、この引越し騒動を目撃した我々は、どの台詞からも作演出の伊藤毅さんの血が吹き出していることを感じるだろう。

演劇の素晴らしさが詰まった作品。
みんな観たらいい。

連結の子

連結の子

ONEOR8

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/06/30 (木) ~ 2022/07/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#高橋長英 #恩田隆一
#伊藤俊輔 #冨田直美
#小林美江 #竹井亮介
#薩川朋子 #上脇結友
#鹿島涼 #大瀬さゆり
#佛淵和哉 #藤田弓子
(敬称略)
そういうことか……連結の子。どんな社会でも人間関係でも、緩衝材となる人物が居るのと居ないのとでは大違いだ。その連結たる人物は部活を辞める桐島なみに登場しない。もう一人の桐島は愉快に鈍感で、だからこそ緩衝材としてマグニチュードの高い揺れを無意識に無自覚に吸収する。それって最強。

舞台もプロジェクションマッピングが導入される作品が増え、デジタル化への流れの速さに面食らうが、今作はノスタルジックなアナログのテロップが梁の上を運行する。レトロ感が、なんとも💓を擽る。
伊藤俊輔さんが難しい役どころに挑んだ。彼が何をしたのか、何故そうなっているのかは明かされない。そうした観客の想像に委ねられる要素が幾つもあり、それが作品の幅や奥行きを広げている。
何が優しさで思いやりなのか、そこに矢を放つ世間の冷たさを問う秀作だった。

貴婦人の来訪

貴婦人の来訪

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/06/01 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

#秋山菜津子 #相島一之
#山野史人 #加藤佳男
#外山誠二 #福本伸一
#津田真澄 #田村真央
他(敬称略)
『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン、『ヴェニスの商人』のシャイロック、『藪原検校』の杉の市、ひいてはマリーアントワネットなどを思い起こした。市民による裁判や公開処刑には民衆の妬みを発端にする憎悪が膨れ上がる。人間の欲望は果てしない。自分に不利益があれば、或いは大きな利益を得るチャンスとあらば、そのうねりの遠心力は恐ろしく大きくなる。
過ちを犯した者の改心について考える。人生は取り返せないのか。
正義(その時代の世情)の側に暴挙があると危険で恐ろしい。
民衆の良心、秩序、道徳…それらは、貧しさと、チラつく豊かさへの誘惑によって、簡単に崩壊し人を裏切らせる。
恐怖が膨張し一線を越えれば、人は自らの命を絶つことも少なくない。それを自らによる己への判決とするのなら、他者は手を汚すことは無い。それを拒否し正義を振りかざす暴挙と対峙するなら、手を下す者たちの心にシミを残し疼きを与え続けるかもしれない。その者たちの手に残った感覚は、眠りを殺したマクベスの手に付いた血と同じかもしれない。

冒頭の軽薄さと、沈んでゆく後半の不穏な空気の不気味さ、そしてラストの秋山菜津子さんの美しさ、それらのギャップが終演後のカラダにまとわりついた。

心白

心白

ほろびて/horobite

調布市せんがわ劇場(東京都)

2022/06/01 (水) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#加瀬澤拓未 #佐藤滋
#葛堂里奈 #鈴政ゲン
#藤代太一(敬称略)
【初日】大好きな俳優さんが三人も名を連ねた公演は観ないでいられるはずはない。佐藤滋さんの笑顔の破壊力は衰え知らずだ。少しハスキーな声も魅力的。それでいて、今作品ではミステリアスなバックボーンを感じさせる。葛堂里奈さんはオトコを転がす😅突き放しながら割り切って、欲望を相手に商売する。妄想への刺激スイッチが押され、果てしなく広がっていく。いつだって不思議な魅力を纏う。鈴政ゲンさんが視線を虚空に彷徨わせ、感情のダムを決壊させる。存在の不確かさに引き込まれる。
二つの物語が混じり合うような合わないような。
時計の針は14:46で止まっている。戦争のことや震災のことを考えさせられる。
また街を作りましょう。
舞台にはダンボールやら椅子やらテーブルやらが溢れている。それらを使った場面転換が特徴的。キャストみんなで置いたり動かしたりして……時には身体表現も織り交ぜる転換の狙いや必然性について、まだまだ思考を巡らせている。
これまでとは異なる演劇体験ができた気がしている。

夫婦レコード

夫婦レコード

劇団青年座

俳優座劇場(東京都)

2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#佐藤祐四 #安藤瞳
#前田聖太 #田上唯
#伊東潤 #市橋恵
#尾島春香 #三浦拓真
#本田清佳(敬称略)
【初日】久世光彦氏の作る昭和のファミリードラマを彷彿とさせた。少し大仰な演技の演出が付けられている気もするけれど、それも楽しめばいい。湿っぽくも成り得るエピソードをカラリと笑い飛ばす。
長女役の安藤瞳さんが、登場しない母の存在を浮き上がらせる。
三女の田上唯さんも幸福感を纏い可愛らしかった。
父親と五人の娘が、それぞれに対峙する時間を、三人娘の父として羨ましく観た。娘の幸福を願えばこそ、父のあの怒りがリアリティを持ち美しく切ない。
印象的だったのは、尾島春香さん演ずる四女と父親のシーン。人肌の温もりがあってなんとも美しかった。

Cloud 9

Cloud 9

TPT

すみだパークギャラリーささや(東京都)

2022/05/20 (金) ~ 2022/05/27 (金)公演終了

実演鑑賞

#廣畑達也 #小寺悠介
#古畑正文 #兼田利明
#山田美波 #水野小論
#KAKAZU #黒木佳奈
#須山剛(敬称略)
二幕終盤、水野小論さん演ずるベティによるテーブルの上のモノローグが今作の胆。コレだけでも観に来た価値がある。
2006年のPARCO劇場『噂の男』でKOされて以来、彼女の全ての出演舞台を追いかけて来た。シアタートップスにも三鷹市芸術センターにも初めて足を運んだのは彼女を観るためだった。
さまざまな経験を経て、いま最も脂が乗っているような気がする。
時代背景を反映させた衣装も彩りを与え作品を支えた。
今作にネジを巻くのは山田美波さん。艶やかに艶めかしく煩悩が匂い立った。

初日間近になってキャスト変更(健康上の問題)がありながら、よくぞ上演まで漕ぎ着けたなと感じる上演だった。
単に代役を立てるのではなく、配役を変更し、キャストもスタッフもみんなで困難を分かち合って頑張るんだという姿勢を感じた。tptが取り組み積み上げてきた長い歴史があればこその開幕。当日パンフレットの印刷が間に合わなかった(郵送される)ことからも、如何に切羽詰まった状況であったかが伺える。
だから……台詞が怪しげだったり噛んでしまったりするのも致し方ない。
上演に漕ぎ着けた全てのキャスト&スタッフに拍手を送りたい。

ただ……通し稽古を観ているような気分ではあったので、願わくはもう一度、充分に稽古を重ねた上演を見てみたい。

作品自体は、性に対する考え方も人権感覚も大きく変わった現代が、その当時の慣習や常識からは随分と遠い場所に来たことを感じさせるものだった。人々の熱情と絶望が渦巻いていた。

花柄八景

花柄八景

Mrs.fictions

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/05/11 (水) ~ 2022/05/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#今村圭佑 #岡野康弘
#ぐんぴぃ #永田佑衣
#前田悠雅(敬称略)
哀れで切ない要素もあるけれど、それをしんみりとはさせない豊かな笑いと可笑しさで、見事にMrs.fictionsワールドに仕上げられていた。
その一翼を担った永田佑衣さんの存在感が圧巻で、ヤンチャな見た目と時折漏らす乙女な声のギャップに劇場中が笑い悶え虜になった。かれこれ彼女の出演作をかなりの数観てきたけれど、最高のパフォーマンスではなかろうか。あの大きくて物憂い白目に会いたくて、二度三度と足を運んだ観客も少なくないと思う。
もちろん今村座長のブッ飛び具合と、岡野さんの安定の哀愁と可笑しさがあってこその完成度。
いやぁ、イイもの観た。
気持ち良く笑った。
大いに笑った。

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース

Mo’xtra Produce

吉祥寺シアター(東京都)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#林田航平 #大塚宣幸
#加藤良輔 #竹井亮介
#佐藤みゆき #照井健仁
#永田紗茅 #中野亜美
#寺内淳志 #武市佳久
#田中千佳子 #大内厚雄
#永宝千晶(敬称略)
『ビショップ・マーダー・ケース』
人は皆、いつだって自分にとってのベストを選んでいる。
ただそれは、全ての人にとってのベストではない。
そして、いつまでもベストであるとは限らない。

そんなことを考えさせられた。

145分、物語が澱みなく流れていく。登場人物みんなが秘密を持ち、怪しく思わせる見事な展開。
サスペンスにとって"みんな怪しい"という最大のご馳走が並べられた。

大好きな佐藤みゆきさんが、寵愛を受けるヒロインを納得のオーラで立ち上げた。最後にサラリと述べられる「愛している」に闇を見た。

キャストのみなさんの距離感やスピード感がこの上なく美しかった。

そして、敢えてMVPを選ぶなら……中野亜美さん。まるでティンカーベルのように作品の中を……いや、それぞれのシーンの周辺を飛び回り、魔法の粉を振りかけて物語にネジを巻いた。

素晴らしい作品だった。

おどる落語『あたま山』

おどる落語『あたま山』

CHAiroiPLIN

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2022/04/16 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#あたまプリン
#スズキ拓朗 #清水ゆり
#中山祐一朗 #小林らら
#ジョディ #ジントク
#よし乃 #柏木俊彦
#黒須育海 #鈴木彩乃
#鈴木幸二 #鷹野梨恵子
#鳥越勇作(敬称略)
【2回目】瞼を閉じれば、幾つもの光景が蘇る。
オープニングの消毒液噴霧。清水ゆりさんの歌声がマイクや音響の微調整によりクリアになって気持ちよかったなぁ。
小林ららさんの😆イ〜ッ😆が堪らなく可愛いし、娘を持つ父としては、ラストに胸を締め付けられる。終盤のダンスの中で、地団駄を踏んでいるようにプルプルするのも堪らない。
前半の頭に蓋をするように手をペコペコさせながらの行進ダンスも素敵。
柏木俊彦さんの頭から伸びた桜がユラユラと畝っているのも可笑しくて好き。
ジョディさんとジントクさんコンビは安定の面白さ。
看護師の鈴木彩乃さんのセクシーため息には男心を擽られる。
新婚の友人カップルの「ケチケチしてんなぁ」ダンスも印象的。
もちろん桜を抜くラバーカップ🪠ダンスの男女のシンクロもかっこいいし、柏木さんのだけ長く付いているという演出の妙。
結局、挙げればキリがない。ともかく、バラエティに富んだ音楽を採用し、それにフィットするダンスを披露して、可笑しさを失わずに感傷も味わわせる最高のエンターテイメントは正に総合芸術だった。
もう彼等を観たくてたまらない。次作まで待ちきれない。
それにしても、中山祐一朗さんのケチ兵衛がイヤ味なく穏やかだったことが作品のカラーを形作ったことは間違いない。キャスティングの勝利。

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