実演鑑賞
満足度★★★★★
#安達優菜 #猪俣三四郎
#宇野愛海 #上蓑佳代
#小嶋直子 #小比類巻諒介
#鹿野宗健 #ししどともこ
#髙橋龍児(敬称略)
客席のザワつきをこんなに感じたことはなかった。終演直後……いや、直前のラストシーンに、いやいや上演中にも何度か、誰かの口からこぼれ落ちた呟きが聞こえた。それは本当に、思わず出てしまった類のモノで、そうなってしまうほどに観客の日常と地続きな作品が立ち上がっているからに他ならない。終演の瞬間に、小さな悲鳴にも似た「えぇ〜っ」という声が幾つか聞こえて、作品が導く現代社会の信じられない理不尽さと混乱の渦の存在を感じる。
作演出の池内風さんが、上演することにおけるコンプライアンスの一つとして以下のコメントを出されている。
https://note.com/iidasan/n/na31f3bdd1c6e
これは上演すること、作品を観客という"人”に差し出すことに対する真摯な姿勢によるもので、観客に対する最大限の配慮であり、敬意を表したい。
作品から見えてくる人間の愚かさに閉口するし、対立する場面もあるけれど、孤独の恐怖に陥ったりしない。我々は過剰に恐れずに観劇したらいい。
人にはそれぞれに立場があり考え方も違う。だから当然見えてくるモノも見えるモノも見ようとするモノも見たいモノも違う。だから正義が違う。自分の正義が他者の正義には当てはまらない。万能な正義なんて存在しない。誰だって人と仲良くしたい。好かれたいし、気持ちよく過ごしたい。その為に何をすべきかを考えることは素晴らしい。だからと言って、その為に過ちを無かったことにしたり棚に上げてしまうことが唯一の手段とは言えない。まるでどこかの総理大臣の私腹を肥やすために便宜を図った記録を改ざんさせたことも無かったことのようにしたり、明るみになっても責任を取らせることもできないどこかの国の情けない現状のようで、膿を出して真っ当な政治が行われる新しい社会を作るための一歩が踏み出せず、それどころか16億もの国費を投じて国葬を行おうとする愚かな国のことを想起した。
あの場所と、あの人たちと、この国の未来を憂いながら、せめて我が職場のあるべき姿については改善していかなければ……と考えている。