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天国への登り方

天国への登り方

アマヤドリ

シアタートラム(東京都)

2023/03/23 (木) ~ 2023/03/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#一川幸恵 #沼田星麻
#榊菜津美 #大塚由祈子
#相葉るか #相葉りこ
#深海哲哉 #徳倉マドカ
#河原翔太 #宮川飛鳥
#堤和悠樹 #星野李奈
#宮崎雄真 #宮本海
#野崎詩乃 #都倉有加(敬称略)
千秋楽。
最初に書いておきたい。
おめでとうアマヤドリ。
劇団名の改名を含め何度も転換期があり、その都度、中心となる俳優が育ち劇団として力を付けて来た。そして今、一川幸恵さんと沼田星麻さんという二本の柱が確かに立ち、彼等の新しい章が動き出したことを感じるエンディングだった。
拍手を送りたい。

これは迷える仔羊……いや、こぎつねたちの、如何に生きるかの物語。
安楽死だ尊厳死だというのは、あくまでも入り口にかけられた看板に過ぎない。
飼い猫がその時を迎える際に姿を消す心理と真理についてゆっくり考えてみようと思う。

死ぬ権利と生きる権利が同等なのか同類なのか。是が非か、善か悪かと考えようとすれば、どうしても両者の主張を偏らない工夫のもとで展開しなければならないテーマだと言える。だから、ディベートのようだと指摘されていたけれど、確かに説明的に感じる台詞も多かったように思う。しかし、それも致し方ない気はする。人物のやり取りの関わりの中で、このテーマを考えさせる展開はなかなか難しい。

キツネにとってこの世は生きにくい。人を欺がなければ生きてはいけない。もしかすれば、我々ももうみんなキツネなのかもしれない。人を騙して自分を欺いて生きているに過ぎないのかもしれない。その上で、嘘を承知で騙されて、人に優しく……キツネに優しく生きているだろうか。優しさの押し売りにはなっていないだろうか。人生の幕を下ろす時、どれだけ自分に正直になりながら人にも素直になれた時間があったかが重要なのかもしれない。

アマヤドリの代名詞とも言える群舞。
これも一川幸恵さんがタクトを振って、
美しい交響曲のような舞を披露してくれた。
劇団に育まれてきた血が、脈々と受け継がれていることを実感した。

図らずも昨日、義父の葬儀を終えた。その準備等で初日を逃し、ようやく千秋楽を観劇。そんなタイミングで今作を観る巡り合わせにも縁を感じる。
嗚呼……人生はきっと素晴らしい。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#変な穴2023
#MU
#青木友哉 #成川知也
#古市みみ #波多野伶奈
#西村由花 #木村聡太
#森口美香 #榎本純
#西川康太郎 #インコさん
(敬称略)
H千秋楽。
とにかく古市みみさんが素晴らしかった。ソレを観られただけで満足できる。あの、押し殺そうとする感情が溢れてしまってる感じがたまらなく好き。これこそが演劇の醍醐味だと思っている。
隣のインコさんのヤケクソな感じも素晴らしかった。
後半にひっくり返る展開も好き。
札束で頬を叩いてる感じや、傲慢さと卑屈さを炙り出した感じに、心地良い嫌悪感を抱く。

久しぶりのMUを満喫した。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

#令和5年の廃刀令
#アガリスクエンターテイメント
#淺越岳人 #伊藤圭太
#榎並夕起 #鹿島ゆきこ
#古谷蓮 #前田友里子
#矢吹ジャンプ #江益凛
#斉藤コータ(敬称略)
G千秋楽。
会議モノはこれまでもあった。その多くはシビアでスリリングなモノ。
その中で、ユーモアをふんだんに盛り込んでいたものに、三谷幸喜さんの『12人の優しい日本人』がある。それはアメリカのテレビドラマで映画も制作された『十二人の怒れる男』のパロディ。三谷幸喜さんを崇拝する作演出家が、その法廷モノをタウンミーティングとかいう会議の場に変換して書いたのだろうことはすぐわかる。
いや、これ以上言葉にするのはやめよう。
盗作……オマージュ……パロディ……モノは言いようだ。
重要なのは、明言しているか否か。その点において、以前に不信感を抱いてしまったため、もうまっさらな気持ちでココの作品を観ることができないカラダになってしまっている。東京サンシャインボーイズのメンバーによる『12人の優しい日本人』のリーディングを彼が演出することを知った時の混乱と不快さが染みついて抜けない。だから、作品についてはもう言葉にするのはやめておく。

ただ、俳優さんには好感を持った。江益凛さんのヤケを起こす感じとか好きだ。浅越岳人さんの鼻につく評論家の感じも好きだ。

観た回の投票結果は知らない。人に選挙へ行くように言っている身としては投票しないわけにはいかない。しかし、利用されたくないし、作品の一部に抱き込まれるのも御免被りたい気分のため、無効票を投げた。それがせめてもの細やかなる抵抗。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

#背に描いたシアワセ
#やみ・あがりシアター
#安藤安按 #五十里直子
#内野智 #加藤睦望
#河原邦恵 #小切裕太
#谷川清夏 #吉成豊(敬称略)
E初回。
この劇団の作品は幾つも拝見している。ココの魅力はドライブ感だと思う。そしてそれは上演を重ねる毎に増している気がする。
そして、そのエンジンを担う加藤睦望さんも、チャーミングさを増している。
今作は初演が90分だったモノを60分にブラッシュアップさせての上演とのこと。2/3の長さになったそれは、もうリメイクでもなく新作レベルではなかろうか。
ドライブ感が増したのかもしれないけれど、なんだか一足飛ばしで駆けているようなソレは、凝縮されたというよりは、味を薄めてしまったように感じた。そんな、跨いでいかれた部分について考えているうちにボーッとしてしまい、終盤の、恐らく重要ではないかと思われるタイミングを聴き逃した。
『あれっ、いま何か重要なコトを言ったかな⁉︎』という大失態で作品から振り落とされてしまった。こうなるともう理解しようとするモチベーションを上げるのは困難。

救いは、今回も谷川清夏さんのあのフワッとした柔らかさでありながら訳アリな空気を纏う存在感を味わえたこと。好きだなぁ。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

#恋の手本 #曾根崎心中
#劇団肋骨蜜柑同好会
#小島望 #嶋谷佳恵
#藤本悠希 #水口昂之
#室田渓人 #フジタタイセイ
#岡村梨加 #辻響平
#星澤美緒(敬称略)
F初回。
辻響平さんを観ることが最大の目的。今やあちこちに客演される実力の持ち主。

古語、文語文をアップテンポで歌うように踊るように発することで何をしたかったのか、それを掴めずにグルグルと思考を廻らせてみている。いくら名の知れた作品であると言っても、古い言い回しを捲し立てるようなテンポでやって、どれほどの人がついていけるだろうか。国語教師であってもなかなかに集中力を要するハードワークではある。実際、途中で作品から振り落とされて、後はもう声を楽しむだけ。言葉を聴かず声をサウンドとして楽しむしかない。
それを楽しめない気分で、なかなかに辛かった。

体調不良は仕方ない。新作が書けないこともある。企画の性質上、上演中止や不参加の選択は難しいのは理解する。それでも、他の手立ては無かったかなぁ。

もう一度チャンスが与えられるならチャレンジして欲しいけれど。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#こえを見ている
#Antikame?
#日野あかり #青澤佑樹
#飯智一達 #高橋壮志
#俊えり #杉原敏行(敬称略)
D初回。裸を超える衝撃の問題作。歴史が動いた。
アヴァンギャルドだ。絶対に劇場で体験しなければダメだ。 30年以上の観劇人生、4000作品以上は観ているはずだけれど、コレほどの冒険を観たことがない。
けれどコレは主宰の吉田康一さんが模索し登り続けてきた山の最高峰で、開けた視界に見えた絶景だ。
その世界を目撃した今、作品と一心同体になって迫って来るタイトルに痺れている。

無謀とも思える冒険の旅だけれど、その航路が間違いではなかったと実感させられる。上演前に伝えられたコトで恐怖を感じビビる人もいるかもしれないが、開演して数分でソレは消える。

美しい散文詩が美しい肉声で届けられる美酒に酔う。

広大な心象スケッチ
モノクロのパステル
眩しい暗闇
漆黒の万華鏡
手中にある宇宙
粛々たる雷鳴
耳障りな静寂
心地良いノイズ
愛おしい憎悪
悍ましい優しさ
甘美な吐き気
凍える温もり
幸福な孤独
淋しい団欒
はち切れそうな空腹
ひもじい満腹

わたしたちは宇宙の塵。
アポロ11号を離れて迷子になったアストロノーツ。
無軌道に行き先を失い、無秩序に振り回されるうちに、いつか恒星を廻る惑星のように進むべき道を得られるだろうか。
失われた視覚によって研ぎ澄まされる聴覚。
遮られた嗅覚は空気の手触りを刺激しているかもしれない。
ソノ世界によって失われた方向感覚に便乗して、通常の観劇中には決して向けられない方向へ視線を投げる。
届く声もあちらこちらに向けられ、跳ね返ったり零れ落ちたり。歩みと共に生まれた声は、文字通り迫って来る。

それぞれの視点から眺める宇宙はどんな彩りを纏っているだろうか。向けられた視線の多くは交わることはない。だからこそ、遠くからゆっくりと彼女を追う視線に心を灼かれる。


この企画で上演される8作品の中で、最も勝負した作品であると確信する。
誤解は解いておくが、美女の裸なんてない。そうした衝撃作もあるが、それとは違う、それを超える衝撃を味わえる。
9割以上のモノローグが紡ぐ魔術に酔うといい。
コレは語り継がれる問題作。証人になれるチャンスを逃したら後悔する。


■追記■
俊えりさんの声がとんでもなく可愛い。
可愛いアニメの声優だってイケる。
日野あかりさんの美しさは説得力があるなぁ。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#食む派
#冷やし中華いななき
#松本みゆき #江原パジャマ
#岩本えり #岡本篤
#波世側まる(敬称略)
C初回。
🎵冷やし中華〜始めました〜
百戦錬磨の腕利きの俳優が並び、とんでもない出来事の世界を真面目に生きる。
登場しないソノ人が無茶を言って、みんなが静かに合戦を繰り広げる。
決着がつくのかつかないのか。
塩を贈るのか贈らないのか。
贈るのは幟旗か、ポケットの中で握ったソレか。
考え得る最善の結末ハッピーエンド……に手を伸ばす作品は星の数ほど観てきたから、そんな夢物語は要らない。
人生は、実生活は、もっと苦く、モノトーンの、味のしなくなったガムを食むようなモノ。
ソレを届けてくれる作品は、食めば食むほど味わい深い。
いいモノを観たなぁ。
松本みゆきさんの嘘がホントに繋がる姿が堪らなく美しかった。

勝手な妄想だけれど、脳内では浅草の花やしきのあれやこれやが蘇った。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#elePHANTMoon
#落書き
#井神沙恵 #加藤なぎさ
#菊地奈緒 #寺内淳志 (敬称略)
B初日。8年振りの公演を披露する彼等が、今回の企画に参加する団体8組の中の目玉だと思っている。参加を知ってリアルに叫んでしまったし、もう楽しみで楽しみで仕方なかった。マキタカズオミさんが紡ぐ世界は、いつだって危険な香りが漂う。怖いけれど嫌じゃない。そのヒリッとするのに気持ちがイイ感覚は、少し早いのに瘡蓋を剥ぐような、蚊に刺されて出来た膨らみに爪で十字の跡をつけるような、ゾクッとする快感に似ている。
その世界の真ん中に大好きな井神沙恵さんがいるのだから堪らない。
トラウマって何だろう。幻覚って何だろう。優しさや思いやりから生まれる善意が、意図に反して誰かや何かを、ましてや救いたい対象を傷つけたり苦しめたりする結果を招いたらどんな気持ちになるのだろう。それが多くの人間に周知され、利用され悪用されたら、人は狂うだろうか、戦うのだろうか。
この世はいつでもどこでもスケープゴートを生み出す魔女裁判の法廷なのかもしれない。そこに暗躍する黒魔術。どこかのアビゲイルによって、誰もがジョン・プロクターにされてしまうかもしれないなら、もう正義が勝つ方法はないのかもしれない。
ヌルッとしたソレを飲み込んだ先に……アナタは何を見ることになるのだろう。
その目で確かめて欲しい。

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座・高円寺1(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#東京にこにこちゃん
#またね?ばけものかぞく
#るい乃あゆ #四柳智惟
#澁川智代 #モリィ
#木乃江祐希 #髙畑遊
#鳥島明 #尾形悟(敬称略)
A初日トップバッター。
『日本一チケットの取れる劇団』が売り文句の彼等を最初に観たのは2018年の荻窪小劇場だった。当時から出演していたキャストも活躍し、演劇界で知られる俳優もキャスティングされ、今や人気沸騰中。それでも、変わらず作風も上演する姿勢もシャイで可笑しくて謙虚。そして可愛い。そう、この団体の持つオーラは紛れもなく『可愛い』だ。
作演出の萩田頌豊与さんが作る世界は、心の声が漏れる世界。いや、漏れるレベルでは無い。呟くも超えて心の声を語る世界。伝える世界と言ってもいい。その『全部言っちゃう』感じ、『全部説明しちゃう』感じが可笑しくて楽しくて可愛い。
大好きな木乃江祐希さんが躍動していて嬉しい。
髙畑遊さんの面白さは今後の活躍に疑いの余地は無い。
そして、作品に最もフィットし安定していて、あのクセのある台詞を自分のモノにして滑らかに届けてくれるモリィさんに惚れ惚れする。ヤバイわ。
クセ者ばかりのクセの強い作品なのに、後味スッキリ。
奇妙で可笑しいヒューマンドラマを観て欲しい。

染明色

染明色

Prelude

王子小劇場(東京都)

2023/03/08 (水) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#藍澤慶子 #池田光毅
#奥田龍平 #奏夢
#小町実乃梨 #齋藤拓海
#関口滉人 #鄭玲美
#仁科ナナ #ゆづる(敬称略)
🅰️チーム
ゆとり世代から個性尊重に移行して、今は多様性。誰もが認められる寛容な社会。
本当にそれは生きやすい世界なのだろうか。寛容なのだろうか。
このインターネットに蝕まれた世界は、誰もが匿名で好き勝手に発言し、誰かを揶揄し貶める。そこに群集心理が追い打ちをかけ、一度の失敗が命取りとなる。ほんの小さなジョークが破滅を招く。ネットは公開処刑。更生のチャンスは与えられない。その影響をモロに受けているのが教育現場だろう。多様性という名のもとに指導力も指導する機会も奪われた。その結果が招く本当の悲劇は、まだ始まっていない気がする。歪んでいるのは人間か、それとも社会か。歪んだ人間を放置した社会は、いったいどこへ向かうのだろう。
群像劇の幾つかのストーリーはどこかで交わるもの。それが早々に感じられると興醒めするが、ラストまで巧みにコントロールされていて面白かった。
大好きな藍澤慶子さんがマドンナ。綺麗な奥様のポジションは頷ける。ラストに仕掛けられた秘密を、あの表情であのトーンで明かす演出と、やってのける技量に拍手。ただの綺麗なお姉さんではない。彼女はできる俳優。今回も充分に証明した。
小町実乃梨さんも素敵だった。観るたびに美しくなっているように感じるのは、容姿ばかりではなく、佇まいによるもの。作品と役へのフィット感が高いのだと思う。
若いキャストが多いけれど、皆さん達者で好印象。
奏夢さんは、大学生になっても小柄な我が娘と同じくらいの身長で、勝手に親近感を覚えてしまった。
ゆづるさんは印象的だった。あっけらかんとしたキャラクターは役としてのオーダーなのか彼女のキャラクターなのかわからないけれど、イキがいいのに空気を壊さないバランスの良さと落ち着きに感心した。魅力的だった。次も観てみたい俳優さんを発見した喜びを感じている。
充実した115分。🅱️チームも観たかった。
Prelude、作演出の西村賢人さん。今後も注目しよう。

デラシネ

デラシネ

鵺的(ぬえてき)

新宿シアタートップス(東京都)

2023/03/06 (月) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#とみやまあゆみ #堤千穂
#小崎愛美理 #高橋恭子
#田中千佳子 #中村貴子
#米内山陽子 #川田希
#木下愛華 #未浜杏梨
#佐瀬弘幸(敬称略)
#高木登 さんが届けてくれた素晴らしい作品。何一つとして無駄のない最高の演劇体験があった。そして、大好きな とみやまあゆみさんの素晴らしさを存分に味わえる作品を届けてくれて感謝。
彼女の抑制された声と表情から、内にある激情が滲む。能面が顔の形を変えずとも見せる角度で感情を表現するのと同じように、固めた表情の角度や瞳に心を映す。振り向く動きに合わせた音響にもワクワク。早々のアソコで頬に光る流れには射抜かれた。それが鼻先や顎の下に小さな膨らみを作るのを見ながら、大切な人への愛と、汚れた者への憐みや憤りを傍受し痺れた。
中村貴子さんとのシーンでのみ彼女の穏やかで柔らかな表情を見ることができる。ふわっとした空気に包まれる。それなのに……酸素が薄くなっていくような息苦しさが生まれる。人を信じること信じられることの、何と神聖で罪深いことか。中村貴子さんの佇まいが本作の肝であり、その塩梅の見事さに拍手。

そこはまるで脚本家の虎の穴。蹴落とされて、這い上がっていかなければリングに立てない。リングに上がってもマスクを被らされ、誰かの仮面で戦うことを強いられる。
世の理不尽さを豪快にデフォルメしていても、そんなこともあるかもしれないと思わせてくれる筋の通った筋の通らない話。不快で不愉快な様が遠心力を増して迫ってくる。
今作も、ろくでなしばかり。そして、高木作品の真骨頂とも言える「逃れられない血の問題」が流れ出す。その悍ましさに満ちた話なのに、終演後に清々しく席を立てるのは、虐げられた者たちの手に勝利の盃が握られているからに違いない。

今回、メンバー全員が出演しているチタキヨの融合ぶりが素晴らしかった。前述の中村さん然り、バランサーに徹した千佳子さん、可愛らしさの奥底に隠した芯を強固に宿した恭子さん、皆さん見事だった。そして米内山さんのパンチ力は圧巻。米内山さんと堤さんの喉の強さにも驚愕。
鵺的の正式メンバーになった美しき三人の俳優の競演に心躍った。
常連の川田さんと若い二人も流石の実力。その中で悪臭を撒き散らし大立ち回りを繰り広げる佐瀬さんも見事。このキャスティングに拍手。
寺十吾さんの、あの暗い照明と美術プランが最高にフィットした作品。
ホンモノの演劇を満喫した。幸福な110分。
嗚呼、演劇って素晴らしい。

ムーンパレスの解凍法

ムーンパレスの解凍法

江花実里企画

STスポット(神奈川県)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#江花実里 #江花明里
#荒波タテオ #大浦孝明
#小島あやめ #田中勝彦(敬称略)
架空畳の #小野寺邦彦 さんが作・演出。
ニッポニア・ニッポンの時知らずの朱鷺がノックしてターンする。腐りかけが美味しい発酵DIEオード。観音開きの図書館で鉄郎とメーテルが一つの機械の体を手に入れる。
まるで酩酊して大混乱した人の発言みたいだけれど、そんなことになるくらいの絶叫アトラクションに乗った気分。文語定型詩をブルージーなJAZZのリズムに乗せた大量の情報のマシンガントークを浴びた気分と言い換えてもイイ。
豊富な知識と資料に基づく、言葉遊びとも掛詞とも言えるような脚本と、あの疾走感の強い発語が小野寺氏の演出の真骨頂だと感じている。一瞬でも気を抜けば言葉が目の前を駆け抜けドップラー効果を起こしそうで、聴き逃さないように、物語から振り落とされないように言葉を必死にキャッチしようとして味わうこの疲労感は嫌いじゃない。90分とは思えない濃密な時間にホロ酔いで帰路に就く。
江花姉妹の色味の違いがクッキリと浮かび上がる。そのどちらも艶やかでキュートでチャーミング。
主宰の江花実里さんによる前説と終演の挨拶から、公演に対する演劇に対する情熱が溢れ、誠実なお人柄が滲む。
この企画が続くことを強く強く願わずにはいられない。

脱獄計画(仮)

脱獄計画(仮)

Dr. Holiday Laboratory

こまばアゴラ劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

開演早々に、理解しようとする脳の働きが停止してしまった。諦めたと言った方が合っているかもしれない。後はただひたすらに、俳優の声と表情を楽しむことにシフトした。その抑制された、あるいは強制された動きは、
明るいアングラという印象。白でも金でもなく、服も着ている大駱駝艦のようでもあった。
これが分からない自分は時代遅れなのかもしれないなぁ。

日記

日記

カリンカ

OFF OFFシアター(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#石井由多加 #贈人
#ザンヨウコ #用松亮
#森田亘 #Q本かよ
#石黒麻衣(敬称略)
#橘花梨 さんのプロデュース企画ユニット『カリンカ』の第三回公演でしょうよ。
作りたい人と作りたいモノを作る姿勢が明確でイイでしょうよ。今回は特に強くそれを感じたでしょうよ。きっと劇団普通を観て『コレ演やりたい』『アレ言いたい』と強く思ったのだろうことが簡単に想像できるでしょうよ。
両親役の贈人さんとザンヨウコさんが想像以上でしょうよ。なに〜?わかってたの?そうなの?だから、そう言ってるでしょうよ。そうでしょうよ。母娘のコンビが最高でしょうよ。あ〜、知ってるの?そうなの?そうでしょうよ。その上、アレよアレ。用松亮さん。もう、アノ人が出てきただけで拍手しちゃうでしょうよ。もうアノ世界が一瞬で漂うでしょうよ。て言うか、もうアノ人が世界でしょうよ。視線を落として、口元をモゴモゴさせるだけで可笑しいしジワっと涙が溢れて来ちゃうでしょうよ。そうでしょうよ。

大事件は何も起きないけれど、日常のこと、自分に起こり得ることが静かに迫ってくる。現代日本の演劇の特徴的な流れとも言える気がする。じんわりと染みる。
攻めてるフライヤーとは違う色の作品。振り幅大きいけれど、このフライヤー大好きだし、作品も大好き。そういうコンセプトにも拍手。

観たらいいでしょうよ。
そうでしょうよ。

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#演劇集団キャラメルボックス
#ブリーズアーツ
#オイスターズ
#ロロ
#ZURULABO
#Mrs.fictions
これは演劇ガチャ。15分に一つカプセルを開ける楽しみを味わう。ヤッターもあるし、オーッもある。時にはアチャ〜ッもある。きっとそれは観る人それぞれにあるはず。
主催するMrs.fictionsの今村圭佑さんにとってもそうではなかろうか。それぞれの団体の作風は理解していても、カプセルから何が出てくるか、いやカプセルに何を入れてくるかは分からないわけで、冒険というか賭けみたいなものではなかろうか。
18回目の今回は、遂に本多劇場。
6つのカプセルから出てきたオモチャのどれが好みか、観劇後にお茶でも酒でも飲みながら語り合ったらいい。そこまでがこの企画上演のお楽しみ。

入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#星野卓誠 #倉貫匡弘
#長谷川景 #森下庸之
#藤堂海 #清水直子
#齊藤尊史 #岩井七世
#井上裕朗 #宮越麻里杏
#伊藤俊輔 #橘麦
#坂井宏充 #根岸晴子
#石井麗子(敬称略)
中津留章仁さんの素晴らしさはスピード感だと思う。そして、社会に目を向けたアンテナの高さと感度。そこにある理不尽な出来事、特に政治や権力によるソレに対する批判の目。かつての演劇には存在したそういうメッセージや社会批判の力を持った作品が少なくなっている現在、その姿勢を持ち続ける氏に敬意を表したい。
今回も2021年3月の事件を題材にしている。奇しくも2月15日に第5回口頭弁論で、収監されていた女性の様子を写した映像の公開が決定されたばかり。話題としても絶妙なタイミング。恐らく多岐にわたる資料を当たり、多くの取材も行って構築されたであろう本の持つ説得力に、客席がグイグイ引き込まれていく。
作品が包括するこの国の政治的な問題における危機感を共有したキャストの皆さんの、『多くの人に伝えたい』という上演に対する熱量が凄い。
それぞれの人物に語らせる言葉に苦悩と憤りが宿る。ところどころで氏からのメッセージが代弁される。チョイチョイ顔を出す現政権や独裁的な政治家への批判には大いに拍手を送りたい。ただ、言いた過ぎるのだろう、強引に挟み込んでる感じを受ける部分はあって、もう少し上手いこと……ね。
今作の見どころは、井上裕朗さんと清水直子さんによる局長と新聞記者の取材バトルに違いない。これはたくさんの人に観て聴いて貰いたい。責任を負う『長』という立場にある者は、もっと冷静で傲慢で落ち着き払って対応するように思うので、少々過剰演出な気もするけれど、最初からヒートアップして攻め合うやり取りが、事の重大さによって大物も冷静さを欠くのだと、動揺しているのだということであれば成功なのかもしれない。
それにしても、井上さんはこの役と最初に登場する役とが真逆の立場で、その振り幅を演じ分けるのが本当に凄い。
そして、橘麦さんと伊藤俊輔さんの、作品や役との距離感がとても好きだった。

今、この問題を世に届けたいという情熱がたくさんの人に伝わることを望む。
願わくは、いつか再演する時にもう少し物語が滑らかに流れるとイイ。特にカノ女性が登場するシーンと、カノ女性について最初に討議するシーンは、フワッとしていてしっくりこない気がしたし、まだ乗れないキャストもいるように思えたから。
確かに新鮮なサカナは魅力的だけれど、手をかけて熟成させたサカナは旨味を増すはず。時間をかけて手もかけて、じっくり旨味を引き出してまた板に乗せて欲しい。

ともかく、今作の観劇によって多くの人がこの国について考えるキッカケにしてくれたらと願う。このカンパニーの願いも、そうに違いない。

時間よ止まれ

時間よ止まれ

東京タンバリン

小劇場B1(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#谷川清美 #森啓一朗
#遠藤弘章 #青海衣央里
#萩原美智子 #大田路
#木林優太(敬称略)
初日。最初に言っておきたいのは、映画関係者の方に観て欲しい。コレ、監督なら撮りたくなるはず。プロデューサーとかなら撮らせたくなるはず。ちょっぴりCGなんかも使ってイイ画が撮れるよきっと。誰か下北沢に連れてきて欲しい。
サイズの違う二つの長テーブルを上手く使った楽しげな舞台にはミヒャエル・エンデがいて、後半の不穏な空気には喪黒福造がいた。そんな気分。
タイトルからは矢沢永吉を思うのは世代として致し方ない。
床の模様も含め、セットが美しく、転換の流れもスムーズで美しい。複数の役を演じる方たちの衣装を含めた切り替えも見事。
時を止めるとか、タイムリープするとか、時間をコントロールすることは人間にとって永遠のロマン。 浦島太郎の玉手箱や若返りの泉から、銀河鉄道999の機械の体だってそう。不老不死は憧れても、大人になるにつれ、大切な人とのことを考えるようになると、だんだん恐ろしいことだと分かってくる。竹取物語では既に帝が言っていた。「かぐや姫のいない世界に生きながらえても意味がない」と。そうして不死の薬を駿河国の高い山で燃やさせた。命は限りがあるから美しい。
キャストもみんな美しい。可笑しくて愛おしい。
三世代が見事に絡むファミリードラマとしても美しかった。大人の皆さんが上手いわ。
娘と息子も良かったなぁ。
大田路さんは2016年に明石スタジオで観てた。あの時の女学生役にも増してキラキラした綺麗な目をしていた。張りのある声も素敵だった。木林優太さんも味のある二役を見事に立ち上げていた。大人の役を観ながら、胸に込み上げてくるモノを抑えるのに苦労した。
演劇未経験の方の初体験にお薦めしたい。ウイルス感染の脅威で観劇を控えていた方の観劇再開にもいかがでしょう。楽しい演劇体験ができるはず。時間を割き、足を運んで、そこで起こることを同じ空気の中で味わう贅沢を味わえる。たくさんの方に観て欲しい。

推しのためなら死ねる!!

推しのためなら死ねる!!

guizillen

萬劇場(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/02/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#井本みくに #浦田大地
#神近梨子 #亀井陵市
#佐藤直彰 #田中正紀
#野澤文音 #廣瀬響乃
#藤真廉 #真辺彩加
#矢吹ジャンプ #米田ひかり
#黒澤風太 #笹井雄吾
#末安陸(敬称略)
◾︎Bチーム◾︎
『推し』という表現が好きではない。ただ、一度だけ、俳優としての飛躍を目指して配信を頑張ろうとしていたRQのサポートをするファミリーネームに『推しごと』と名付け応援していたことがある。
あれはcovid-19に世界が怯えて一年になる頃で、なかなか観劇もできずに悶々としていて、自分を見失っていたような気がする。舞台やライブのチケットを買うことも、電車代を払うことも少ない頃で、今思えば『何をやっていたんだ』と呆れるくらいには財布の紐が緩んでいた。
タチが悪いのは、熱し易く冷めにくいところ。歌手も俳優も、イイと思うと全てを逃せなくなる。
そうして認知されたい欲求が高まる。
この作品に出てくる彼等と、一体どこが違うと言えるだろうか。知らず知らずのうちに応援する者同士でマウントを取り合う。そう、まさにそれをこの半年ばかりの間に感じてモヤモヤしていた。
架空か実在かに関わらず、人の心を読み取るみたいなことを仕事にしているせいか、自分に向けられるマウントや嫌悪に、いつの間にか敏感になった。
いい意味で、少し『こだわり』を捨てようと思っていたところに、背中を押してもらった感じがしている。
でも、大好きな神近梨子さんは、今回もやっぱり素晴らしかった。きっと次も観逃すことは無いね。

生活と革命

生活と革命

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#松本みゆき #坂本七秋
#大垣友 #小久音
#久間健裕 #葛生大雅
#冨岡英香 #樋口双葉
#マチアパ #池亀三太(敬称略)
初日。20分程の短編が5作のオムニバス。今回の演出は主宰の池亀三太さんと共に、キャストも関わっている作品が多く、楽しんで演じていることが伝わってくる。
ライトな笑いが良さだけれど、どの作品も掘り下げて長編にしても面白そう。
大垣友さんと小久音さんのアノ作品のその後とか、その前とかも見てみたい。
大好きな松本みゆきさんの活躍も楽しい。
映画『ノッティングヒルの恋人』のテイストを感じるアノ作品がお気に入り。

南四局は終わらない

南四局は終わらない

マグマ∞(フォーエヴァー)

浅草九劇(東京都)

2023/02/01 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#津嘉山正種 #片岡富枝
#吉本選江 #高橋ひろ子
#嶋崎伸夫 #手塚秀彰
#松乃薫 #井上智之
#松熊つる松 #ひがし由貴
#尾身美詞 演出 #田村孝裕
#麻雀🀄️のプロリーグ
#Mリーグ の存在を知ったのはいつだったろうか。確か、共通の俳優さんを応援している福島のお仲間さんを通じてだったはず。雀荘を舞台に昭和の遊び……ディープな空気が漂うけれど、人は誰かと関わって、思いやりを持って、支え合ってバランスを保ちながら生きているというヒューマンドラマ。年齢の高い作品に尾身美詞さんがネジを巻く。人間の機微を描き続けるONEOR8の田村孝裕さんが素敵な脚本を書き上げた。
さまざまなハラハラを味わいながら堪能できる作品。

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