福島三部作 第二部『1986年:メビウスの輪』
DULL-COLORED POP
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2021/02/10 (水) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
#1986年:メビウスの輪
初演のキャストのまま観られたことに感謝。
人生は言い訳に満ちている。
それを高〜いところから俯瞰して、ゆっくり眺めて、その滑稽さを楽しんでみたい。
でも、実際はその時その時を夢中で生きているからままならない。
アインシュタインの言うように「人間の想像力が、宇宙より少し大きい」とすれば、確かに人間は自分の手に余るものを欲する無謀な生き物だ。
タブーを言葉にし、世に問うた忌野清志郎のロックンロール。なんて悲しいのだろう。
人生は選択の連続である。その選択が他者から認められなくとも、自分に正直であればきっと幸せだ。もしそれが、心と裏腹の選択を迫られ言わされるとしたら……。囚われの身で、引き裂かれる心。まるで駄々っ子のように身悶える姿に絶望が映る。その苦しみは、アーサー・ミラーの名作『るつぼ』のジョン・プロクターと重なって見えた。
福島三部作 第一部『1961年:夜に昇る太陽』
DULL-COLORED POP
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2021/02/09 (火) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
#1961年:夜に昇る太陽
初演のこまばアゴラ劇場の持つ閉塞感と闇がもたらす圧迫感は、作品の持つ恐怖を実感させたと今でも思う。けれど、今回のような舞台のサイズは、田舎の農家の家の空間には近いはず。演劇における空間について再考した。
特筆すべきは井上裕朗さんの操る少年パペット。ソレは表情を変えたりはしない。なのに、彼の動きで魂が吹き込まれ感情が生まれる。だから表情が見えてくる。ヨーロッパに根付くパペット演劇に匹敵する少年が、確かにそこにいた。
#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』
オフィス上の空
シアターサンモール(東京都)
2021/02/07 (日) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
#PINKの川でぬるい息
初日&千秋楽を観た。性趣向、近親相姦、売春、ドラッグ、差別、家庭や学校教育の限界や崩壊……さまざまな社会の陰部のタブーをポップにユーモラスに描いた秀作。作品をリードする広川碧さんの吸引力に畏れ入る。役と彼女自身がバリアフリーで……別の作品を観てみたくなる。それは彼女の力はもちろんのこと、演出の目と力によるところも大きいだろう。目当ての岩井七世さんは、ろりえ『年末』に続きお姉さんポジションで、しかも同性愛。クールな彼女が、ユキと手を合わせながら立場が逆転し恋に落ちて行く様にドキドキさせられる。彼女の歌い踊る目がヤバイ😅楽しそうで楽しい。
ストリートミュージシャン役の大垣友さんの果たす役割って大きい。生音の歌も転換のジングル⁉️も。
キャラクターとしては小日向雪さんのベンジャミンがたまらない。キュンキュンする。
欲を言えば最後までユキのドラマととして観たかった。ラストにネオンちゃんへフォーカスしていった感じが少し緊張が緩んだ気がした。ネオンちゃんのドラマはスピンオフとして別作品でじっくり観たいと思えた。
アフターイベントは大好きな藍澤慶子さん出演の短編。あの緩さが見事。彼女は本当に巧い。もっと評価されていいと思う。須田拓也さんは流石と言うしかない。二人に挟まれてベンチの真ん中に座り、虚空に彷徨わせる視線なんて極上のご馳走。観ている自分がずっとニマニマしていることを自覚する。だって可笑しくて楽しいんだもの。夢を詰め込んだ空っぽのランドセルを、もう一度背負わなくちゃ。
#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』
オフィス上の空
シアターサンモール(東京都)
2021/02/07 (日) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
#ピーチオンザビーチノーエスケープ
毒がある芸術が好きだ。エロス、性暴力、バイオレンス……主宰 中島庸介さんが勝負に出た作品。これまでにもその志向性は感じられた。それが氏の作品の魅力であることは間違いない。今作は、ある種タブーとされるジャンルに大きく踏み込み……見て見ぬふりの社会や世間、そして観客の道徳観や倫理観に鋭く刃を突きつけた。フライヤーを最初に見た時の衝撃を裏切らない作品が誕生した。
ポツドールが拓いた世界を斜めに切り込んでポップに提示してみせた。キャストの覚悟は偉大で敬意を表したい。そうさせたのも氏の本気の挑戦によるものに違いない。かつて、体当たりする俳優はそれのみに価値があって演技(台詞)が残念で目を瞑るしかなかった。でも今作は違う。美しく可愛らしい俳優がそこに覚悟をもって立ち、見事に生きている。陳腐な表現だけれど、実に巧い。そして観終えた時に、それまでの「覚悟」と表現していたモノの必然を感じ、語弊を恐れずに言えば……なんだか大したことではないように思える。それこそが、今作の力なのではなかろうか。必見。
今作で特に目を引いたのは……山田梨佳さん、井上実莉さん。今後の彼女たちに注目したい。
バイオレンスを一手に引き受けた斉藤マッチュさん。あの雰囲気、やっぱり好きだ。
大好きな藍澤慶子さんは重要なマドンナ。でも、次はまた違う役柄で、たっぷり話す彼女を観たい。
シェアの法則
劇団青年座
ザ・ポケット(東京都)
2021/01/22 (金) ~ 2021/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★
演劇はシェアするもの。演劇讃歌。日隠bionの岩瀬晶子さん書き下ろしの本作は、covid-19下における演劇界の苦境に対し、演劇人へ、そしておそらくは自分自身へもエールを送っている作品だろう。日隠bionはずいぶん前から拝見しており、人間愛に溢れる作品を楽しんできた。青年座が依頼したのも頷ける。キーパーソンが最後まで登場しない作りが魅力的で、その人物に対する思いを語らせながら、登場人物の人柄が見え、そして変化していく様を味わった。後半の展開は観客を惹きつけた。
最も良かったのは「カズオ……おやすみ。」
言いたいことを言わない、言わせたいことを言わせない、書きたいことを書かない……そこに一番伝えたいことが滲むような気がする。
そう考えると、終盤には、やや説教じみていると感じる観客もいたのではなかろうか。前半の台詞も隙間が多いと思えたし、説明的にも感じたので、再演の際には改善されるといい気がする。
キュートな尾身美詞さんは、その持ち味を遺憾なく発揮し、隠と陽を誰もが抱えていることを提示した。
地方と首都、他国と日本の関係の在り方が、隣人との関係として感じ得る作品。
コンとロール
ほろびて/horobite
OFF OFFシアター(東京都)
2021/01/19 (火) ~ 2021/01/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
かつて鉄人28号は少年の良心の操作で悪を挫いた。隣人が狂人と化し人を操るならサイコでサスペンスでホラーだ。前半の可笑しさが一変する。反吐が出るほどの嫌悪感に襲われる。それは、芸術は毒があってこそだと考えるわたしからの最上級の賛辞。突然のモノローグはみな、中途で立ち消える。ストーリーも歪(いびつ)でガタガタな展開。その粗さの中にかつての独裁者や現代の闇が垣間見える。NODA MAPの『THE BEE』を連想した。
藤井千帆さんの美しさを浴びるのが観劇の目的の一つ。ユーモアと困惑と恐怖が混在する演技を堪能した。美しくて思い切りがイイって最強だ。
そしてもう一つの目的は鈴政ゲンさん。全てを晒す覚悟を観た。それはまるでヌードだ。涙と鼻水を拭うこともせず……気迫を感じた。演じることは、そこで生きることだと再認識した。
人生に何が起きても、息していようと思う。
グレーのこと– 2021ver. –
ONEOR8
ザ・スズナリ(東京都)
2021/01/16 (土) ~ 2021/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
初日と19日を観劇。初日カーテンコールに感激。どれ程の恐怖の中で初日を迎えられたのかを感じ痺れた。素晴らしい作品を届けてくれたキャストとスタッフの皆さんに敬意と感謝を評したい。
再演に適う作品を、しっかりcovid-19のver.2021にカスタマイズし、社会と地続きの作品として提示した。
スタイリッシュな白と黒の衣装。それはまるで善と悪。相反する両者の評価は、視点の変化一つでひっくり返るオセロゲーム。世の中にはクリアに二分できるモノは少ない。寧ろその間で両者をミックスしたグレーゾーンばかり。多種多様な考えと関わり。その中でどうやって生きていくのか。何に耳を塞ぎ、何に耳を傾けるのか。もしもあの時…が連続するのが人生。人生を一度だけやり直せるなら何処からにしようか。
羽田美智子さんがとにかく美しい。それを観ているだけで十分に満足できるのだけれど、彼女の見つめ逸らし宙を彷徨わせる視線が雄弁で目が離せない。
そして、作品に彩りを加えるのが伊藤俊輔さん。吃音と口籠る可笑しなキャラクターのクオリティーは正に芸術であり、ある種の風格さえも感じる。コレを楽しみにONEOR8を観る観客は少なくない。劇団の一つのカラーとして確立したように思う。たくさんの人に観て欲しい。
ザ・空気 ver. 3
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/01/08 (金) ~ 2021/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
演劇の価値がココにある。演劇は社会風刺の大切な手段であり、使命でもある。かつて政が恐れた演劇が確かに存在していた。シリーズ第一弾に直結した今作は、covid-19と悪政とマスコミのあり方に対し真正面から切り込んだ秀作。観ながら血がたぎる。安全なところで好き勝手言っていてはダメなんだ。もう、選択を迫られているんだ。その責任を自分に向けられたとき…何を選ぶか考えねば。勇気を持とう。たくさんの人に届いて欲しい。
熱海殺人事件 -ザ・ロンゲスト・スプリング-
劇団アレン座
王子小劇場(東京都)
2021/01/06 (水) ~ 2021/01/11 (月)公演終了
スーツに違和感を感じたオープニング。第一声を聞いてズッコケた。アドリブ?で笑いに転じようとしていたが…言語道断。観客に観ている(聞いている)ことを辛くさせてはいけないと思う。つか作品はスピード感、ドライブ感が命。こんなノロノロの上演は初めてで困惑した。
老いは煙の森を駆ける
女の子には内緒
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/12/28 (月) ~ 2021/01/06 (水)公演終了
『コントロールオフィサー』+『百メートル』二本立て公演
青年団
アトリエ春風舎(東京都)
2020/12/31 (木) ~ 2021/01/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
既存の作品を見事に2021年にカスタマイズ。東京オリンピックへの疑念が見事に盛り込まれた。勝者と敗者のメンタリティを堪能。『コントロールオフィサー』の島田桃依さん、『百メートル』の永井秀樹さんのキャラが最強だった。
東京原子核クラブ
アイオーン / ぴあ / オフィス・マキノ
本多劇場(東京都)
2021/01/10 (日) ~ 2021/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
コメディのふりをしたホンモノの演劇がココにある。大笑いする。そして泣かされる。舞台は昭和7年、東大近く本郷の下宿「平和館」。名は体を表すと言うが、まさにそれで、作品の根幹を表す。過去は変えられない。学者が知り得た知識もなくすことができない。過ちを無かったことにはできない。傷つき調子っぱずれになったピアノが、調子っぱずれの世界のよう。それは、別れを告げることができない別れの異常性と同じだ。この素晴らしい演劇が、自粛を強いられる異常な世界に負けることなく、たくさんの人に届いて欲しい。最後に…文学座の若手、平体まひろさんの燦めきを記しておきたい。当時の女性の生き辛さ、その悲しみを纏う。彼女が佇む僅かな時間に美しいロマンスが匂い立ち、その燦めきが闇に溶けていく。胸が締め付けられた。
なんてったって
青春事情
OFF OFFシアター(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
白勢未生さんを目で追う。柔らかいヒロインで素敵だった。何年か後には社長を引き継いでいる気がした。社長の内野詩野さんは中島みゆきに通ずる美しさ。昨年カフェ公演で拝見した時もエロ可笑しかった。容姿も美しいけれど、ちょっとハスキーな声がイイ。艶やかな大人の色香が漂う。今作の爽やかに可笑しい公演に、彼女の存在が深みを与えた。
ユーモアが散りばめられた公演。笑って観ればいい。
その子17歳
少女東京奇襲
高田馬場ラビネスト(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
衝撃的な出会いだった。緻密に計算された構成と演出に一目惚れ。あれだけキャストを魅力的に見せるのは演出家の腕前。舞台芸術学院出身の主宰と俳優陣。学院の評価がグンと上がった。花岡美月さんは今後、目が離せない作家・演出家だ。
かさぶた
On7
小劇場B1(東京都)
2018/02/03 (土) ~ 2018/02/11 (日)公演終了
モジリ兄とヘミング
モジリ兄とヘミング
劇場MOMO(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/28 (水)公演終了
鵺的トライアルvol.2『天はすべて許し給う』
鵺的(ぬえてき)
コフレリオ新宿シアター(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/13 (火)公演終了
Q学
田上パル
アトリエ春風舎(東京都)
2018/05/25 (金) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
空想科学II
うさぎストライプ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/09 (日)公演終了