満足度★★★★★
かつて鉄人28号は少年の良心の操作で悪を挫いた。隣人が狂人と化し人を操るならサイコでサスペンスでホラーだ。前半の可笑しさが一変する。反吐が出るほどの嫌悪感に襲われる。それは、芸術は毒があってこそだと考えるわたしからの最上級の賛辞。突然のモノローグはみな、中途で立ち消える。ストーリーも歪(いびつ)でガタガタな展開。その粗さの中にかつての独裁者や現代の闇が垣間見える。NODA MAPの『THE BEE』を連想した。
藤井千帆さんの美しさを浴びるのが観劇の目的の一つ。ユーモアと困惑と恐怖が混在する演技を堪能した。美しくて思い切りがイイって最強だ。
そしてもう一つの目的は鈴政ゲンさん。全てを晒す覚悟を観た。それはまるでヌードだ。涙と鼻水を拭うこともせず……気迫を感じた。演じることは、そこで生きることだと再認識した。
人生に何が起きても、息していようと思う。