独りぼっちのブルース・レッドフィールド 公演情報 独りぼっちのブルース・レッドフィールド」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-20件 / 50件中
  • 満足度★★★★

    抱く想い
    物語が始まってまもなく登場する飛び道具的な強烈なキャラクターと
    ドタバタな笑い、そしてこの劇団名などから、スラップスティックな喜劇かな、と思っていると少し違った。

    この物語の主人公は、奇妙な記憶障害のあるガンマンだ。家族を無残に殺された彼は、復讐のために25年も旅を続ける。

    最後の仇を倒した直後に、彼が知る残酷な真実。そして、彼の決断。このためにこれまでの設定があったのか、と思うほど良くできていたのだけれど。

    脚本・演出の吹原氏が終演後にツイッターに書いていた。はじめに想定していた結末のこと。それはずっと救いのないものだった。

    物語としては、切実なものとなったかもしれない。けれど、それは自分たちの描くべきものだろうか。そういう葛藤。その上で彼の、いや彼らの選んだラスト。

    この劇団は、サービス精神が旺盛だ、と思っていた。しかし、この舞台を観るとサービス精神という言葉だけでは収まらない。

    彼らの舞台を観にきた人々に、どんなものを渡せるか。それを真剣に考えている、そういう劇団なのだろう。たとえば私たちが、誰かを大切に思う感情の暖かさを抱いて帰路に着くこと。

    この舞台を観終わって、そんなふうに思った。

  • 満足度★★★★

    テーマを浮上させる終盤の衝撃たるや!
    老いたガンマンとヘンな仲間たちの愉快な旅…。
    お得意のナンセンス・ギャグ(今回は下ネタは控え目)に大笑いしてすっかり忘れた冒頭で張られた伏線を回収してテーマを浮上させる終盤の衝撃たるや!
    おバカな笑いをちりばめつつ、実はきちんとしたテーマが潜んでいるというのはいつものことながら、今回はのテーマは「人を殺す“罪”の重さ」ということで、よりシリアス。
    あと、銃撃戦の表現が愉しかった♪

    ネタバレBOX

    終盤で明かされる衝撃の事実に映画「エンゼル・ハート」を連想したりも。
  • 満足度★★★★★

    あの時確かに「劇場」中を掌握する力を感じました
    (観劇二回目感想すいません)
    先に最前列でR-18ステージを観てしまった為、
    今回の二度観、ど真ん中席普通ステージでは
    どういう感想を抱くのだろう?と自分でも思っていました。


    パンフレット含めて読み込んだ上での二度観という事で、
    各演者の所作/台詞に隠された伏線を眺めつつ、
    いつの間にかやはり物語の世界に引き込まれていました。

    「知っている」からこそ分かる、
    単なるやりとりでないその「重さ」を受け止めながら。。。


    まず、PMC野郎のお芝居は軽めの笑わせる展開と思わせておいて、
    (観直すと気づく)かなり意味深な伏線張りまくってるんですよね。

    1度「ラスト」を観たからこそ分かる、復讐劇でありながら
    基本「おちゃめ」と言っていいほど気のいい連中の明るいお芝居の中に
    物語を根底から覆してしまうほどの展開への
    「伏線」が程よい割合で差し込まれているという。


    そして、PMC野郎の更にすごい所は、物語の起伏どんな場面でも
    そこまでのストーリー設定を上手く活かした笑いの小ネタを差し込んで
    「大爆笑」を取ってしまう、という事。

    ※ 「笑いネタ」の取り扱いにおいては、
      自分の中では劇団「PMC野郎」が一番かも知れません。


    観劇していて「楽しみ」「悲しみ」「憤り」など色々な感情を
    舞台上から受け取って、観客も同様に感じているからこそ、
    いきなり、それもちゃんと物語と繋がった笑いの小ネタが差し込まれる事に、
    思わず劇場中が「大爆笑」させられてしまう
    (えっ!あの人そんな事になってたの!的な)、
    観客の「心のスキマ」を突かれるような見事な笑わせ方が出来ているなあ、と。




    昔、同じ劇場で全く別の舞台公演を観た際、
    舞台最前列からわずか3席程度後ろになっただけで、
    舞台上で演じている役者の感情と熱が「全く伝わってこない」という事がありました。

    本劇場の構成、
    ・ 前半分は平台(=前の人の頭で舞台が見えにくい)、
    ・ 後ろ半分は段差式(=遠いので演者の表情は分からないが舞台自体は見える)、
    について、
    その時は「本劇場自体が広さと構成の関係もあり、役者の熱を伝えにくい」
    と考えていました。


    しかし、今回ブルースレッドフィールド(渡辺徹)と「アイツ」の熱場面、
    劇場のど真ん中席の自分にはその表情までは観えませんでしたが、

    はっきりいって「胸ぐらをつかまれるぐらい」に、気持ちを持って行かれました。
    ※ もしかしたら初回最前列観劇時の(2人の表情の)
      記憶が残っているのかも知れませんが、

    「アイツ」はすごかった、そしてそれを受け止める
    ブルースレッドフィールドもまた熱かった。


    感情伝播の話をすると、役者さんが演技に「熱」(感情)をのせたとして、
    観客にその感情が伝わる(伝播、共感する)距離は、

    ・ 役者の熱量
    ・ 役者の演技の上手さ
    ・ 物語の良さ(場面の盛り上がり具体)
    などが関わってくると思います。


    ある舞台では、最前列/目の前で号泣する演者を観ながら、
    まったく涙腺が緩まない事もありました。


    しかし、本劇の「あの場面」はすごかったと思います。

    劇場ど真ん中の自分は「アイツ」とブルースレッドフィールドの
    言葉のやりとりから目(耳)を離せず、目は涙に潤んでいました。

    そして、お互いの気持ち、語っている心情とその状況が痛いほど
    リアルに心に浮かびました。

    ※ 勘違いでなければ、あの瞬間、劇場中が
      舞台上の2人の芝居(感情)に支配されていたと思います。


    二度観てなお、これだけの求心力を持っている、
    「独りぼっちのブルースレッドフィールド」、
    間違いなく名作認定ものですね(´;ω;`)

    ネタバレBOX

    ヌータウ(加藤慎吾さん)に惚れたわ。

    これまでの舞台でもその役どころと上手さは感じていましたが、
    ヌータウはがっちり自分の心を掴んでしまいました。

    ブルースレッドフィールドの(偽りの)復讐劇の中、
    ブルースと食事を取る度に
    「トマト入ってるぞ」
    「人参くれ」
    とこの(偽りの)復讐劇を何年も何年も続けて来た中で
    (奇しくも)育まれてしまった”友情”、
    だからこそこのやり取りが重い(´;ω;`)


    そして、(最後と定めた)ビル・バセットの殺害計画の中で
    「この復讐が終わったらどうするか?」について、
    ブルースは「自分が信じていた家族の敵討(かたきうち)の後」として、
    ヌータウは「(ブルースを騙して)ブルースの血縁全てを殺すという復讐の後」として、
    それぞれの想いを持って語り合いますが、
    そこにも”友情”、そしてヌータウに生まれた葛藤が・・・


    (何も知らない)ブルースの友情に対して、
    (騙している)ヌータウもついほだされ始めてしまう・・・


    本当の最後の血縁エリナを殺さず、消えたヌータウとアナ、
    そして「真実」を知ってヌータウとアナを追うブルース。。。


    今回2度目の観劇ですが、今回の全役者さんの
    熱量はとてもとても高かったと思います。

    ※ 特に渡辺徹さんが「ヌーーーーーータウ!!!!」と叫ぶ辺りから


    10年の時を経て、ヌータウとアナの元に現れたブルース。
    ヌータウの言葉を聴いてなお、
    ブルースは「自分自身にその家族を殺させた」
    ヌータウを殺そうと思っていたのでしょうか。

    あの時、ヌータウの家族達が出てきた事で

    実際には無かった出来事である、
    「自分が自分の家族をギャングから守ろうとして守れなかった」、
    あの場面を思い浮かべたのでしょうか、

    そして暗転とともに一発の銃声。


    記憶を捨てたブルース。


    西部開拓時代、インディアン達を殺して
    土地を奪うことを生業(なりわい)としながらも
    「正しい人になりたかった」というブルースのその心情、

    そして犯してしまった多くの罪、

    そして罪に対するヌータウの仕返し、

    (これも他の感想者さんが言っていた事でしたが)
    誰もが正しいとは言えない、

    そんな時代の中で、ただ1つヌータウとブルースの間に
    生まれた友情だけが最後の真実だったのでしょうか。


    (1回目の観劇では印象に残りませんでしたが)
    ブルースの最後の言葉
    「悪くない、悪くない」、

    そして娘にイヤリングを渡して抱き合う姿が、
    ブルースの夢を最後の最後に果たしたのだなあ、と
    これまた涙が止まりませんでした。
    ※ 完全に感情伝播の距離を超越してます。胸ぐら掴まれてます。


    自分でも何書いてるんだか分からなくなってしまいましたが、
    とにかく「すごい物語」「すごいお芝居」でした。


    PS.舞台セットの使い方も上手かったです。
      回転舞台が素早い場面転換の他、真の復讐の旅である10年のその道程の激しさを表す様(さま)など。
      そして、映像なのか幕なのか背景に描き出された過去のブルースの行いと
      自分が葬った家族達の場面など。
  • 満足度★★★★★

    渡辺さんが出てどうなるの?と思ったが...
    ...いつも通りのPMCで安心。それにしても出世してきて嬉しい限り。「脇を固める団員さんがイイ!」の声もありましたが、同感。次回はチケット取れないんじゃないかと心配しています。

  • 満足度★★★★★

    明日誰かに話したくなる復讐劇
    ポップンマッシュルームチキン野郎の紡ぎだす物語は、いつだって愛にあふれている。

    今回、渡辺徹さんという、誰もが知っているスターを主演にしての公演でしたが、それでもポップンマッシュルームチキン野郎はポップンマッシュルームチキン野郎でした。
    公演を積み重ね、どんどん新しいものに挑戦しながらも、良いところは残していっている感じがします。

    それをまず感じたのが、舞台装置。
    『銀色の蛸は五番目の手で握手する』のスライド舞台と、『うちの犬はサイコロを振るのをやめた』の回転舞台。それらを上手く組み合わせブラッシュアップさせた舞台のように思いました。
    ブルース・レッドフィールドという男の半生を描いているため、場面も良く変わりますし、時間も結構流れますが、その舞台装置を上手く使い、暗転を最小限におさえながらも、場面の移り変わりをわかりやすくしていたのが良かったです。

    また、客入れパフォーマンスも健在ですし、プレミア席S席A席でそれぞれ前方後方選べたり…本編の内容だけでなく(内容だけでも十分勝負出来るとは思いますが)、公演全体で客を楽しませようとする姿勢が本当に素晴らしいと思います。

    今後もその進化に魅せられていたい。

    ネタバレBOX

    今回も、個性的なキャラクター達は健在でした。
    サボテンをはじめ、謎のフランス人やサソリやナップサックや馬…。
    CR岡本物語さん、高田淳さん、古舘佑太郎さんのジャンゴ三兄弟のバランスがとても良くて、ブルースの物語ながらも、彼らの物語もしっかり描かれていたのが嬉しかった。
    そういう意味では、サボテンジョー(サイショモンドダスト★さん)とフランソワ(小岩崎小恵さん)、マック(野口オリジナルさん)にももう少し、それぞれの特徴を活かした目立った活躍があったら良かったなぁと思いました。
    (マックは活躍の場が無くは無かったのですが、やはりちょっと地味だったので)
    特に、サボテンジョーが…個人的に凄くお気に入りだったので…。
    ただ、この物語はあくまでブルース・レッドフィールドの物語であるので、あれ以上、別のキャラクターの物語を描いてしまうと、多分まとまりが悪くなってしまっただろうとも思います…難しい。
    なので、そこまで目立った活躍の場が無い中でも、愛おしく思えるキャラクター達だったということで。
    今後、スピンオフの物語が作られることを期待します。

    渡辺徹さんのブルース・レッドフィールドと2人で物語の中心を担っていたヌータウこと加藤慎吾さんですが、最後の復讐のシーンなどは特に、渡辺徹さんにしっかりと付いて行っていたように思います。
    作中、彼は2度しか笑いませんが、その2回が本当に印象にのこりました。
    加藤さんの泣きそうな笑顔は、こちらの胸を鷲掴みにします。
    また、スタンレイ・ボガード(横尾下下さん)も良かった。横尾さんは『犬コロ』に引き続き、主人公に真実を告げるとても重要なキャラクターを演じられていますが、それまでの楽しい雰囲気から一気に哀しい真実に連れて行ってくれる切な演技をされるので、とても好きです。
    「見事な復讐だ」という台詞がとても印象に残っています。

    そしてやっぱり、脚本が良い。目一杯笑わせながらも、最後には泣ける。
    泣けるから良いという訳ではありませんが、PMC野郎は観た人の心に"なにか"を残して行きます。
    たくさんの感情を揺さぶって行きます。
    「復讐劇」と言えば、最後は復讐を果たす物が多いと思いますが、その結果は、新たな復讐を生み出すか、虚しい孤独を得るかのどちらかだと思います。
    この作品は、復讐劇ながらも、復讐を遂げないラストを選んだのが本当に良かった。
    「善人になりたい」と言いながらも、人を殺めるという選択を簡単にしてしまう、不器用で自分勝手な極悪人たち。一言で切り捨ててしまうのならば、自業自得だと思います。
    でも、そんな悪人たちでも、愛を知り、許しあうことが出来れば、新たな憎しみを止めることが出来るのかもしれないと思わせてくれました。
    最後には記憶を失うことを選びまた「一人ぼっち」になったブルース・レッドフィールドですが、彼は決して「独りぼっち」にはならなかったのです。

    復讐劇であると同時に、家族との、仲間との、そして友との愛の物語だった。
    悲しみや憎しみの連鎖を断ち切る事の出来る物があるとしたら、それはやっぱり、愛なのかもしれません。
  • ポップンマッシュルームチキン野郎初観劇。
    さすがの出来栄え。

    客入れ時の余興もとても面白く、エンディングまで存分に楽しめました。

    あとは、好みかな。


    上演時間:110分

  • 満足度★★★★

    誰かに話したくなりました
    復讐劇なので、最終的には「誰か」を許す形で終わるだろうくらいには
    思っていましたが、「そうきましたかっ!」という相手でした。
    確かに強烈で残酷な復讐。
    そういう意味では「起承転結」に忠実な芝居だったと思います。

    ラストは、今まで見てきたこの劇団の芝居の中で
    最もやるせなかったし、残酷に感じました。

    でも、単に悲しいだけではなくて、
    妙にしょーもなくて、バカバカしくて、エネルギッシュで
    この劇団らしさが十分に感じられる芝居だったと思います。

  • 満足度★★★★★

    ぐらんぐらん
    笑って泣いて怒って、そしてダマされる。
    それがポップンマッシュルームチキン野郎の醍醐味だと思っている。
    今回はその配分が絶妙だった。
    脚本家としての吹原幸太氏の腕力はどこまで伸びるのだろう。
    次回公演も期待が高まる。

  • 満足度★★★★

    そこは新宿シアターサンモール
    客席のゆるやかな傾斜が本多やPARCOの感じに似て、そのひと回り小さめのシアターサンモール(客席300程度)は新宿中心街から少し離れた、ビル地下なのにプチ・ゴージャスな劇場らしい劇場だ。通路に並ぶ客演・渡辺徹あての祝い花の豪華さ、送り名の豪華さはさすがというか。以前チラ見した時の劇団の「風貌」とはえらいギャップだが、この華やいだ祝祭の空気は狙って出せるものでない。
    開演前のステージではギター、ウッドベー、ドラム+1で外タレのロック曲を演奏、と思いきや、エアである。芝居にバンドは出てこないが、芝居中この光景が既視感のように重なる部分がある。パフォーマンスもそこから発想されたのかも知れない。ただドラムがひっしと叩く8ビートのスネアがなぜか<裏>でなく<表>に入り、音楽をやる人間なら普通これはギャグに属するが、そう意図してるふうでもない。ギャグとマジ(自然)の境界のぼやけ具合が以前「チラ見」した同劇団の舞台にあったのをかすかに思い出した。そう私は未知の劇団の「正体」を発見しにやって来たのだった。
    普段「役者」より「芝居」を見ようとする客だが、冒頭板付きで登場する渡辺徹の役割をどうしても追ってしまった。客演のスタンス、渡辺氏の出自であるリアル(新劇系)演技は運命に翻弄される主役の役柄に最終的にはフィットし、(笑いに絡む場面もあるにはあるが)貫徹して良かった、とは思いつつ、役の心情をもっと劇的に熱演で表現する位があっても良かった気がした。
    もっとも、ドラマのほうはラストが決まれば「全て良し」なうまい作りがされている。復讐の物語の敵対する存在が対峙してのやりとりの終わり、一方が投げた問いに他方が逡巡したのち返した一言、その答えを聞いた相手のリアクションの、陰影を切り取るように照明がアウトし、フィナーレ・・。
    このラストが残すものは多様でメッセージ性もあり深いテーマを含んでいる。が、そこまでの深みを受け止めた観客がどれだけ居たかどうかは未知数だ。というのは、憾みとして、シリアスに見るべき部分とギャグと荒唐無稽な設定の関係の整理を、観客に強いる面が残っているように感じたからだ。

    ネタバレBOX

    これは西部劇の物語設定を借りて書かれたお話で、主人公は復讐相手を探す道程にあるが、復讐の原因となる事件(家族全員の虐殺)が起きる時期のエピソードが回想シーンとして挿入され、徐々に話の大筋が見えてくる構成になっている。その間、シュールな笑ネタも細かに挿入される。否、序盤の人物登場からナンセンスの嵐である(動物はともかく無機物まで擬人化して登場する)。これらが人物の役割を比喩的に表わしたものかと言えばそうでもなく、ナンセンス度は高まるが、物語を追う目にはそれが障害にもなる。そこをギャグによる突き放しで押し切る技は見るべきものがあるが、リアルさの上に積み上げる(それによって重みを増す)タイプの芝居の尺度からすると「積み上がり」づらい要素が弱点としてみえてしまったのも事実。そこを楽しみたい向きには笑は欠かせない要素だが。
    一つには、誰もが知った話やパターン化したドラマを、どう料理するか(ギャグで)を見るのでなく、伏線と謎解きが最後にピークを持つきちんと書かれたドラマなので、ドラマと相乗する笑いでないと腰を折る形になる。ナンセンス・ギャグよりは人物の行動の中に起こる人間臭いしぐさや反応が笑える要素となる。この点は惜しくも、細やかな演技がもう一つ欲しい場面が多々あった。逆に言えば強靭なドラマの語りがあっての、脱線の笑い。ただこれに関しては、序盤のギャグの畳み掛けから話が複雑になって行く段でギャグは徐々に減っている。「笑」は「物語」に主役を譲って大人しくなった。問題はその「物語」が立派に舞台上で闘ってくれたかだ。
    扱いが難しいのが、序盤に登場人物として出してしまった架空の者たちや、都合のいい場所移動・人との遭遇など寓話的に進むタッチが「地」としてあって、微妙な行為の違いが分かれ目となる場面で厳密な説明(演技や脚本上の)がなく、スルーしている部分だ。主人公の記憶に関する設定(近くでピストル音を聞くとある時間までの記憶を無くしてそこに戻ってしまう)が、色んなケースで厳密にどうなっているかの説明は、丁寧なほうが良い。また主人公の「本当の敵」の過去の所業についての説明も、(ラストが氷塊させてくれるとはいえ)欲しい。役者の佇まい一つで「本当にやったかも知れない」と思わせる事も可能ではないだろうか。挑戦して良いと思う、「普通の芝居」みたいに。
    終盤に最も気になったのが、主人公が本当の敵を見出した時、全開で怒りをたぎらせ、元の原因が己にある事に思い至らないという不自然さだ。かのインディアンに対する主人公の怒りに共感する観客がもし居たとしたら、感覚の麻痺だ。この場面で激昂をみせることでラストが印象深くなる事はあるだろうが、「自分が原因でも今この状況で俺は怒るしかないっ」と複雑な心理にあって感情がわき起こっているなら、リアルな設定での「激昂」は成立するだろう。というか、その可能性を追求するこだわりを、見たいと思った。

    復讐の応酬の沼にはまった二人の最終対決は次の如く終る。記憶障害の主人公ブルースがピストル音に三たび記憶がリセットされ、目の前にいる<敵>を発見する。その時彼は、それまで何度となく繰り返しただろう問いを、舞台上では初めて口にする・・「お前は誰だ?」。自身の復讐を遂行し終えた相手が懊悩の末、もらした言葉は「トモダチ」。ブルースの緊張にこわばった姿勢が溶解する。乗り越え難い対立からの和解が、潔い形でなされる図は、実世界では夢物語でしか無いだろうし、そもそも和解などというものを成り立たせる対等な関係じたいが希有である。この作品も、復讐が完遂された事じたいが奇跡に等しく、その事で対等さを獲得したからこそ、「トモダチ」と呟いた事が彼の自由意思からの選択として、尊く感じられるのだ。現実には正すべき行ないを為した者が強さに奢って改めず、不利な条件での「和解」を飲まされる弱者は復讐を遂げられずに燻る。犯罪の根は増殖する。そんな現実あっての和解の尊さ、、私が勝手に読み取ったに過ぎないかも知れないが、普遍的テーマである事に変わりはない。

    さてポップンマッシュについて。いまだ勝手な想像だが、この劇団の笑の質はどちらかと言えばシュールで「メジャー」や「メイン」に在るものに土砂をかけるのがスタンスではないか。だから、勝手な願望だが、ウェルメイドな物語と共存する道を探る(実は迎合する)より、痛快な毒を追求してほしい。願わくは毒を盛る相手を見誤らぬ事を。的を間違えたら、笑えない。
  • 満足度★★★★★

    後書きで…
    ポップンマッシュルームチキン野郎さんの
    コメディ部分が大好きでしたが
    本公演での、物語の練りに練りこまれたディテールと
    ラストに向けてのどんでん返し!!
    やられました。。
    まさかの真実。

    そして、ラストの愛に涙でした。
    渡辺徹さん(ブルース・レッドフィールド)が
    ずっと渡したかったイヤリングをやっと渡し、
    孫娘を抱きしめてもうお前を離さないという終わり方は
    愛でした。
    空砲も。
    その同時進行で若い頃のブルースを演じていた
    沖野晃司さんのシンクロ演出も良かったです。

    Twitterで脚本家で主宰の吹原さんの後記を読み、
    鼻の奥がツーンとしました( ; ; )
    是非、この作品の続編が観たいです!!
    勿論、渡辺徹さんにも御出演願えたならば
    観客としてこの上ない喜びです!
    素敵な作品ありがとうございました^_^

    *劇団員さんのエネルギーも凄かったです!
    ナップサックもサボテンもサソリも
    客演さんのジャンゴブラサーズも全てのピースが
    ピッタリハマっていたから感動や笑いや人間の陰の部分が
    明確に伝わったと思います。
    長文になるので全て書ききれなくてすみません!

  • 満足度★★★★★

    色々なものが投入されていて、かつバランスが良い
    千龝樂を観劇。遂にこの領域まで達したかと感慨。台本、役者、舞台装置、演出・・・全てが渾然一体となって素晴らしい作品になりました。笑いもあるが残酷さもあり、衝撃の事実とラストの優しさ。こんな芝居をやられてしまっては堪らないです。

  • 満足度★★★★★

    作家のアイデアに★5つ
    客入れのパフォーマンスも全力投球のエンターテイナーぶりで
    「ホントにいつもありがとう!」と言いたい。
    至近距離で銃声を聞くと、記憶が25年前に戻ってしまう、
    記憶障害を患っているガンマン、という設定をチラシでバラしてしまった以上
    どんな展開になるのかと思いきや、本人もびっくりだろうが
    観ている側もあっと驚く驚愕の事実が明らかにされる。
    この設定のアイディアはどこから湧いてくるのだろう。
    作家の豊かな発想力に脱帽するしかない。
    インディアン役の加藤慎吾さんが素晴らしい。
    相変わらずの被り物も大活躍で、誰が誰だかパンフレットを見ないと判らない。
    渡辺徹さんが出ているからか、R-指定の演出はいつもよりおとなし目
    だったような気がする…。







    ネタバレBOX

    25年前にギャングによって家族を殺されたブルース(渡辺徹)は、
    あれ以来至近距離で銃声を聞くと記憶が25年前に戻ってしまうという
    記憶障害を抱えながら復讐の旅を続けている。
    頼りはいつも持ち歩いている日記と、同じように家族を殺された
    インディアンのヌータウ(加藤慎吾)。
    ブルースはこの相棒と一緒に最後のひとりを倒して復讐は終わる。
    だがその最後の一人があまりに若かったことから、ブルースはふと疑念を抱く。
    そこへ25年前の相棒スタンレイ(横尾下下)が現れて、驚愕の事実を告げる。
    ブルースが半生をかけた復讐、それはある人物の自分への復讐に他ならなかった…。

    実は相棒のスタンレイたちとインディアンを殺すことを生業としていたブルースは、
    ヌータウの家族を殺してしまっていた。
    これはヌータウの、ブルースに対する巧妙な復讐だったのだ。
    ブルースの記憶障害を利用して偽の日記を読ませ、憎しみをあおって
    ギャングたちへの復讐と称して実はブルース自身の家族を次々と殺させていた。
    ブルースは自分の手で妻も子供たちも撃ち殺し、それらの記憶はなかった。


    長年温めていたテーマだというが、この極めてシリアスで悲惨な鉱脈を、
    吹原氏はどうやって掘り当てたのだろう。
    明かされた真実が衝撃的で、ヌータウの表情や一言ひと言が後からじわりと沁みてくる。
    また私は被り物キャラをここまで真剣に愛し、演じる劇団をほかに知らない。
    世間によくある笑いを取ろうとして登場する被り物たちは、出てきた時点で飛び道具的で
    一発受けたらそれで終了、演じる方もどこか緩くて一緒に笑って引っ込んでいく…
    という扱いが多いように思う。
    ポップンは、前作「うちの犬はサイコロを振るのをやめた」も素晴らしかったが
    役者の表情が見えにくい被り物でありながら、心をわしづかみにして泣かせる
    表現力が突出している。
    シリアスな本流を損なうことなく、出てきただけで笑ってしまうようなルックスと
    意表を突くキャラ設定が絶妙なバランスを生み出す。
    それは適度にちりばめられた下ネタも同じである。

    その意味で、今回“R-18指定臭”が若干薄まったのは残念だったかな。
    ポップンらしさが薄まったのは文学座ファンへの配慮かもしれないが
    テレビではなく小劇場系ではその辺の配慮なしにやってもらいたい、
    というのもポップンファンの心理。
    ブルース役を、たとえばユースケ・サンタマリアあたりが演じたら
    下ネタと笑いのセンスがもっと共有できるのではないかと想像してしまった。

    真実を知ったブルースの慟哭がイマイチおとなしく感じたのも、
    ポップンの劇団員だったら、存在が壊れるような苦痛と哀しみを爆発させるだろう、と
    想像するからに他ならない。
    劇団として大きくなれば、選択肢が広がるからいろんなことができるだろう。
    その中で今後ポップンらしさをどうキープしていくのかが問われると思う。

    それにしても今回もキャラの立った登場人物(?)たちが楽しかった。
    お尻を出しても出さなくても色気のある悪役をやらせたらやはり荻野崇さんは素晴らしい。
    声を聴いて当日パンフで確認しなければ、あのサボテンがサイショモンドダスト★さんとは
    すぐにわからなかったが、この人の熱い台詞はとても魅力的。
    荷物をまとめるだけでなくついには国をまとめて大統領になるナップザック、いいキャラだねえ!NPO法人さんの、“間”で笑わせるセンスが光る。
    ヌータウを演じた加藤慎吾さん、ブルースに、「全部終わったら一緒にステーキ屋でもやろう」
    と言われた時の唯一の笑顔が印象的。
    どれほど複雑な思いでその言葉を聴いただろう。
    高橋ゆきさんのアイアン・ジェーンなど、映画「009」シリーズに出てきそうなキャラだ。

    吹原さんの想像力、筆力、破壊力(笑)に大いに期待して次回作を待っています!ポップンの次の10年も見続けたい。

    追伸:物販で2000円で買ったパンフレットの料金の大半を、群馬の山奥で全裸で相撲をとった
    井上ほたてひも、NPO法人のお二人に捧げる。






  • 満足度★★★★

    笑いの先にビターテイスト。
    初見でしたが、くっだらない笑いだけではないのが人気なんだなと感じました。
    回想での家族惨殺シーンの容赦なさ、その後の叫び。
    真実が明かされた、その後の叫び。
    胸に迫るものがありましたね。

    ガンガン回る舞台装置、物語的には全く必要のないフライングと、
    そんなところも見ていて気持ちがよかったです。

    人外キャラたちの中で一番好きだったのは馬の下半身でした。
    いい芝居してましたよねーw

  • 満足度★★★★

    笑いの中に
    ブルースの記憶が喪失することで知らない間に、という悲劇的要素で泣けます。
    馬の設定がよかったと思います。胴が切れるとは。
    ではけ口を計算し、スピード感ある演出もよいです。

  • 満足度★★★★★

    ポップン本公演初観劇!!
    昨年コメフェスで
    ポップンマッシュルームチキン野郎の
    皆さんのお芝居を初めて観劇。
    衝撃でした、面白すぎる!!
    本公演絶対観に行こうと決めてから
    ずっとこの日を楽しみにしていました。
    せっかくならとプレミアム席を予約。
    いい席だし、特典写真の交換もあるのに、
    席に行くと【ささやかなお土産】の
    メンバー誰かのチェキが♡
    どんだけサービス精神旺盛なんだ!!

    本編が始まる前にはなんと開場中パフォーマンス。
    本編とは全く関係ないのにもかかわらず、
    出演者の皆様、全力で楽しませてやろう!と
    いう気持ちがビンビン伝わってきて、
    最高にたのしかったです。
    すんごい笑った。笑いすぎてお腹痛く
    なりました笑。
    楽しいパフォーマンスが終わった後は
    少しあいて、本編スタート!!

    本編の主役は文学座の渡辺徹さん。
    渡辺徹さんの舞台は初めて拝見しましたが、
    最高に素敵でした。
    魅せるとこ魅せて、笑わせるとこ笑わせて。
    他のキャストさんも最高!!
    サボテンにサソリに馬にナップサック!
    こんなキャラクター達が出てきて
    感動させてくれるお芝居はじめてです笑。
    前半はものすごく面白くて終始
    笑いっぱなし。
    なのに、後半になると衝撃の事実やら
    感動やらで泣きっぱなし。
    音楽もアニメーションも素敵だし、
    照明も舞台転換も最高!!
    キャスト陣のお芝居も最高!!
    観れて良かった。心から思いました。

    ポップンマッシュルームチキン野郎の
    お芝居観たことない人には、次回公演で
    必ず観に行って欲しいです。
    行って後悔はないし、チケット代が
    安く感じるほど素敵なお芝居を見せて
    くださいますよ!!
    むしろ、行かないと後悔します。
    私は今回、もっと早く観に行けば良かったと
    後悔しました。本当に最高な
    集団です。

    劇団員の皆さまも素敵な方々ばかりです。

    ポップンマッシュルームチキン野郎
    【独りぼっちのブルースレッドフィールド】
    最高でした!!
    素敵な時間をありがとうございました♡

  • 満足度★★★★★

    感動の千穐楽!
    ものすごい集中力と貫禄のセリフ回しで痺れさせてくださった渡辺徹さんを始め劇団員の皆、ゲストの皆様、アンサンブルキャストの皆様が一丸となって作り上げた千穐楽のステージは、迫力と緊張感と爆笑と涙のるつぼでした。

    特別出演の萩野さんの立ち姿の美しさに惚れ惚れし、ヒールぶりの緊張し、客入れパフォーマンスの緩急(笑)さえ、全力投球。本当に素敵です。
    そして美津乃あわさまの振り幅の広い配役(笑)に、よくぞ応えてくださいました!ありがとうございますと申し上げたいです。本当に清々しく潔くて大好きです。
    そしてヒックス役の今井孝祐さんの演技が強烈で、本当に凄い!喉も最後までよく持ちこたえてくれたと思います。カッコ良かった。

    ひとり一人を書くとスペースがなくなってしまうので。
    劇団員一人ひとりの力も、どんどん成長してきているのではと思います。
    一昨年の「銀色の蛸は5番目の手で握手する」も同じ劇場のシアターサンモールでしたが、その時よりロビーの混雑ぶりが凄くて。お客さんの入り方がゲストさんが豪華とはいえ劇団としても集客力が高くなって来たような気がします。

    今後ますます力をつけて、さらにステップアップしていくべきPMC野郎は、これからも大きな目標に挑み続けて欲しいと思う。それを見守って行きたいと思う。

  • いつものことながら
    PMC野郎の作品は、バイキングで腹がはち切れるまで食べたような満腹感を覚える。さすが

  • 満足度★★★★★

    通常回とR18回を観劇!
    普通の西部劇じゃないなーってことは
    チラシ画像(特に右端)の時点でわかっていましたが、
    予想を超えた楽しい作品でした。

    はっきり言って手狭なあの劇場ロビーで、
    終演後にストレスなく物販に行く人と出口に向かう人が進めたのも
    素晴らしいと思いました。
    そうなるよう常に声掛けをしていたスタッフさんたちの動きも
    それを受けて焦らずに波に乗って歩いたお客さんたちを見ても
    「いい公演だなぁ」と思わせてくれました。

    開場時間中の本編とは関係ないパフォーマンスも面白くて、
    あれを観るために
    「開場時間にはすべての支度をして劇場にいよう」という気持ちになるので
    劇団側も定刻開演できるし、
    お客さんも楽しいしで両方得な催しなのだなぁと思いました。

    後列プレミアム席で拝見しましたが、
    舞台全体が見渡せて、表情もちゃんと見えるし、
    前列のひとの後頭部も視界に入らないしで、快適でした。

    ネタバレBOX

    ヌータウとブルースが再会するところで、
    ブルースが選んだ方法、
    それを受けてのヌータウの発言に涙が出てきました。

    2回目でヌータウとアナの行動を見ていると、
    ちゃんと伏線がはってあって(「家族」の言葉を聞いた時の反応とか)、
    そしてアナが結末を見届けての表情と涙が、こちらの涙腺を刺激しました。

    R18回の悪ふざけもいい意味でバカバカしくて楽しく、
    前説でどういうネタを仕込んでくるかいくつか教えてくれるので、
    心の準備もできます。
    いくつかの不意打ちR18ネタも笑えるものなので、
    PMC野郎のこういう遊びっぷり、好きです。

    ネタバレを避けるために当日配布パンフの人物紹介が
    略されてたり伏せられていたりしていて、
    そういう心遣いとセンスもステキだなぁと思います。
    あんなにイケメンのナップザック、おそらく人生でここでしか出会えない(笑

    物語の内容も笑いありシリアスあり感動ありで、
    銃撃戦をカメラ撮影で表現したり、
    馬のクオリティを利用したびっくりな仕掛けなど、楽しい時間でした。
  • 満足度★★★★★

    とっても面白かった!
    ポップンマッシュルームチキン野郎さんの舞台を観劇するのは今回が初めてでしたが、なかなかに個性のある劇団さんだよと噂は聞いていたので期待半分不安半分で観に行ったのですが(とはいえ、予告PVに一目惚れして「あ、これは絶対面白いだろうな」となっていたので、期待のほうが大きかったかも)
    が!期待以上でした!!!めちゃめちゃ面白かったです!
    伏線ののはり方がとてもうまく、すべてを知った上でもう一度観たい!とリピート観劇せずにはいられませんでした。
    次回公演も是非行きたいです。

  • 満足度★★★★★

    ボップンマッシュルームチキン野郎最高
    ボップンマッシュルームチキン野郎の舞台を観るのは三回目。開演前パフォーマンスがあり面白いです。
    今回は渡辺徹さんが出ていて迫力がありました。
    復讐をするガンマン。ハラハラドキドキする場面があり時間を立つのが早かったです。
    感動しました。

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