独りぼっちのブルース・レッドフィールド 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「独りぼっちのブルース・レッドフィールド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    明日誰かに話したくなる復讐劇
    ポップンマッシュルームチキン野郎の紡ぎだす物語は、いつだって愛にあふれている。

    今回、渡辺徹さんという、誰もが知っているスターを主演にしての公演でしたが、それでもポップンマッシュルームチキン野郎はポップンマッシュルームチキン野郎でした。
    公演を積み重ね、どんどん新しいものに挑戦しながらも、良いところは残していっている感じがします。

    それをまず感じたのが、舞台装置。
    『銀色の蛸は五番目の手で握手する』のスライド舞台と、『うちの犬はサイコロを振るのをやめた』の回転舞台。それらを上手く組み合わせブラッシュアップさせた舞台のように思いました。
    ブルース・レッドフィールドという男の半生を描いているため、場面も良く変わりますし、時間も結構流れますが、その舞台装置を上手く使い、暗転を最小限におさえながらも、場面の移り変わりをわかりやすくしていたのが良かったです。

    また、客入れパフォーマンスも健在ですし、プレミア席S席A席でそれぞれ前方後方選べたり…本編の内容だけでなく(内容だけでも十分勝負出来るとは思いますが)、公演全体で客を楽しませようとする姿勢が本当に素晴らしいと思います。

    今後もその進化に魅せられていたい。

    ネタバレBOX

    今回も、個性的なキャラクター達は健在でした。
    サボテンをはじめ、謎のフランス人やサソリやナップサックや馬…。
    CR岡本物語さん、高田淳さん、古舘佑太郎さんのジャンゴ三兄弟のバランスがとても良くて、ブルースの物語ながらも、彼らの物語もしっかり描かれていたのが嬉しかった。
    そういう意味では、サボテンジョー(サイショモンドダスト★さん)とフランソワ(小岩崎小恵さん)、マック(野口オリジナルさん)にももう少し、それぞれの特徴を活かした目立った活躍があったら良かったなぁと思いました。
    (マックは活躍の場が無くは無かったのですが、やはりちょっと地味だったので)
    特に、サボテンジョーが…個人的に凄くお気に入りだったので…。
    ただ、この物語はあくまでブルース・レッドフィールドの物語であるので、あれ以上、別のキャラクターの物語を描いてしまうと、多分まとまりが悪くなってしまっただろうとも思います…難しい。
    なので、そこまで目立った活躍の場が無い中でも、愛おしく思えるキャラクター達だったということで。
    今後、スピンオフの物語が作られることを期待します。

    渡辺徹さんのブルース・レッドフィールドと2人で物語の中心を担っていたヌータウこと加藤慎吾さんですが、最後の復讐のシーンなどは特に、渡辺徹さんにしっかりと付いて行っていたように思います。
    作中、彼は2度しか笑いませんが、その2回が本当に印象にのこりました。
    加藤さんの泣きそうな笑顔は、こちらの胸を鷲掴みにします。
    また、スタンレイ・ボガード(横尾下下さん)も良かった。横尾さんは『犬コロ』に引き続き、主人公に真実を告げるとても重要なキャラクターを演じられていますが、それまでの楽しい雰囲気から一気に哀しい真実に連れて行ってくれる切な演技をされるので、とても好きです。
    「見事な復讐だ」という台詞がとても印象に残っています。

    そしてやっぱり、脚本が良い。目一杯笑わせながらも、最後には泣ける。
    泣けるから良いという訳ではありませんが、PMC野郎は観た人の心に"なにか"を残して行きます。
    たくさんの感情を揺さぶって行きます。
    「復讐劇」と言えば、最後は復讐を果たす物が多いと思いますが、その結果は、新たな復讐を生み出すか、虚しい孤独を得るかのどちらかだと思います。
    この作品は、復讐劇ながらも、復讐を遂げないラストを選んだのが本当に良かった。
    「善人になりたい」と言いながらも、人を殺めるという選択を簡単にしてしまう、不器用で自分勝手な極悪人たち。一言で切り捨ててしまうのならば、自業自得だと思います。
    でも、そんな悪人たちでも、愛を知り、許しあうことが出来れば、新たな憎しみを止めることが出来るのかもしれないと思わせてくれました。
    最後には記憶を失うことを選びまた「一人ぼっち」になったブルース・レッドフィールドですが、彼は決して「独りぼっち」にはならなかったのです。

    復讐劇であると同時に、家族との、仲間との、そして友との愛の物語だった。
    悲しみや憎しみの連鎖を断ち切る事の出来る物があるとしたら、それはやっぱり、愛なのかもしれません。

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    2015/03/09 01:35

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