独りぼっちのブルース・レッドフィールド 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「独りぼっちのブルース・レッドフィールド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    作家のアイデアに★5つ
    客入れのパフォーマンスも全力投球のエンターテイナーぶりで
    「ホントにいつもありがとう!」と言いたい。
    至近距離で銃声を聞くと、記憶が25年前に戻ってしまう、
    記憶障害を患っているガンマン、という設定をチラシでバラしてしまった以上
    どんな展開になるのかと思いきや、本人もびっくりだろうが
    観ている側もあっと驚く驚愕の事実が明らかにされる。
    この設定のアイディアはどこから湧いてくるのだろう。
    作家の豊かな発想力に脱帽するしかない。
    インディアン役の加藤慎吾さんが素晴らしい。
    相変わらずの被り物も大活躍で、誰が誰だかパンフレットを見ないと判らない。
    渡辺徹さんが出ているからか、R-指定の演出はいつもよりおとなし目
    だったような気がする…。







    ネタバレBOX

    25年前にギャングによって家族を殺されたブルース(渡辺徹)は、
    あれ以来至近距離で銃声を聞くと記憶が25年前に戻ってしまうという
    記憶障害を抱えながら復讐の旅を続けている。
    頼りはいつも持ち歩いている日記と、同じように家族を殺された
    インディアンのヌータウ(加藤慎吾)。
    ブルースはこの相棒と一緒に最後のひとりを倒して復讐は終わる。
    だがその最後の一人があまりに若かったことから、ブルースはふと疑念を抱く。
    そこへ25年前の相棒スタンレイ(横尾下下)が現れて、驚愕の事実を告げる。
    ブルースが半生をかけた復讐、それはある人物の自分への復讐に他ならなかった…。

    実は相棒のスタンレイたちとインディアンを殺すことを生業としていたブルースは、
    ヌータウの家族を殺してしまっていた。
    これはヌータウの、ブルースに対する巧妙な復讐だったのだ。
    ブルースの記憶障害を利用して偽の日記を読ませ、憎しみをあおって
    ギャングたちへの復讐と称して実はブルース自身の家族を次々と殺させていた。
    ブルースは自分の手で妻も子供たちも撃ち殺し、それらの記憶はなかった。


    長年温めていたテーマだというが、この極めてシリアスで悲惨な鉱脈を、
    吹原氏はどうやって掘り当てたのだろう。
    明かされた真実が衝撃的で、ヌータウの表情や一言ひと言が後からじわりと沁みてくる。
    また私は被り物キャラをここまで真剣に愛し、演じる劇団をほかに知らない。
    世間によくある笑いを取ろうとして登場する被り物たちは、出てきた時点で飛び道具的で
    一発受けたらそれで終了、演じる方もどこか緩くて一緒に笑って引っ込んでいく…
    という扱いが多いように思う。
    ポップンは、前作「うちの犬はサイコロを振るのをやめた」も素晴らしかったが
    役者の表情が見えにくい被り物でありながら、心をわしづかみにして泣かせる
    表現力が突出している。
    シリアスな本流を損なうことなく、出てきただけで笑ってしまうようなルックスと
    意表を突くキャラ設定が絶妙なバランスを生み出す。
    それは適度にちりばめられた下ネタも同じである。

    その意味で、今回“R-18指定臭”が若干薄まったのは残念だったかな。
    ポップンらしさが薄まったのは文学座ファンへの配慮かもしれないが
    テレビではなく小劇場系ではその辺の配慮なしにやってもらいたい、
    というのもポップンファンの心理。
    ブルース役を、たとえばユースケ・サンタマリアあたりが演じたら
    下ネタと笑いのセンスがもっと共有できるのではないかと想像してしまった。

    真実を知ったブルースの慟哭がイマイチおとなしく感じたのも、
    ポップンの劇団員だったら、存在が壊れるような苦痛と哀しみを爆発させるだろう、と
    想像するからに他ならない。
    劇団として大きくなれば、選択肢が広がるからいろんなことができるだろう。
    その中で今後ポップンらしさをどうキープしていくのかが問われると思う。

    それにしても今回もキャラの立った登場人物(?)たちが楽しかった。
    お尻を出しても出さなくても色気のある悪役をやらせたらやはり荻野崇さんは素晴らしい。
    声を聴いて当日パンフで確認しなければ、あのサボテンがサイショモンドダスト★さんとは
    すぐにわからなかったが、この人の熱い台詞はとても魅力的。
    荷物をまとめるだけでなくついには国をまとめて大統領になるナップザック、いいキャラだねえ!NPO法人さんの、“間”で笑わせるセンスが光る。
    ヌータウを演じた加藤慎吾さん、ブルースに、「全部終わったら一緒にステーキ屋でもやろう」
    と言われた時の唯一の笑顔が印象的。
    どれほど複雑な思いでその言葉を聴いただろう。
    高橋ゆきさんのアイアン・ジェーンなど、映画「009」シリーズに出てきそうなキャラだ。

    吹原さんの想像力、筆力、破壊力(笑)に大いに期待して次回作を待っています!ポップンの次の10年も見続けたい。

    追伸:物販で2000円で買ったパンフレットの料金の大半を、群馬の山奥で全裸で相撲をとった
    井上ほたてひも、NPO法人のお二人に捧げる。






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    2015/02/24 01:57

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