公演情報
「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
噛み合わない会話、思いがけない相手の反応、気がつけば自分の足元が揺らいでポッカリと底なしの淵に落ちていく…。そんな別役実作品が、せつないリアルな感情の芝居として見ることができた。雲の上の訳の分からない別役ではなく、僕たちの隣にもしかしたらいるかもしれない身近な別役だった。
そういう点では、全然非条理ではなく、現状の裏には原因がきちんとある条理の通った芝居だった。
一見理解に苦しむ馬鹿げた日常の世界は、ただ馬鹿げているのではなく、その裏に大きな悲劇が隠れているからなのだと暗示している。被爆者を描いた「象」や、戦災の荒廃を匂わせる「マッチ売りの少女」など、初期の名作と通じるものがある。
「眠っちゃいけない子守唄」の話の通じない老人を演じたさとうこうじがよかった。変人だけど、可愛げがあり、無理筋なのに道理があるように見えて来る。相手のヘルパー役の大西孝洋は、戯曲では女性らしい。「彼との暮らし」「彼と夫婦で」というセリフが出てきてわかったが、そこまではまったく男性のセリフとして聞いていた。ジェンダーニュートラルなセリフに一驚した
実演鑑賞
満足度★★★★
別役実戯曲の新しい発見のある公演だ。
戯曲そのものは手を入れていないというから、かつても同じような本からいくつもの別役作品を見てきたのだが、早稲田小劇場でも、文学座でも、円でも、木山事務所でも、ケラでもない、いままでになかった上演である。それが、燐光群風社会ドラマと言うのではなく、戯曲に寄った新しい舞台になっているところがいい。
今回は四作品の上演でその二作を見た。
「いかけしごむ」と「眠っちゃいけない子守唄」は登場人物が二人づつ。
「いかけしごむ」は町はずれの行き止まりの路地の奥の小さい広場。“ここに座らないで下さい”と張札を付けたスタンドの前にベンチ。上手に運命鑑定の行灯のあるテーブル。その上からいのちの電話につながる黒電話がぶら下がっている。
女性(鬼頭典子)が現れ、そのベンチに座る。何事も起きない。そこへ平凡なサラリーマン(萩野貴継)がごみ袋を手に現れ、追われているという。女に問われ、追われている理由は彼がいかけしごむを開発してその秘密を東欧の秘密結社に狙われているからだ、と答えるが、女に追及されて、実は妻に逃げられ、原料と称して持っているごみ袋の中の「いか」は実は捨て場を探している殺した子供の死体だ、という事が分かってくる。
別役作品についてよく言われる不条理演劇(と言う翻訳は適訳とは思えないが)風ではなく、原語で言えばabsurdな展開である。しかし、ヘンテコながら物語はコントのような、ホラーのような、小市民ドラマのような、論理的な筋を追って進み、別役作品ならではの世界になっていく。
、緻密に計算された本を、坂手演出は本に忠実に演出していて、いままでのように演出者があらかじめ決めた世界(多くはいかにもの不条理な世界)に作りこんでいないので戯曲の魅力がはっきり出ている。そこが新しい。面白く見られる。
「眠っちゃいけない子守唄」では眠れない男(さとうこうじ)が派遣サービスから話し相手の男(大西孝洋)を呼ぶ。男は、自分が何者かも知らず、知ろうともせず、眠ることで最後が来るのを避けるために派遣の男を呼んだのだ。解説によれば、眠らない男はナチ迫害下のユダヤ人であり、派遣の男は現代人という事になるが、そのような寓話的解釈によらずとも、
雪の降る夜に、自らも何者か知らず、理解できない他者を話相手にせざるを得ない(そのために会話は常に方向を失う)人間の孤独と滑稽は切々と伝わってくる。
ここでも、男が記憶している過去は「よっちゃん」と呼ばれていたこと、自分に寝るなと命じた人は「としこ」という名だったと日常的な言葉がポイントに使われていること、通じない言葉で会話をすることを夢想するなど、日常の中にある人間関係を言葉から効果的にドラマに仕組んでいる。別役作品ならではの面白さだ。
俳優はそれぞれ、演出の意図を心得て好演。余計なものを見事に切り落としている。
かつて、坂手洋二が「マッチ売りの少女」を新国立で再演した時、鈴木忠志演出で見ていた筆者は非常に違和感を覚えた。それから、20年たって今見る坂手演出はまた変わって、意外にしっくりした。今なら白石加代子は70年代の「時代」の舞台だったと言い切れるかもしれない。観客もまた変わっているのを実感する。
他の芸術と違って、演劇の戯曲は時代とともに様々な衣装を着けることができる。そして新しい観客に触れる。一期一会、演劇の面白さの一端に触れる公演でもあった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
4つの作品のどれも奥深く素晴らしかったが、個人的には特に『眠っちゃいけない子守歌』の孤独感というか何とも言えない寂しさのようなものに感じ入った。あらためて別役実は凄い作家だと再認識した。これらの作品を取り上げてくれた燐光群に感謝したい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
「この道はいつか来た道」
今回上演された4作品の中では最も遅い時期に原作者が書いた作品である。(華5つ☆)
一応、誤解の無いように申し上げておくが、公演は2作品で1公演が基本形である。作品評を1作ずつ評価する為に、評者の判断でこのような形にしている、
実演鑑賞
満足度★★★★
別日に両方を観劇。4作品全てが「別役戯曲的合格ライン」(個人的な基準だが)クリアでハッピー、とは行かなかったが..収穫はあった。2015年前後にあった別役フェスでは二、三の優れた舞台によってフェスの価値は否が応にも刻印されたが、一公演としての評価は難しい。なんて小賢しさを嫌うのも別役流に思われ、個々の舞台の見たままを書きゃいいんじゃね。とも思うが。
いずれ詳述してみたい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
「舞え舞えかたつむり」
今回上演される4作のうち唯一テキレジが施された作品とのことだが、台詞のカットは無い。このタイトルは承知の通り今様を集めたことで有名な「梁塵秘抄」に記載された歌である。中央にあでやかな雛飾りが据えられ、衣装も女性陣の多くが雛と同じような極めて豪華な衣装で登場する。因みに雛段の五人囃子の一体のみ欠けている。華5つ☆追記(1回目6.30 15:51)
一応、誤解の無いように申し上げておくが、公演は2作品で1公演が基本形である。作品評を1作ずつ評価する為に、評者の判断でこのような形にしている、
実演鑑賞
満足度★★★★★
「眠っちゃいけない子守歌」
主人公の孤独の何という深さ! その孤独を慰めるかのように降りつのる雪の何と美しい冷たさ! 華5つ☆
一応、誤解の無いように申し上げておくが、公演は2作品で1公演が基本形である。作品評を1作ずつ評価する為に、評者の判断でこのような形にしている、
実演鑑賞
満足度★★★★★
「いかけしごむ」
中央やや下手にベンチ。ベンチの背の奥に“ここに座らないで下さい”の張札を付けたスタンド。上手に運命鑑定の雪洞を付けたテーブル。その両側に椅子。占い台の奥辺りにどういう訳か電話機。板奥には階段。華5つ☆
一応、誤解の無いように申し上げておくが、公演は2作品で1公演が基本形である。作品評を1作ずつ評価する為に、評者の判断でこのような形にしている。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/06/27 (日) 13:00
4本の通しを観劇。
燐光群が昨年の『天神さまのほそみち』に続いて別役実作品を扱う。昨年観てフィットすることは分かっていたが、今回もフィットして面白い。ただし、スズナリのイスに4時間座るというのは、予想はしていたがツライ(;/_;)。
A『いかけしごむ』(60分)/『眠っちゃいけない子守歌』(50分)
休憩15分
B『舞え舞えかたつむり』(55分)『この道はいつか来た道』(50分)
実演鑑賞
満足度★★★★
別役実短編集全4作品通し(上演時間4時間 途中休憩1回15分)
【Aプログラム】
「いかけしごむ」「眠っちゃいけない子守歌」
【Bプログラム】
「舞え舞えかたつむり」「この道はいつか来た道」
この4作品のセレクションが絶妙で、【Aプログラム2作品】と【Bプログラム2作品】とでは作風が少し異なり、それぞれの特徴をうまく捉えた演出だ。もちろん ほの暗い小空間に電信柱や街灯といった別役作品の象徴といった舞台美術(除く「舞え舞えかたつむり」)。
別役作品=(日本の)不条理劇と言われているが、それは政治や経済といった社会的なことに求めるのではなく、あくまで人間そのものが持っているというか、端的に言えば人間の存在そのもの(内なる感情)であろう。誰もが感じる孤独・不安・空虚、苛立等の鬱積した感情、それらの感情を演劇という表現形式に取り込んだ、まさしく”人生劇場”そのものを観せる。時代背景に左右されず、人が抱くであろう感情、その不変のような舞台表現が観客自身の経験や体験なりと共感・共鳴し、ある種の説得(納得)性を突き付ける。別役作品の不条理と言わしめる、そんな代名詞に相応しいのが【Aプログラム】。
一方、【Bプログラム】は異色作。特に「舞え舞えかたつむり」は、チラシに「<犯罪症候群>に向き合う別役実独自路線のルーツ」とある。そして4作品中、唯一のテキレジを行っており、案外ストレートに楽しめる作品になっている。次に「この道はいつか来た道」_人生の終末期に関わらず、人生劇場を謳歌しているような劇風。が、やはり人生の哀歓を漂わすラストは胸に迫るものがある。
(台詞にない)言葉の先を想像し読み解くなど、見巧者のようなことは出来ないし、かと言って言葉の裏に潜む気持を感じられなければ風情も面白味もない。別役作品は面倒くさいが、そこがまた奥深く面白いところ。本公演、別役作品の案内企画と考えれば成功だろう。
実演鑑賞
満足度★★★★
全4作品通し上演
①『いかけしごむ』
②『眠っちゃいけない子守歌』
③『舞え舞えかたつむり』
④『この道はいつか来た道』
午後1時開演午後5時終演。(休憩15分)。
別役実不条理会話劇の4時間コース、①の上演の時は冬の雪山のように、ばたばたと意識を失って眠りに就く観客達で壮観な光景。客の快楽原則に直接的に訴えないと皆只々寝てしまう現実。二人の不条理会話劇だと殆ど笑いにするかホラーにするかの二択になってしまう。難易度の高い縛りである。
①女占い師(?)のリアリズム〈これこそが現実だと信じる根拠〉とゴミ袋をぶら下げるサラリーマンのリアリズムの戦い。たった一つの真実などはなく、あるのは人の数だけの自意識の物語でしかない。
②孤独な老人の話し相手に雇われた福祉の男。筒井康隆的な全く噛み合わない遣り取りが痛快で客席が笑いで高揚。さとうこうじ氏はプロ。観客の沈滞ムードを逆手に取って沸きに沸かせてみせた。甲高い声が良い。対する大西孝洋氏も負けてはいない。見せ場たっぷりの演技対決。二人の空間に詩情の紙吹雪が加わり何とも言えない余韻のラスト。
③これが必見の傑作。雛祭りの雛人形4体が主人公(鴨川てんし氏)の心象風景と一体化して凄まじい効果。警官のバラバラ殺人事件の捜査の顛末なのだが、被害者の妻である鴨川てんし氏(73歳!)がノーマン・ベイツを彷彿とさせるトラウマ芝居。今作だけでも観る価値はあった。風鈴の音、根拠のない憎悪。
④ホームレス老女と老人のささやかなロマンス。記憶が混同して、何度も同じ場面を巡る二人。