性癖優秀
柿喰う客
新宿シアターモリエール(東京都)
2007/08/29 (水) ~ 2007/09/04 (火)公演終了
満足度★★★★★
はつ柿
お芝居っておもしろいな〜と思わせてくれて、ありがとう
コントローラー
北京蝶々
早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)
2007/11/16 (金) ~ 2007/11/23 (金)公演終了
満足度★★★
女の子ならば
共感する部分があるはず。
お台場SHOW-GEKI城『親兄弟にバレる』
柿喰う客
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/20 (木)公演終了
満足度★★★★
いつもどおり
はやさと勢いで走り抜けたお芝居。観客がおいてけぼりになる瞬間がありつつも、楽しい時間でした。
カセット式レインボウ
劇団ハンニャーズ
GalleryOneLIFE(宮城県)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
旗揚げ以来のベストコント集
新潟のグループの遠征公演。
ネタバレBOX
オープニング『ザ・キャタピラーズ』に続き、彼女の携帯を『チェッカーズ』『腕時計』『勇気の印』『女性社会の窓』『呼び捨て』『リトルワールド』。新作『虹野コーラス隊』。
旧作は無駄な自意識。近作は妖精モノ。結構主題を固めてきている様に見えた。裸やウンコの出ない、まともな、地に足の着いた正攻法のお笑い。なかでもとくに、小学生男子がそれと知らずコンドームを買おうとして...のてんやわんやを描いた『勇気の印』は良く出来てる。
ワールド・トレード・センター
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2007/10/20 (土) ~ 2007/11/06 (火)公演終了
満足度★★
古臭い、訓練された役者がかわいそう
登場人物の誰もが上手い。とちらないし。安心して見ていられるのだけれど、なんにも、リアルを感じない。9.11が想像力を飛び越えてしまったことは、よく言われる話。そこから、離れられていない。この題材をあえて取り上げた勇気には大拍手だが、中途半端なセンチメンタリズムにとらわれて内容は散々だ。残念。
続 オールド・バンチ
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2007/12/12 (水) ~ 2007/12/21 (金)公演終了
満足度★★★★
ほのぼのとして、あとでチクリ
スネ夫がよかった。お芝居の流れを彼が立て直してた。71歳なのに。一番本職に近いからかな?ストーリーは、いわゆるタイムスリップもので、最後に過去と未来が邂逅する、王道パターンだが(だからこそ安心して楽しめる)、昔の自分に声をかける老人たちの姿が格好良かった。いろいろ楽しませてもらいました。
ネタバレBOX
1年2ヵ月後に、第3弾があるそうです。みなさん生きていて(切に!)
いい台詞があった。
人は2種類しかいない。
『毒や薬になる人か』、『毒にも薬にもならない人』。
91歳が語ると説得力がありすぎて、落ち込みました。
富士の高嶺に降る雪もー、京都先斗町に降る雪もー
雪にかわりがあるじゃあなしー、とけて流れりゃみな同じー。いい唄だ。
まつさをな
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2007/04/07 (土) ~ 2007/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★
最近不調のキャラメルボックスの中では良い部類
キャラメルボックスの「まつさをな」を観てきた。例によってブログライター枠で無料観劇。
結論から言うと、なかなか面白かった。
ネタバレBOX
キャラメルボックスの持ち球は大きく分けて3つ。未来モノ、現代モノ、そして時代劇。それで、今回のは時代劇。舞台は幕末、場所は小田原。時代劇の見せ場はダンスではなくて殺陣。
ストーリーはそれほど工夫がないというか、なんというか、「え?本当にそういう何のひねりもない展開なんですか?」とか、「あれ?貧乏武士が・・・・ってプロットはどこかで観たような??」とか、クエスチョンマークが頭の上を行ったり来ちゃったりしたんですが、役者さんはなかなかに健闘していたと思います。初日ということもあってかセリフのとちりとかも散見されましたが、そういうのがあるところも生ものの芝居の楽しいところ。
客演の粟根まこと氏(新感線)が非常に存在感があって、逆に「キャラメルの役者は???」と思ってしまう部分もあるのだけれど、浮いているというよりは上手に取り込んでいるという感じで好感。ストーリーとか、演出とかでは僕はあんまり成井豊さんって評価していないのだけれど、客演の役者さんの使い方はいつもなかなか上手だと思う。
キャラメルの役者で良かったのはやはり何と言っても大内氏。彼の演技はいつも安定しているし、声が良く通るのがなんといってもポイントが高い。逆に言えば、他の役者さんは演技がマンネリだったり(って、これはもしかしたら演出側が要求しているのかもしれないけれど。例えば坂口氏はもっと器用で色々出来そうなのに、いつも同じような役どころ)、声が聞こえづらかったりするってことなんだけど。
主役の温井氏はどうなのかなぁ、ストーリーのこともあるのかもしれないけれど、途中から存在感がなくなってしまったのが残念。前半では主役だったのに、いつの間にか脇役になってしまった感じ。
前回の「サボテンの花」に良い役者をあまり持っていかれなかったので、こちらに中堅どころが揃っていたのも舞台の質を高めた要因だと思う。あちらがナビスコ、こちらがリーグ戦、という感じか。
大内氏びいきで岡田達也氏の演技をそれほど評価していない(良い人っぽいけど)僕としては、配役が逆でも良かったんじゃないかなー、と思うのだけれど、役の難しさは大内氏の方が上だったのかも知れない。ちなみに殺陣はそれなりに上手だったと思う。サンシャインの二階席から観ていても「下手なチャンバラ」みたいな印象は全くなく、なかなかの見せ場になっていたと思う。
もうひとり、僕の贔屓の實川氏は相変わらずなかなかの脇役ぶり。もうちょっと良い役をつけてやってくれよー、と思わないのでもないのだけれど、この劇団に温井氏や岡内氏がいる限りは当分脇役のままなのかな。どこかで大内&實川コンビの舞台ってなかったっけ、と思い返すとそういえば「ブラック・フラッグ・ブルーズ」のヴィーナスキャストがそれだったかもなー。
と、いうことで、今回は満足して帰ってきました。最近観たキャラメルボックスものでは上位に来ます。
余談ですが、帰りの二階席からの階段で、「もう号泣だったよ~」「私も~」という会話が聞こえてきたのですが、泣き所なんてあったかな(^^;?いくら思い返しても思い当たるところがない(^^; まぁ、僕はキャラメルボックスの演劇では一度も泣いたことはないのですけれど。
カレッジ・オブ・ザ・ウィンド
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2007/07/05 (木) ~ 2007/08/05 (日)公演終了
満足度★★★
プロデューサーが舞台を壊した典型例
昨日から始まったキャラメル・ボックスの「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」を観てきた。ブログライター取材ということで例によって無料観劇。もう一年以上お金払って観てない気がする(笑)。
交通事故に遭った少女の話と、そのおじさんの話の、二つが交錯していき、それらが徐々に交わり、最後にそれが一本の糸になって収束する、という構成。
ネタバレBOX
これって、映画のシックス・センスの原作が書かれたのとどっちが先なんだろう。こちらの芝居が先に書かれていたなら、シックス・センスってこの芝居のパクリじゃない?って思っちゃうくらいに非常に良く似たストーリー。残念なのは僕が先にシックス・センスを観ちゃっていたということで、初演(それがいつなのか知らないのだけれど)のときにまっさらの状態で観ていたらもっと楽しめたと思う。だって、今日は「えーーー、そうなの?」と思う前に、「これってシックス・センスそのままじゃーーーーん!!」と思っちゃったから。
僕のお気に入りの大内厚雄さん、實川貴美子さん、それから最近結構評価している畑中智行さん、青山千洋さんあたりはなかなか良かったと思う。特に大内さんの演技は最近全くぶれがなく、安心して観ていられる。この劇団では岡田達也さんとか西川浩幸さんの方が高く評価されている節があるのだけれど、僕は大内さんが絶対に一押しである。で、その大内さんを中心として、他のキャストもなかなか頑張っていたと思う。
では何が駄目だったのかというと、ストレートに書いてしまえば主演の高部あいさん。この人、舞台やったことあるのかな?知らないんですが、いくらなんでもサンシャインの舞台は無理でしょう。こんなところに立たせてしまっては気の毒です。なんか、ちょっと前にも似たようなことがあったけど(^^;
普段はキャラメル・ボックスの役者さんって劇団内で「できる人とできない人の差が大きいよなぁ」と感じちゃうんだけど、今日はそれが気にならないくらい、格段に客演主役の能力が足りなかった。もしかしたら前の方で見ればまた違うのかもしれないのだけれど(今日観たのは20列目)、もう、声を後ろの方まで届かせるのでやっと。目一杯頑張っているのはもちろん伝わるのだけれど、頑張れば納得させることができるのかといえばそれはそれで話が別。常に全力でやらないと周りにおっつかないので、常に全力投球。常に全力だから、のりしろがない。のりしろがないから、抑揚がない。抑揚がないから、演技が単調になってしまって、退屈しちゃう。周りの達者な役者達が一所懸命それを引っ張り上げようとするのだけれど、それでカバーできるレベルじゃなかった。スズナリとは言わないけれど、せめて紀伊国屋ぐらいの大きさじゃないと、今の能力では無理でしょう。でも、これは高部あいさんの責任じゃない。彼女をこの舞台に連れてきちゃった人たちのせい。
全体のストーリーを引っ張って、主人公の感情を観客に伝えていく重要な役割のはずなのに、あれではちょっとね。大内さん&岡内さんのエピソードがきちんとまとまっていただけに、残念感が一層引き立っちゃった。
なんというのかな、高校野球のスター選手を大リーグのマウンドに立たせて、火だるまにしちゃった、みたいな。まぁ、この調子で2、3年投げ続ければ時々好投するだろうし、びっくりするくらいに急成長するかもしれない。でも、今はちょっと無理だなぁ。
THE BEE
NODA・MAP
シアタートラム(東京都)
2007/06/22 (金) ~ 2007/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
野田スタイルが良い意味で集約されている
シアタートラムで昨日から始まった野田地図の番外公演「THE BEE」を観てきた。
少ない役者、短い上演時間と、すっかり知力も体力も衰えてしまった僕には非常にありがたい芝居。
人間、小道具を次から次へとその役割を変えさせていく野田スタイルが良い意味で集約された感じで、安心して観ていられる。
ネタバレBOX
#今の野田秀樹のスタイルは、おおまかに言うと次の4つ。
1.道具を多面的に利用する(観客に想像力を要求)
2.一人の人間に複数の役割を与える(=オシムスタイル)
3.スピードを変える(=スローモーションの多用)
4.人間の良心への期待(落ち続けることが出来る夜長姫との対比)
今回、舞台で大きな役割を果たすのは一枚の大きな紙。これが最初から最後まで舞台の中央に存在し、そしてクライマックスまでに広げた風呂敷を全て包み込む役割までを果たす。特に影絵を投影するスクリーンとしての役割は秀逸で、またそこで展開される影絵と映像の混在具合が非常に面白い(影なのかと思ったら影ではなく、途中からそれが勝手に動き出すとか)。
短い芝居の中で受け取るメッセージは人それぞれだと思う。マスコミの、被害者に対する傍若無人ぶりとか、警官の役人的な対応とかに怒りをぶつける人もいるだろうし、絶対的な強者が弱者と表裏一体であることを再確認する人もいるだろうし、被害者が一転して加害者になることを目にしてイラク問題について考える人もいるはず。じゃぁ、僕は何を感じたのかというと、野田さんの芸風って、最近変わったなぁ、ということ。非常にストレートに自分の問題意識を芝居を通じて観客にぶつけるようになったと思う。どこまでも落ちていく夜長姫を殺すことによって「落ちていくことができない人間」を浮き彫りにしたのが以前の野田秀樹だが、今の野田秀樹は前作(今作はその前にロンドンで上映された芝居の日本バージョンだが)の「ロープ」同様、直接落ちていくことを表現している。
この感覚、最近何かで感じたなぁと思ったのだけれど、思い出した。
テレビのワイドショーやら、歌番組やらに出演している役者達の反応。物凄い勢いでうなずいたり、思い切り眉間に皺を寄せたり、そうそう、ホンジャマカの恵俊彰やら、東ちづるあたりがテレビで展開しているアレ。「お前ら、ブラウン管(そろそろ死語)の前にいる人間を馬鹿にしているだろっ」と思ってしまうようなわかりやすいリアクション。あれにちょっと似ている。昔はああいうリアクションって小林幸子だけだったけれど、最近はみんなやってるよねぇ。なんか、テレビの製作サイドに馬鹿にされているようなアレ。まぁ、そこまで極端ではないのだけれど(笑)。
いつから芸風が変わったのかって、やっぱり9.11以降なんだろうなぁ。
ちなみに役者の部分でも色々と見所があった。特に途中からは影に徹する浅野氏が面白い。
THE BEE
NODA・MAP
シアタートラム(東京都)
2007/06/22 (金) ~ 2007/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
もうちょっとお客が入っても良さそうなものなのに
日本バージョンを二回観たのだけれど、ロンドンバージョンも観てきた。
全体的なストーリーはほぼ一緒。使っている小道具が色々異なっていて、メインになるモノが日本バージョンでは紙だったのに対して、こちらはゴムひも。どちらが優れているのか、というのは微妙なところだと思うけれど、恐らく日本にフィットした、そして英国では英国にフィットした設定をしたのだろう。それは非常にわかりやすいレベルで成功していたと思う。
日本と英国でどこが違うのか。それは、日本がわび・さびの文化の延長というか、「沈黙は金なり」的な文化と言うか、「間」で演出できることに対して、英国では「表情」で演出して客に訴えるのが一般的、ということなのかもしれない。
ネタバレBOX
日本バージョンでは、影絵が重要な役割を果たす。モノクロの影だから、当然表情はない。しかし、そこから日本人は様々な情報を読み取ることができる。その情報を元に、想像力を書きたてられ、頭を使わされ、心地よい疲労感と共に演劇を観終わることになる。一方で、ロンドンバージョンは日本バージョンで紙を使っていたところにマジックミラーを使っている。当然のことながら、ミラーの向こうの役者の表情は非常に良く分かる。そこに繰り広げられるのはアナログの世界である。そして、そこからはたっぷりと役者から情報が放たれる。想像力は必要ないが、役者の勢いに圧倒されないように踏ん張っておく必要がある。
日英の文化の違いを良く考えた上で、同じテーマ、同じストーリーにも関わらず見事に二通りの舞台を作り上げた野田秀樹氏はさすがである。
残念なのは、こちらの英国バージョンの入りがイマイチだったということ。公演末期はそれなりに人が入っていたようだが、出足は決して良くはなかったようだ。わざわざロンドンまでいかなくても日本で観ることができるなんて、こんなラッキーなことはないのに。日本版と英国版が全然違う、ということをきちんとPRできていなかったこともあると思うが、ここまでセットが違うなら、半年ぐらい時間を置いた方が良かったのかも知れない。何にしても、日本の演劇文化もまだまだこの程度、と言う事かもしれない。
それはそうと、主役の女性は、ハリポタのHarry Potter and the Order of the Phoenixの裁判シーンで証人(フィッグばあさん?)をやっていた役者さんですよね?あのダミ声は地なんですね。野田秀樹氏自身、円城寺あや氏、そしてKathryn Hunter氏と、野田氏の女性の声の好みがわかります。そういえば竹下明子氏もあんまり声が透き通っているタイプではなかった。
キル
NODA・MAP
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2007/12/07 (金) ~ 2008/01/31 (木)公演終了
満足度★
名作がグダグダに
ここ数年、僕がほぼ欠かさずに見ているのは野田地図の芝居とキャラメルボックスの芝居。しかし、キャラメルボックスはここ2年ほど、当たりハズレの波が大きく(というか、ほとんどハズレ寄り)、お金を払って見るケースがあまりない。ほとんど全てタダで見に行っているし、先日はタダで、時間もあったのに見なかった。野田地図はというと「ロープ」とか「THE BEE」とかはなかなかで、「なんだかんだ言っても、日本の演劇を引っ張って行っているのは野田秀樹なんだなぁ」と思っている。今日はその第13回公演「キル」を見てきた。
ネタバレBOX
「キル」は、野田秀樹が夢の遊眠社を解散して、第一回の公演で新作として上演したもの。最初の舞台が94年で、このときのキャストは堤真一、羽野晶紀、渡辺いっけい。このブログで散々野田秀樹の舞台の作り方については言及しているけれど、野田秀樹は三谷幸喜と並んで日本を代表する「あてがき」作家。なので、キルはこの3人でなければベストにはならない。97年の第二回公演では主役の堤真一はそのままに、深津絵里、古田新太を配しての舞台となったが、深津絵里が能力不足という感じで、舞台をやや壊してしまった。しかし、深津絵里は農業少女で素晴らしい演技を見せているので、やはり羽野の役をこなすことができなかったというか、羽野のための役にはどうしてもフィットしなかったということだと思う。今回は10年振りの再々演ということで配役を一新しての上演だった。ちなみに僕は初演、再演ともに生で2回ずつ見ている。
この「配役を一新しての上演」というのは上にも書いた「あてがき」という部分からして大きな冒険になる。野田秀樹の作・演出の最大の特徴は、「役者の良さ、魅力を最大限に引き出す」という部分で、その才能は初演だろうが再演だろうが当然発揮されるのだけれど、どうしても再演の場合は制約が大きくなる。夢の遊眠社という枠組みの中での再演ではそれでもある程度の質が確保できていたのだけれど、野田地図になってからは「再演はまず間違いなく劣化バージョン」という印象が強い。そういう事情があって、今回の舞台は正直あまり期待していなかった。
さて、見た結果であるが、もう、舞台の第一声から「あぁ、やっぱり駄目だった」というのが正直な感想。何といってもまず妻夫木聡が全然駄目である。テレビや映画では通用するかもしれないが、決して小さくはないシアターコクーンという場は、彼には明らかに大きすぎる。彼のポテンシャルが高いか低いかはわからないから、もちろん数年後にはここでバリバリやっていける役者に成長しているかもしれない。しかし、今は無理。そして、その相手役の広末涼子も駄目。妻夫木と同じく、彼女にとってもシアターコクーンは大きすぎる。この箱は、決して誰でもがうまく使える箱ではない。紀伊国屋ホールとは明らかに違うのである。「キル」自体はシアターコクーンの設備を前提として書かれているから、当然ここで上演すべき本ではあるが、このキャストでやるべき芝居ではない。それは、開演5分後ですでにわかってしまった。広末は以前毬谷友子が「贋作 桜の森の満開の下」でやったような声の使い分けにもチャレンジしていたが、ベースの声さえ通らないのに裏声が通用するわけがない。その使い分けという演出は野田の指示かもしれないが、完全に失敗していたと思う。何しろ、テムジンは世界を征服しようとする野心家であり、シルクはそのテムジンを一目ぼれさせるだけの美貌と高貴さを兼ね備えていなくてはならない。両者とも舞台の中でそのカリスマ性をほとばしらせる必要があるというのに、立ち居振る舞いも、声も、全てにおいて脇役であるはずの結髪に圧倒されている。例えばテムジンの「ミシンを踏めっ」という台詞に全く迫力がないのだから、話にならない。
今、ちょうど映画館でやっている「椿三十郎」。この映画のネットでの評価は、「やはり映画は脚本。役者がタコでも脚本がしっかりしていればちゃんと楽しめる。織田は駄目だが、この作品は脚本を旧作と全く変えていない。おかげでエンターテイメントとして成立している」というもの。多くの観客が、旧作とは別物だが、それはそれで楽しめる、と書いているようだ。
しかし、残念ながら芝居は違う。どんなに素晴らしい脚本であっても、それを演じる役者がタコだったらやっぱりだめだ。今回は、夢の遊眠社のライバルとして小劇場界を引っ張っていた第三舞台のOB、勝村政信と、同じ時期に活躍し、野田地図の芝居にも多くの役者を出している劇団☆新感線から、高田聖子が参加し、舞台を強力に支えている。この二人の活躍はもちろん期待通り素晴らしいと思うが、それが素晴らしければ素晴らしいほど、主役二人の弱さが際立ってしまう。実際のところ、勝村、高田は自分達が目立ちすぎないように、特に高田は気を遣って存在感を消すような努力をしていると思うのだけれど、そんな努力もどこへやら。恐らくはプロデューサーや演出者の想像以上に主役二人の力は不足していたんだと思う。
一気にラストまで全速力で走りきる。難解でもやもやとした感覚の中にキラキラと輝く台詞が散りばめられ、イメージを拡散させるような言葉遊びを盛り込みつつ、ラストの決め台詞で観客にカタルシスを与える、それが野田演劇の魅力だと思う。「少年はいつも動かない。 世界ばかりが沈んでいくんだ。」「いやあ、まいった、まいった」「海の向こうには、妹の絶望が沈んでいます」「びしょびしょになったタマシイが、どうか姿をみせますように」といった名台詞に行き着くまでの2時間を、緊張しながら楽しむような。
しかし、今日の芝居を見て、わかった。誰もがそのラストへ観客を導くことができるわけではないということを。同じレールの上を走り、同じ終着駅を目指していて、一見同じように走っているのに、到着したのは全然違う場所だったのだ。そこには感動はない。わきあがる感情は、「あれ?キルって、こんな作品だったっけ?」というもの。スピード感がなく、迫力もない。疾走感が全く失われてしまっているのだ。一緒に2時間を走り終えた充実感などは全くなく、自室で寝転んでみかんを食べながら漫画を読み、つけっぱなしのテレビで放送されているマラソン中継のゴールシーンを見ているような、そんな第三者感。その視点から初めて「キル」を見て、「なぁんだ」という思いも寄らぬ感想を持ってしまった。最後にゴールに到着した自分を客観的に見て、「あれ?こんなところで何をしているんだろう?」と戸惑うような。全体を通しての衣装や舞台芸術は素晴らしい。照明も見事だ。そしてそれらが作り上げていくラストシーンの「蒼」は本当に美しい。もちろん、「とびっきりのこの蒼空を着せてあげて下さいよ」という台詞も美しい。しかし、それが心に響いてこない。
僕は夢の遊眠社のOB数人と知り合いで、頻度はそれほど多くはないけれど、飲みに行ったりすることもある。しらふのままでは聞きにくいのだけれど、お酒が入るとついつい昔の話を聞いたりもする。そして、彼らから感じるのは、「まだまだやりかたったな」という不完全燃焼感である。もちろん役者のみんながそういう気持ちを持っているわけではないと思う。上杉さんなどはさっさと劇団という枠から飛び出して自力でやっていきたかった部類なのかも知れない。しかし、そうではなかった人たちも少なからずいたんじゃないだろうか。でも、彼らは「大将がやりたいことは別のことだから仕方がない」という気持ちだったと想像している。野田秀樹という才能がもっともっと大きく開花することを楽しみにして、劇団の解散を受け止めたんじゃないかと。そして、それはファンも同じ気持ちだったと思う。「なんで解散しちゃうんだろう」「もっと遊眠社としてやってくれ」と思いつつ、野田秀樹が見せてくれるであろう新しい世界を楽しみにして、解散を受け止めた。少なくとも、僕はそうだった。
実際、野田秀樹氏は、劇団という枠が取り払われて、その可能性を大きくひろげ、そして自分の潜在能力を顕在化することに成功したと思う。それが初演のキルであり、赤鬼であり、農業少女であり、研辰の討たれであり、ロープだったと思う。しかし、その一方で首を傾げたくなるような作品も増えたと思う。そして、そのほとんどは役者に足を引っ張られているケース(一部は箱に原因があると思う)だと思う。
解散直後に演じた「キル」が傑作だったことが、劇団解散をファンに納得させることに一役買ったことは間違いない。しかし、初演から約15年経って、その作品がこんな形で再演されてしまったことは皮肉であるとしか言いようがない。
野田さん、劇団を解散してまでやりたかったのは、本当にこれですか?
偏路
劇団、本谷有希子
紀伊國屋ホール(東京都)
2007/12/14 (金) ~ 2007/12/23 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かったです
本谷さんのお芝居は始めて見ましたけど、予想通り(予想以上に)面白かったです。単なるホームドラマかと思いきや、いろんな感情が入り混じっていて全く退屈せず、どんどんテンポアップしていって一気に時間が過ぎてきます。早くも次回作が見たくなりました。
ネタバレBOX
映像も実に効果的で美しく、ステージ全体の演出もすばらしかった。あの「歌」もすごいと思いましたし。ああいった台詞回しとか、主人公の感情とか考え方とか、これが本谷さんの芝居なのかと感じました。
お台場SHOW-GEKI城『親兄弟にバレる』
柿喰う客
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/20 (木)公演終了
200712151930
200712151930@フジテレビメディアタワー マルチシアター
お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」
ブラジル
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/19 (水)公演終了
200712151730
200712151730@フジテレビメディアタワー マルチシアター
Good Morning Everything
elePHANTMoon
インディペンデントシアターOji(東京都)
2007/12/14 (金) ~ 2007/12/18 (火)公演終了
200712141930
200712141930@王子小劇場
お台場SHOW-GEKI城「happiness!!!」
猫☆魂
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/21 (金)公演終了
演劇の嘘っぽさが前面に出てしまった70分。
その辺にいそうなキャラクターに
ちょっと良い台詞を言わせるというお芝居の典型。
<お台場SHOW-GEKI城 勝手にランキング>
1位:ハイバイ「おねがい放課後」
2位:タテヨコ企画「宇宙ノ正体メロス編」
3位:クロカミショウネン18「ワスレモノ」
4位:MCR「Track Back System」
5位:劇団コーヒー牛乳「コーヒーパーク~男の70分」
6位:ブラジル「センチメンタル☆草津」
7位:スペースノイド「NO.721」
8位:劇団上田「ハリウッド」
9位:柿喰う客「親兄弟にバレる」
10位:グワィニャオン「音小僧と殻少女」
11位:とくお組「近未来パーク」
12位:猫☆魂「happiness!!!」
ネタバレBOX
実際にはそんな奴は居ないし、
そんなコト絶対普段は言わないだろう!と
その嘘っぽさが前面に出てしまった70分。
最近のテレビドラマで、
視聴率が悪いのは
こういうタイプなのではないだろうか?とも。
お台場SHOW-GEKI城『親兄弟にバレる』
柿喰う客
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/20 (木)公演終了
満足度★
1mmも口角が上がることが無かった70分。
ま、前売りも完売だし、
お客さんもかなり沸いていて
支持率の高い人気劇団だなとは思いますが、
好き嫌いでいうと、完全に後者。
<お台場SHOW-GEKI城 勝手にランキング>
1位:ハイバイ「おねがい放課後」
2位:タテヨコ企画「宇宙ノ正体メロス編」
3位:クロカミショウネン18「ワスレモノ」
4位:MCR「Track Back System」
5位:劇団コーヒー牛乳「コーヒーパーク~男の70分」
6位:ブラジル「センチメンタル☆草津」
7位:スペースノイド「NO.721」
8位:劇団上田「ハリウッド」
9位:柿喰う客「親兄弟にバレる」
10位:グワィニャオン「音小僧と殻少女」
11位:とくお組「近未来パーク」
12位:猫☆魂「happiness!!!」
ネタバレBOX
深谷由梨香(柿喰う客)はやはり良いなと思うけれど。
脚本、演出、役者、どれをとっても興味が持てず。
玉置玲央(柿喰う客)は早く歯の治療をした方が良いとも思う。
片桐はづき、中林舞(小指値)、須貝英(箱庭円舞曲)ら
客演陣は交通事故にあったなという認識。
「他人の不幸 弔問客編」「性癖優秀」
「傷は浅いぞ」(プレビュー&本公演)と観ているのだけど、
興味の持てなさ加減を追及してみる。
脚本について、
タレントの実名を使って安易に笑いを取る。
シモネタの表現が表面的で、
童貞男子の妄想の上っ面をかすめた程度。
(童貞男子の妄想は、細菌兵器並の破壊力を持つので、
もっと慎重かつ大胆に扱うべきモノだと。)
台詞量は多いと感じるが、大体が状況説明の無駄台詞。
登場人物が多いが、必要の無いザコキャラが大半。
ご都合主義的な構成で、緻密なバカさに欠ける。
演出について、
大衆演劇やつか芝居風の
長台詞のハイテンション演技が基本だが、
やり切れていないのが大半で、役者に照れが見え
観ている側が気恥ずかしくなる。
動きのつまらなさを、突っ込み芸的な効果音で笑いを取る。
全体としての印象は、
深夜の低予算のお笑い番組や、
やっつけドラマのごった煮的な印象で、
わざわざ演劇として観る必要が
まったく感じられないかなと。
ラッシュ
θハナウタカプセルθ
明石スタジオ(東京都)
2007/12/13 (木) ~ 2007/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
☆初ハナウタ☆
構成が面白い。あんまり観ない。好き。初ハナウタでしたが、好印象。これからチェキだ(死語)
近いのは東京タンバリンの同時上演とモダンスイマーズ『回転する夜』かな。観せ方が面白い。
ネタバレBOX
銀行のお話なんですが、まずはロビーからカウンターが見える形にして、次に同じ時間(さっきと同じ演技)をカウンター越しから見せる。だからカウンターにいる銀行員3人の話してる内容とロビーにいる2人の話してる内容が聞ける。ロビーの2人とカウンターの2人とが絡む時も、話がくいちがってて笑える。
銀行強盗の対処をするため、強盗役を立てて実践するが、本物と役が同時に襲う(本当はグル)
まぁ、強盗は成功したが、騙し騙され…。。
なんか説明しずらいですが、面白い。鉄砲もちゃんとパーンって発砲するし。
でも死に過ぎな気がしないでもない。あの狭い劇場で発砲するとちょっと耳に来る。構成が構成なだけに暗転も多い。
でも、調度良い長さで暗転数も気にならない。あれで2時間やられたらたまらないが。
細かい所が繰り返しの中で違ってたり、やってなかったり(演出家の意図で)いやらしいが見方によって面白い。何回観ても面白い。
お台場SHOW-GEKI城「happiness!!!」
猫☆魂
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/21 (金)公演終了
満足度★
2年前に観た時は、
客演が中心でしたがもっと役者のキャラクターで押し、ストーリーもSFだったり、まだ個性というか見所があったような気が。
ネタバレBOX
「野球もの」や「ヤクザなキャラ」をあの演技でやられると、全体をギャグなどに落とさない限り、受け入れにくいです。
お台場SHOW-GEKI城『親兄弟にバレる』
柿喰う客
フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/20 (木)公演終了
満足度★★★
HOT FANTASY ODAIBAで、
妄想エンターテイメントでした(笑)
いつもながら前半は心配になってしまう突っ走りっぷり(追いつけなさ)。大きな流れが見えた辺りで乗っかれれば、最後まで連れて行ってくれます。
ネタバレBOX
台詞が聞き取れないなどのブレは別ですが、両家の構造が見えて来るまでが難しいところ。