白い輪、あるいは祈り
東京演劇アンサンブル
俳優座劇場(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
育ての親vs産みの親は主題ではないのね。所謂、戦争の被害者は市民や兵士って奴。ベタベタな面白は好みではないが、客層がかなり高齢なのでアレぐらいがちょうどいいのかしら。で、多分、俺はこれが最後の俳優座劇場。
リセット
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2025/03/11 (火) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ひと言でいうと、とある危うさをはらんだ家庭を舞台とした「不条理演劇」。
本作の特徴は、主要な登場人物が「軽い認知症の気がある祖母」「アルコール依存症気味な家父長にして母」
「正体がつかめない息子と名乗る男」と、全員が信頼性に欠ける“語り手”という点で、誰をどのくらい
信用するかで受け取り方も結構大きく変わってくるかなと思います。
白い輪、あるいは祈り
東京演劇アンサンブル
俳優座劇場(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/21 (金) 14:00
座席1階
ブレヒトの「コーカサスの白墨の輪」を題材に劇作家鄭義信が創作・演出。「焼き肉ドラゴン」などの作品群にいたく感動した自分としては、どんな作品かと期待して閉館間近の俳優座劇場に出かけた。
ミュージカル仕立て。劇団の若手とベテランが息の合ったダンス・歌唱を聴かせた。このあたりはさすがに鍛えられていて、見ていてとても楽しい。
裁判官のアツダクが狂言回しのような役割を担っていて興味深い。討たれた領主の男の赤ん坊を拾って戦乱の中を逃げ延びて育てたグルシェを演じた主役の永野愛理は、クルクル回るような視線での演技など、細かいところまで秀逸だった。
原作があるので無理は言えないかもしれないが、人情味があふれ、権力を持つ者への鋭い批判の目が或る戯曲を書く鄭義信らしさがあふれていたかというと、そうではない。ラストシーンはとても印象的で、ここが鄭義信らしいところだとは思ったものの、基本的には客席を楽しませる仕掛けを重視したつくりだった。期待する部分が違っていたのかもしれない。
歴史ある俳優座劇場の終幕にかける戯曲として、東京演劇アンサンブルのブレヒトというのはふさわしいものだったと思う。外部の劇作家に書き下ろしてもらうより、これまでのアンサンブル作品のようにブレヒトに真正面から挑んでいくのもありだったか。
怪人二十面相
J-ROCK
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/03/18 (火) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
耽美性やおどろおどろしさはなくて、ライトウェイトですかね。時代を現代に置き換えると、こうなっちゃうのかな。それでもなかなかに楽しめた朗読劇でした。
もびいる
COMPANY<らなうぇい>
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
エッジが効いた物語です。兄弟版テラスハウスは川崎のぼる先生の「てんとう虫の歌」のようにはいかず、その葛藤が舞台の上で繊細に描かれていました。しかし、鍵となるのは空から俯瞰して見ている白い天使だったような気がしました。
あのね、あの時、あの夜の音。
劇団さかさまのあさ
ひつじ座(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/20 (木) 18:00
舞台セットや、役者の化粧やカラコンの派手派手しく、今話題で漫画原作のアニメ化、映画化もされた『押しの子』のポップでダークな世界観、Tik TokでバズったアイドルグループやInsta映えなどを狙った感じなどと雰囲気が似ていた。
しかし劇が始まると、全然そんなことはなかった。
記憶喪失で自分の名前すら忘れてしまった女性が、不思議な女性と出会い、その女性は自らを"アイ"と名乗り、ここは死後ではなく、死語の世界だという。記憶喪失の主人公の女性からすると、その"アイ"とはこの死語の世界で会うの初めてな気がするのだが、"アイ"の側はどうにも記憶喪失の主人公の女性と前にも会ったことがあるような素振りをみせ、どうにも馴れ馴れしく、距離感をやたら詰めてくる上に、名前が思い出せないならと勝手にナナシと名付け、良い名前と一人満足して、勝手に他の妙に個性的でアクの強い死語たちに紹介してしまう強引さだが、どこか憎めず、謎を抱えているところが鮮明に印象に残った。
また、大抵亡くなった人や昏睡状態、認知症が酷く進行して呆けている人が主役の話の場合は死後の世界が舞台になり、死神、鬼と閻魔大王、悪魔相手に七転八倒の地獄破りが描かれたり、現世とほぼ何ら変わらない世界が描かれたり、死後において六大王に裁かれながら進んでいくドタバタ、ハチャメチャ道中が描かれたり、主人公が幽霊となって現世でやり残したことを成し遂げようと奮闘する話だったりするものだが、そのどれにも当てはまらず、記憶喪失の主人公の女性が死後ではなく死語の世界で大切なものを思い出そうと悪戦苦闘する話ということで、発想が突飛でなかなか面白かった。
チョベリグ(チョーベリーグット)、チョベリバ(チョーベリーバッド)というかつてのギャル言葉を擬人化した上でレズカップル?というような設定にしていたり、前田という言葉が絶妙に間が抜けていて、感覚がズレているが、時々的を射たことを言う、また死語の世界における人から忘れ去られると、その言葉を消す役割の鬼も、言葉を消す際衣服を奪う地獄で言うところの奪柄婆のような、非常なようでいて心根は優しさや人情も時々垣間見られるエバ、ギャルの組み合わせ鬼々羅々の言葉を消すのを何処か楽しんでいるようなサイコパス的で、情緒どうなっているんだろうと考えさせられるような鬼も出てきたり、かと思うと主人公のナナシの記憶のカケラが擬人化し、時に主人公を追い詰め、時にナナシが記憶を思い出すのに一役買ったりと闇なのか光となるのか全く言動行動が読めない登場人物を出してみたりと、登場人物たちの細かい設定や、主人公の記憶を封印したのにはそれ相応の理由があった背景、"アイ"も悩みなんてないようでいて実はといったことを一つ一つ丁寧に描いていて、そこそこ登場人物が混在し、登場人物の誰も彼もが主張しあい、その癖主人公は影が薄い割には、非常に分かりやすく、頭に入ってきて、鮮明に物語が眼の前に立ち上がって来るようだった。
ふわふわしたキャラも出てきたが、言葉を消す鬼が出てくる際、照明が暗くなり、音楽も不穏で不気味で思わず背筋が凍るような音だったりして、闇陣営と主人公側の比較的光?陣営とのコントラストがハッキリしていて、分かり易かった。
それでありながら、"アイ"が鬼たちに囲まれた際も、絶体絶命の危機のような状況で、古い流行語や間違った言葉、悲劇のヒロインぶったりすることで深刻な場面も深刻になりすぎず、時に笑える場面になっていて、非常に劇の中での緩急の使い方が、あまりにも自然で、上手いと感じた。
主人公のナナシが途中から記憶を少し思い出し、赤いポーチをチョベリグ、前田氏たちと危険を試みず探し回るが、冒険の途中で必ず出てくるナナシの記憶のカケラに頭を悩まされ振り回され、追い詰められるが、それは本当の自分と結果的に向き合うことになり、自分が母親であることを思い出し、遠い昔に娘を、娘と友達複数人だけで行った海辺で貝を拾っていたら大きな波に飲まれ、海難事故で娘を亡くした辛い過去を思い出し、その辛い過去から現実逃避せず、向き合い、母親である自分だけは忘れないでいようと心に決め、歩き出し、そして、実は"アイ"こそが…という衝撃の結末に向かって、後半戦はジェットコースターのように話が進み、別れが辛くて切ない終わり方に、心にグッとくるものがあった。
フロイス
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2025/03/08 (土) ~ 2025/03/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
いくら教科書に出てくるからと言っても一般には殆ど知られていない中世末期のポルトガル神父フロイス〔風間俊介〕を主人公にした一代記である。キリシタン殉教記では西洋にも認められた派手な殉教物語りがいくつもあるから、井上ひさしもラジオドラマにするときは他に手がなかったのだろう。
ラジオドラマ〔当時の名優揃いである〕は再び聞く機会もないだろうが、往復書簡形式をとったと聞けばなるほどと思う。結局井上自身は舞台劇化はしていない。今回の公演クレジットを見ると、井上ひさしの名は解説には出てくるが、フロイスを主人公にと考えたラジオの企画担当者も出てこない。これなら、元本の膨大なフロイスの「日本史」や「殉教史」を元に、作者が師匠を忖度しないで自由にフロイス傳を書いた方が面白かったのにと思う。全集本でもひっくり返せば、ラジオドラマのテキストは出てくるのではないかと思うが、この舞台で井上ひさしの果たした役割がよく分からない。
いかにもひさし好みの村の若い女〔川床明日香・好演〕や戸次重幸〔日和見の惣五郎〕も抑えめである。井上好みの歴史に手を突っ込んでかき回す面白さがない。演出は材木で囲んだ一杯の抽象セットで時代劇を成立させ、そこでのステージングもそれは見事なものだし、作者もよくまとめたと思うが、まぁここまでと遠慮したところも見える。それが煮え切らない副題に現われている。
二幕で休憩入りで2時間40分。とにかく過不足ない出来なのに、劇場が暖まらないのは素材のせいばかりではない。井上ひさしは死後には主人公が胴切りされて吊り下げられる「薮原検校」のような残酷無比の代表作だってあるではないか。このフロイスこには井上らしい思いっきりの良いドラマがない。そこは、当然、作者が違うからである。忖度ばやりの世相はここにも反映している。なんだか、故人の聖人化で後味は良くなかった。
劇をと言うこまつ座なら、小説の劇化をもっと自由に試みたらどうだろうか。誰がやったとて故人の作品の名声を損なうことはないだろう。
リセット
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2025/03/11 (火) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
チラシの表面に「三月の冷たい朝、消えた息子が立っていた」とコピーが大きく書いてある。ハハァ、これは別役もどきか、と当てをつけて見はじめると、予想は当たり、いかにも中流の夫を亡くした老婦人(赤地まり子)の前に、次々と、自称親族、(息子、妹、その夫、息子の未知の嫁、親族ならぬ不動産屋、老人介護業者)が現われ、老婦人の大好きな夫が残した家からの転居を勧める、これはかなり現実を踏まえているが、家族にドントンはいってくるあたりほぼ、安部公房風、「友達」である。なーんと思っていると、最後はちゃんとミステリ風なオチまで付いていて結局はミステリ劇になる。それはそうだろう、別役風、も安部公房風も、ケラから加藤拓也まで、いろいろな劇作家がやり尽くしている。
しかし、ミステリ風のオチではこのドラマは何も物語らない。所詮ミステリの謎解きに終って、1時間40分面白く見てもで、そうだったの、と言うだけになってしまう。
このドラマの構造ではどこかに、何か別の画期的な工夫がないと、折角の新人作家起用もアトリエらしくなくなってしまうい。
先般、この作者が新宿のトップス上演の劇壇ガルバにかき、この演出家がまとめた作品〔ミネムラさん〕はなかなか面白かった。こちらは無茶ぶりの仕掛けがあって、そこは必ずしも成功とは言えないのだけど、結果、面白かった。この演出家はあまり沢山見ていないからなんとも言えないが、文学座ガールズの中では、手堅く商業作品もまとまられそうな演出家と思った。むしろ無茶ぶりのトップスのような小劇場の方が、演出家も作者のウデの振るいようもあるのではないか。理に落ちてはつまらない。
それにしても、やはり、文学座の役者たちは上手い。久し振りの俳優も出ているがちゃんとアンサンブルがとれていて、過不足なくちゃんと役を拡げている。
痕、婚、
温泉ドラゴン
ザ・ポケット(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
山﨑薫劇場!
凄まじい作品。叩きのめされる。大正12年(1923年))関東大震災発生、震度7の揺れ、大規模火災、10万人以上の死者。天災によるやり場のない怨みや怒り、恐怖、苛立ち、不安、それら全てを社会的弱者にぶつけて憂さを晴らす。朝鮮人が各地で虐殺された。何の罪もない彼等をぶち殺したのは殺気立った普通の市井の人。時が経ち冷静になり、恥ずかしさと罪悪感から贖罪を背負う。だがそんなもの一体何になる?殺された連中にとってそれが一体何になるのか?
震災から二年経ち、やっと日常を取り戻した東京の下町。洋服店の店主(いわいのふ健氏)、娘(飯田桃子さん)、住み込みの職人(山﨑将平氏)、辞めた短気な職人(相川春樹氏)。隣の醤油屋の女将(中村美貴さん)。看板書き(筑波竜一氏)と教員(林田麻里さん)夫婦。よく猫を探しに来る在郷軍人(シライケイタ氏)。上京して来た新聞記者(阪本篤氏)。出版社の男(秋谷翔音〈しょうん〉氏)。
そんなある日、店の前で「裁縫職人募集中」の貼紙を眺めている一人の女性(山﨑薫さん)の姿が。
とにかく飯を食う。やたら皆食べる。日常の生活が丁寧に描写される。掃除をして配膳して後片付け、草履を揃える。毎日の日々の積み重ね。縫い物の技術、洋裁の楽しさ、雑誌に載った写真を眺めて自分が着てみたい服を選ぶ女性陣。それをミシン一つで縫い上げる山﨑薫さん。
山﨑薫さんのたすき掛けは絵になる。
作品としての目線、テイストは中国映画『鬼が来た!』みたいに突き放した感覚。日本のドラマツルギーっぽくない。韓国人が今作を観てどう思うのか知りたくなる。
新国立劇場演劇研修所第17期生公演にて『君は即ち春を吸ひこんだのだ』を演った飯田桃子さん。今作はその作者であった原田ゆう氏の新作。手足が長く表現力も大きい為目立つ。売れそう。
相川春樹氏は手塚治虫顔。『福田村事件』の水道橋博士にイメージがだぶる。
シライケイタ氏の朝鮮から連れ帰った飼い猫「柴田君」が気になる。噂だけが広がり皆に嫌われて恐れられる可愛い猫。
筑波竜一氏の描き込んだ設定、中村美貴さんの吐き捨てる台詞、山﨑将平氏の負い目、いわいのふ健氏の表情、申し分がない。
そして山﨑薫さんの怖ろしさ。これを見逃すと後悔することになる。テーマは「贖罪」。全ての「被害者」と全ての「加害者」、全ての「傍観者」に送る。
本当にもう一度観たいくらい良かった。
必見。
ここは住むとこではありません
TEAM FLY FLAT
雑遊(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/20 (木) 18:00
価格4,000円
どう見てもまともじゃない人ばかりが出てきて、なんやかやの挙句、なんだかイイ風に終わるかと思いきやなんじゃそりゃという結末。予想通り一筋縄ではいかない
舞姫 〜盟星座の住人達〜
玄狐
サンモールスタジオ(東京都)
2025/03/15 (土) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チラシとユニット名に惹かれ、あらすじ、再演との情報、新派俳優が複数出演と見てつい(普段観ないテイストを味わえるかも、と)足を運んだ。
目指す物語世界はよく判り、期待しつつ観る。演技やミザンス面、あるいは脚本の人物描写なのか引っ掛かって追いづらく、睡魔が襲う(こっちのコンディションもあるが)。中々の時間をうつらうつらしてしまったと思っていたが、伏線が回収される終盤には物語の全容は見えており、像が脳裏に刻印され、眠った事実も忘れていた。
舞台となる(やがて取り壊される)劇場とそこに住む人々が作者の中に息づき、愛おしさをもって綴った痕跡が横溢し、取りこぼした伏線もありながら念一つで立っているとも見える舞台だった。
川辺でひとり
株式会社ノックアウト
駅前劇場(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2025/03/20 (木) 12:00
価格2,500円
Bチーム観劇。日常的な風景のはずなのにかなり捻った演出で違和感を醸し出すという一風変わった会話劇
ロケット・マン
劇団鋼鉄村松
劇場MOMO(東京都)
2024/11/28 (木) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
R老人の終末の御予定
ポップンマッシュルームチキン野郎
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/03/06 (木) ~ 2025/03/11 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/10 (月) 19:00
価格6,000円
7年ぶりの再演ということで、基本ストーリーは変わらないけど会場も変わったことで雰囲気は変わった
狂人よ、何処へ ~俳諧亭句楽ノ生ト死~
遊戯空間
上野ストアハウス(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
当日パンフによれば、吉井勇の原作で 三代目蝶花樓馬樂をモデルにした人物 =俳諧亭句樂を主人公に、その句樂や句樂の周辺を描いた作品群。公演は、その「句樂もの」の幾つかを遊戯空間(構成・演出・美術 篠本賢一 氏)が再構成し、滑稽洒脱な物語として紡ぐ。その粋な芸人の生き様が生き活きと描かれ、実に抒情や憧憬が豊か。この「句楽もの」戯曲の選択と構成が妙。
吉井勇という歌人で劇作家のことは知らなかったが、「ゴンドラの唄」は黒澤映画「生きる」で知っており、その作詞家だという。哀愁に満ちた印象を持っていたが、開場前に流れる同曲はポップ調でなんとも楽し気である。原作の「句楽もの」は読んだことも観たこともないが、この再構成(換骨奪胎か)によってどのような姿に生まれ変わったのだろう。自分は、この滋味溢れる内容と小気味良い展開は好きである。
幾つかの「句楽もの」を繋ぐのが、桂右團治師匠の語り。これによって場面が変わったことが分かり、物語全体が違和感なく構成される。夫々の場面を通して、当時の芸人たちの暮らしや考え方、そして先にも記した生き様が面白可笑しく立ち上がる。同時に 狂人となった主人公が述べる戯言、しかし そこには現代にも当て嵌まる皮肉や批判が込められている。
また場面変化に対応した舞台美術が見事。同時に「句楽もの」の世界観とでも言うのか、その雰囲気も楽しめた。
(上演時間2時間40分 途中休憩10分)3.22追記
アンサンブルデイズ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
朱雀、玄武、両ver.初日を観劇。
見やすいミュージカルでした。
おそらく演劇に興味無い人が観に来る可能性は小さい公演だと思うんですが。演劇に興味が無い人が観ても、まだ名前が売れてない役者って大変なんだなって共感してもらえるくらい、観やすい芝居だと思う。
有名な演者が出演してるわけじゃないって以外は、ほぼ満席のコクーンで胸を張ってやれる充実度。
観ておけば、あの〇〇のCAS公演、自分は観たんだぜって、悦に入れるかもしれません。
朱雀、玄武。どちらも良いし、どちらを観ても全員をちゃんと観られるのも良いですね。
(一部シングルキャストを除き、ver.で役者の役が変わります)
白い輪、あるいは祈り
東京演劇アンサンブル
俳優座劇場(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
正しく鄭ワールド。冒頭のいじりから一歩「物語」叙述に入ると一気に引き込んだ。
ブレヒトの「白墨の輪」を鄭義信流に噛み砕き、一々ツボを突く歌、心底を揺さぶる音楽と、秒単位で仕込んだ笑いで描く。
アンサンブル俳優それぞれの持ち味で「笑わし」が成立していたのも良かった。俳優座劇場閉場を飾るに相応しい芝居魂溢るる舞台。
泡風呂で生まれなおす
COLLOL
cafe MURIWUI(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/20 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/20 (木) 15:00
上演会場が小劇場やホール、公民館等でなく、Cafe MURI URIという、まぁ正確に言えば、Cafeというよりかは演劇やダンスや舞踏、展示会、シンガーソングライターによる弾き語りLIVE等に使われるイベントスペースだということを、Cafeの公式サイトを見て分かったが(なお、現在Cafeとしては営業していないということが公式サイトに書かれていた)、それにしてもCafeで公演するということだけでも気になる。その上、田口アヤコさんという役者による一人芝居であり、朗読劇であり、現代ダンスも多少取り入れており、観ていて、良い意味で演る作品の数も4作品とそんなに少なくなく、劇の内容も盛りだくさんで、観ていてお腹いっぱいになった。
また、ドリンク代を払って、ドリンク片手に、気軽に鑑賞でき、Cafeがアパートの屋上に面している関係もあってか、窓から気持ちの良い陽光が差し込み、店内はあんまり無駄に電気を使っていない感じが、Cafeという空間を最大限に活かしていると感じ、自然さえも劇の背景に思えてきた。
最初にCoRichに載っていた劇のイメージの写真とタイトルからは良い意味で、はっきり言ってどのような内容なのかが全く想像できなかったが、その現代アートのような写真や突飛なタイトルに惹かれて観にいったら、想像していた以上によく出来ていて、感心してしまった。
私は、昼の回を観た。
昼の回の前半の中編の劇川上弘美作『aer』では、出演しているのが役者の田口アヤコさんのみなことを逆に強みにした主人公の女性が赤裸々で欲望のままに生きていたところから、自分の子どもを身籠り、産みの苦しみ、息子が大きくなり、成長し、親離れしていき、段々息子が大きくなるにつれ、殺したい衝動が肥大化していき、苦しみ、いつの間にか自分が人並みに歳を取っていき、気付けば、息子も自分と似たような性癖を持ち、自分と同じような欠点を持ち、自分と同じように恋愛して結婚し、子どもが産まれ、気付くと歳を取っていくんだろうと考えると、その循環こそが、究極の復習になるのではないかといった風に考えるようになるまでを、時にに独白的、時に私小説的、時に詩的、時に哲学的、時に感情露わにして、主人公の女性の心情を描いたり、物語がどれくらい進行してるかを表現していて、これは田口アヤコさんの個性もあるのだろうが、内容的には多少のサスペンスやサイコホラーの要素さえあれど、幻想的だったり、ファンタジックな要素なんて微塵もないのに、その独特な動きや語り口から、不思議な話だと錯覚させられてしまうから見事なものだ。
後半では、谷川俊太郎作の詩『ぼく』、短編劇田口アヤコ作『わたしが死んだら世界が終わる』、宮沢賢治作の詩『永訣の朝』を観た。
2つの詩は、詩が描く人物描写や風景、世界観がありありと目に浮かんでくる朗読で、非常に良かった。
短編劇田口アヤコ作『わたしが死んだら世界が終わる』は、タイトルだけ観ていると、村上春樹さんとかと似たような世界観と思いきや、蓋を開けてみると良い意味で裏切ってくれて、中味は、銀河鉄道の夜に出てくるジョバンニの母親とカンパネルラ亡き後のジョバンニのリアルで痛々しいその後を描いていて、『ドラえもん』におけるドラえもんが居なくなった後の、のび太とのび太ママ、ジャイアンとスネ夫、しずかちゃんと出来杉の中年になった姿を描くくらいに見てはいけないパンドラの箱を開けた感が否めなかったが、そのドキドキ冷や冷や感に引き込まれた。
高齢なジョバンニママがコロナで亡くなり、自分が亡くなった後工場で夜勤で働く息子のジョバンニが上手くやっていけるかどうか等の不安や心配から暫くの間幽霊となって家に留まると言ったことなど、妙な現実と不思議さが日常の延長線上に描かれて、話が進んでいって、なかなか興味深かった。電気、ガス、水道代等が溜まっているなどリアル過ぎて怖いぐらいに、宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』のその後を描いているとは思えないぐらい、ロマンもクソあったもんじゃない現実が突きつけられていて、感慨深かった。
但し、前半、後半を通して、ほぼ笑える場面がなくて、極度に身体を張り詰めて、極度に集中して観ていたので、観終わった後、そんなに長時間じゃなかったはずだが、途中休憩もあったし、適度にドリンクも飲んでいたはずだが、気の張り詰め過ぎで大いに疲れた。
ぶた草の庭
劇団道学先生
小劇場 楽園(東京都)
2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
率直な感想として、台本がイマイチ。設定が生かし切れていないと感じられるし、状況と心情がミスマッチで不自然に軽く稚拙な印象。
リセット
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2025/03/11 (火) ~ 2025/03/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
最初、どうも辻つまが合わないので、不条理劇か、3年前に俳優座で観た「ムッシュ・シュミットって誰だ?」みたいな路線かと思わせたが、かなりシリアスで答えが見えそうで見えない不思議な作品。迷路の中を彷徨っているようで、混乱させられ不安な気持ちにさせられる。最後で一つだけ解決が提供されるが、他は混沌のまま観る者の想像力に任される。こういうストーリであるゆえ、俳優陣の安定した演技が際立つ。