実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/21 (金) 14:00
座席1階
ブレヒトの「コーカサスの白墨の輪」を題材に劇作家鄭義信が創作・演出。「焼き肉ドラゴン」などの作品群にいたく感動した自分としては、どんな作品かと期待して閉館間近の俳優座劇場に出かけた。
ミュージカル仕立て。劇団の若手とベテランが息の合ったダンス・歌唱を聴かせた。このあたりはさすがに鍛えられていて、見ていてとても楽しい。
裁判官のアツダクが狂言回しのような役割を担っていて興味深い。討たれた領主の男の赤ん坊を拾って戦乱の中を逃げ延びて育てたグルシェを演じた主役の永野愛理は、クルクル回るような視線での演技など、細かいところまで秀逸だった。
原作があるので無理は言えないかもしれないが、人情味があふれ、権力を持つ者への鋭い批判の目が或る戯曲を書く鄭義信らしさがあふれていたかというと、そうではない。ラストシーンはとても印象的で、ここが鄭義信らしいところだとは思ったものの、基本的には客席を楽しませる仕掛けを重視したつくりだった。期待する部分が違っていたのかもしれない。
歴史ある俳優座劇場の終幕にかける戯曲として、東京演劇アンサンブルのブレヒトというのはふさわしいものだったと思う。外部の劇作家に書き下ろしてもらうより、これまでのアンサンブル作品のようにブレヒトに真正面から挑んでいくのもありだったか。