百年の秘密
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2012/04/22 (日) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★
費用対効果の高いお芝居
ケラさんの創るお芝居には、いつも見料以上の満足感を得ている。観られた方には賛否両論あると思うが、私にはとても「見応えがあり、映像を巧みに取り入れた格好良さ」は毎回センスの良さに感動する。
今回の行きつ戻りつする芝居構成は、何度リピートしても楽しめると思う。可能であれば神奈川公演も足を運びたいが、キャパが大きくなり過ぎると伝わりにくくなるのでは?という懸念もあるかな?
がんぜない瞳の殺人者
アリー・エンターテイメント
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2012/04/24 (火) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★
重たい…
実話が元になっており、重たい内容だ。
でも、もっと私を重たくさせたのは、主役以外の役者だ。私が下手側にいたから特にかもしれないが、上手側で演技される方々のセリフが聞き取りづらいとか、何やってるのか分からなかったり…。すると私の心に響くこともなく、だんだん冷めてしまっていました。
たぶん、公演を重ねるにつれ、状況は変わったとは思いますが…。
刑務所のセットの使い方は、いいなと思いました。
天使たち
リュカ. (Lucas [lyka])
インディペンデントシアターOji(東京都)
2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
いつもあなたのそばに
天使の衣装が素敵。かわいいというかね。その「天使たち」がみな魅力的だった。
舞台を布で包んだり、上部の装置に転換中目が行くようにさせる工夫も良かった。
ネタバレBOX
バツイチの作家(中田顕史郎)が、海外留学目前の娘に是非読んでほしいと書いた小説の内容、という構成。天使たちの後日談はあったけど、作家とその編集・清水(奥田ワレタ)の恋の行方は…?。
志のある人間のそばにいるという「天使」。元天使の西澤(境宏子)は、天使のつく人間(宿主)を共同住宅に住まわせ、相談にのっている。
最近入居した鴻坂(池田ヒロユキ)は、障害を持った妹への罪悪感を持ち、書きたいものが書けなく自信を失っている。その天使(こいけけいこ)は、西澤を励ますも上手くいかずこちらも思い悩み、人間となって鴻坂と絵本を制作する。
アマチュアレーサーの速水(小寺悠介)は、レーサーの寿命と両親のことで悩んでいる中、レースー中に事故り、引退を決める。天使(倉田大輔)は、宿主が志をなくしたことでその存在がなくなる。
写真家を目指すアオイ(サキヒナタ)とその宿主になるのか決めかねる天使(増戸香織)。速水の事故で写真への想いを再確認したアオイをみて、増戸は宿主になってとお願いする。
鴻坂の天使が妹の生まれ変わりという示唆を含んで、おぼつかない手つきで絵を書き、鴻坂が妹への懺悔を語るシーンが涙を誘う。速水の天使も、速水への愛情に似た想いで天使を始めたが、速水を思うあまり事故に対して罪悪感を持ち、速水の引退に対して何もできない無力感に苦悩する。終始冷静な物腰の中に、熱い想いを垣間見ることができる。アオイの天使は、アオイのことが気になる素振りを見せつつも、つかず離れず。西澤からは傍観者と言われ、他の天使(佐藤祐香)のキラキラした話を聞き、アオイの心にふれ、動揺する。サバサバしたような性格なのに「この人だ!」って踏み切れない心を持った天使像に惹かれた。天使・こいけけいこのようなバックグラウンドがあるのだろうかと想像できる。
甘くない内容を、柔らかい作家の話で包んだ良作品。仕事とか人への悩みを人も天使も抱え、不安ながらも一歩一歩歩き始め、次のストーリーが始まる。甘くはないけど、優しい話がとても気に入った。
【ご来場ありがとうございました】のんべぇい!
SUMMER SONIC THEATER (サマーソニックシアター)
上野ストアハウス(東京都)
2012/05/03 (木) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
プレイスター
WBB
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2012/04/25 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★
ぶち壊し!
面白かったお芝居がアフタートークで台無しになりました。
ネタバレBOX
ヒーロー役者を目指す割には体が固そうで、当然といえば当然ですが、最後、美味しいところは空手の得意なヒロインにすっかり持っていかれた、とても楽しい人畜無害的ヒーロー物、いやヒロイン物でした。
それが、10分という約束のアフタートークが、終わりそうになるとまた話を振っていつまでもだらだらと続き、佐野瑞樹さんご本人もおしゃべりおばさんと呼ばれているとおっしゃっていましたが正にそのとおりで、イライラして最後は腹が立って来ました。
以前、もの凄く純情な役の女優さんがアフタートークでぶっ飛んでいて、参加しなければ良かったと思ったことがありましたが、今回も舞台の余韻を台無しにするアフタートークでした。
【ご来場ありがとうございました】のんべぇい!
SUMMER SONIC THEATER (サマーソニックシアター)
上野ストアハウス(東京都)
2012/05/03 (木) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★
駄菓子への想い
飲んべぇいというよりも、駄菓子屋エレジーという感じ
でした。三ノ輪の駄菓子屋への想いが込められており、楽しく拝観いたしました。セットと時代がめまぐるしく変化し、退屈しない100分間でした。
かたりたがりのみせたがり
Love FM
西鉄ホール(福岡県)
2012/04/13 (金) ~ 2012/04/14 (土)公演終了
満足度★★★
春爛漫!山田広野の活弁天国
前座としては最悪と言ってよいほどにつまらない(←本気で扱き下ろしてます)、月光亭の落語モドキのせいで、果たしてこれから先の“濃い”1時間半を乗り切れるだろうかと不安に感じたが、三つ揃いにハンチングの、いつもの「活弁」スタイルの山田氏が登場すると、沈滞していた会場の雰囲気もさっと明るくなる。あとはいつもの下品で脱力系のとことん下らない(←こちらは誉め言葉です)、自主短編映画の数々、これに山田氏が、だみ声だけれども明るい作り声で、ナレーションを付ける。
正直なことを言えば、たいして笑えないネタ、作品も結構ある。しかし、山田広野の場合、笑えない、面白くないというのが、決して貶し言葉にはならない。素人が作ったとしか思えない(と言うか監督も素人なら出演している役者も実際に殆ど素人なのだが)チープさ、適当さと言うよりはいい加減さ、これが観客の脳髄をクラクラさせるドラッグ的作用を施すのだ。観ようによっては、山田広野は現代における最も先鋭的なアングラパフォーマーであるかもしれない。
しかし、毎回思うことだが、映画の楽しさを、山田氏のMCが台無しにしてしまっている、とまでは言わないが、いささか足を引っ張っている嫌いがないわけではない。映画はバカだが、山田氏はバカではない。基本的に理知の人なので、映画を作るまでの「解説」が映画の「計算されたバカ」を暴露してしまうのだ。「みせたがり」が本質で「かたりたがり」の方は不得意だということなのかもしれないが、「活弁」を名乗る以上は、多少は合間の語りにももう少し熟達してほしいと思うのである。
ネタバレBOX
前座の月光亭、四人の女性が代わる代わるに、あるいは台詞を重ねて、輪唱するような合唱するような調子で『饅頭こわい』を演じるが、初心者の落語家が陥りやすい落とし穴に、しっかりハマってしまっている。
落語は「芸」であって「演技」ではないということが理解できていない。どの演者もテンポはいいが、それは役者が勝手に思いこんでいるテンポであって、「観客のためのテンポ」ではない。観客との間に「阿吽の呼吸」を作らないまま演じているので、客からは彼女たちが自分たちを置いてきぼりにして、「ひとり」で喋っているようにしか聞こえない。落語の前座で、下手な人、座布団を引かれて中ほどまでで引っ込んじゃった人を寄席で何人も観てきたが、これは開始後3分で引っ込まなきゃならないくらい、最低の前座である。一応、噺は定番の「お茶が怖い(=お茶がほしい)」で終わるが、そのあとに「お客さんの拍手が怖い(=拍手を頂戴)」と付け加えるとは下手くその癖に、思い上がるのも甚だしい。それが客をバカにした態度だと謂うことに気付かんのか。
客席でも全く笑いが起きなかったが、本人たちは「巧く演じているつもり」らしいのが失笑ものである。余計なお世話ではあるが、このように落語を根本的に勘違いしているようでは、到底、これから先の芽はないから、さっさと亭号は捨てて本名に戻り、普通に俳優をやってた方がまだマシなんじゃなかろうか。
今見たものはなかったことにして(そうアタマを切り換えなければその場にいられない)「本編」の山田広野の登場を待つ。
今回の会場、例年のイスを並べただけの観客席ではなく、テーブルが設えられていて、後方には簡易バーがあり、枝豆やお菓子などの軽食、ジュースやカクテルなどの飲食が可能になっている。嬉しい試みだが、映画を観ている最中に枝豆をぽりぽり食うわけにもいかないので、合間に慌てて口の中に頬張る羽目になる。別に必要なサービスでもないのではないかな。
記憶だけで書いているので、抜けるネタもあると思うが、最初の映画は、山田氏の人気シリーズ、『実験人形ダミー・オズマー』の新作。もちろん元ネタは小池一夫・叶精作の漫画『実験人形ダミー・オスカー』なのだが、もうお客さんを常連と踏んでいるのか、山田氏、一切の解説をしない。
嫉妬深くて優柔不断な彼とソックリの別人に、うっかり付いていってしまったヒロイン。しかしその別人さんはヒロインの初恋の相手だった。自分の彼女が、自分によく似た男と仲良さそうに喫茶店に入るのを見て、怒りに狂った彼氏は、そっくりさんをぶん殴る。しかしそれはダミー・オズマーが二人の仲を結ぶために用意したダッチワイ……もとい、実験人形だった! という落ち。
今どきのダッ○○○○は、人と見間違うほど精巧なものも多いが、ダミー・オズマーが使っているのは風船式の旧型。それがなぜかリアルな人間に、しかも老若男女なんにでもなれるのがいい加減。オズマー役のホリケンさんは、他の映画にも一応出演している役者さんらしいのだが、濃い顔なのに殆ど見かけたことがない。山田氏の話によると「背中だけ写っていた」パターンが多いそうだ。
山田氏が上海だったかどこかで貰ってきた漢方薬のチラシ。頭痛や胃痛など、様々な病気に効くことが、イラスト入りで説明されている。その絵を適当に組み合わせて、勝手にドラマをでっち上げる。結果、二人のOLの間で不倫に悩むハゲ(カツラ)の上司が、結局二人ともに振られてしまうが、それは二人がレズだったから、というむちゃくちゃなストーリーに。
全てのイラストを使わなければいけないから、上司がハゲでくしゃみをしたらカツラが飛ぶという、無理やりな展開をするところが面白い。
これもシリーズ、人呼んで「版権無視シリーズ」。
昔々、「少年チ○○○○○」に掲載されていた、あのドギツイ絵柄の、昔は二人で一人の名前だったマンガ家さんのオカルトマンガが下敷き。つか、そのイラストをまんま使っているから、著作権侵害は承知の上。ダミー・オズマーみたいにパロディにすればいいものを、わざと訴えるなら訴えてみろな挑発的なことをやらかすのが山田氏の悪趣味なところ(←だからこれも誉めてるんですってば)。
主人公のマ太郎くんは、その恨みがましいご面相のせいで女の子に全くモテない。ところがなぜか今回は、両手に花で、美女を二人もはべらせている。けれども二人の女から口を吐いて出た言葉は、「臓器売らない?」逃げるマ太郎を助けた第三の女、しかしこの女も「もう日本にはいられないでしょ、波止場で船が待ってるから!」。
女たちに騙されたと知ったマ太郎くん、得意の「恨み念法」で、金の亡者の女たちを、みんなお札に換えてしまったのでした。
毎回、「女がらみ」なのが、原典の中学生からオトナになったマ太郎くんのルサンチマンの強さ、業の深さを感じさせて、笑えるけれども切なくなります。
今回、白眉だったのは、友人に頼まれて作ったという、結婚披露宴での「二人の出逢いビデオ」。
普通は、二人のアルバムなどを元にして作るものだろうが、山田氏は完全再現ドラマとして、役者を使ってドラマを作る。けれどもその内容が全てでっち上げ。「二人は店のマスターと客だった」ということだけ聞いて、あとはお嫁さんを勝手に「男の尻フェチ女」にし、恋のライバルに別の尻フェチ女と尻フェチ男(笑)を配して、3人バトルを繰り広げる。最終勝利は、お婿さんの犬が決めたといういい加減な落ち。
実際に、披露宴で流したところ、尻フェチ女にされたお嫁さんのご家族はかなり立腹されたそうだが、瓢箪から駒、あとで山田氏が聞いたところによると、このお嫁さん、本当に尻フェチだったそうだ。関係者がこの映画を見た時の反応を想像しながら見ると楽しい一本。
ほかにも、居酒屋の臨時店員になった女たちが借金取りを始末していく話とか、少女雑誌のモデルになったヒロインがポルノを撮らされてしまう話とかもあったが、長い(と言っても10分程度)作品になると、脱力し続けるのにも疲れてしまう(苦笑)。
殆どの作品がワン・アイデア、くだらない一発ギャグみたいなものだから、それを面白く見せるためには、あまり長く撮らない方がよかろうと思う。
山田映画はアイデアとそのチープさがうまくハマると面白い。しかし単にチープなだけに終わる作品も少なくない。先述した通り、MCが説明的すぎると作品自体がつまらなく見えてくるし(妙に自作を卑下して語るのである)、MCの時くらい、だみ声の作り声でなく、普通に喋ればいいのにとも思う。今回は、後方のバーのところに何度も「飲みに行きたいがガマンする。みなさんは飲んでていいんですよ」と繰り返していたのが客席の空気を読めておらず、鬱陶しかった。
自主映画と言えば、知る人ぞ知る存在であろうが、『聖ジェルノン』シリーズや『浅瀬でランデブー』などの驚異的な“天然”作品で、観客を茫然とさせ続けている伊勢田勝行監督がいる。
完全なド素人で、ドラマ作りも画面作りも糞もない駄作しか作れないのに、なぜか観客の爆笑を呼んでいるあの破天荒さと情熱、まだまだ理に勝ちすぎている山田氏に必要なものはあの伊勢田監督の天然さなのではないのかとも思う。
もっと天然になって、それで客が来るかどうかは分からないが(苦笑)。
シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ
音楽座ミュージカル
ももちパレス(福岡県)
2012/04/09 (月) ~ 2012/04/15 (日)公演終了
満足度★★
SF? いや、トンデモSFだ!
原作に忠実だとしても、脚本は乱雑だと言う他はない。
せっかくの設定が、後半で台無しにされる、伏線がうまく利かない、その繰り返し。基本、SFなのだが、ストーリーの大半は、これ別にSFにしなきゃならないお話じゃないよなあ、と首を傾げるものばかり。
ところがそれでつまらないかと言うと、そうでもない。予測が付かない展開に笑いを堪えながら食い入るように観て、要所要所ではホロリとさせられる場面もあったのだから、演劇というのは単純に出来不出来だけでモノが言えるものではないとつくづく思う。ただ、作り手の意図と、受け手の面白がり方にかなり乖離が生じているのも事実だろう。演出効果とは何なのかをもう少し考えてほしい舞台だった。
ミュージカルとしては、音楽が曲想の似通ったものばかりで一本調子、メリハリに欠ける面が多々ある。ダンスは公演を重ねているだけあって、観られはするが、ブロードウェイミュージカルほどの粋には到達していない。その点でもお勧めはしかねるはずなのだが、自己陶酔型の独り善がりなものになってはいないので、不快感はない。
役者では、やはり不幸な境遇から立ち直っていくヒロインの佳代を演じた髙野菜々が、関西弁を駆使し、時にはぶっきらぼうに、時には愛らしく、その魅力を一番に発揮していた。
美術セットの工夫も含めて、見所は満載なのである。だからこれで脚本がもっとマトモだったらねえ(苦笑)。
ネタバレBOX
冒頭、UFO(宇宙船)の事故がナレーションで語られる。
後にこれがラス星人の地球探査船であることが判明するのだが、これが物語にどう関連していくのか、最初の伏線の張り方としては悪くはない。
物語は、最初の緊迫した展開がなかったかのように、音楽家を夢見る普通の青年・三浦悠介(小林啓也)の遊園地での初デートの様子を描く。スリの折口佳代(髙野菜々)が悠介のサイフをスったことがきっかけで、彼のデートはおじゃんになるが、悠介には何となく佳代のことが、佳代は悠介のことが気に掛かる存在になる。
この時の遊園地の「迷路」のセットが素晴らしい。人力で方柱が自由自在に動く仕掛けだが、それが組み合わさって時には道になり壁になり、悠介と佳代の行く手を閉ざし、姿を隠し、二人の心が彷徨う様子を象徴的に表現している。これはクライマックスでも効果的に繰り返された。
二人は、悠介のバイト先、喫茶「ケンタウルス」で再会する。スリを辞めることを心に誓った佳代は、悠介と出会った頃の蓮っ葉な印象が少しずつ薄れて、乱暴な関西弁も段々優しげになっていく。悠介の作曲家への道も開けて、二人の仲も接近、順風満帆か、といったところで、お決まりの「逆境」が訪れるのだが、これがどうも定石を外しまくって、どんどんおかしくなっていくのだ。
実は佳代は、13歳の時に、ヤクザの義父の虐待に遭って、死んでいた。しかし、たまたまその時、宇宙船の事故で死んだラス星人の女性・オリー(野口綾乃)の「生命素」を保管するための「入れ物」として、蘇生させられていたのだ。
いったん、帰星していたラス星人たちは、8年後に再び地球にやってくる。オリーの生命素を取り戻しに。しかしそれは、佳代の死を意味することでもあった(この「8年」は、ラス星が地球から4.3光年離れたアルファ・ケンタウリであることを示唆している)。
こういう事態になれば、物語は当然、限られた佳代の命をどうするか、あるいは悠介がラス星人から佳代をいかにして守るか、そういうドラマが始まるのだろうと誰もが予想するところである。ところが話は全く意外な展開を見ることになる。
ラス星人たちは、二人の間柄を知って同情し、オリーを取り戻すことを待つことにするのだ。「私たちの寿命は君らの百倍長い。君たちが死んだ後、生命素は取り戻すよ」。
逆境が実は逆境でも何でもなく、悠介も佳代も何の努力もせずに助かっちゃったという、これはドラマじゃないよ、アンチ・ドラマだ、いったい何のために「生命素」なんてアイデアを持ち込んだのだ、と思っていたら、今度は、別の逆境が二人を見舞うことになる。
佳代の義父・小野源兵衛(石山輝夫)が現れて、佳代に、スリの過去を悠介にバラされたくなかったら自分の元へ戻ってこいと告げる。佳代の処女を奪ったのも実はこの源兵衛だったというドロドロの人間関係の果てに、佳代は思わず源兵衛を刺殺、なぜかそこに現れたラス星人のゼス(広田勇二)も巻き添えを食らって絶命。何しに出てきたラス星人。優しいけれど全くの役立たずである。
下敷きになってるのは、『レ・ミゼラブル』やオー・ヘンリー『よみがえった改心』なんだが、元ネタの急展開のさせ方が普通じゃない。たいてい、主人公の過去の罪は許されるものだが、佳代はしっかり罪を背負って刑務所行きになってしまうのである。作り手としては、ドラマを盛り上げたいのだろうが、こうも予想の斜め上を行かれると、驚くよりも悲しむよりも、笑ってしまうのを如何ともし難い。しかも、急展開はさらに続くのだ。
獄中結婚をすることにした佳代の元に、突然、悠介の訃報が届く。なんと悠介は飛行機事故で死んでしまったのだ。嘆く佳代。しかし、ここでは都合よく、ラス星人が現れて、悠介を助けていた。
もうね、ツッコミどころが満載なんだけど、そんなにささっと動けるんなら、事故が起きないように宇宙人力でなんとかできなかったのか、これまでの役立たずぶりは何だったのかとか、知り合いだけ助けて他の乗客は見殺しかよとか、文句をつけるだけ詮ない気になってくる。しかもラス星人。ここでまた大チョンボをやらかすのだ。
悠介をうっかりラス星に光速の宇宙船で連れ帰っちゃったために、ウラシマ効果(相対性理論で、光速に近づけば近づくほど宇宙船の中の時間の進み方が遅くなる現象)で、船内では一週間しか経っていないのに、地球上では8年の歳月が流れていたのだ。悠介と佳代との年齢差が8歳、佳代の方が年上になってしまったのだ。
うっかりしたラス星人は、とんでもない提案をする。「じゃあ、今度は佳代をラス星に連れて行くから、そうしたら年齢差は元通りになる」。
確かに計算上はそうなんだが、それでいいのか、本当に? でもこの申し出を悠介は受け入れ、「8年待つ」ことにするのだ!
私も、男と女の機微なんてものには疎いのだが、相手が老けたら自分も老けたいとか、そういう心理になるものなんだろうか。もしそうだとしても、ラス星人から提案されてそれに従うのではなく、悠介が自分から言い出した方が納得できる展開になりそうだけれども。
で、これが落ちではなくて、先がまだあるのだ。
悠介と佳代の二人はめでたく結婚、子供も生まれて平穏な家庭を築く。しかし、その子どもが成長した頃に、二人揃って交通事故で死んでしまう。もうどんな急展開にも驚かないが、息子は、空を見上げて妻に向かって言うのだ。「親父もお袋も、あの空のどこかで生きてるような気がするんだ」。
そして、ラス星では、今まで「保管」されていたオリーとゼスの遺体が甦り、二人の恋人は手に手を取って、やはり星空を見上げると。
いや、オリーの生命素は佳代の中にあって、それが戻ったんだとしても、ゼスの生命素はどこに保管してたの? 悠介の中だとしか考えようがないが、とすると、悠介は本当はあの飛行機事故で死んでたわけ? でも、ゼスが死んだのと悠介が事故に遭った時って、タイムラグが何ヶ月もあるんじゃないの? その間、裁判もあって、佳代は服役してるんだから。
それに、ここで蘇生したのはあくまでオリーとゼスであって、佳代と悠介が生まれ変わったわけじゃないんだが。
タイムラグに多少は眼をつぶるとしても、わざわざゼスの生命素を保管するために悠介を選んだんだから、これはあの飛行機事故を起こしたのはラス星人たちなんじゃないかという疑問すら浮かんでくる。ともかくこの落ちはデタラメすぎるのだ。
数々のトンデモ展開、楽しめはした。ドラマ作りの素人が、天然だからこそ作れる物語なんだろうなあ。
かと言って、「なかなかこんなトンデモ作品はないよ!」とオススメするのも、制作者の意図に反することだろう。制作者は観客を感動させたいのに、それがひっくり返っちゃって爆笑されてしまう点では、これは明らかな失敗作である。
公演を重ねる度に尾鰭羽鰭が付いて、こんなトンデモ作品になってしまったものかとも推測する。盛り上げようと思って、無理やりドラマを作っても、かえっておかしなことになる、特にSFのセンスがない人間がSFのアイデアを中途半端に持ち込むと、大失敗しちゃうよという一つの例として観るのが妥当なところだろう。
絶頂マクベス
柿喰う客
吉祥寺シアター(東京都)
2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★
ポップで疾走感のあるマクベス
『悩殺ハムレット』同様に全体的に良くできているが、「おめでとうマクベス」以降、すべてのシーンが絵になるのは特筆に値する。(戦の後に動きが一旦止まり戦況報告の声だけが響くのも印象的)
また、舞台床の幾何学模様とそれに即した照明も美しい。
それまでに観ていたものと比べてマクベス夫人のポジションに物足りなさを感じもしたが、アフタートークでそれに関する話題も出て納得。
乱痴気(同日ソワレ:H列7番)では渡邊安理嬢の新良エツ子嬢とはまた違った歌の上手さに感服。
THE BEE Japanese Version
NODA・MAP
水天宮ピット・大スタジオ(東京都)
2012/04/25 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
日本バージョン
ネタばれ
ネタバレBOX
【The Bee 】の日本バージョンを観劇。
前回のイングリッシュバージョンと同じ戯曲で、日本人の配役に変えての公演。
イングリッシュバージョンが外国人向けか?ややストレートプレイに近い形で行っていたのに対して、日本バージョンば大胆な小道具の使い方で、野田秀樹の得意の小劇場っぽい表現の数々で展開していく。ただ初演に比べるとイングリッシュバージョンはさほど進化はしているようには思えなかったが、日本バージョンの方は更に明確にテーマを表現していったようだ。サラリーマンが被害者から加害者に変貌していく様の変わり方が異常過ぎで、明らかに今の日本にメッセージを訴えている。同じような問題を全世界でも抱えているのに、何故日本に対してここまで訴えるのか?イングリッシュバージョンは物語を通してメッセージを伝えていたのに対して、日本バージョンは最初にメッセージありきで出来あがった芝居の様にも感じ取れた。改めて両作品を比較してみると、世界での日本の存在位置というのがかなり危ういのではないか?と演劇を通して野田秀樹の心の叫びが聞こえてくるようだった。
初演では秋山菜津子が演じた役を宮沢りえがどのように演じたか?日本一スリップが似合う女優と言われている秋山菜津子の色気に対して、宮沢りえは生足丸出しで、野田秀樹扮するサラリーマンに前、後ろからと犯されていき、哀れに狂人化していく野田秀樹を見つめる一瞬の表情、そして自らも奴隷の様に野田秀樹に奉仕していく虚ろな表情、今作が宮沢りえの生涯の芝居でベストワンと言っても過言ではない!と思わせるぐらいに非常に良かった。今作の宮沢りえの芝居を見逃すのは勿体ないと思われるので、是非劇場へ!
尾藤イサオの【剣の舞】というおバカな歌が効果的に両バージョンで使用されていた。
時の女
路地裏月光堂
シアター711(東京都)
2012/05/04 (金) ~ 2012/05/07 (月)公演終了
満足度★★★★
満員
こどもの日に行ってきました.
5時開演は、休みの日には理想です.終わってからも時間が有効に使えます.男性客がむしろ多いような客層で,主催の方に風貌がよく似た方も多かった気がします.
お話は最初は?と思うのですが,一巡りするとなるほどなと思い、しみじみ系で良かったです.
暗夜行路!と言う方があの役にぴったりで,高畠華宵風のメイクで良かったです.
THE BEE Japanese Version
NODA・MAP
水天宮ピット・大スタジオ(東京都)
2012/04/25 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
狂気への瞬間
English Versionを観に行った時に勝手にJapanese Versionよりもこっちの方が良いだろうなと勝手に思っていたのですが、そんなことはありませんでした。むしろこの二つは全く別の作品でした。台詞などのニュアンスも多少違っておりそこも面白いなと思いました。そして何より演出によって全く違う作品となるのが一番大きく、初演は見ていないのですが、シンプルな舞台美術の見せ方がこの作品キーかなとも思いました。野田さんの男としての狂気が見れる部分もよかったと思います。
勉強になりました。ありがとうございます。
自慢の息子
サンプル
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/04/20 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
三回目
三回目にしてようやく感覚以外でも少し見ることが出来る様になった気がします良いのかわからないですが、それによって笑いの部分のくだらなさがとても印象に残る様になりました。面白い作品でした。そして何よりも美しい作品だなと改めて思いました。
勉強になりました。ありがとうございました。
天使たち
リュカ. (Lucas [lyka])
インディペンデントシアターOji(東京都)
2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★
これほど待たれる劇団
劇団の看板ってすごい。そこに役者がいるだけで幸せ気分にもなる。中田さんワレタさんの関係が素敵でしたな
天使たち
リュカ. (Lucas [lyka])
インディペンデントシアターOji(東京都)
2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★
初見
一昨日心が折れて観に行かせてもらう事が出来なかったリュカ.を観に我が憩いの場、王子小劇場へ。初見。5年半振りの公演らしい。待ち望んでいた様子のお客さんが多数。
優しい作品。天使はいて欲しいと信じたい。あまり見てもらいたくない場面も日々多々あるけれども。天使同士と宿主同士の関係性が完全に乖離していているので、天使たちは客観的に自分の宿主のみを分析して、宿主選びにも本腰を入れる。天使同士と宿主同士がシンクロしない事でベタな話の展開にならず、優しくも冷たさが張りつめた作品に出来上がっていた。
天使が人間に変わる流れや、先輩天使(佐藤祐香さん)の登場シーンなど、話の展開が若干唐突過ぎる箇所が多々見受けられたが、これは5年半のブランクの影響か。まだまだこれから楽しませてもらえそうな劇団だ。場面転換の度に風が入ってきて、シャンデリアの布がヒラヒラと揺れる演出。良かったです。
中田顕史郎さんが相変わらず素晴らしい。中田さんと奥田ワレタさんの科学反応が完璧だ。この2人のシーンが非常に現実的なので、劇中劇の部分がより際立つ。
池田ヒロユキさん、こいけけいこさん、境宏子さんはこれまで客演でいろいろ観させてもらっていたが、これがホームか。なるほどなるほど。こいけけいこさんを初めて観させてもらったのは、2008年の「俺を縛れ!」だった。初こいけけいこさん&初柿喰う客だったのだが、あの時の忍者ハットリくん的な役が忘れられない。
東京バンビ『他人の確率』御来場ありがとうございました!次回は10月!お待ちしております!
元東京バンビ
OFF・OFFシアター(東京都)
2012/05/04 (金) ~ 2012/05/15 (火)公演終了
満足度★★★★
おもしろいひとたち
すべてが生かされてるとまでは言い切れないけど、ほぼおもしろい役・役者。
絶頂マクベス
柿喰う客
吉祥寺シアター(東京都)
2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★
乱痴気バージョンも観たかった
空想組曲の後、吉祥寺へ。「検察官」以来の柿喰う客。「悩殺ハムレット」に続く、女体シェイクスピア第二弾。
いやいや、面白かったです。「悩殺ハムレット」よりも今作の方がすんなりと世界観に入り込めた。何といってもテンポが良い。シェイクスピア作品というのは未だに少し構えて観てしまうのだが、役も話も追いやすく、適度にバカバカしい。終わり方が若干軽過ぎた(謎掛けのオチを聞いて、チャンチャン!といった感じ)が、この爽快感・気持ち良さを出せるのは中屋敷法仁さんだけだと思う。
内田亜希子さんと葛木英さんが良過ぎ。二人とも客演で何度も観させてもらっているのだが、その中でも1、2を争う輝き方だったと思う。岡田あがささんは完全に飛び道具。ずるい。「露出狂」辺りから柿喰う客での役回りが乱れてきている。本当に引き出しが多い女優さんだ。
乱痴気バージョンでは、七味まゆ味さんがマクベスを演じたらしい。それも観たかったなあ。
ワールズエンド・ガールズスタート
アリスインプロジェクト
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★
プロの仕事
美少女達が熱演していました。
その全員をいい感じに出演させつつ、90分程に纏め、それなりにおもしろい作品にしなければならないというハードルを見事にクリアしていたように感じました。
ラストの盛り上がりとスケールの大きさがとても良かったです。こりゃプロだなと、プロの仕事だ、と作り手のプロ感がかなりうかがえました。
ネタバレBOX
終了後のサイン・握手会がいい感じの盛り上がりを見せていて、自分もお気に入りの役者さんがいればさらに楽しめたのだろうなと思いました。
ダイニングトーク
T1project
小劇場 楽園(東京都)
2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
無題372(12-115)
19:30の回(晴 暖)。18:45受付(整理券あり)、19:00開場。今日も右側へ。
最初不思議に思ったのは、白い...ということで、壁を塗り替えたのかと。
ではなく白いシートで囲われていました。壁も床も白。座席前には黒い布が敷かれ客入れの時、お客さんはここを通って席へ、開演前に撤去。舞台にはクリスタルのテーブルと椅子が4脚。チラシにある木製のものではありませんでした。天井からの照明(ひとつ)を受けて、床にぼやけた像がかげろうのように映っています。動いていませんが、揺らめいているようにみえます。テーブルの上には、栓が抜かれたワイン(銘柄わからず)のボトル、普通のグラス。グラスの底に赤い液体が残っています。マンションのダイニング、2組の夫婦。「クプル」のチームをみました。
「わたしのゆめ」に出ていらした金井さんのお名前があったので。19:33開演~21:29終演。! 4人とも凄すぎ...でした。終演後、ホンヤさんのCDを購入。
ネタバレBOX
マンションの「上」「下」、2組の夫婦について、「同じ」テーブルを囲んでお話がすすみます。最初から険悪な雰囲気の夫婦(下)、穏やかな関係に思える夫婦(上)、徐々に亀裂が生じ/拡がり、破綻を予想させます。ここの感情(悲しみ/諦め/悔恨...)がたいへん丁寧に描かれていて、それを役者さんたちが、表情だけではなく、目線、指先の震え、足の仕草など、見えるところすべて、それこそ渾身の力を振り絞ってみせてくれます。それを間近でみるのです。これはぜひ前のほうで。
フリータイム
雨傘屋
ギャラリーADO(熊本県)
2012/05/03 (木) ~ 2012/05/06 (日)公演終了
満足度★★★
バトル度は高くないが、戯曲のおもしろさは見えた
岡田利規の戯曲を天野天街が演出することで戯曲が却ってよくわかって、そこはおもしろかった。
ただ、岡田利規調がベースでバトル度がそれほどでもなかったのは、ややは物足りなかった。
詳細は、演劇感想サイト「福岡演劇の今」 http://f-e-now.ciao.jp/ に書いています。