最新の観てきた!クチコミ一覧

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家中(かちゅう)の栗

家中(かちゅう)の栗

劇団HallBrothers

シゲキバ(福岡県)

2014/10/03 (金) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★

かなり面白かった
今年は公演ラッシュということで短期間のスパンで公演が行われているけれど、どの作品もどこらへんかで観客に訴えるものがあってとても面白い。日常に目を向けたとてもいい作品だった。

ネタバレBOX

役者さんも良かった、特に若い年代のメンバーの伸びがすごく感じられた。60分作品で若干物足りない気もしたけれど、このくらい余韻を残したほうがいいのかもしれない。
鷗外の怪談

鷗外の怪談

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/10/02 (木) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

魅力的なキャラクタ達
金田さん、若松さん目当てで、二兎社新作を観てきました。大逆事件を背景として、鴎外の二面性に焦点を当てたという触れ込みですが、決して難しい舞台ではありません。鴎外を中央に配し、様々な立場の人々との対話を通じて、明治末期の世相を生き生きと再現するだけでなく、現代へも通じる痛烈な政治批評ともなっています。本作は、永井氏の傑作戯曲の1本になると思われます。特に、鴎外、鶴所を振り回す森峰(鴎外母)は、時には、鴎外の小説を厳しく批評し、鴎外の後妻(森しげ)と不仲に不平をならし、明治の元勲山県へ助命嘆願に行こうとする鴎外を薙刀で牽制する、江戸、明治女性を出現させる、鮮やな演技でした。でも、鴎外の怪談と言われた複雑怪奇な内面とは、実は日本的maneuver、要するに処世術、またセリフにもありましたが、日本的不真面目さというのが適切ではと思います。何れにしても、近年の二兎社の新作としては、キャスト全員が二兎社初参加とは思えない座組みの出色の出来で、演劇的な楽しさを満喫できる舞台でした。

タイムマシン レポート

タイムマシン レポート

アトミック☆グース

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2014/10/03 (金) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

現在過去未来の相関は謎だらけ
タイムマシンという永遠不滅の憧憬を具現化すべく、好奇心満タンの研究者たち。
もし未来も過去も行き来できるようになったら、どんな物語りが紡ぎだされるのか…。
身近な人間模様に軸足を置いた展開で、とても面白く共鳴できました。
二時間半の長丁場を見事に演じきった役者のみなさんに拍手!

ネタバレBOX

東海テレビの高井一アナが参加。
ナレーターとしての出演だけかと思っていたら、
なんと劇中でも重要な役割で登場。
最近は朝のTV「スイッチ!」でもタレント的な活躍ぶりですが、
舞台でもダンディな存在感はさすが。
ちょっぴり硬めで几帳面な雰囲気も役柄にマッチしていたようです。
本間さんはころばない

本間さんはころばない

九十九ジャンクション

小劇場B1(東京都)

2014/09/30 (火) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

あるよねー!
身近な所に潜む小さい黒い影を掘り起し世に問う九十九ジャンクション。
次から次へと新展開するので最後まで目が離せない。
現実は一言では片づけられないことが良く解る。
役者陣の演技も自然でよい。
ただ、私の感覚からすると少しスロー過ぎる場面が所々にあり。
舞台セットも素晴らしい。

※本間さん役の深見さんは美しいです。

ネタバレBOX

ちょっと気になった事は雨戸は普通外から外せないのでは・・・。

ことぶきの唄(終演いたしました!ありがとうございます)

ことぶきの唄(終演いたしました!ありがとうございます)

エビス駅前バープロデュース

エビス駅前バー(東京都)

2014/10/03 (金) ~ 2014/10/16 (木)公演終了

満足度★★★★★

あついステージ!
あついステージです。エビスだけどまごうことなくホチキスでした。
組み合わさるとこうなるんですね、とても面白いものが観れました、楽しかった!!
日々の疲れも吹っ飛ぶパワフルな一本、是非仕事帰りにオススメしたい。

本間さんはころばない

本間さんはころばない

九十九ジャンクション

小劇場B1(東京都)

2014/09/30 (火) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

傑作
傑作

人間人形世代

人間人形世代

糸あやつり人形「一糸座」

上野ストアハウス(東京都)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★

キモかわいい人形!
キモかわいい個々の人生を示す特徴ある操り人形が面白い!
葬儀屋の語りが印象的!面白かった。

ネタバレBOX

後半登場の人形はとくに興味深い。
バーテンダーは、下半身前はカウンターで隠れているが、後ろはお尻丸見え。
元女優は四方に面する顔、そして3本足。
小説家は大きな頭が割れそこから、小さな生き物が・・・。
主婦は3度の離婚の元夫の3首がスカートの中?それとも籠の中なのか。口癖は「駄目よ!ダメダメ!」
露の見た夢

露の見た夢

東京ストーリーテラー

萬劇場(東京都)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

壮大な話
まったく予習をしてきていなかったせいか、筋を理解することにばかり気をとられ作品を咀嚼しきれなかった。カタカナの配役名と役者の顔を一致させるのに一苦労であり、己の理解力のなさが重なったためもったいないことをした。残念

『カルメン』

『カルメン』

ひろしまオペラ・音楽推進委員会

JMSアステールプラザ 大ホール(広島県)

2014/09/27 (土) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★★

青の炎の情熱
去年観たときは、明るいきらきらした中の燃える赤い情熱っていう
陽のイメージが強かった記憶があるんですけど、
今回はなんとなく青の炎の情熱というか……少し影を含むというかぁ。

歌唱、合唱、楽団の演奏は、相変わらず素晴らしいです。
前回の頃は、まだオペラ歌手さんたちの演技等が少しおざなりな感じもありましたが、最近はもうそんなことも無くなってきましたね。。

あと二幕の演出は素人目にも良かったかなぁ。
窓から射し込む光の感じとか角度とか色彩とかひとが包まれる感じとか陰影とか演技のたび映し出される人影の動きとか場所とか。。。
昔、「ラ・ボエーム」のラストあたりでも似たようなことを感じたような気もするけど。

良かったです。

9月企画公演 能を再発見するⅤ―観阿弥時代の百万―

9月企画公演 能を再発見するⅤ―観阿弥時代の百万―

国立劇場

国立能楽堂(東京都)

2014/09/23 (火) ~ 2014/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

天狗さ~ん
能 「是我意」は、予想よりもずっと良かったです。

シテが、上手いのか?誰がやってもダイナミックに演じてくれるのか?
そこまで、詳しくは有りませんが、印象的な天狗に感動しました。

9月文楽公演

9月文楽公演

国立劇場

国立劇場 小劇場(東京都)

2014/09/06 (土) ~ 2014/09/22 (月)公演終了

満足度★★★★

惹かれました
第三部を拝見させて頂きました。

太夫の荒くれぶりが、人形ですが非常に魅力的でした。

後半の居酒屋のシーンは、にぎやかさが良く解りました。
同時に、人形と人形遣いでギュウギュウで見て居ても息苦しく感じました。

なかなか、良かったです。

落伍者。

落伍者。

ラチェットレンチF

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/09/30 (火)公演終了

満足度★★★★

初見。
チケットプレゼントにて観劇。
古典落語「死神」を軸に、本編話と落語噺の寸劇を交互に進行させながら途中からリンクしていく。演じる役者の経験の差というかプロとセミプロ位に力量の違いを感じてしまうような人物造形がそれらしく見えない人もいて、惜しい、と思う場面もあったが、転換時のダンスや照明遣い、作品テンポの良さには引き込まれた。
前座落語15分+本編約2時間。

ネタバレBOX

谷畑さん演じる噺家 真打の爽雲 、目配せの仕方やふとした仕草がどことなく劇団座長の吉田鋼太郎さんを彷彿とさせたが、粋で洒脱で気迫ある噺家ぶりやライバルとも言える友人とかつての思い人に見せる態度の繊細さ、それを受ける船戸さん演じる銀次の我が道を行く生き様、その2人に愛される南口さん演じる小百合の短くも幸福な時間の表情、この3人が絡んだシーンで、特に丁半博打のシーンはいい歳した大人の遊び方が垣間見えて面白かった。

涼子と夏風らんらんのヘアスタイルが同じだった為、高座あがりからの葬儀のシーンあたり、最初は同一人物が着物脱いだ姿の普段着で話しているのかと、やや混乱してしまった。
涼子の「お母さん」の姿はやっぱりエプロン姿で現すのがわかりやすいんだろうか。涼子にとっては働いているお母さんより家事をしている印象の方が強かったか。
いろいろと思うことはあっても、とても面白い舞台でした。

終演後、場内混雑の為、アンケート記入出来ずここに記載。
開場から開演までの間、毎回15分程度の前座落語の企画あり。
観劇当日も開演前でありながら、前座落語始まる前から座席がほぼ埋まる状態。座席を探しステージ前を横切る観客に対し、ステージ上に誘導スタッフはいるものの、あまり機敏に誘導しているとは思えず。前座とはいえ、噺のオチまでしっかり聞きたかったのだが‥。
上演開始しても、出入り口付近や場内に誘導スタッフ不在のため、遅れてきた観客誘導も手薄、話の設定上暗転場面も多く、座席確認に戸惑う観客も見受けられた。
公演や企画は面白かったので、次回からはその辺りを考慮していただければ、と思う。
小指の思い出

小指の思い出

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2014/09/29 (月) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度

聴こえない
多くの方がおっしゃる通り、台詞が聴こえないです。

マイクが付いて居ても聞こえないです。

その分、生演奏の音楽が良く聞こえます。むしろ、演奏の音に台詞が消されてしまって居ます。

舞台セットは、本物の車を何台も使って居て大きな劇場だから出来た事なんだと思います。最初は、白い布で覆って居る所が剥がされて正体が出て来るところが良かったです。

袖が無かったです。
むしろ、無くて良かったと思います。

三文オペラ

三文オペラ

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★

会場なのかな?
華やかな舞台ですが、重く感じるのは、会場の雰囲気なのかな?

楽しい舞台を創っても、乗れない感じがこの劇場にはあり

むしろ、暗くて悲しい話の方が、雰囲気が出て良いのかもしれない。

舞台の中身は、良かったと思います。

会場が別の明るい所だったらもっと良かったと思います。

老人が海

老人が海

演劇集団 座・シトラス

明石スタジオ(東京都)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★

お客の目線に立つことの重要性
セットはなかなか良くて好感触。演者たちの声がしっかり出ていたし、特に大久保さんの役はトリッキーな役だったのに、うまくまとめていたと思う。マスターもまだマスターという年齢ではなかったのかもしれないが、いい味を出していた。旗揚げ公演ということで、勉強できる点はこれからたくさんあるのだろう。残念な点は多かったので★は2つ。

ネタバレBOX

客席の組み方の都合上、非常に見えにくくて若干イライラしたという前提ありきです。

細かいことだと、恵比寿さん(?)の時計がギラギラ反射して邪魔でした。
突然鳴り出す音楽もよくわかりません。間が持たないからでしょうか?芝居の流れを悪くした印象です。最終的に幽霊になる方も、違和感をだすためなのか、突然の大声などバランスが悪すぎるのではないかと。
神田さんはずっと汗で髪の毛が顔にはりついて、いつ顔拭いてくれるんだろう?としばらく思ってました。おそらく演出都合でわざと拭かないままだったのでしょうが、やっと拭いてくれたと思ったら、拭き切れずだいぶ残っている。途中でネクタイがずれて、最後まで本人含め誰も直してあげられなかったのも残念な点です。

最悪だったのは途中で劇団が稽古でやってることと言って、突然ジェスチャーゲームを入れたことです。
あれ面白いですか?知っている人間がアホなことをやっている姿は面白いかもしれませんが、初見の私は相当しらけました。
「稽古でやっているから伝えられた」ではなく結局「まったく伝えることができない」というオチをお客に見せる意味がわかりません。

役者の皆様には期待感が持てます。お話も発案部分は面白かったと思います。お客がどんなことを感じるかをよく考えて作られるともっと良くなると思います。
次回公演は生まれ変わったような作品になっていますよう。
炎 アンサンディ

炎 アンサンディ

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2014/09/28 (日) ~ 2014/10/15 (水)公演終了

満足度★★★★★

原罪・贖罪・復活
沈黙の意味
沈黙の重さ
沈黙の向こう側

ネタバレBOX

重苦しいテーマと表現の舞台だ。
余計なセットや装置は一切排し、舞台の上の役者と台詞に集中させる。

すでに死んでしまった母・ナワルからの遺言で、双子の息子と娘は、戦争で死んだと聞かされていた「父」と、その存在すら知らなかった「兄」を探せと命じられる。
彼らは反発しながらも、母の母国である中東へ旅立ち、2人を探す。

ストーリーとしては、物語の進行とともに、いくつかの疑問を解き明かしていくような、ミステリー仕立てになっている。
すなわち、
「父はどこにいるのか、生きているのか死んでいるのか」
「兄はどこにいるのか、生きているのか死んでいるのか」
「なぜ父と兄を、今になって双子の娘と息子は探さないといけないのか」
「なぜ双子の娘と息子は、母を嫌っているのか(息子に至っては、母をクソ呼ばわりしているほど)、つまり、双子はなぜ、母に愛されていなかったのか」
そういう疑問、つまり、「ストーリーの中の疑問」が最初のシーンからわき上がり、観客は双子たちとともに、母がたどってきた「彼女の真実」を見に行くのだ。

さらに、疑問は湧く。
言わば「ストーリーの外の疑問」だ。物語の進行とともに、観客の心に染み出てくる疑問と言ってもいい。
すなわち、
「母は、なぜ双子の子どもたちに、真実を伝えなくてはならなかったのか。“父は死んだ”と言っていたのだし、兄は存在さえ伝えていなかったのだから、真実は墓まで持っていけばよかったのではないか」
「彼女(母・ナワル)は、なぜそのような酷い目に遭わなくてはならなかったのか」
ということである。
それらが、この作品の本来のテーマと重なる。
そして、それにラストで気づかされる。

レバノンが母・ナワルの故郷であろう。その地名は作品中に出てこないが、フライヤーなどや作者の履歴からそれがうかがえる。
ナワルは十代に愛する男と出会い、身ごもるのだが、男とも子どもとも引き離されてしまう。
それは、宗教の戒律によるものではないのかと思っていたが、彼女や祖母の胸に下がる十字架によって彼女(ナワル)たちはキリスト教徒だとわかる。
そこで、レバノンで起こったキリスト教徒とイスラム教徒との凄惨な戦闘を思い出す。
つまり、「同じところに住み、同じ民族が殺し合う」という、劇中に何度も繰り返される台詞に行き当たるのだ。

さらに劇中では「私があなたの母(父)であってもおかしくない」という台詞が2度も出てくる。それなのに、殺し合うという現実。
終わることのない、復讐と殺戮の連鎖。
これがこの作品のひとつのキーワードとなる。

ナワルが子どもも身ごもったあと、祖母に「読み書き、計算ができるようになって」「自分(祖母)、母、あなた(ナワル)へと続く“怒り(悲しみ)の泥沼”から抜け出せ」と言われる。
そして、祖母は「自分が死んだら、その上には何も置くな」「お前(ナワル)が文字の読み書きができるようになったら、この場所に戻ってきて、墓標に私の名前を書け」と命じる。

これはナワルが双子の子どもたちに遺した遺書とまったく同じであり、それがこの作品の全体を包む。

すなわち、ナワルの埋葬方法は彼女の祖母のそれと同じ。
「棺桶には遺体を入れず裸のにまま埋葬すること、空(上)を向かせるて横たえること、参列者がそれぞれバケツ1杯の水を自分の遺体にかけること、埋めたあと、その上には何も書かず、何も置かないこと、そして、あることを達成したときに初めて墓標を立て、自分の名前を書くこと」である。

なぜ、ナワルは祖母と同じように、そうしたのかが、「ストーリー外の疑問」のひとつ、「母は、なぜ双子の子どもたちに、真実を伝えなくてはならなかったのか」の回答となる。

ナワルは、強い女性だ。強くなったと言ってもいいだろう。「言葉」を知ることで、怒り(悲しみ)の連鎖(泥沼)から抜け出すことができたからだ。
連鎖から抜け出すことができたとしても、彼女たちを取り巻く状況はまったく変わらない。
復讐と怒りと殺戮の連鎖の中にいる。
しかし、彼女はそうした連鎖の外に出ることができたので、「復讐のため」に「相手を殺す」ことはしない。親友のサウダが自分の家族や親族が殺されたときに復讐しようとするのをとどめるのだ。
だから、のちにわかる収容所の中で拷問を受けていても、ナワルは歌うことができたのだ。

しかし、彼女も人を殺している。
それを忘れてはならない。
殺した相手は、子どもや女ではないし、民間人でもない。
「連鎖を止めるため」という大義名分はあるのだが、やはり人を殺したことには変わりがない。

人を殺すときには、殺人鬼でもなければ、大義名分が必要だ。
「復讐」も立派な大義名分だから、ナワルの行動も、個人的な復讐のため相手を殺したいと思っていたサウダと同じことなのだ。

ここに「ストーリー外の疑問」のもうひとつ「彼女は、なぜこのような酷い目に遭わなくてはならなかったのか」の回答があるように思う。
それは「人を殺したから」その「罰」として酷い目に遭った、のではない。
もっと根源的な意味であり、世の中のすべてのことを含めた、象徴的なものであろう。

すなわち、「原罪」。
つまり、彼女たちが信仰しているキリスト教における、すべての人が持つと言う「原罪」ではないだろうか。
人は誰しも「罪」を背負っていて、彼女(ナワル)もその1人であり、その罪により、試練を与えられたということではないか。
ナワルは、それに購うために、人々の罪を背負ったのではないか。

ナワルはもちろんキリストではない。
生身の人間であり、「女」であり、「母」でもある。
新しい生命を宿すということが、ナワルの宿命であり、「贖罪」でもあった。

このキリスト教的な感覚は、先の「母は、なぜ双子の子どもたちに、真実を伝えなくてはならなかったのか」にもかかわってくる。

すべてを知ることができなければ、贖罪はない。
ナワルも祖母も、土中に埋葬され、その墓碑銘が書かれるときに、「復活」する者がいる。
ナワルが学び知識を得て、祖母の墓碑銘を書いたときには、「ナワル」が「復活」した。

そして、彼女(ナワル)の子どもたちが「知ったとき」に復活するのは、ナワルではなく、彼女の子どもたちなのだ。
子どもたちとは、双子だけでなく、彼らの「兄」も含まれる。
このところは、正直に言えば、きちんと理解できたわけではない。

「復活」とは何か。
この物語自体、「一体、何が悪かったのか」という問いかけは、無用である。
双子の娘が尋ねた老人の問い掛けと一緒であり、それはどこまで行ってもキリがないのだ。
さらに言えば、孤児院の医師が言う、誰が誰を殺したから、誰を殺すという、復讐の連鎖のようにキリがない。
キリがないから、ここで断ち切ることにして、新たに始めることにした。それが「復活」ではないか。
「知る」ことですべてを受け入れ、「知恵」(祖母が糸口を授けた)で解決の糸口を見つける、それがこの作品のテーマだったのではないかと思う。

ラストに、「父」「兄」がことの次第をすべてを知ることは、彼を非難するためでなく、ナワルが自ら「自分の息子をいつも愛する」と誓ったにもかかわらず、(そうとは知らず)呪ってしまったことも含めて、彼に知ってほしかったのだろう。
それは双子対するものとまったく同じ意味であり、彼も双子と同じ地平に立たせるということである。その「地平」にはナワル自身もいる。
その「地平」とは、すべてを「愛する」場所である。

ナワルの子どもたちも、そこに立って(たぶん)そうできたのではないか。

ナワルがこの事実を知ってから5年間ひと言も言葉を発しなかったのは、恐ろしい事実に言葉を失っただけでなく、その先に行こうとしたからだ。
そしてたどり着いたのが「こうやって一緒になったからには大丈夫」だった。

双子も、その真実を知り、母の沈黙の意味を知ることで、母・ナワルと同じところにやっと立てたのだ。彼らも「沈黙」ののちに。
そして、「母の沈黙」に耳を傾けることができた。

「父」「兄」も、時間はかかるだろうが、そこにたどり着けるだろう、と示唆するラストは美しい。
彼(ら)の席がきちんと用意されてあり、そこに這ってたどり着くのだ。

そして、すべてを包むのは「母」(の「愛」)なのだというラストでもある。

「こうして一緒にいるのだから、大丈夫」というナワルの結論は、彼女の愛した男の最後の言葉「一緒にいることは美しい」であることが哀しい。
「1+1」が「1」になることがあるのか? の問い掛けの意味を知ってしまった双子たちの姿も悲しい。

戦争は、たぶんもうしばらくは、なくならないだろう。
この作品は、戦争の悲惨さを描くとともに、断ち切る強さ、知ることの尊さを描いている。

母・ナワルは強い。だからこそ、自分の子どもたちもそうあってほしい、とすべてをうち明け、それを彼らの手によって明らかにしてほしかったのだろう。
文章で書くよりも、体験してほしかったのだ。
実際に人に会って、話して、土地を体験して。

「罪」と「贖罪」の間には「知ること」があり、「贖罪」と「復活」の間には「赦し」(愛)がある。


ナワルを演じた麻実れいさんは、背筋をしっかりと伸ばしているような強さを感じた。十代のナウルは少し厳しかったが。
ニハッドを演じた岡本健一さんは、スナイパーとしてのクレイジーさが舞台の上で異彩を放っていた。ラストの衝撃が心に響く。
ナワルの友人サウダを演じた那須佐代子さんは、ナワルの唯一明るい表情の時代を助け、健気な印象が良かった。

※キリスト教に関する、非常に薄い知識で書いているので、本来の意味から外れているかもしれないが、そこはご容赦を。
ジルゼの事情

ジルゼの事情

劇団鹿殺し

新神戸オリエンタル劇場(兵庫県)

2014/09/27 (土) ~ 2014/09/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

Cocco
こんなに演技らしくないセリフを初めて聞いた。こんなに感情を素直に出せる人を初めて見た。歌声に息をのんだ。観ていて、苦しくなって、辛くなって、笑えなくて、でも人は生きていけるものなんだと思った。

不謹慎な家

不謹慎な家

PANDA JOCKEY

シアター711(東京都)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★

待つ女達
少しだけ特殊ではあるものの日常的な生活を描いたシンプルな会話劇で、コミカルなやりとりの中に考えさせられる内容が織り込まれた作品でした。

罪を犯して懲役を受けている夫や恋人が出所するのを待っている女達が一軒家で共同生活を行う様子を描いた物語で、罪を犯した者の身近に居る人の難しい立場や待つ心情という、シリアスに描くことも出来るテーマを軽妙な会話劇に仕立てていて、楽しめました。
ラストで殊更に盛り上げたりせず、さらっと終わるのも良かったです。

特徴的な手法や仕掛けを用いずに演技で見せるタイプの作品で、個人的な耆好と異なっていて少々物足りなさを感じました。

手前中央だけ1段下がった、掘り込み座敷の断面のようなセットは、出演者が座っているシーン(大半がそうでした)でも見易いという効果はありましたが、それ以外にそのような形状にした意図が感じられず、もったいなく思いました。

どの役者もアクのあるキャラクターながら現実に居そうな雰囲気を感じさせる演技で良かったです。特に冴えない管理人を演じた有川マコトさんの声や表情の引き出しの多さが魅力的でした。

第三帝国の恐怖と貧困

第三帝国の恐怖と貧困

劇団わらく

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/10/02 (木) ~ 2014/10/06 (月)公演終了

満足度★★★★

第三帝国の恐怖と貧困って
こういう構成の作品だったのかと認識しました。

ネタバレBOX

当日パンフレットによれば、ブレヒトの『第三帝国の恐怖と貧困』は、1933年から1938年にかけてのナチス政権下における人々の生活の断片を描いた27のオムニバス小編から成る作品です。全てをやると4時間を超えるそうで今回は10編が選ばれました。

突撃隊に言いがかりをつけられる怖さ、手のひらに書いた白墨の十字をさりげなく異端者の服の背中に転写するおぞましさ、そんな突撃隊員も自腹でブーツを買わされたりしていたんだとか、告げ口社会になっていて、自分の子供も信じられなくなっていたことなど興味深く観ました。

日本の軍国少年だって告げ口はしなかっただろうにと思いながらも、それだけ日本の大人は表面上も内面も忠実に暮らしていたことが窺えます。

「ユダヤ生まれの妻」は、どこかの劇団で恐らく短編としてだと思いますが観たことがありました。緊迫した状況での切ない話ですが、これがブレヒトだったのかと再認識しました。

やや早口でも2時間強、急ぐあまり噛むというより何か音声が飛ぶような台詞回しが気になりました。
ぼっけえ、きょうてえ

ぼっけえ、きょうてえ

いちえプロジェクト

広島県 縮景園 清風館【茶室】(広島県)

2014/10/02 (木) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★

心地好いゾクッと感が良いですね(^w^)
この小説をどのように表現されるか?興味津々でした(^^)
縮景園という茶室の空間に語りべとギターの生演奏がとても幻想的で、想像以上に感動致しました(*^^*)
いちえプロジェクト様♡感動を有難うございますm(._.)m
次回の公演も楽しみにしてますね(*^^*)

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