カテゴリーボックス
9-States
小劇場B1(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
差別と区別…(Aエリア)
閉鎖病棟における心的または脳内…彷徨というには、硬質であまりに説明口調だったという印象を持った。この芝居内容であれば、何でもありの世界を描けるから、あまりカテゴリーライズせず、もっと自由に表現してもよかった。
ネタバレBOX
インナーハウスという閉鎖病棟における心療実験的な話は、仮想家族による日常会話の積み重ねである。ところが、その話...例えば皆でピクニックに行く話し合いは遅々として進展しない。いつも曜日は”月曜日”で次の”日曜日”が来ない。
この家族における人間関係(個々人)の距離感が、まさに「仮装」であって自分の本心を曝け出さない。疑心暗鬼で虚々実々の台詞が、ちょっとしたサスペンス風で観応えがある。ただ、多重人格における心理的な描き方は、少し言葉(台詞)遊びのようであり、説明口調になっていたのが残念に思えた。
言葉の概念として、普通、常識、真実...は分かったような気がするが、それを表現しようとすると、案外難しいもの。本公演では、普通を数の論理、常識は枠内・外の区別、真実は...閉鎖病棟だから何が真実かは分からない。話の逆転した思考が面白いが、少しカテゴリーに拘り過ぎたかもしれない。
次回公演も期待しております。
再生ミセスフィクションズ
Mrs.fictions
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★
いいテンポ
短編が4作。各作品とも軽いノリで軽く笑わせてくれた。特に面白かったのは「お父さんは若年健忘症」
オッペケペ
「福田善之を読む」上演委員会
西池袋・スタジオP(東京都)
2015/03/28 (土) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
知性と情熱の作品
「演劇」それを改めて提示してくれる作品。
朗読の形式は取っているが、これは演劇である。
”正義” ”渇望” ”欲望” それらの表出とその陰に潜む感情が観客を打つ脚本。
改めて、福田善之という知性に魅せられる。
63年の作品だが、当然ながら永遠のテーマを扱っているこの作品は”今”を語る力に溢れている。
ネタバレBOX
いつも思うのですが、アフター・トークの是是非を問いたい。
福田さんの言葉を聴きたいと思う欲求から残りましたが、司会が想いを延々と述べたり、ゲストでもない人が(作品の誕生の立役者ではあるのでしょうが…)語り続けるといった趣向はやめたら如何でしょう?
「戦争と記憶」という題材はどこにいったのでしょう?
この作品の福田さんご本人の想いを聴けるのでなければ、別に参加費をとって居酒屋で思い出話大会でもやられてはいかがでしょうか?
BAKUとよばれた男
創作集団ヒルノツキ
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
お疲れ様
と、観客に言いたい。
何がしたいのでしょうか???????????
BAKU と呼ばれたって、誰に呼ばれたのでしょう?????
これって、演劇???????
最早、そう思う自分に疑問を持ちたくなるのですが。
…勘弁してください。
野郎歌舞伎 墨堤桜
劇団め組
アサヒ・アートスクエア(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
華やかでした(#^.^#)
桜の頃にピッタリな「舞台でした。お酒を飲みながら観られて楽しかったです!
バラーレ
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2015/03/07 (土) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
美しさ。
演出の坂東玉三郎さんの求める「美しさ」をダンスでカタチにした作品。
どの瞬間も、とにかく細部まで美しさを求める姿勢が表れていました。
春の祭典は凄みがあり、マーラーは透明で美しく、タンゴは情熱的で
楽しかった。
この舞台を乗り越えたDAZZLEが、これからまたどんな景色を私達に
魅せてくれるのかが楽しみになりました。
オイディプス
錬肉工房
座・高円寺2(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かった。
夢幻能を意識してるとのことで、時間や空間の差を儚く感じた。能、狂言故の眠さも出てくるが、素舞台と照明、音響による不気味さや、老齢な役者さんたちの肉体から出てくる経験値の空気は引き付けられるものがあった。人形を用いているのも面白かった。
漢三人芝居
Ruth
サブテレニアン(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
Ruth初公演:「漢三人芝居」
昨日、板橋にあるサブテレニアンで、ブロ友さんのさらみさん(今西哲也さん)、春川真広さん、大高雄一郎さんの3人からなるユニットRuthの初公演「漢三人芝居」を観て参りました。
ちょうど1年前、いろんな舞台で共演して仲の好かった3人でユニットを組みましたと聞いた時から、3人での舞台を観たいなと思っていました。
劇場を押さえて、企画して、脚本頼んで、きっと初めて尽くしの事が沢山あって、大変だったと思います。
1年で、初公演を形にするだけでも凄いのに、11日間で創り上げたとは思えないほど、舞台としての完成度もとても高くて素晴らしかった。
今日が千穐楽なので、内容にはあまり触れないで、感想だけを書かせて頂きます。
「漢三人芝居」は、4人の脚本家による4本のオムニバスの会話劇。
セットはなく、会話だけで場(情)景や色、空気、心情を描き出し、コミカルからシリアスまで、4人の脚本家の雰囲気も味わいも違う、振り幅の大きい舞台で、観ながら体の中や感情が蠢き、かき混ぜられる素晴らしい舞台。
さらみさん(今西哲也さん)は、主演舞台「積む教室」から11日間しか経っておらず、4冊の台詞を覚え、創り上げて行くのは、どれほど大変だったかと思います。
しかも、4本とも全く雰囲気の違う役で、その全てでその人物そのものとして其処に居る。それは、なかなか出来ないこと。声も仕草も、表情も一瞬にして、全く違う人になり、存在していて素晴らしかった。<br><br> どの人物も好きですが、特に2本目の「LIAR×LIAR×LIAR 」のさらみさんは、今まで観たどの役とも違っていて、凄みを感じ、新しいさらみさんの魅力が出ていてとても素敵でした。
春川真広さんは、さらみさんも大高さんもそうなのですが、やはり、役によって表情を含めた佇まいがガラリと変わって、その人物として、其処に居ることがいつ観ても凄いと思います。
去年1年、それまでとは雰囲気の異なる人物をいろんな舞台で演じてきた真広さんの1年の集大成とも言えるような、シリアスからコミカルまで振り幅の大きな役を、その人物そのものとして目の前に存在していて素晴らしかったです。
大高雄一郎さんは、Twitterやツイキャスでは、お話ししていたのですが、観たいと思いながら仕事や予定と重なり、なかなか舞台を観ることが出来ず、今回初めてお芝居を観ることが出来ました。<br><br> 観た途端に、「凄い!」と思いました。さらみさんも真広さんもそうなのですが、出て来た瞬間に、ポンとそこにその人として何事もなかったかのように、そこに普通にいました。
特に最後の「DREI」のシリアスな大高さんは、繊細に深くその人を目の前に描き出し、佇んでいて本当にかっこ良かった。
最初の「ゴーストのゴースト」で笑い転げ、 2本目の「LIAR×LIAR×LIAR 」でハラハラ、緊迫し、三本目の「ダンディ」で、ニヤニヤ、ケラケラ笑い、最後の「DREI」は、観ながら「生きる」ということについて深く考えさせられ、ギュッと胸に迫り、涙がぽろぽろ溢れてしまいました。
人生、笑って、泣いての繰返し。それは生きることでもある。そう考えて、こじつけるなら、この4本は「生きる」ということが共通したテーマとも言えそうです。
生きる上で味わう感情と五感の全てがギュッと凝縮されたような、密度の濃い贅沢な1時間30分でした。
笑いと涙、シリアスとコミカル、緊張と緩和、感動、いろんな色、いろんな感情が蠢き、混ざり合い、揺さぶられる素晴らしい舞台でした。
文:麻美 雪
少年は銃を抱く(満員御礼で終了しました。御感想お待ちしています)
MU
駅前劇場(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/04/01 (水)公演終了
満足度★★★★
リア銃
第一部の“少年たちの青い思考”、第二部の“自由人の家族たち”、
そして第三部の“教師たちも普通の大人”という3つの視点が面白い。
戦中に銃をくすねたというボケた祖父や、父親・叔父さんがいい味出してる。
弾丸の入っていない古い拳銃を持ち歩くことで変貌していく若者たち。
2時間半の長さを感じさせない展開で、何気に出てくる小さな笑いも外れなし。
キャラの立った登場人物に存在感があり、
10代の台詞にみずみずしさがあふれていて素晴らしい。
個人的には”その先が知りたい”感満載のエンディングがちょっと物足りない。
「お守り」は、いったい何を守ったのか…?
ネタバレBOX
第一部.少年たち
16年前に歌手江口光が庭先で亡くなったことから「江口ハウス」と呼ばれ、
ファンの聖地のようになった家のリビングが舞台。
大きくとられた窓の外は庭、上手の入り口は玄関と2階への階段につながっている。
そこに不登校児が集まりだし、オーナーの息子、高校生の光雄(小沢道成)は
祖父が戦中くすねた拳銃を彼らに分配する。
いじめに立ち向かうため、勇気を出すため、それぞれの目的のために銃を所持した彼らが
1週間で劇的に変わる姿を見て、光雄はますますその力を確信する。
第二部.家族たち
江口ハウスのオーナーである光雄の父(成川友也)、その弟(大塚尚吾)、
小説家の夢破れて実家へ帰って来た光雄の姉(真嶋一歌)、
そもそも銃をくすねてきた祖父(小野塚老)、光雄の従兄弟晴臣(斉藤マッチュ)、
光雄の家族は皆どこかねじが緩くて自分に甘い、言葉を換えれば柔軟。
第三部.教師たち
不登校児が集まる家として、学校から目の敵にされるようになった頃
銃の存在が発覚、その出所を突き止めようと教師たちは躍起になる。
校長は「あれはモデルガン」と言い張って逮捕者を出さずに幕引きを狙う。
そんな時晴臣が、光雄の恋人恵美(小園茉奈)を傷つけた教師
(山崎カズユキ)を撃ってしまう。
その晴臣は、江口ハウスの庭にいたところを、二階から祖父に撃たれる…。
お守りとは、精神的に頼るものであり、よりどころとなるものだ。
それがいざという時に実行力を持ちうるものではあまりに危険すぎる。
ましてや“強くなりたい”盛りの10代では、ただそれを握りしめて
自己をコントロールするだけにとどめておくことがどれほど困難か、
そこを想像できないところが若さだろう。
第二部の家族たちが、少年たちを追いつめるタイプでないことがユニーク。
息が詰まるような家庭に育ったわけではないがいろいろあって不登校、
というのがリアルで共感できる。
ステレオタイプでない家庭にしたところが、逆に根の深さを感じさせる。
教師たちも、事なかれ主義で不道徳で、何となく穏便に収まるかと思ったところで
やっぱり起こったか、という展開。
衝撃的なのはその後のもう一件の事件だ。
祖父が二階から孫の晴臣を撃ち殺し、その銃を持ったまま外へと出ていくところ。
家から出られなかった認知症の祖父が、 お守りを手に外へ出ていく不気味さ。
時折「敵が潜んでいる」と言う祖父が銃を手にする時、それはもはや
「お守り」ではなく身を守るための明らかな「武器」である。
光雄役の小沢道成さん、友人たちの変化に、興味が確信に変わるあたり、
10代らしい好奇心と自信、暴走するアブナイ感満載で上手い。
晴臣を演じた斉藤マッチュさん、人のものを欲しがる性格、
また手に入れてしまうしたたかさがことばの端々ににじんでいる。
晴臣に撃たれてしまう教師役の山崎カズユキさん、教師の中で一番生徒に近く、
つまり大人になり切れないまま先生になっちゃった感がリアルで良い。
「お守り」であり、それ以上でもそれ以下でもないはずの銃は、圧倒的な力を持っていた。
その「武器」となりうるものを「お守り」とすることの危うさが際立つ脚本が秀逸。
暴力的で虚しいエンディングに、「え?このあとあの人はどうなるの?」と思ったが
この後の展開は社会に委ねられ、少年たちの夢は終わるのだ。
作者の「答え」をそこに見る思いがした。
高校演劇サミット2014
高校演劇サミット
こまばアゴラ劇場(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
高校演劇
【高校演劇サミット2014】を観劇。
ももくろ映画の【幕が上がる】ではないけど、高校演劇は意外に良い。
特に甲府南高校の短歌を絡めた【秘密の花園】の面白さはなかなかだ。
双鱗姫
PocketSheepS
TACCS1179(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
やはり!
期待していた通り、面白いストーリーでした!
人魚姫の話は惹かれまさたし、フライヤーも、惹かれました、
シンクロするふたりの姫が良かった!殺陣も見応えあったし!
鳩が面白かったな〜(≧∇≦*)
SEが無いのが寂しかったかな💦
カテゴリーボックス
9-States
小劇場B1(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
お見事。
視点が目まぐるしく移り変わり先の読めない展開に付いていくのが難しく感じのだが、それでも物語に引き込まれてしまう。構成とセリフが独特でそれをさも日常会話のように演じる役者の技量も含め完成度の高い作品。客席がAエリアとBエリアに分かれており、Aからの観劇だったが、Bから見たらどう見えるのかもう一度見て見たい。
漂白
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
水面に垂らしたコーヒーのように異物の陰が広がる
幸福な家族に、招かざる客が……そんな設定の作品は今までも何本もあった。
さて、この作品では。
ネタバレBOX
幸福そうな家族に、招かざる異物(客)が混入することで、波紋が波乱となる、そういう設定の作品は今までも何本もあった。
この作品もそうである。
弁護士一家の豪邸に招かざる客・佐山が登場することで、ほころびが広がり、壊れていく。
それをどう見せ、何を示すのかがポイントである。
冒頭の、少しとぼけたと感じ、と思わせる雰囲気がいい。
朝、この家の妻(市毛良枝さん)が起きてくると知らない人物・佐山(若松武史さん)がソファーに寝ている。
妻と夫(小林勝也さん)、そして知らない人物とのやり取りが笑える。
しかし、ここに仕掛けがあった。
「なぜ、その不審者は帰ろうとしないのか」
「なぜ、夫は、不審者がいることをあまり問題にしないのか」
ということだ。
佐山を演じる若松武史さんという俳優から目が離せない。というか好きだ。
大げさに言えば、いつも陰があり、いつも不気味な存在である。
顔の角度や声の調子から、それを常に醸し出している。
ように感じてしまう。
この作品でも、単に酔っぱらって、家の娘に無理矢理に連れてこられてきてしまい、つい、うっかり言ってはいけないことを口走ってしまったようにしているが、「そうじゃないだろ?」「わざとだろ?」と思ってしまう。
若松さんが、言い訳せずにすぐに謝り、さらにすぐにフォローしたりするところなどが、特に怪しいのだ。
そういう見方をしていたが、実はどうであったのかが、徐々にだが、先に進みながら、うっすらと見え、ラストに明らかになる。
彼は、写真家であり、「顔」を撮っていると言う。
彼のシャッターの押すタイミングは独特であり、その場で感じていることを被写体に質問して、そのリアクションを撮るというものだ。
この家の妻にも「大丈夫ですか」と質問し、シャッターを押す。
これは、実はその場で感じて発した質問ではなく、「用意していた質問」であることが後々見えてくる。
もちろん、ここからは想像なのだが、佐山は、パーティでこの家の娘に出会い、そこで酔っぱらって、娘の実家に連れてこられたということになっている。
しかし、そうではなかったのではないか。
佐山は、「顔」つまり「表情」を撮りたいと思っていて、そういう表情を探していたのだろう。そこで、娘・美加と出会い、いろいろリサーチしたのだ。(たぶん)美加を酔っぱらわせて、しかも、本人がしゃべってしまった、と思い込ませないように巧みに、根掘り葉掘り聞き出したのだろう。
だから、この家の秘密(母親が息子の結婚した相手を知らない・知ったら反対するということ)を知り得て、ピンときたのではないか。しかも、翌日は、母が息子の子ども(つまり母の孫)の出産に立ち会うための出発の日なのだから。本当はこの家へ押し掛けたのだろうが、それも「娘・美加から無理矢理に誘った」という感じにしてある。
佐山が、この家ではタブーなことに、タマネギの皮を剥くように、慎重に近づいていく。
最後の表情を撮るために、妻に「大丈夫ですか」という不安の種を蒔いてからというのも、用意周到だ。
「大丈夫」の単語がうまい。
要所要所で発せられることで、妻だけがやすりで削られるように、反応する。
どこかに訪れるであろうシャッターチャンスを舌なめずりしながら、佐山は待っている。
だから、理由をつけて帰ろうとしないし、わざと「なぜここにいるかわからない」としたのも、彼の暗い計画を隠すためのものだったとわかるのだ。
弁護士の夫が不審者である佐山に、ある意味寛大なのは、そんなことに構っていられないからだろう。
つまり、何も知らずに息子のところへ行く妻へ、どのタイミングで話すか、あるいは行かせないか、ということのほうが大切だからだ。
ただ、少し不安定になった妻の言動はあまりにも不審すぎる。
たぶん、夫や娘、そして息子たちからの距離感は、薄々感じていたのだろう。
だから、とても不安定な足場の上にいて、「大丈夫」の一押しで、ぐらついてしまったのはわかる。
しかし、やはり、ぐらつきが大きくはないか。
大雨で家そのものが危ないとしても。
妻の「家」の象徴は「家」そのものであった。
家が象徴するものが、実は近所にもいい印象を与えていなかった、ということと、家族の関係は似ている。
水害に晒されている、今の「家」そのものが、今の家族を示している。
ラストに、佐山が待ち望んだシャッターチャンスが訪れる。
信じていた「家族」の存在が「崩壊」していたことに気が付いた、妻の顔の一瞬一瞬だ。
この瞬間のためだけに、家族の「虚構」が「崩壊した」ではなく、「白日の下に晒された」のだ。
佐山の巧みさは、今回初めて発揮されたのではないだろう。
つまり、こういうことを、彼はずっと繰り返し行ってきたのではないか。
ということは、「こういう家族は結構いる」ということなのだろう。
他人から見れば、ぐらぐらした足場に立ち、一押しで簡単に崩れてしまうような家族が、だ。
しかし、この家族の「崩壊」(白日の下に晒された)は、いずれ起こったであろう。
つまり、息子の嫁の話を家族が誰も自分に話してくれなかったということに、数時間の間に気が付き、同じような崩壊感を味わったのではないかとも思える。
妻役の市毛良枝さんの、なかなか崩れないままの、崩壊ぶりは見事で恐い。
夫役の小林勝也さんの、佇まいもいい。
町内会長役の谷川昭一朗さんの、ラストに向けての剥き出しの敵意がとてもいい。
そして、佐山役の若松武史さんは、その場所に常に陰が差していて、彼の存在が水面に落としたコーヒーのように(そう、夫が水浸しの床にこぼしたコーヒーのように)、家族にも陰を広げていった。そういう演技が素晴らしい。
この流れでいけばい、ラストは「本水」だろうと思っていたが、最前列席にはカッパの用意もないので、どうするのかと思っていた。
しかし、「なるほど」ということで、窓から溢れてくる水があった。
「雨に唱えば」の鼻歌は、あまりにもフィットしすぎではあったが。
ラストで、抱き合う3人の家族の姿で、「雨降って地固まる」的なものなのかと思えば、そうではなかった。
そういう甘いラストではなく、「家族」という「虚構」の「鎖」で繋がっていた妻は、そんな鎖はなかったということに気が付き、心が「漂泊」していくのであろうということを感じさせるラストでもあった。
これを乗り越えていくことができるのか、ということはわからない。
少なくとも、ご近所づきあいは、表面上のものはなくなり、厳しくなっていくのだろうとは思うのだが。
蓬莱竜太さんの戯曲は、毒の感じがいい。
そして、田村孝裕さんの演出もかっちりしていて見やすかった。
再生ミセスフィクションズ
Mrs.fictions
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★
キャスティングがステキ!
久しぶりになった、フィクションズ。どんな内容かしら?と思ったけど、観たことある作品も。そして、自他共に認める中嶋 ⇔ 上野 作品を改めてみると、上野脚本って言ってもわからないかも。上野さんが「自分が書いたのかと思った」云々の話もなるほどな~とか思ったり。フライヤーや開演前のパフォーマンスが気になる方は、公演の『説明』の部分を読まれると良いでしょう。これで納得できるはず。
紅白旗合戦
アガリスクエンターテイメント
サンモールスタジオ(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
やっぱり、このスピード感だぜ!
ボスがいい味出してる!と思ってたら、次はコータさんが、そして菊地さん、じわじわと川添さん。客演さんが頑張ってる!と思ったけど、彼らを引き出して『アガリスクエンターテイメント』のいい~テンポを刻んでいるのは、主に生徒の役の団員さんと毎度の顔ぶれだ!と気づきました。座組みが良いんだと思います。脚本のスピードについてけない人もあるかも知れませんが、演劇はおっとりばかりじゃないので。Negative なことを書かれる方は、他の公演でも不思議とNegative に感想をかかれてたりします。いや~頑張って欲しい!アガリスクエンターテイメント! 初めての方にも、ぜひおススメです!!!
少年は銃を抱く(満員御礼で終了しました。御感想お待ちしています)
MU
駅前劇場(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/04/01 (水)公演終了
満足度★★★
見応えたっぷり
MUは知ってはいましたが、今までなかなかタイミングが合わず今回初観劇。
PENALTY KILLINGで気になった佐野さんに背中を押された感じ。
上演時間140分と上手い役者さんの見応えたっぷりの公演でした。
古傷を抉られるような痛痒い感じ。大人の鈍感さって自己防衛機能だよね。
決してあの頃に戻りたいなんて思わない。
重たい話でも結構笑いが起きてたんだけれど、
笑いどころが人によって随分と違うなという印象を受けました。
女の子がみんな可愛かったなぁ。
あんなにカワイイJKばかりではそりゃ先生も道を踏み外すよね(笑)
最前列に背の高い方が集中していたという奇跡に加え、
やっぱり帽子取らない人が何人かいて気になりました。
ネタバレBOX
江口光の設定って、言うまでもなく尾崎豊がモデルですよね。
確か実際の尾崎ハウスは取り壊されたはずですが、
江口ハウスもこの後閉鎖になるんだろうなぁ。
光雄の父は人の相談にのることで自分の承認欲求を満たしている感じ。
結局大人も少年たちと同じで、ただすり替えが上手くなっただけってことかな。
再生ミセスフィクションズ
Mrs.fictions
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★
充実のラインナップ
会場に入るとチラシの怪人が既に舞台上に。
前説で本編とは関係ないことをお詫びされた。
チケットの怪人カードや客入れの特撮主題歌も無関係ですね(笑)
選ばれた再演のためか、全体的にレベルが高く良い作品が揃っていたと思いました。DVD頂けるんですか?楽しみだなぁ。
ネタバレBOX
①「ねじ式(未来篇)」
拾われたため、メンテナンス出来ずにガタが来始めているロボットと、拾い主の兄弟。とぼけていて噛み合わない会話にほっこりさせられました。
物事を深読みして意味付けするのは何時だって人間だよなぁ。
②「お父さんは若年性健忘症」
大好きな作品。
今回はこれを観るために来たといっても過言ではありません。
昨年の御ゑん祭りも良かったですが、
今回のクールなお母さんも良かったです。
父娘の会話も良かったし、何回でも一目惚れされるのって
ある意味幸せなのかもと思えました。
お父さんの家族への愛情ダダ漏れ加減に本当に泣けました。
③「東京へつれてって」
ヒロインは天然だけど、一途でカワイイなぁ。
好きな人はどんな状況になっても好き。たとえホームレスになっていても。
一緒にいることに見返りを求めない、女性の愛情深さと逞しさを感じました。
5年掛けて完成させた手紙の中身が気になります。
④「まだ僕を寝かさない」
男同士の友達ってこんな感じ?
掛け合いと飲み物の件が面白かった。
カテゴリーボックス
9-States
小劇場B1(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
区別と差別
普通とはなにをさすのか?当たり前と思っていたことを当たり前と思うのは怖いことなのかもしれない、そう思いました。二人の医者の角質とそれを取り巻く家族の関係を上手く描いた作品でした。難しくもあり理解できているかどうかはわかりませんがとても考えさせられました。
ABCDEFGH
ENBUゼミナール
シアター風姿花伝(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
にゃんとにゃづけよう
Enbuゼミナールは、今年でひとまず休止ということになってしまった。意欲的な作品を手掛けてきただけに残念だ。然し、今作は、そんな寂しさを吹き飛ばす軽快な音楽に良く鍛錬された身体で挑み、演劇とかミュージカルというよりも緩やかな意味的繋がりを持つパフォーマンスという感じの作品で、楽しませてくれた。
超現実絶望ぐちゃぐちゃ夢子ちゃん
しあわせ学級崩壊
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
凋落する帝国の植民地で
現在の閉塞状況を、傷つきながら出口を見つけられずに生きる若者の精神構造を舞台化した作品。
ネタバレBOX
表現する際の器具の使い方などは工夫の余地があるが、演出上わざとやっているという側面もあろうから、一定のレベル迄、自分達のガス抜きができれば落ち着くだろう。
但し、現在の若者が抱えている問題が、それで片付く訳ではないことは無論である。問題を解決する為には、パラダイムシフトが不可欠である。世間の馬鹿な大人達の真似をして、上昇志向で“勝ち組”を目指すなどという愚かな方法では無論パラダイムをシフトすることはできない。それをするには、会場でアンケートに書いた通りの方法が一つ。後は、グローバリゼーションと言われている今のアメリカナイゼーションを、キチンと認識する必要があると同時に、そのアメリカナイゼーションによってアメリカの覇権は、当に破綻したのだ、という事実を見据える程度の力は発揮しなければならない。即ち、知と知恵と論理的・哲学的な思惟によって世界を一度分析解体し再構築しなければならないのである。パラダイムを変えるに当たって最低限、この程度のことは必要だ。それができなければ、何時までも今回描いたような世界観の中で腐って行く未来しか持てまい。だが、今回、表現したことによっていくらか問題を対象化しているハズである。今後とも、自らを切開しキチンと観察して自らの道を切り開いて欲しい。