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愚者と星と死神についてのいくつかの考察

愚者と星と死神についてのいくつかの考察

feblaboプロデュース

エビスSTARバー(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 観てホントに良かったと思える作品、華5つ☆!  若干説明を加えた(8.2)

ネタバレBOX

 この素敵なタイトルはタロットカードの絵柄から来ている。自分自身は占いという一種の経験則を全く信じないとは言わないが、それが占い師の人生経験や経験則を基にした判断に過ぎないと考えるので神秘主義的な解釈は全く信じない。とはいうものの、とても素敵なタイトルではないか? 内容的にも無論、この素敵なタイトルを裏切らない。而も、今迄演出を中心に、脚本は脚本家が書いた物を主として上演してきた演出家・池田 智哉氏初の長編戯曲である。言葉と散々格闘してきたことが明らかな聡明な池田氏の書いた初の長編は、言葉そのものの鬩ぎ合いが実にヴィヴィッドに、而も一見人間としての基本が落剝したとしか思えない最近の日本社会の劣化状況に於いても有為な若者たちが紛れもなく存在し凌ぎを削っている現実を見せつけて希望の芽を見出さずには居られない。これだけ良い作品が出来上がっているのは無論偶然ではない。新宿の小さな小屋で数々の優れた作品を上演して来、その演出を手掛け、歌舞伎町という世界を代表する不夜城の一つを観てきた経験からの観察眼と優れた洞察力、観察対象からの適正な距離の取り方と対応を通して得た諸々の情報を分析・統合して判断する力、そしてそれを適格に言語化する力それら総てが相俟っての結果、設定が絶妙である。物語が展開する場も適切。因みに登場人物は総て女性である。
 オープニングから暫くは、ホントにアホだよな! と呆れるようなアホな会話をするこのバーにやって来た客も登場する。が、近頃流行りのジェンダー論やハラスメントに関わる論議のうち今作で扱われるのは後者である。というのも今作に登場するのは総て女性だから直接的にはジェンダーの入り込む余地がないのだ。
掴みでは素人の占い師が、このバーで働く娘を占っている。この時に出て来たカードがタイトルにも用いられている死神、愚者、星であるが、タロットカードは正の位地から見る場合と逆の側から見るのとでは意味が反転する。そういったカードの持つ二面性をも極めて上手く織り込み、才能の弱肉強食の世界に生きる芸人やユーチューバーVS既存の社会体制の中である位置を占めて生きている女性たちとのギャップを今流行りのジェンダーとハラスメントのうち後者を軸に炙り出し、良くメディアで謂われる内向きの日本人達が作り出している現代日本の人間論をではなく、寧ろ未だに御家制度を内在化させたある程度裕福で実存と向き合わずに過ごすことが出来、一応御家制度内の人間として振舞っていれば人間として最低限必要なコミュニケイションの最低限迄欠落させても生きてゆける結果、一神教の世界では当然な神と対峙する人間存在としての実存を生きる必要が無い為、人間としての内実迄喪失した状態をも浮かび上がらせつつ(これが冒頭に出てくるアホな客であるが、このキャラの名誉の為に申し述べておくなら、現在彼女が身を置いているのは芸人の世界。然しこの世界に彼女が入ったきっかけは友人が勝手に彼女のプロフィールを書いて養成所に応募し試験も通ってしまったので同期とコンビを組むことになった、という経緯があった。然し養成所の先輩からコンビが売れないのは、この女性の所為だと詰られたのがきっかけで、相方は才能があるのに自分が足を引っ張っているせいで彼女を芸人として成功させることができない、と悩み、妙案も浮かばず頼ったのが占い。占いのペースは1か月に百件も占ってもらうレベルで肝心の稽古もすっぽかす有様。だが、それほど真剣に悩み自ら決めきれないことの中に御家制度が深く息づいているように思われる)そのような現状に対して、どのように対峙してゆけば良いのかの示唆迄与えている。前段でアホにしか見えないキャラとして登場するのが、この実存を剥奪され而もその事実に気付きもしない女性ということになる。自分自身はガキの頃から協調性に欠けるといつも通信簿に書かれ続けたキャラでもあるし、海外で暮らした経験もそれなりにあるので人間が実存として各々生きることが当たり前であるという価値観の上に立つから、己の生き様を己自身で決められないというのはアホにしか見えないのが取り敢えずの判断になる訳だ。とはいえ各々様々な人生があり、その人生を生きる他の術は無いから各々が自らの位地を占め尚且つより稔りのある人生にする為に力になるのは、矢張り他者とのコミュニケイションを於いてはあるまい。而も一神教の諸外国人に比し日本人の多くは最低限のコミュニケイションを紡ぐ方法を知らない者が多すぎるようには思う。今作はそのような日本の状況をあくまで個々の関りを通して浮かび上がらせているのみならず、その恐らく唯一有効な対処法を提示している。その点が素晴らしいのだ。
 どの演者も良い味を出しているし、役を生きている。観て本当に良かったと思える作品である。
ビューティフル・サンデイ

ビューティフル・サンデイ

株式会社REVIVE

六本木トリコロールシアター(東京都)

2024/07/25 (木) ~ 2024/08/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いや~グッとくる会話劇でした。コメディタッチですが、かなりシリアスな内容で、引き込まれます。2000年頃の時代設定がいい。美弥るりかさん、この舞台で初めて知りましたが(失礼)、魅力的な女優さんですね。

7月の邂逅

7月の邂逅

KAIGYAC STAGE

APOCシアター(東京都)

2024/07/26 (金) ~ 2024/07/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

1時間弱の上演時間で、ちょっと急ぎ足の展開でしたが、この季節向きのファンタジーな群像劇(ちょいとホラー)、なかなかに楽しめました。

愚者と星と死神についてのいくつかの考察

愚者と星と死神についてのいくつかの考察

feblaboプロデュース

エビスSTARバー(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人生にはうまくいかない時や躓く時もある。これから先どうすればよいのか迷い悩んでしまう。そんな時 占ってもらい、少し背中を支えてもらうか押してもらう。占いは悩み相談でもあり、救いという自己暗示の効果を期待しているよう。

タイトルが意味深であったが、「愚者」「星」「死神」は、タロット(占い)結果における過去・現在・未来を表している。物語は、恵比寿にあるBarを舞台に繰り広げられる再起劇。まだ何者にもなれない症候群のような若者、職場環境・人間関係に悩む中年女性、承認欲求が強いユーチューバー、そしてBar経営者の気持を丁寧に掬い上げる。
登場人物は全て女性、一生懸命やればやるほど人との関係が拗れる。そんな歯がゆい思いが激情となって ますます相手を追い詰める。日常に見られる どうしょうもない光景、それでも占いに救いを求める切なくも滑稽な話。

エビスSTARバーを舞台に、間近で観る光景は、そこで起きている日常を覗き見ているような感覚。公演の魅力は、等身大の人々のリアルな生活が描かれているところ。そこに現代的な問題を落とし込み、その問題の捉え方に表裏があること、更にそれをタロットカード(占い)に絡める巧さ。まさに人間洞察、そこに脚本・演出の池田智哉氏の真骨頂をみる。
(上演時間1時間20分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、会場になったエビスSTARバー店内そのもの。冒頭、この店の客で占いをしている女性 渡邉さくら(40歳代)が店のバイトの女性 大園明香(20歳代)の運勢を鑑定している。占い歴は浅く、タロットカードの絵柄の説明(あんちょこ)を見ながら話している。さくら は企業のベテラン職員だが、後輩の指導が厳しかったのかパワハラで休職を命ぜられていた。

最近、恵比寿界隈でよく当たる占い師がいるとの情報、その あやふやな情報をもとに飛び込んできた女性、実は相手と上手くいかないという。相手は男ではなく漫才コンビを組む相手のこと。そして怪しげな変装をして来店した女性、実は店長 伊藤由依の姪 山下莉奈でユーチューバーとして活動している。漫才コンビ<濱松>ー濱岸夏鈴と松田美波。1人は地道に稽古に励み、もう1人は占いで将来を…。その意識の違いで衝突し相手のことが解らなくなっている。まだ何者にもなれていない若者の悩み。また莉奈は手っ取り早く稼ぐことで承認要求を満たそうとしている。人間洞察が深く、リアルな人物像を立ち上げている。またキャストは等身大の人物を生き活きと演じている。

占い(手段)は、占い師という見知らぬ第三者に悩みを打ち明けることで気持を鎮める。一方、占い師は 打ち明け話にどう寄り添った<言葉>を言うか。その<言葉>は厄介で、相手がどう受け止めるかによって薬にも毒にもなる。例えば 休職中のさくらは、一生懸命に後輩の指導をしたが、相手に厳しいと思われたらパワハラになる。漫才コンビにしても自分の主張と相手の気持を考え合わせること。そんな日常の一コマを切り取り、滋味溢れる物語を紡ぐ。

冒頭 さくら曰く、タロットのカードには正位置と逆位置があると。占いによって自分の気持を整理する。今の状況をポジティブに捉えるかネガティブに思うかによって、自分の取るべき態度・方向が決まる、要は自分次第。物語は、このBARでの出会いが良い方向に向かう大団円、そんな希望がみえる。
ラスト、カウンターの垂直下照明(シーリングライト)の諧調が実に印象的で余韻を残す。
次回公演も楽しみにしております。
新作『犬の観覧車』のためのオープンスタジオ & リーディング上演

新作『犬の観覧車』のためのオープンスタジオ & リーディング上演

黒い犬

ACT cafe(大阪府)

2024/07/29 (月) ~ 2024/07/29 (月)公演終了

満足度★★★★

公演にむけてのリーディング 内容はとても良かったです 楽しみです❕

第32回公演『少女仮面』

第32回公演『少女仮面』

劇団唐ゼミ☆

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2024/07/25 (木) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2024/07/26 (金) 18:30

価格4,500円

時代性を色濃く感じる

氷は溶けるのか、解けるのか

氷は溶けるのか、解けるのか

演劇プロデュース『螺旋階段』

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2024/07/26 (金) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/07/26 (金) 19:00

95分。休憩なし。

ふたりのロッテ

ふたりのロッテ

劇団四季

自由劇場(東京都)

2024/07/21 (日) ~ 2024/08/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/07/26 (金) 13:30

120分。休憩15分を含む。

OBA

OBA

劇団タッチミー

アトリエ第Q藝術(東京都)

2024/07/20 (土) ~ 2024/07/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/07/20 (土) 17:30

90分。休憩なし。

瀬沼さんのことを誰も知らない

瀬沼さんのことを誰も知らない

ライオン・パーマ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最終日、拝見しました。前回となにが変わったのかわからないけど、前回よりなぜだか気持ちが揺り動かされたような。競歩レースのシーンではなぜだか知らないけど、うるうるしてしまいました。なんでだろーなーと考えてみたけど、うまい答えは見つからない。理屈ではよくわからない。優しい情念のようなものを感じたとでもいいましょうか。シアワセな気持ちで劇場をあとにすることができました。どうもありがとう。

愚者と星と死神についてのいくつかの考察

愚者と星と死神についてのいくつかの考察

feblaboプロデュース

エビスSTARバー(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

バーを舞台にした群像劇。ほろ酔い気分で、楽しめました。尽きるところ、占いって人生相談なんですね。相談といっても、結論は本人がほぼほぼ決めているので、ただ承認して欲しいだけですが。

バサラオ

バサラオ

劇団☆新感線

博多座(福岡県)

2024/07/07 (日) ~ 2024/08/02 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/07/13 (土) 12:00

*

ただいまのあと

ただいまのあと

劇団CLOUD9

THEATRE E9 KYOTO(京都府)

2024/07/25 (木) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2024/07/26 (金)

神社のお祭りをイメージしたセットとワンドリンク性ならぬワンお着物制は良かったけど、お芝居のテーマと思われるノスタルジックは僕には何も刺さらなかった。

日曜日のクジラ

日曜日のクジラ

ももちの世界

雑遊(東京都)

2024/07/25 (木) ~ 2024/07/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

見に行った会は満席で雑遊の席は狭いのでちょっと辛かった。
ファンタジー系の話なんだろうなと油断してました。
会話のテンポの良さと面白さですぐに引き込まれていき、ラストの怒涛の展開で・・・緩急が凄くて楽しめました。

ネタバレBOX

これは罰なのか、人を不幸にすると自分に返ってくるんだよと。
でも罰を与えられた人がわかっていないのが怖い。
第32回公演『少女仮面』

第32回公演『少女仮面』

劇団唐ゼミ☆

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2024/07/25 (木) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

唐ゼミは何年振りか。横浜公演野外のノマド演劇「木馬」の付くタイトルのヤツ(同じ場所で後にあったのは同演目だったとしたら、最初にやった方)で、禿恵のヒロイン姿を見た。多分7年近く経ってる。KAATでの「滝の白糸」ユンボを使った大団円にも禿恵が乗った。それより前、横浜石川町の公演にて「お化け煙突」。この時のヒロインはどちらだったか・・。
記憶の中ではその程度だが、もう少し遡れば、一度だけ横国でのテント公演を観ている。「ジョン・シルバー」だったか「少女都市からの呼び声」だったか、この時は間違いなく椎野女史のヒロイン姿を認めていたはずで、狭い濃緑のテントの入り口近くで汗だくで観た。十数年前の事。
唐ゼミと共にあった主演女優、とは勿論認知していたが、今回は「少女仮面」で春日野八千代をやる椎野女史の姿をはっきりと、しっかりと見た。唐十郎作品の勘所を美味しく、味わうように作り上げる唐ゼミの精神もはっきりと感じつつ観た。
役者がよくやっている。ドガドガの丸山正吾はじめ振り切れた演技を皆がやり切っていて小気味よい。
春日野八千代は宝塚ガールの代名詞でもある戦前の女優(男役)として知られ、作者は役名に実物そのままの名前を使っている。
年を重ねた女優の悲哀と、華麗な身捌きに宿る誇り高き精神が、崇高にそびえる。その役どころをやれるのはやはり、特権的肉体という事になるのだろうか。戯曲は「物語を見せる」舞台にも出来るが、唐の精神を受け継ぐ中野敦史は、俳優を見せる舞台とする。
喫茶「肉体」を訪れる春日野ファンで女優志望の16歳と手ほどきをしてるらしい老婆のテンポ良いやり取り(老婆は倉品厚子がコケティッシュに演じて「アングラ行けるじゃん」と感心)、ボーイ達のタップと踊りと店主の理不尽に耐える姿、水道の蛇口を吸いにやってくる背広姿(この意味不明男はつくづく芝居に妖しさを与えてる)、腹話術の男と人形が店の者の嗜虐的態度で転倒していく様、それらをひとしきり見せた後、「もうすぐ風呂だ」という春日野本人(椎野)が、客席上段から初めて姿を現わす。背筋を伸ばして一歩、一歩と超スローに歩いて登場する間、舞台上の全員が「あ」という顔をしてそれを見つめるストップモーションが、長い。そして歩きが、遅い。何しろ遅い。そして長い。ギリギリを狙っているが、バックに流れるのメリー・ホプキンの「悲き天使」が終わると二度目が又掛かる。笑ってしまうが、ヅカガールの男役の身のこなしがこれを成立させてる様に感じ入って笑いがこぼれるのだ。
劇の最終段階、甘粕大尉が現われ「ここは満州」と言い、内地からファンが彼女の「肉体」を持ってやってくるくだりになると、狂気がまじり、戦争の暗い影が人物たちに陰影を与え始める。
堂々たる舞台。久々に観に行って良かった。

瀬沼さんのことを誰も知らない

瀬沼さんのことを誰も知らない

ライオン・パーマ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

再演なのでブラッシュアップされていて当然だろう、と思っていたら、なんと上演時間が初演より長い2時間半だった‼️磨きに磨いて、より凝縮(時間的にも)した作品になるのが普通じゃないの?(笑)。

ところが30分も伸びているのに、冗長感はなかった。いや、むしろ前回より完成度が高まって、面白さが倍増していた。これなら再演の意味がある。さすが深化著しいライオンパーマ(忖度ではなく、本気で褒めている)。次回作も期待大だ。

初めて演劇を観た友人の感想は、「タクシードライバーや喫茶店のマスターなど、セリフが聴き取り安かったしキャスティングが絶妙だね」とのことでした。

らんぼうものめ

らんぼうものめ

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2024/07/20 (土) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

公演詳細を直前に確かめ、気まぐれに予定化して観に行った。
ステージ手前のかぶりつきにフラットなスペースがあり、子供たちを座らせている。

始まりは二親と田舎の転居先に着いた娘(小学生らしい)が、ぐずっている風景。私物を入れた段ボールを玄関から部屋に運ぶのを嫌がり、「捨てていい」と言って母を困らせている。「本当に捨てていいの?」「捨てちゃうよ」と・・。
新たな土地で暮らす、という事自体を自分の持ち物と一緒くたに拒否しているよう。地団駄を踏む娘の駄々コネや、掃除機を掛ける母親が寝転ぶ娘の足を邪険に突いたり、が子どもに受けている。大人も見ていて笑いが漏れる。

が、話は「異界への旅」へと移行して行く。この異界が、あまり居心地の良い世界でなかったのだが、子どもたちはどう感じていた事だろう。「演劇を観る楽しみ」とは別物を味わっていたのではないかな。
「子ども向け」とか「親子で楽しむ」といった看板で客寄せする出し物にずっと思っている鉄則だが、大人が楽しめなきゃ子どもも面白くない。(勿論大人の「演劇リテラシー」も一様でないだろうが。)

異形の者たちの衣裳・着ぐるみは結構本格的な物(「DUNE」を思い出した)だったが、演技の方に艶めかしさが感じられないのが私にはキツかった(日常的な気安い感じの喋り方・・なぜ?)。
異形の世界を描くには、ルールが明快であるか、もしくは感覚的に納得させる何か、が必要だが、もう一つには、「迷い込んだ異界から戻る」とか「母を連れ戻す」といった課題(使命)が明確である事も必要に思う。
この課題の部分では、作者は「異界の旅を楽しむ」行程を欲張ったのではないか。異形の者たちとの時間を重ねるにつれ、去り難くなる娘、という事なのだが、異形の者たちが「大人」の設定なのが私は失敗だったのではないかと。「子ども」ならばそのキャラが持つ願望、欲求が明快で、娘にとって彼がどういう存在か(心優しい味方か、面倒臭いが何かの時は役に立ってくれる人か、一方的に好いてくれるが大して役に立たない人か、つっけんどんだが頼りになる人か・・等など)が明確になったのではないか。
話は「太陽の神」がいなくなったためその代りを勤める存在として母がさらわれた。その母を追って異界に迷い込み、母とは再会し、異形の者と母との時間を過ごす。「偽物の父」(異界に本物は来れないかららしい)とも過ごした後、元の太陽の神が戻って来て、母と娘が去る日が来る。皆と別れを惜しみ、偽父とも別れる(ここで涙するのだが、偽父ならもっとドライに別れて良いのでは、、等と心の中でツッコミが..)。劇中、幾つかのアトラクションが用意されてあるが、やはり大切なのは本筋、ストーリーだった気がする。

元の世界に戻った時、少し怖いオチがある。父と娘が日常のやり取りを取り戻しているが、遠くで「おーい、おーい、こっちだよー」と呼ぶ声が聞こえる。見れば奥の中央に巨大な「顔がついてる」太陽が浮かんでいる。どうやらそこから声がするのだが、二人には聞こえない。さっき娘と母が手を取り合って異界から抜け出てきたはずだが、二人は「母がいない」事を意に介していない。
客電が点いた後、二つ前の列の男の子が、「悲しいお話だったね」と呟いていた。子供たちは自分たちを楽しませてくれようとした大人達に、礼儀正しく、行儀良く、敬意を示していた。「今時の若者」に感じる行儀の良さは、傾向はさらに進んでいるのでは・・と予感した次第。
そんな事を感じると、演劇はどんな効果を子供たちの前に発揮したいだろうかと考える。今回のステージで言えば、大人たち自身が「子どものように」楽しむ姿を見せる事ができたか・・そこかなと思う。世代の近い若い俳優たちと過ごせて楽しかったかも。子供たちに感想を聴いてみたい。(距離感のある感想になってしまった。)

らんぼうものめ

らんぼうものめ

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2024/07/20 (土) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

一度だけモーニング娘。を観に行った事があり、それが2015年12月の日本武道館、絶対的エース鞘師里保卒業ツアーだった。それ以来となる鞘師里保さん。やはり人気は健在で、客席は鞘師ファン達の歓談会。何回観に来たとかの会話に流石の集客力を感じた。女性ファンの心をガッチリ掴んでいるのが強い。
タイトルから昔観た『あの子と遊んじゃいけません』みたいな感じを想像していたら全く違った。

異形の者達が神として登場する。
モコモコした埃取りのモップみたいな色取り取りの奴等が天井から吊り下げられた顔のある太陽を捕まえる。その手足を引き千切ってバラバラにするオープニング。神様達と神様の神として君臨する江川(近藤隼氏)。
野菜の神様、大月(秋元龍太朗氏)は食べると何でも望んだものを産み落とせる野菜を持っている。無数に生えた大根をぶら下げた姿は宇宙怪獣バイラスやイカデビルを彷彿とさせる。
虫の神様、守屋(中山求一郎氏)はネットでの目撃談で広まったシシノケを思わせる姿。多足類のように地を這う。
守屋が分身として産み落とした要(かなめ)〈高田静流さん〉はノミやミジンコ、サナギマン、『ベルセルク』の幼魔(異形の胎児)のイメージでカッコイイ。

主人公、8歳の鞘師里保さんは癇癪を起こして地団駄を踏むムーヴがまさに生粋のダンサー。
お母さん、掃除機を掛ける安藤聖さんは可愛らしい。
お父さん、金子岳憲氏はコピーとして異界に呼び出される。その姿が泥で捏ねくり回したレザーフェイスで今作のMVP。一番良かった。

神社の木材が重量感のある軽量のバルサ材を使用しており、いろんな場面に活躍。

逃げ出してバラバラにされた太陽の神の身代わりとしてさらわれてしまったお母さん。主人公はお母さんを救い出す為、太陽の神のパーツを集める旅に出ることに。

ネタバレBOX

基本は『千と千尋の神隠し』なんだろうけどテンポが悪い。90分の話ではない。60分ものだろう。かったるい描写が延々と続き、眠気との戦いとなった。天井からの落下物と要(かなめ)のゲロは良かったが。子供を夢中にさせる為に必要な何かが欠けている。深層心理に訴え掛ける物語としての気持ち悪さか。
いとしのヒナゴン

いとしのヒナゴン

千夜一夜座

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2024/07/26 (金) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽観劇
狭いセットを頑張って
いりいろな場面に転換されてました
各キャラの方向性がしっかりしていて
見ていて安定とも言えましたが
やはり どことない古さは感じたかなぁ
と思えた2時間強の作品

ネタバレBOX

UMAもラストに
しっかり出てき満足😆
冬で雪毛だったようだし
原作がしっかりしてるからか
安定して観れました

過疎の町のワンマン町長
公共インフラの先細り
伴う合併話と
いろいろと盛り込んでいて
見応えありました

寂れた田舎だけど
切り捨てられない想いとか
きちんと吐露していて
スッキリしました
田舎は長閑で良い
なんていう幻想の打ち砕き加減も
納得の表現でした
かわいいチャージ’24

かわいいチャージ’24

人間嫌い

シアター711(東京都)

2024/07/24 (水) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何でもかんでも「かわいい」という語彙で済ませる若者文化もあるけれど、この舞台では、何通りもの「かわいい」を再認識したような気がします。新しい感覚の芝居でしたし、次の舞台も期待してしまいます。

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