実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/28 (月) 18:30
竹田モモコはしばらく前から注目していた劇作家だ。今作は、2020年の劇作家協会新人戯曲賞を受けた作品。しばらく前に彼女の演劇ユニットばぶれるりぐるの「川にはとうぜんはしがある」をやっていたが見逃してしまったので、期待は膨らむ。高知県出身の新進気鋭の劇作家の受賞作が東京で見られるなんてラッキーと思いながら吉祥寺に出かけた。
これまでの竹田の作品は、自らの出身地の方言幡多弁を駆使して構成したものが多い。「いびしない」とは汚いとか散らかっているとかいう意味だそうだが、その真意はネイティブの幡多人でないと分からないかもしれない。劇中で展開される方言も自分には分からないものがいくつかあった。しかし、劇団普通の茨城弁のように、方言を多用した舞台はどこか生活感があってホッとできると思う。今作も冒頭から結構手荒な場面があるのだが、大ごとにはならないぞという感触がどこかにあるような感じだった。
登場人物は、かつお節工場(ふし工場)の経営を引き継いだ二人姉妹の妹と、離婚して戻ってきた姉、従業員たちという少人数。姉妹の間の「愛」がいびしないかどうかはともかく、この姉妹の間にある微妙な葛藤を追いかけていくことで「いびしない」を感じていけるのだと思う。
今作は、多くの障害がある人たちを登場させている。まず、姉は左手が不自由。一緒に育ってきた妹は姉の障害をカバーするようなところがあるから、いわゆる「障害のきょうだい児」だった。従業員には知的障害と思われる男性がいるし、舞台が始まる前にふし工場の従業員のような出で立ちでお菓子を食べていた男女は手話通訳者だった。これらがごく普通に、自然に描かれているところに好感が持てた。
新人戯曲賞の最終審査を担当したマキノノゾミが自ら演出を切望したという舞台。工場事務所の扉の開け方などの演出が、会話劇にメリハリをつけて一気にラストまで行けるという感じだ。