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20の物語 -週末を、劇場で-

20の物語 -週末を、劇場で-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『チョコレート・アンダーグラウンド』
【原作】アレックス・シアラー
【脚色・演出】鈴木アツト

元は2002年にイギリスBBCの子供向け連続TVドラマ『Bootleg』として全3話で放送。それを原作者アレックス・シアラーが小説化。日本の出版社である求龍堂がタイトルを変え、『チョコレート・アンダーグラウンド』として邦訳。コミック化アニメ化『チョコレート・アンダーグラウンド~ぼくらのチョコレート戦争~』として配信&劇場公開。更にミュージカルにまでなった人気作品。健全健康党が政権を握り、「チョコレート禁止令」が発令されたディストピア社会。チョコを愛する中学3年生二人組が密造&密売で立ち向かう。

6人でこれを演るのか。一体何役を兼ねるのか数えられない程のチームワーク。開演前から客席をチョコレート警察が巡回している。
スマッジャー役國崎史人氏。松村雄基系。
ハントリー役仁木祥太郎氏。表情が時々、片岡愛之助。
バビおばさん役佐乃美千子さん。流石に美人、中学生から老婆までこなす。
チョコレート警察隊長役柳内佑介氏。古坂大魔王や坂本ちゃんっぽい。ボイパのように環境音を音マネ。
フランキー役斉藤悠氏。凄腕。どの役も薬味が効いている。
スマッジャーの母親役篠原初実さん。大忙し。

国でも企業でも知性の欠けた連中に好きにやらせておくとさっさと滅びる。マトモな奴等は相手にせず皆黙って去って行く。それが世の理。
「リンゴしゃきしゃき気分を、同志」
「オレンジじゅくじゅく気分を」
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

バビおばさんの取り調べで爪を剥がす拷問などいきなりハード・モードに。『時計じかけのオレンジ』をイメージしていたので洗脳されたスマッジャーが皆を裏切るのだろうと思っていた。

政治や法律は民衆の為のものでなくてはならないというデモクラシー精神が作品を貫く。政府や独裁者は反逆敵対する者達を刑務所に入れられるが国民全員を収容することなど出来ない。国民全員が間違っている物事に対し否を唱え立ち上がることさえ出来れば国は変えられる。

ラストは歌とダンスが必要じゃないか?
Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」なんて欲しかった。
血の婚礼 【劇団うつり座】

血の婚礼 【劇団うつり座】

劇団うつり座

上野ストアハウス(東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ロルカの原作をよくこんなふうに独創的に脚色できたものだと感嘆させられた。単なる舞台の日本への置き換えというところをはるかに凌駕し、いろんな要素を含んで観る者の感性を刺激する。朗々とした謳い文句や運命を操る魔物が出てくるのはマクベスを思わせるし、破滅と死へ向かっていく官能的で暗い衝動はハムレットやオセロを連想させる。どの俳優も良い演技をしているが、特に花婿の母役と‘レオナルド’役は素晴らしい。

血の婚礼 【劇団うつり座】

血の婚礼 【劇団うつり座】

劇団うつり座

上野ストアハウス(東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

和風にこだわった完成度の高い演出、濃密な劇時間でした。

ワールド イズ スターマイン

ワールド イズ スターマイン

One Bill Bandit

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2026/07/25 (土) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

地方都市の地元企業、閑職である庶務課三人組が駅前商店街のキャンペーンの企画を任されたことから始まる騒動。毎度のことながら、このチケ代でこれだけ楽しませてもらえるのだからありがたい。会場のエアコンが最大でもあまり涼しくならないので、観に行かれる方は水分補給の準備を忘れずに。

魔法老女ポストキュア

魔法老女ポストキュア

東京演劇アンサンブル

吉祥寺シアター(東京都)

2026/07/24 (金) ~ 2026/07/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2026/07/25 (土) 14:00

座席1階

娘、母、祖母。3世代の女性が時空を超えてその時代に味わっている悩みや将来への思いを交錯し合う。魔法使いという設定で時空の行き来を舞台で展開するが、やや分かりにくい感じもあった。

東京演劇アンサンブルと言えばブレヒトの芝居小屋というイメージなのだが、今作は女性劇作家のオリジナルの劇作を採用。主演者は全員女性という舞台だった。パンフレットのビジュアルも少女漫画ふう。劇団の歴史を考えると異色と言ってもいいかもしれない。

演出はテンポがよくて好感が持てる。バックスクリーンを使った流れるような文字列は効果的だったし、美少女戦士セーラームーンを思わせる魔法のシーンやダンスには客席からの反応もよかった。

パンフレットには今なぜこの舞台なのかという説明はなかったけれど、そんなことはどうでもいいかも。ブレヒトのイメージを拭って楽しめればそれでいいのかな。

20の物語 -週末を、劇場で-

20の物語 -週末を、劇場で-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『軽塵』
【作】秋元松代
【演出】須貝英

かなり味わい深い戯曲。戦後、三好十郎の弟子となり1947年に発表した秋元松代の処女作。その後、三好十郎とは訣別する。秋元松代は横浜生まれ、父親が早世し母親が必死に家計を支えた。口先だけの社会主義にかぶれた兄達を憎悪し二十歳で家を出る。今作は三好十郎に促されて記した、「書いて置かなければ一生後悔する自分自身の核」。

昭和20年夏、空襲が毎夜繰り返される横浜。家長である猪野学氏、妹の堺小春さん、妻の横山友香さん、妻の妹である小口ふみかさん、叔父(亡父の弟)のまいど豊氏が暮らす。隣に独りで住む女学生、きし朱紗(あかしゃ)さん。小口ふみかさんは嫁いだ先で旦那と揉め、帰って来ている。堺小春さんは東京で夜学校の教師をしていたが空襲で焼け出された。

父親を14で失い、その日から家長となった猪野学氏。根津甚八っぽい風貌で表情は國村隼。
モデルとなったのは秋元松代の兄、俳人・秋元不死男。

きし朱紗さんの側転。凄く当時っぽい喋り方。『青い山脈』みたい。

秋元松代の自己を投影したであろう堺小春さん。

MVPは小口ふみかさん。オーバーアクト気味だがここまでしないと作品が盛り上がらない気もする。

空から爆弾が降り注ぐ日常。“死”がすぐ傍にある毎日。そんな状況だからこそ、人は自分の“生”と真剣に向かい合う。今、自分自身にならないと自分の人生は一生送れない。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

8世紀の唐の詩人、王維の有名な漢詩である「送元二使安西(元二〈げんじ〉の安西〈あんせい〉に使いするを送る)」。朝降った雨が細かな土埃を潤し、宿の前の柳は青々と鮮やかだ。さあもう一杯飲ってくれ。君が旅立つとここに親しい友はいなくなる。
これは現在も中国で送別の際の定番となっている詩だそうだ。これが今作のタイトルの由来。

堺小春さんと小口ふみかさんの対峙がドラマを生み、猪野学氏との互いの存在を賭けた対話がクライマックス。犠牲にした物の数を競うような生き方ではなく、誰も犠牲にさせない生き方を。

※FUCK OFF!
血の婚礼 【劇団うつり座】

血の婚礼 【劇団うつり座】

劇団うつり座

上野ストアハウス(東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

 流石、篠本賢一氏による上演台本、演出、美術である。華5つ☆。必見。

ネタバレBOX


 板上は壁三方を黒布で覆いその内側に白布を重ねる。凡そ各コーナーに当たる辺りに灰白色の箱馬が1つずつ置かれ、演技空間手前に緋色の台、下手は尺八、横笛などの楽器と演奏者、設楽瞬山さん。上手に太鼓、鐘などと演奏者、藤田 佐知子さんが座す。板中ほどには墓石のように見える灰白色の箱馬がやや奥と手前に置かれ巨大な葉巻のような茶色っぽいものがその足下から伸びている。いつもながら舞台美術は篠本 賢一氏、流石にセンスの良さを感じさせる。尺は125分、休憩はないが緊張感の途切れぬ舞台をラテン系らしい情熱の為には命を賭けるのが当たり前という固定観念の支配するロルカの原作から日本の因習的な農村の、目にはさやかならぬ因襲性や相互監視の窮屈な社会へ見事に転移させ、衣装も駆け落ちする者ら若干の例外を除いてくすんだ色合いに統一し、悲劇を齎す刃物の光る衝撃を通してクライマックスを当に頂点化、こういった場面で横笛の時空を切り裂くような鋭い演奏、各場面に応じた尺八の音や打楽器の演奏が場の雰囲気更に盛り上げる。回を追う毎に質が向上しているうつり座の面々の演技もグー。逃亡する新婦と恋人の描かれ方は~尽くしという手法は取らないものの、当に人形浄瑠璃や歌舞伎などの道行そのもの、観客の練度によっていくらでも深読みのできる作品である。
血の婚礼 【劇団うつり座】

血の婚礼 【劇団うつり座】

劇団うつり座

上野ストアハウス(東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

スペインの伝説的戯曲と日本的音響表現の交錯が素晴らしかったです。
出演者一人ひとりの存在感も素晴らしく、愛、嫉妬、運命という普遍的なテーマを力強く表現していました。終演後も余韻が残り、人間は運命から逃れられないのか、、、心に深く刻まれる作品でした。

フランケンシュタイン対地底童子(クラボッコ)

フランケンシュタイン対地底童子(クラボッコ)

劇団 枕返し

小劇場 楽園(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/07/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

​怒涛のドタバタコメディとテンポの良さ
次々と個性的な妖怪や人間が登場してカオスな状況が巻き起こる展開に、息つく暇もないほど笑いました。疾走感のあるコメディで勢いがすごかったです。

だから言ったんだよ。

だから言ったんだよ。

皇帝ロックホッパー

サンモールスタジオ(東京都)

2026/07/15 (水) ~ 2026/07/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「すき焼きの具材」という他愛もない雑談から始まり、徐々に登場人物たちの関係性や過去が解き明かされていく会話劇のテンポ感が心地よく、引き込まれました。
笑える会話のコメディ要素と、ふとした瞬間に漂う哀愁やリアルな葛藤のグラデーションを演者陣が生き生きと表現していました。面白かったです!

黄昏の街を行け

黄昏の街を行け

1ZA

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2026/07/08 (水) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

昭和ならではの人の温もりや夕暮れ時の雰囲気に胸が熱くなったし、どこか懐かしい。
​夢と現実に葛藤しながらも必死に生きる登場人物の姿が深く心に響きました。

ディアマイドクター

ディアマイドクター

演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」

萬劇場(東京都)

2026/07/01 (水) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

大変、遅くなりましたが、当時の厳しい医療事情や女性が置かれていた環境が過不足なく丁寧に描かれており、物語としての見応えが抜群だったです。理不尽な壁にぶつかりながらも諦めない姿に胸を打たれました。

新撰組 IN 1944

新撰組 IN 1944

PSYCHOSIS

ザムザ阿佐谷(東京都)

2026/07/24 (金) ~ 2026/07/29 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2026/07/24 (金) 19:00

スタイリッシュなアングラ。凄~く面白い。(客入れと前説で3分押し)109分。
 月蝕歌劇団・高取英の作品を、現代的にアレンジして上演する劇団の最新作だが、月蝕での上演は観てない。冒頭、新撰組の池田屋襲撃を現代的にアレンジして展開するが、暗転して1930年代のドイツに移り、少年合唱団の会話に・・・。その後は、2つの時代と1944年を飛び回り、歴史を変えようとする人々のあれこれ。いつも以上に分かりやすく、途中で「演劇界一のめちゃくちゃな作家の作品」みたいなセリフもあって、奇想天外な展開だが、とてもとても楽しめた。たまたまなんだろうが、「玉を取る」というセリフがあって皇室典範改訂のタイミングにピッタリな物語だとも思った。押しの大島朋恵は一人だけ「笑い」担当だったけど、大事な場面で大事な役をやるのも彼女ならではだな…、と満足。

逃げない

逃げない

かるがも団地

新宿バティオス(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/24 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/06/24 (水) 17:00

日常にありそうな状況からブッ跳んだ展開になるものを皮切りに内容・長さとも「各種取り揃えた」コント7編。
前説での宮野さんの「私たちは劇団ですが今日は笑いをとりにきました」という言葉通り「演劇人が演るコント」ではなく「演技派コント集団」なオモムキで、クスクス・ニヤニヤな60分を堪能。

塔の上の

塔の上の

くによし組

高槻城公園芸術文化劇場 南館・大スタジオ(大阪府)

2026/07/11 (土) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

感想大変遅れました。冒頭いろんな方が自分が主役との、自己紹介。意外にあってて、誰のお話なんだろうと感じながら拝見していました。少し切ないお話に感じましたが、演じられてる皆さんはキラキラしていましたね。また、違う雰囲気のお話も見てみたいです。あと、会場は2回目でしたが、綺麗でいい会場だと思います❗

血の婚礼 【劇団うつり座】

血の婚礼 【劇団うつり座】

劇団うつり座

上野ストアハウス(東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

空間演出、和楽器の生演奏と見事な演出、演者皆さんも素晴らしかったと思います。恥ずかしながら原作は知らず、あらすじだけは頭に入れていましたが、途中シェイクスピアを感じたのは私だけでしょうか?次回の篠本氏による演出作品も要チェックです。

大礼服・壜の中の鳥

大礼服・壜の中の鳥

巴プロデュース

南青山MANDALA (東京都)

2026/07/22 (水) ~ 2026/07/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「寺山修司ラジオドラマ選集」それを南青山MANDALA という優雅な雰囲気の中で聴く、いや~贅沢な一夜を堪能した。聞かせるだけではなく、観(魅)せるも意識しており、ラジオドラマだが、動き回り 衣裳替えも頻繁に行う。

寺山修司の20代に書かれた作品。後々のアングラ--カウンターカルチャーの片鱗が見えるようで、興味深かった。「大礼服」は1965年(昭和39年)作で 寺山29歳。冒頭 出演者全員でその時代の出来事を紹介していく。それによって作品が創られた世相なりの背景が分かる演出が妙。
(上演時間1時間30分 途中(作品間)休憩10分)

ネタバレBOX

南青山MANDALA のほぼ中央空間が舞台。朗読とピアノの生演奏という雰囲気にのまれながら、いやビール等を飲みながら楽しんだ。以下、上演順の感想。

●「壜の中の鳥」(1979年)
幻想的な話…人々が次々と鳥になって消えていく奇妙な世界。孤独は人を変身させ逃避、または己を縛っている柵(シガラミ)から飛び立つのか、そんな人間の内面を巡る寓話のよう。例えば 窓から迷い込んで寝室に住みつく鳥、3人で乗り込んだタクシーから降りるときは2人になるなど、次々に人が鳥へ変身して人口減になっていく。作中で「トリは鳥はでも飛ばない鳥はなぁんだ」というなぞなぞが出され、その答えは「ひ-とり」だと。何となく危うい幻想世界が抒情的に語られていく。この危うさは この時代だけではなく、コロナ禍以降 不寛容・無関心が言われ始めた現代にも通じるような気がする。

●「大礼服」(1965年) 
この年は、前年の東京オリンピック特需の反動で景気が冷え込み、倒産が相次いだ。公共料金や生活必需品の価格が上がり、庶民の暮らしを圧迫。また戦後初の赤字国債の発行を決め、財政悪化への懸念が広がった。そんな年に発表された作品。
「大礼服(たいれいふく)」を着た正体のわからない男が突如として現れると、人々は非日常的な世界へ逃げ込む。人々の心が現実離れすることで、社会秩序が混乱する。部長刑事は、その男の素性を探るため探偵に調査を命じる。浮かれた心や体=オリンピック後の不安経済や社会制度を引き締めたい「権力」は、現実世界を取り戻したい といった風刺のよう。

一人何役も担い、声色/声質も子供から大人・年配者まで演じ分け そして歌う。また舞台上を動き回り、「壜の中の鳥」では頻繁に衣裳替えを行う。一方 「大礼服」は、基本 白ブラウスと黒ズボンというシンプル色。そこには個性はなく統一または規制された世の中といった印象を持つ。また大礼服に対しての敬意かも。
次回公演も楽しみにしております。
「水平線の歩き方」【Mura.画】

「水平線の歩き方」【Mura.画】

Mura.画

北池袋 新生館シアター(東京都)

2026/07/24 (金) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
公演は 「Mura.画」の演劇研究会として2回目の上演。前回の研究会も成井 豊の作品で、丁寧な演出が印象的だった。本作の演出は 爽口穂夏さんで やはり素晴らしい。成井作品の面白さ--滋味溢れる内容、それを見事に描き出していた。

作品の肝は 世界観にある。どうしてという不思議さ、何故という謎をどう演出するか。物語に明確な前半・後半があるわけではないが、或るシーンを境に雰囲気がガラリと変わる。それまでのユーモアを交えた明るい話が、悲嘆にくれた落涙へ。研究会公演ということもあろうが、成井ワールド( 演劇集団キャラメルボックス)を忠実に表現した手堅さが観てとれる。
(上演時間1時間10分)【A】㊟ネタバレ

ネタバレBOX

舞台美術は、上手にソファーと変形楕円のテーブル、下手に飾り棚で中段にラグビーボールが置かれている。中央に玄関に通じる出ハケ口、下手にダイニングに通じる通路。最後に分かるが、このシンプルな造作に意味がある。

物語は説明にある通り、 或る夜、自分のアパートに帰ると、部屋に女がいた。 どこかで見た顔でアサミと名乗った。 それは、幸一が小学6年の時に病気で亡くなった母。 親子二人で暮らした日々が、幸一の脳裏に鮮やかに蘇る。 あの時 母は大人に見えた。 が、今 目の前にいる母は、明らかに自分より歳下だった……。 母が死んでからの自分の人生を語ってきかせる幸一。 アサミの弟夫婦に引き取られ、有名企業にラグビー選手として就職、怪我を乗り越えて現役選手(35歳)として活躍中、医者の恋人までいる。

後半、話に綻びが見え始める。 止めたはずの酒の瓶が並び、恋人からの変な電話。 実は、半年前に試合で無茶をしたため、ステッキ無しでは歩けない大ケガを負い 自暴自棄になっていた。 飲酒運転の末に事故を起こし、昏睡状態になったまま魂だけが自宅に帰って、そこで死んだ母と再会した という話。 タイトルの「水平線」とは、死後の世界との境界のことで、その向こうはアサミのいる世界。 幸一が読んだ本の中に出てきた、ケルト 神話にある死者の島の話。理科教師の叔父は、幸一に あると思うか と聞かれ「分からない」 と。逆に自分の得意とする科学から「水平線までの距離を知ってるか」 と聞き返す。 「死者の島」までの距離…幸一の母までの距離は約4㌔、歩いてだって行ける距離に死者の国はあって、そこに母もいるんだ と。

一変、事実が明かされて緊迫した雰囲気へ。 自分1人で生きていくんだ、誰かに迷惑をかけて生きていくなら死んだほうがマシ。 その幸一の耳に 家族・恋人・友人からの、「帰って来い」という言葉。彼岸と此岸の狭間、だからこそ幽霊の母と会い話をしている。 料理があまり上手でなかった母、しかし おじやだけは美味かった。最後に作ってあげたおじや、食べ終わったら皆のところへ帰る息子に、母が一言。 「本当は時々見ていた」 「声も掛けてた」 「聞こえなかったのなら、もっと大きな声で言うね」 これからも「頑張れ」って、そして生きろって言い続けると。自分1人で生きてきたつもりになっていたが、実は周りの人々に助けられていた。それがオープニングの全員でのダンスにも表れているよう。
次回公演も楽しみにしております。
歌姫

歌姫

劇団ブルア

新開地アートひろば(兵庫県)

2026/07/24 (金) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何度か観ている題目
演じる劇団によって色は変わるものの、根本は変わらないので…
2時間半超えだが、とても良かった
悲しい恋物語
後ろのおばちゃんが携帯鳴らす意外は

「水平線の歩き方」【Mura.画】

「水平線の歩き方」【Mura.画】

Mura.画

北池袋 新生館シアター(東京都)

2026/07/24 (金) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 尺は70分、実力集団。ベシミル、華5つ☆

ネタバレBOX

 AB2つのチームがあるが、Aチームを拝見。脚本は成井 豊氏、演出は爽口 穂夏さん。
 Mura.画(ムラエ)演劇研究会は2024年にスタートしたグループで今回が2回目の公演という。今作は観客の想像力を験すかのような公演であると感じた。登場人物たちも様々な経歴を持ち役者だけではないが、各々の経歴が生きて在ることの様々な表情と微妙な表現に深みと味をつけ極めて質の高い舞台に仕上げている。舞台美術も象徴的に創られ、余計な寄り道をせずに内容の豊かさを紡ぎ出すので尺は70分だが内容的には2時間以上掛かってもおかしくないだけの内実を持つ。
 更にオープニング直後にダンスシーンがあるが、良くある単なるパフォーマンスに終わらずキチンと脚本の内実に溶け込むようなダンスシーンであることに驚かされた。
 観劇の際気付いておくべきは主人公、幸一の感受性の鋭さとラグビー選手としては小柄だが名選手として活躍してきたこと、だがさしもの名選手もハードなスポーツであるラグビーを35歳迄やっていると故障が多いのは必然である。だがラグビーだけが母と自分を捨て出帆してしまった父、幸一を育てる為に無理を重ねて死に、その後叔父一家の養子として育った彼の鋭い感受性が実子と分け隔てなく育ててくれた叔父夫婦の優しさ故に彼のトラウマをより複雑なものにしていたことまで表現されていることに気付く。
 ラグビー時代からの友が何くれとなく幸一をサポートする情、幸一の膝の胡椒に真摯に向き合う優秀な女医、亡くなった母が何故突然彼の部屋に現れたのか? の解に関しても終盤で明らかになる。多くの観客が涙していた作品。

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