穴熊の戯言は金色の鉄錆 公演情報 MCR「穴熊の戯言は金色の鉄錆」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/25 (日) 14:00

    何というピュアなラブストーリーだろう。
    登場人物の唯一無二のキャラと怒涛の叫び、そして不意打ちの切なさ。
    MCRを頭から浴びた満足感。

    ネタバレBOX

    舞台は奥に向かって3段階に上がっていく。
    モノクロの背景に長方形の箱のみ。

    手術のできない脳腫瘍で入院中の男、小野君。
    病気のせいで妄想と現実の区別がつかず、ちょっと困った患者のようだが
    優しい看護師の女性が傍についてくれている。

    もはや回復は見込めず、ぼんやりすることが多くなった小野君。
    「立っていられないほど泣いちゃうからお見舞いに行けない」という同級生。
    「私のことを看護師さんだと思っているんです」と見舞客に説明するゆかりちゃん。
    そうか、あの看護師さんはゆかりちゃんだったのか、と判った瞬間の切なさ・・・。

    高校時代のエピソード、ゆかりちゃんとの結婚、コンビニのバイト、そして脳腫瘍。
    これ以外は小野君の妄想の世界かもしれない。
    ラストで私たち観客は、ここまで小野君の妄想を一緒に見ていたのだと気づく。
    そしてどの妄想も、小野くんとゆかりちゃんが幸せになるために描いた夢だった。

    「手を握る」という行為がひとつのキーワードになっている。
    現実と妄想の区別をするために、本当の自分の気持ちを確かめるために、
    小野君にとって大事な必須の行為だ。
    高校の授業中に告白された時と、今 死が近づいている時。
    大事な時はいつもゆかりちゃんの手を握って確かめる。
    大丈夫、これは現実だ、これが幸せだ・・・、その行為が彼に心の安定をもたらす。

    高校の授業中の怒涛の告白と堀先生のやり取りが秀逸。
    あの台詞の聴きとりやすさと絶妙なタイミングはMCRの真骨頂だ
    帯金ゆかりさんの周囲を見ない一途さと、堀先生の必死さが素晴らしい。
    堀先生は見る度に成長して(体格が)ほっぺぷるぷるに磨きがかかっている。

    あり得ない設定と展開にケラケラ笑っていると
    最後の方「ゆかりちゃんの漫画」のくだりで、夫婦の互いの思いに泣かされてしまう。
    何だよ、櫻井さんってこういうの書くんだっけ?
    と思いながら泣いたのだった。

    殺し屋の男が社会的にもきちんとしていて、とても素敵なのが面白かった。
    高低差のあるセットで、時空を飛び越え場面を切り替えるイメージが
    とても解りやすい。
    胡散臭い宗教だか自己啓発だかの勧誘が出て来るところと、
    日常の中にすうっと「殺し屋」が出て来るところが、MCRっぽくて好き。
    そしてやっぱり、あの「手」のシーンが忘れられない。



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    2025/05/26 21:12

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