最新の観てきた!クチコミ一覧

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「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

MICHInoX(旧・劇団 短距離男道ミサイル)

Studio+1(宮城県)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★

太宰治の原作と役者たち自身の“人間失格”を重ね、しかもそれが「そんなダメな、俺」みたいな鼻白む自己肯定にならず、客観性を持ちつつ身を舞台に放り出している俳優たちの様が見事でした。

ネタバレBOX

普段は、客いじりがあったり、脱いだりする舞台は苦手ですし、技術の未熟さも感じましたが、あれだけ自分をさらけ出すなら脱帽です。コントのようだったり、ドキュメンタリーのようだったり、浄瑠璃(さすが奥浄瑠璃を生み出した東北!面白かった!)のようだったり。さまざまな手法をぶちこんでいますが、それを一つにまとめる力も感じました。
ダニーと紺碧の海

ダニーと紺碧の海

アイレオヴィス

ラ・グロット(東京都)

2017/06/16 (金) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/06/18 (日) 16:00

価格2,700円

無題2079(17-082)

千秋楽、16:00の回(小雨)。

15:15会場に向かって歩きつつ、周りの風景を眺めていると後ろから声をかけられる。演出の神山さん。初めて観たのは三木美毅さんと今駒ちひろさんとの二人芝居「オレアナ(2016/8@キッド)」。
この作品が始まりで4作品目となりました。

ここラ・グロットには夜の公演でしか来たことがなく、周辺にこんな色の建物があったのかと見入っていました。

Reciters朗読会「Spring(2014/3)」、R-piece.「女中のクリスマス(2013/12)」、箱庭コラァル「箱祭(2011/11)」。

岸本敏伸さんは「LOVE LETTERS ラブ・レターズ(2016/10@GRAPES KITASANDOU)」で。菊地祥子さんは初めてでしたが、当パンをみると桜美林卒、山の手事情社研修生とあり、ならば菅原有紗さんと同じですね。

開演前にかかっている曲...80年代っぽいHeavy Metal、間にThe PoliceやB.Springsteenのヒット曲。
The Policeは2008/2@東京ドーム、ずっと遡ってB.Springsteenは1985/4/22&23@大阪城ホールでLiveを観ました。

16:00開演~17:14終演。とても狭い会場なのにそんなことは気にならず、ずっと続く緊張感。場転も物語の流れに沿ったもので高低を巧く使ったものでした。

堅牢なコンクリートの壁に囲まれた中での物語、出口なしのふたり。

ラストの「The Boxer」が実によく似合う...lie la lie。

ミズウミ

ミズウミ

日本のラジオ

ギャラリーしあん(東京都)

2017/06/14 (水) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★

助教授のようなキャラは日本のラジオで私が観た中ではなかったような、なのでよかったです。

ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

OIL AGE OSAKA

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/06/14 (水) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★

出演陣の力量に疑いはなく、全員が良い仕事をしている作品なのは間違い無い。
のだが…
わたしには脚本が合わなかった。
客席が笑いに沸く中、わたしはイライラ、ドン引きの連続。
ただし。
それは受け手であるわたしの問題であって、今この「観てきた」を読んでいるあなたに当てはまるかどうかはあなたが観てみないとわかりません。
そしてわたしには脚本が合わないだけで、演出も演技も素晴らしいと思うのだ。心から。変な音楽も無く、ダンスも無い。ただただ純粋に、出演者の力量に魅了される2時間15分である。

観劇の初心者はこれを観てしまうとこれを超える作品にはなかなか出会えないかもしれない。

以下、イライラとドン引きについてネタバレboxに。

ネタバレBOX

幽霊として現れた春子と、たまたま幽霊が見えてしまう1000人に1人の霊感の持ち主だった楓。
この2人のコミュニケーションにおけるズレが笑いを生んでいるはずなのだが。
わたしにはとても笑えなかった。
楓と春子の会話は、会話になっていない。お互いへの思いやりが無い、お互いの意思をくみとろうというニュアンスの無いやりとりなのだ。
楓が必死になればなるほど客席は笑うが、わたしは自分が同じ目に遭遇したらと思いまったく笑えなかったのである。そもそも楓はもっと早く新聞社の面々に春子の幽霊がいると言いなさいよ。苦笑(そしてそれをしない理由は劇中で明示されない。むろん周囲はすぐには信じないだろうが、一定の理解を示そうとはしてくれるはずなのである、あの面々なら。)
そして、楓の陵への説明も全くもって的外れ。
その伝達能力の低さにいらいらしてしまった。
新聞記者なんでしょう、文章力があり、もっと伝えるということを熟知しているえがきかたができるはずなのにそうしていない、それは作劇の都合をぷんぷん匂わされてしまう点なのではなかろうか。
春子が生身の人間に憑依できると気付いてからの行動も不愉快。それをした相手が失神するとわかってからも「黙らせるため」にやってしまう。楓相手であれば失神しないと分かれば車谷次郎が「木こり」を歌う…この車谷次郎の行動がわたしがドン引きしたもの。ひとをおもちゃにしている…。えええ……。春子は楓に「(この現象は)わたしのせいです」と発言させている。本人はすぐに「もうやらない」と楓に謝罪したが、その軽さ。好きでは無い。

とにかく客席で「伝わらないこと」の不満が募る。ただし後半ではそれを全て回収していくので、多くの場合この作品は良い作品だと見なされるのであろう。そしてわたしもこの作品について演劇の技術としては最高峰のものだと認める。だが、脚本に関して、この登場人物たちに対して、好きではなかったとは言いたい。
所詮好き嫌い、合う合わないの話であるが、あとからこの絶賛に承服しかねる、疑問に思うような人がこれを読んですこしでも「こういう人もいたんだ」となればと思い記録しておく。

なお2時間15分の今作、実にいろいろな要素が詰め込まれた脚本である。
仕事への向き合い方、現実を受け入れるということ、後悔、愛情、そして上記したように「伝えるということ」。
観た者は何がしかの気付きを得るであろう。
そう言う観点では間違い無く良作であり、良い演劇作品である。
これだけ不満があっても満足度は5に近い4とさせていただく。
狼狽(ロウバイ)~不透明な群像劇~

狼狽(ロウバイ)~不透明な群像劇~

カムカムミニキーナ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/06/17 (土) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/06/18 (日) 12:30

舞台の大きさに圧倒された。
抽象的なストーリーテーマながら、ところどころアドリブを挟みながら楽しく観劇した。
パンフレットにDVDのおまけ付きでお得感があった。

時来組何回目かのアトリエ公演 多分9回目・・・。(仮題)

時来組何回目かのアトリエ公演 多分9回目・・・。(仮題)

神田時来組

ART SPOT LADO(東京都)

2017/06/10 (土) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★

三作品ともそれぞれの良さがあって面白かった。
一話目はバタバタな感じもありつつもそうなるかというラスト。
二話目は賛否両論あるとは思うが即興は面白かった。日によって当たり外れはあるのかなぁ。

三話目は打って変わって切ない感じの内容でとても良かった!
アトリエ公演なのでいろんなパターンがあって良いと思う。

チェーホフ『かもめ』

チェーホフ『かもめ』

演劇集団アクト青山

調布市せんがわ劇場(東京都)

2017/06/13 (火) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

前半はなんか堅い。もともと、そうゆう演劇だったせいかと思った。なんかわかってる話が、ごちゃごちゃしてきた。

という印象のもと、後半に突入。やはり、一度休憩をいれた方が良かった!

後半は、素晴らしい!まず、絵がきれいに決まっている。トリゴーリンが、ひとり舞台で楽しめた。

ネタバレBOX

『フェードル』を観たら,やっぱギリシア悲劇に,演劇は戻っていくのかと思います。『トロイアの女たち』では,ギリシアの神々など複雑だったけど。

演劇にはこれ以上深入りしません。シェークスピア演劇は,あきました。

小説はある結論に至ることを,作者が意図します。ところが,チェーホフ演劇が典型的なのですが,観劇側にさまざまな解釈を許すようなメリットがある。

たとえば,ニーナが,ソーリンが,まったく幸せな人生ではない。そのような道に自分で踏み込み,それが,まったくのところ自分の軌跡なのだから,諦観はあって良い。トリゴーリンにも一度は,接近できたし,マザコンのぼくは,なんかあってなかったかも。ソーリンも,結婚したかったとか言いながら,幻滅とかマイナスのイメージもあったかと。

イプセン作品は,もう少し追ってみたい!

人民の敵やら,棟梁やら,ゆうれい,野鴨,ヘッダー,人形,ペール,海夫人,なんでも,わかり易いから好き。確かに,生活の小さな世界に,演劇の持つ偉大さを押し込めたかもしれないけど,でもいいと思います。

では,また,いずれかの劇場で!
ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

OIL AGE OSAKA

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2017/06/21 (水) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

池袋のシアターKASSAIで東京公演を見ました。
物凄い芝居です。僕が座っていた周辺はボロ泣きで大変でした。役者のレベルが高いと、引き起こされる感動も段違いだということを思い知りました。
大阪公演の顔ぶれが楽しみ。上杉さんが一体どの役をされるのか、本当にワクワクします。

ネタバレBOX

台本も演出も、舞台を知悉していなければ出来ない好作品です。自分が報道人だったので、新聞社の締め切り直前がどんなものかは良く知っていますが、現実とどこがどう違うか、指摘する気持ちにもなりませんでした。感動は事実関係や状況などとは無関係なものだ、と良く分かりました。
ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

OIL AGE OSAKA

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/06/14 (水) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

ちょっとベタな感じはしたけど面白かったし、後半泣きました。

ネタバレBOX

演劇には、あり得ない設定、ベタなやり取り、強引な展開はありだと思いますが、それが気になってしまう作品とそうでない作品はどこに違いがあるのだろうと、松本さん作品を観るとき、よく思います。
ホールドミーおよしお

ホールドミーおよしお

オフィスマウンテン

STスポット(神奈川県)

2017/05/24 (水) ~ 2017/06/10 (土)公演終了

満足度★★★★

なんだかわからないが凄まじいものと対峙させられる稀有な時間だった。眼前で蠢く俳優や音、光は私の中に蠢く異物をも感じさせ、このような時間は他でなかなか体験したことがない。俳優の身体の一部が独立した生き物のように見える場面もあれば俳優を含めた空間全体が一つの生き物のように見える場面もあり、俳優の身体と周囲の空間との関わりの可能性の底知れなさを感じた。
昨年の『ドッグマンノーライフ』は観ていないのだが、一作目『海底で履く靴には紐がない』と比べると出演俳優の多くが「山縣メソッド」を我がものとしているように見え、長い稽古期間と継続した活動の成果が十分に見える作品だった。

レモンキャンディ

レモンキャンディ

匿名劇壇

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

満足度★★★

劇団としての力を感じられるよい上演だった。首の動きが揃っているなど、細かい点に演出が行き届き統一されていた点に好感。はじまる前からワクワクさせられる舞台美術もいい。
台本はやや穴が多いものの、見ている最中はさほど気にならず楽しく見られたのも手腕のうちだろう。ただ、オチない話とはいえエンタメとしてはきちんと落としてほしかった。SF的には重要な設定を導入するレモンキャンディが登場してすぐ終幕となる点も物足りない。
もう一点、単に話を展開させるためにレイプ場面があるのは大きなマイナス。人間の欲を描きたいのはわかるが扱いが雑過ぎる。

『あゆみ』『TATAMI』

『あゆみ』『TATAMI』

劇団しようよ

アトリエ劇研(京都府)

2017/05/10 (水) ~ 2017/05/15 (月)公演終了

満足度★★

『あゆみ』や『わが星』といった柴幸男作品の一部は、大きな普遍性を持つ一方、あまりにヘテロノーマティブであり過ぎるという危うさをはらんでいるが、今回の上演ではそのバランスが崩れ、悪い方向に転がってしまっていたように感じた。つまり、オール男性キャスト、父視点の導入などの演出が、作品の全体を男性目線から見た女性像に押し込めてしまっていたのではないか。
特に、作中で唐突に「覚えていますか」「想像してください」とルーマニア日本人女子大生殺害事件の話が挿入される場面は観客の想像を広げるどころか狭めるものであり、かつ、自分たちが加害者である男の側にいることを忘却した押し付けである。
私の記憶によれば全く同じ演出が劇団しようよの別の短編でも採用されており、そうであるならば、それは演出の大原渉平の個人的なこだわりに過ぎないのではないか。

ALL RIGHT!

ALL RIGHT!

劇団TOP

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2017/06/17 (土) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/06/18 (日) 13:00

座席1階1列3番

全体的には、良かったと思います。ただ、本気でケンカしてしまうと、取り返しがつかない事もあるので、疑問点もありました!!

罠々

罠々

悪い芝居

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/04/18 (火) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★

演劇でエンタメをするという点ではそれなりに健闘しているが、それ以上の魅力は感じられなかった。
公式サイトにあるように「被害妄想はファンタジーなんだ」というテーマのもと、「罠にハメられたと思い込む人間たちによる、愛しい復讐劇」が演じられる。複数の筋が絡む物語はやや複雑な構成をとってはいるものの、宣言した通りの物語が展開され、意外性には欠ける。むしろもっと単純に物語を見せてもいいのではないかと感じた。
ビデオカメラによる中継映像が舞台上に映し出される仕掛けは、メタ視点を導入するという意図は見えるものの、効果的とは思えなかった。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度

残念ながら、俳優二人の安定感以外は全くいいと思えなかった。
暗闇の中で「シュッ」「ピシッ」「ハアハア」と音が聞こえてきて、競馬の場面がはじまるのかと思いきや中年男性二人が縄跳びをしている、という冒頭は意外性があったが、そこから「どうしてこうなったんだっけ」と回想がはじまるにも関わらず、結局のところ縄跳びにも回想構造にもほとんど意味がないという構成は大きなマイナス。
最終的に男二人がなぜ前向きになったのかもよくわからない。具体的な肉付けのない「ダメな男」は記号的で奥行きを欠く。
タイトルの「輓曳競馬」がテーマを説明するための言葉に過ぎず、しかもそれを作中で自ら説明してしまうのも巧くない。
制作面では、私の席からは(というか角度的にかなりの数の席でそうだったのではないかと思うのだが)位置の低い芝居がほとんど見切れていた点が残念。

ハムレット

ハムレット

ゲッコーパレード

旧加藤家住宅(埼玉県)

2017/03/31 (金) ~ 2017/04/10 (月)公演終了

満足度★★★★

作品の詳細については初演時に批評誌『クライテリアvol.1』に書いた。
http://criteria.hatenablog.com/entry/criteria_vol1
初演と比べると「劇的」な要素が強調されているように感じたのだが、私はこの作品の魅力はリアルとフィクションを軽やかに行き来するところにあると思っているので、「演劇であること」の強調は作品の魅力を増すことにはつながらなかった。
もちろん、観るのが二度目である以上、初演時ほどには魔法が効かなかったということもあるだろうが、いずれにせよ初演のハードルは越えられず。
と、厳しいことを書いたが、もちろんこれは初演と比較するならばという話で、基本的には『ハムレット』の上演としても、民家での上演としてもよく考えられたよい作品。

時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

アガリスクエンターテイメント

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★

果敢にエンタメに挑戦する姿勢は評価したいが、残念ながら映画や小説、漫画やアニメなど他のメディアのSFエンタメ作品と勝負できるほどのクオリティには達していない。エンタメで勝負するのであれば他のメディアとタメを張るくらいの矜持とクオリティがなければ、(小劇場)演劇全体の価値を下げることにもつながりかねないと私は考えるので、残念ながらこの作品を評価することはできない。

ネタバレBOX

タイムマシンだと思っていたらもしもボックスだったという設定は(さほど珍しくはないものの)よかった。
遠くから見ていたのに見えない。

遠くから見ていたのに見えない。

モモンガ・コンプレックス

BankART studio NYK 3C gallery(神奈川県)

2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★★

とにかく楽しい。ダンスに愛嬌があるのはもちろん、観客と「現在」を共有する上演に好感を持った。
作品のモチーフである「現在」を様々な手法で見せて飽きさせない一方、「現在」を示す手法はどれも予想の範囲内でもあり、モチーフの掘り下げという点では物足りなかった。
もっとも感心したのは「子供席」の設置で、出入り口の近くに十分なスペースを確保する制作的配慮も去ることながら、子供の「参加」を柔軟に受け入れる姿勢が素晴らしく、その姿勢が観客にも共有される幸福な空間が出現していたように思う。

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

「ここにはいない人」「ここではない場所」を描いてきた「いつ高」シリーズの最新作。中庭、噂話、短歌などのガジェットを利用したあの手この手で観客の想像力を刺激する。
無言の場面、無人の場面を大胆に使った手法に攻めの姿勢が見えて頼もしい。森本華の演技に「人が恋におちる瞬間をはじめてみてしまった」という羽海野チカ『ハチミツとクローバー』の名場面を思い出す。
連作を追ってきた身としてはこれまでの想像を見事に裏切るキャスティングもよかった。
別演目での1日4公演を見事に回した制作手腕にも拍手。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

 北海道出身者で結成された道産子男闘呼倶楽部の今公演は、作・演出のニシオカ・ト・ニールさんも、会場であるSPACE雑遊のオーナーも北海道出身というこだわりぶりです。開場中の客入れ時間が心なしかアットホームで、好感をもって幕開きを迎えることが出来ました。舞台との心の距離が近くなったせいか、中年独身男性2人のダメっぷりが早い段階から可愛らしく見えて、進んで声を出して笑えることもありました。

 出演者の犬飼淳治さんも津村知与支さんも舞台でよく拝見する俳優で、演技が達者であることは織り込み済みでした。お二人がいつもより魅力的に見えたのは、女性であるニシオカ・ト・ニールさんが男性像を俯瞰して描いてくださったからではないかと思います。熱さも冷静さも、かっこよく見えるところで止めると、ナルシスティックになって鼻に付くものです。弱さ、愚かしさを過剰と言えるほどにさらけ出す演出に、俳優が本気で応えたから、性別を超えて人間の地力が溢れ出たのではないでしょうか。現代口語の会話劇に演劇的な大仕掛けも用意されていて、お芝居ならではの楽しみを味わえました。

ネタバレBOX

 北海道の大学を卒業して今は東京で求職中の金平(津村知与支)は、嫌々ながら清掃のアルバイトをしています。ある日、浮浪者と思われるむさくるしい男性が金平の仕事場の近くに居座っていたため、注意をすると、なんと高校時代の同級生の内藤(犬飼淳治)でした。2人で飲みに行き、金平は「自分は大企業に勤めていて、恋人もいる」と嘘をつきます。気のいいホームレスの内藤は金平の話を素直に信じるので、金平は大卒の自分よりオツムが弱そうな内藤を気に入ります。

 金平が一人暮らしをしている部屋に内藤が転がり込み、2人の共同生活が始まりました。内藤は会社の金を横領したという濡れ衣を着せられ、前科(たぶん求刑1年、執行猶予3年)があるため再就職ができません。米粒に筆で絵や文字を書いた「コメッセージ」という商品を路上で販売しています。内藤は金平に1泊200円を支払い、家政婦役を買って出て、パソコンの使い方も覚えて、着々と成長していきます。

 やがて内藤に20歳以上年下の恋人ができました。報告された金平は大きなダメージを受け、立場が完全に逆転します。金平の取り乱しっぷり、そしてそれを隠そうとする慌てっぷりがなんとも情けなくて滑稽です。「ダブルデートをしよう」と誘う内藤の純朴さが、かえって残酷に映ります。そして金平は、ハローワークの窓口の女性に「彼女になってくれ」と迫り、警察沙汰を起こすまでに追い詰められるのです。2人の男性を徹底的に対照させるのが効いています。
 
 とうとう金平は内藤に、何もかもぶっちゃけて告白します。そのあたりから、舞台上に並べられていた漫画や服などの家財道具を、2人の俳優が自分たちで片づけ始めました。しっかり建てられていた棚がキュっとたたまれるのは、ちょっとしたイリュージョンでしたね。何もない空間に立つ2人は、金平と内藤であり、津村さんと犬飼さんでもありました。ありのままの個人として舞台上に立つ人は強いです。そして強さは美しさだとも思います。

 題名の「輓曳(ばんえい)競馬」については、最後の最後に一言のセリフでしか出てきませんでした。そういえば賭け事もしない2人でしたね。馬が引くソリの重さは、40代独身男性のプライド、または人生そのものなのかもしれません。重荷を捨て、解放された彼らの前途は洋々とは言い切れませんが、覚悟が決まった笑顔が清々しかったです。

 部屋にずらりと並ぶ漫画は「マカロニほうれん荘」「銀牙-流れ星銀-」「ドラゴンボール」「三国志」など、40代の私が懐かしいと感じるものが多く、比較的新しい「トリコ」もありました。“男子”らしい感じです。「BEATLESの青版LPなら2万円で売れる」的な話題も懐かしかったですね。

 ニシオカ・ト・ニールさんがハローワークの窓口の女性と、金平の清掃バイト先の乱暴な同僚を演じていらっしゃいました。全然違うタイプの女性を演じ分け、アクセントとしても効果的だったと思います。

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