満足度★★
『あゆみ』や『わが星』といった柴幸男作品の一部は、大きな普遍性を持つ一方、あまりにヘテロノーマティブであり過ぎるという危うさをはらんでいるが、今回の上演ではそのバランスが崩れ、悪い方向に転がってしまっていたように感じた。つまり、オール男性キャスト、父視点の導入などの演出が、作品の全体を男性目線から見た女性像に押し込めてしまっていたのではないか。
特に、作中で唐突に「覚えていますか」「想像してください」とルーマニア日本人女子大生殺害事件の話が挿入される場面は観客の想像を広げるどころか狭めるものであり、かつ、自分たちが加害者である男の側にいることを忘却した押し付けである。
私の記憶によれば全く同じ演出が劇団しようよの別の短編でも採用されており、そうであるならば、それは演出の大原渉平の個人的なこだわりに過ぎないのではないか。