最新の観てきた!クチコミ一覧

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声

PANCETTA

ザ・スズナリ(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/12 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「声が紡ぐ三つの物語」

 三名の出演者(佐藤竜、吉澤尚吾、一宮周平)が何役も兼ね、加藤亜祐美がピアノをメインにピアニカやボーカルなどさまざまな音で三つの情景を紡いでいく音楽劇である。

ネタバレBOX

 まずは美声院なる店で声を調整する習慣のある世界が舞台である。ある朝部長の声が急にハイトーンになったことで社員たちは色めき立つ。気になる女性の好みに合わせて声を整えるという設定が面白い。

 つぎはある父子が登場する。父(吉澤尚吾)は赤ん坊のコエタ(佐藤竜)を険しい表情で優しくあやすといったことをしていたため、成長したコエタは若かりし頃の竹中直人のように泣きながら笑うといったような芸で人気を博す。しかしコエタを見捨て父は去っていくのだった――爆笑のあとにほろ苦い余韻を残す物語である。

 ラストは2023年に金沢で行われた「百万石演劇大合戦」で発表され観客最多得票を獲得した「アしクサ」である。男(一宮周平)は学生時代の親友(吉澤尚吾)を自宅に招き入れるが、親友への恋心をうちに秘めている。佐藤演じるロボットの「アしクサ」はそれを声で聞き分けて気を遣う。

 物語の合間に入るショートショートも面白い。他の出演者に支えられて一宮が体を逆さにした状態で発生したり、人物のオノマトペをすべて声で表現するなど趣向が凝った公演であった。
THE STUBBORNS

THE STUBBORNS

THE ROB CARLTON

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「言語と記憶の誤解が生むディスコミュニケーション・コメディ」

 周到に練られた脚本と俳優の力演が客席をわかせるコメディである。

ネタバレBOX

 とある国際会議に親に同行してきた高貴な家柄のファロニア・デッドライン(村角ダイチ)とバッソ・フェルボーミ(ボブ・マーサム)は、ドルベルト・デュマック(高阪勝之)の斡旋で限られた人たちしか使用できないマッケンジールームなる瀟洒な部屋に集う。親たちの目を盗み深夜の会議室に集った御曹司と御令嬢は何やら商談をしているようだ。

 出演者は非日本語話者が話すたどたどしい日本語を操り対話を展開するが、それがあたかも海外ドラマの吹き替えを観ているかのような心地がしてまず面白い。「すり合わせ」を「すなぎも」と言ってしまったり、お茶を汲みに部屋を出る際カジュアルな挨拶として悪気なく「殺してやるからな」と言ってしまうなど、覚束ない対話を繰り広げている。ファロニアを警戒するドルベルトは、バッソに対し「隙を見せないでほしい」「援護射撃を頼む」と念を押し己のプランへの賛同を頼んだつもりが、バッソはそれをドルベルトのファロニアへの密かな好意(隙=好き)と誤解してしまう。気を利かせて二人きりにしたバッソだったが、部屋にいたファロニアはバッソの日和見主義的な態度に「ほれてしまう(呆れてしまう)」と誤って発音してしまい、ドルベルトはそれをバッソへの好意と誤解するのだった。当然話し合いはうまく進まず、ここまでのディスコミュニケーションを解消したところで暗転すると、時代は30年後に移る。

 熟年になり立場を得た3人は再びマッケンジールームに集い若き日の一夜を思い出す。この30年で皆の日本語はだいぶ向上したようだが、曖昧な記憶がまたしても相互理解の足かせとなってしまう。ファロニアは当初ドルベルトが自分に惚れていたはずだと言い張り、ドルベルトはファロニアについてバッソに「生き馬の目を抜かないでくれ」と言ったはずだと譲って聞かない。バッソはドルベルトとファロニアが二つの扉から入れ違いで出入りした場面を「ドアノブコメディ」と評した筈だと声を荒げるものの、そんな訳はないと他の二人に窘められる。ここまでくるとじょじょに観客の記憶も曖昧になってくる。やがてタイトルが意味する「頑固者」通りに三者が譲らないため各々の勝手な記憶の再現が舞台上に展開するが……

 言語と記憶の誤解によるディスコミュニケーションの連続に会場は大いに湧いた。物語が進むにつれてパターンが見えるきらいはあったし、前半部のコミュニケーションの答え合わせがややくどくもたついたが、丁寧な作劇のおかげで最後のいい加減な記憶の再現の場面が盛り上がったことは言うまでもない。ボブ・マーサム演じるバッソが、場を仕切りながらも決定的な場面では「キングメーカーになりたくない」と明言を避ける情けなさ、高阪勝之演じるドルベルトの育ちの良さゆえの鼻につく態度、そして村角ダイチが女形で演じたファロニアの高貴な天然ぶりなど、役者が皆イキイキしていた。
憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても良かったです。
内容は書きませんが、演劇初めてという方でも観やすいと思います。
初見の劇団でしたが、他作品も観てみたくなり、
終演後過去DVDを久々に購入。
取り急ぎ、今日の千秋楽、迷っている方は是非観てください。
感想は後ほど書きます。

遊びの杜17

遊びの杜17

東京幻堂

「劇」小劇場(東京都)

2024/09/26 (木) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/09/29 (日) 14:00

日本の民間伝承などを題材に伝統芸能的手法を取り入れて描く短編オムニバスシリーズの最新作。
まずは前奏曲的な「幻式巴三番叟」のオリジナル音楽が「バリ島の民俗音楽」っぽいことにニヤリ。古典的な題材にそれを使い、しかも違和感がないのが面白い。
続く「幽霊滝」の滝と鳥居の表現も好き。2枚の青色の長くて薄い布を交互に上下に動かす滝はままあるものの、同様の赤い布を組み合わせて鳥居表現するのはアッパレ。「瘤取り翁」の鬼、「くさびら」の茸の表現も楽しい(茸の表現は原典の狂言に準じているとか)。
最後を飾る「黄泉比良坂」はギリシャ神話のオルフェウスを想起させる中心部分は知っていたが、そこに至るまでもけっこうあったことを初めて知る。そんなこんなで今回も面白かった。来年の題材は何だろう?

新コオロギからの手紙/板の上の二人と三人そしてひとり

新コオロギからの手紙/板の上の二人と三人そしてひとり

映像劇団テンアンツ

ABCホール (大阪府)

2024/10/11 (金) ~ 2024/10/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

泣けました‼️何度か観てますが、感動します‼️

新コオロギからの手紙/板の上の二人と三人そしてひとり

新コオロギからの手紙/板の上の二人と三人そしてひとり

映像劇団テンアンツ

ABCホール (大阪府)

2024/10/11 (金) ~ 2024/10/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

らしさ満載 泣けました 数回も…値段は高いけど見る価値ありすぎ

憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 華5つ☆、タイゼツベシミル!! 全容は敢えて書いていない。実見して素晴らしさを確認して欲しい。

ネタバレBOX

 物語が主として展開する板は高めの平台を置いた奥に作られており、下手壁手前にTVや障害1級の末っ子・啓太の遊び道具やリモコン等が置かれている。板中ほどにはソファ、上手の壁前には本などが入った棚他、その客席側に部屋に通じる入口がありここが出捌けにも用いられる。ホリゾント手前は他の部屋へ通じる通路になっており、ここがもう1か所の出捌けである。この部屋は劇団牛後(ウシコウ)座長・伊原文雄の部屋でもあり、劇団の練習場でもあるばかりでなく家族全員の共有スペースでもある。
 物語は、タイトルに凝縮されているように憧憬に纏わるものであり、座長の亡き妻の最後に関わるものでもある。因みに亡き妻の位牌は別の部屋にあるので出入りする者達が劇中何度も手を合わせにいったりする。
 オープニングシーンは文雄がTV番組見ていた処へ啓太が入って来て「消さないでね」と何度も繰り返す父の気持ちを知ってか知らずか‟アンパンマン“の画面に切り替えるシーンで始まる。座長役は剣持さんで実に上手い俳優さんなのでご存じの方も多かろう。啓太役は河津未来さん、初めてお目にかかる役者さんだが上手い。このシーンでアンパンマンのTV映像では首を挿げ替えるシーンが出ていたのを啓太が真似てお父さんの首を挿げ替えようとするが「それは出来ないよ」と言われるとアンパンマンのほっぺを千切るシーンを啓太はお父さんにするのだ。お父さんは、脂汗を拭って啓太のほっぺに「おいしい脂汗ですよ」と笑いつつなすりつける。この間啓太は無論ご機嫌だ。キーッと倍音を発し機嫌の良いことを示している。
 脚本も素晴らしいが、役者陣の演技が凄い。その脚本を身体に溶け込ませてでもいるかのように時に沁み出させまた溢れさせるのみならず、状況によっては箍を外す。或いは関係に距離を置く。最初に述べたようにこの空間自体が極めて親密な人間関係を結ぶ場であり、登場人物総てが家族・劇団員・及びその何れかの配偶者等関りの深い者ばかりである。このような濃い人間関係では問題は厄介になり易い。それはそうだろう。蒸発するとかでもしない限り深い縁は中々断ち切れるものではないからだ。今作は、そのような逃げ場のない人間関係の中で起こる諸問題の幾つかを、それを抱え込んで対立する大人同士は兎も角、育つ中での位置、例えば長男、長女である、次女や三女である等で同一問題であっても状況との出会い方は全く異なる。またその時置かれた状況次第でも事情は大きく変わるし、年齢によっても受け止め方は全く違う。同じことに同じ場所で出会っても出会い方は全く違うのが普通である。そしてこのような事情が時にはトラウマとして機能してしまうこともある。そればかりではない。社会の中ではそういった個人的事情は一切顧慮されないのは普通のことである。このような状況で多くのヒトが生き、誰の助けを求めることもできずに消えて行く。これが掃いて捨てる程もある一般的人生という形であろう。
 然し乍ら、濃い人間関係であれば、上記のような状態であっても、それらを的確に腑分けし、判断する者が存在するケースがある。だからこそ、より微妙な問題として気付いた者も気付かれた者も互いに口には出さず、そのことがかえって問題をこじらせる場合もある。そのような各登場人物の心理の綾迄が見事に観客に伝わってくるような優れた演技を役者陣はしている。これはもう、演技というより当に役を生きている実例と言いたい。脚本家が演出も兼ねているが、脚本、演出、演技は以上で紹介して如く素晴らしい。無論、舞台美術、照明、音響何れも今作同様いい出来である。
遺失物安置室の男

遺失物安置室の男

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今回も、とても面白かったです。いつもながら少しシュールでいろいろ考えされるお話でしたね。何度目かのリニューアルしながらの再演のようですが、その理由もわかります。役者の皆さんの演技も安定的によかったですし、余韻が残るお芝居でした。仕事帰りに伺おうとすると、開演時間、飲み物のおまけも嬉かっです。

ヒューマンエラー

ヒューマンエラー

ピウス

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/15 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人格を持つAIを巡る人間とアンドロイドの物語。
再演作ですが、ChatGPTのような高度なAIが出てきたこの時期に合った作品だと思います。

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

近鉄アート館

SPACE9(大阪府)

2024/10/01 (火) ~ 2024/10/31 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

落語は知らない落語家さんでも楽しめるのが魅力やなと思います☆個人的には漫才師時代から知ってるナオユキさんの漫談が見れるのも嬉しいです\(^o^)/

ぼくの好きな先生

ぼくの好きな先生

マウスプロモーション

シアターX(東京都)

2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いじめをテーマとしながらも、時にコミカルに表現されており、そのバランスが非常に見事でした。重いテーマを扱いながらも、笑いを交えることでテンポよく、最後には感動で涙がこぼれました。本棚の演出も作品の世界観に引き込まれました。

声優事務所の50周年記念公演とのことでしたが、この作品を記念公演に選んだこと自体、非常に挑戦的だと感じました。これは、役者たちの演技力に対する強い信頼があったからこそだと思います。実際、役者たちはその期待に見事に応えていました。ベテランから若手まで、全員が素晴らしい演技を披露し、声優の強みである声の個性と通りの良さも印象的でした。

そして、この舞台は観客としての自分自身に「では、自分はどうなのか?」という問いを突き付けられた、非常に考えさせられるものでした。

夢遊病の女<新制作>

夢遊病の女<新制作>

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2024/10/03 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

歌は素晴らしかった。シラグーザ氏を、20年ぐらい昔に同じ新国立劇場に登場した時に聴いて以来、今回久しぶりに聴いたが、軽やかで明るく光るような歌声が全然変わっておらず驚き。アミーナ役歌手も声がとても美しく、気の毒になるぐらい超高い音も苦しくならずに出していた。リーザ役歌手もまったく遜色ない。
一方、演出はいくつか妙に思える動きがあったりで腑に落ちなかった。他のいくつかの歌劇場との共同制作ということなのだが。

売り言葉

売り言葉

平体まひろひとり芝居

雑遊(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鮮烈な体験。平体まひろさんのファンなら極上の空間。もう一回観たい気もする程良かった。舞台を挟んで3列ずつの客席。映画のセット並みに作り込まれた部屋。本棚には絵画写真美術演劇の専門書の類がビッシリ並び気分は美大生。開演前SEで流れる洋楽が病んだビートルズみたいな妙なポップさ。細かくいろんな場所に仕込まれた照明がノイズ音と共に明滅する演出が効果的。現実に押し潰されて認識が狂っていく自分。

話は高村智恵子、明治生まれで昭和13年に亡くなる。肩書は一応洋画家だが大成せず。夫である詩人、高村光太郎の書いた『智恵子抄』で彼女を知った人が殆どであろう。精神を病み今肺結核で死んで逝かんとする妻。最期に檸檬を欲した彼女がガリリとそれを噛んだ時、瞬間元の智恵子に戻り微かに笑う。高村光太郎の「レモン哀歌」は宮沢賢治の「永訣の朝」、「あめゆじゆとてちてけんじや」と並び日本人の深層心理に深く刻み込まれた愛する者との美しき別れの元型。誰もがその美しさに涙する···、筈だった。

こういうのを演ってこういうのを観る、というのが原初的演劇体験。間違えてゴダールの『気狂いピエロ』を観てしまった子供みたいな。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

これはガキの頃に観たかったと思った。頭がクラクラしただろう。一人の若い女優が狭いハコで泣き笑い狂い叫んで人を愛す。高村光太郎の封じた美しく重い棺桶の蓋を中から無理矢理こじ開ける高村智恵子。若い時分はこういうのを浴びた方が良い。演劇の初期衝動。トラウマPUNK。

2021年1月公演の『東京原子核クラブ』で平体まひろさんを知ったのだと思う。黒木華のようになりそうだな、と思った。もう好き放題やって欲しい。誰にも何にも捕まるな。「犬だ〜」。
僕と私の遠い橋【東京公演】

僕と私の遠い橋【東京公演】

玉造小劇店

シアター711(東京都)

2024/10/08 (火) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

11人で53人を演じるというお芝居。展開について行くのに必死であっという間。なんやわからんけどめっちゃ面白かった!パンフに「極めて変で、軽くて、爽快」とありましたがその通りだと思いました。鈴木さんのとこだけ脳がバグりましたがそれもまたサイコーでした。ごちそうさまでした。

売り言葉

売り言葉

平体まひろひとり芝居

雑遊(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/10/11 (金) 19:00

野田秀樹・作の一人芝居に平体まひろが挑んだ。いいものを見せてもらった。(2分押し)89分。
 野田秀樹が大竹しのぶに書き下ろした2002年の戯曲で、「智恵子抄」の高村智恵子を題材にしたもの。いろいろなところで何度も上演されているが、大竹の初演を2ステージ観た後、観たことがなくて、22年ぶりに観た。冒頭いきなりの言葉遊びに、あぁこんな作品だったなぁ、と思い出したが、平体は現代的な服装のまま演じ、前半は笑いも取り、後半はシリアスになるという戯曲の特徴をシッカリ活かして演じてた。大竹の初演では、障子を破って自転車で登場、という演出が印象に残っていたが、本作は着々と丁寧な演出で、前半は一寸ありきたりかなぁという印象もあったが、徐々にペースが上がっていった。対面舞台という形や美術と照明も見事だった。

憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても良かったです!
リアル感があり、同感したり考えさせられる事が多々ありました。
役者さん達の演技も素晴らしく、優しく切ないストーリーに感動でした。
父親を演じた剣持さんの表情、息子を演じた河津さんの天使のような笑顔に涙が出ました。
素晴らしい舞台でした。

憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ある劇団兼会社を舞台に、家族の問題や周辺の周囲の人々とのつながりを描いた物語。序盤はややガヤガヤした印象も受けましたが、物語が進むにつれ、各登場人物の思いが溢れ出て、クライマックスでの心の叫びでは心を強く揺さぶられました。登場人物も多いですが、各人の関係性や内面も丁寧に描かれ、自然と感情移入できました。各人がそれぞれ葛藤を抱えつつも、ひたむきな優しさに溢れており、ついつい応援したくなります。随所に笑いも散りばめれており、泣き笑いのバランスが心地よい、素晴らしい舞台でした。

兄妹どんぶり

兄妹どんぶり

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/15 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『無頼の女房』を観て、やっぱり青山勝氏の演出力はずば抜けているなと再認識。かんのひとみさんだけを頼りに何となくチケットを購入。これが万馬券。荒み切った心の砂漠を潤してくれる恵みの雨。金を払ってでも観るべき芝居とはこれだ。騙されたと思って観に行って頂きたい。帰りに物販で散財したくなる筈。故・中島淳彦氏にRespect。このクラスの脚本を出されたら文句のつけようがない。ただただ感心。凄い作品だ。

主演の演歌歌手を目指す少女は初舞台!?の宏菜(ひろな)さん。随分歌上手い女優だなあと思っていたが本業は弾き語りのシンガーソングライター。ちょっと度肝を抜かれた。若き日の新垣里沙や高畑充希、蒼井優系の清純派の田舎娘だが歌い始めると観客の心を鷲掴み。よくこんな娘を見付けてきたもんだ。

そのマネージャーで義理の兄でもある佐藤銀平氏は佐藤B作氏の息子!もう見事と言うしかない絶品の話術。圧倒された。つかこうへい節の角番の男を舞台に鮮烈に刻み付ける。

時代は平成元年(1989年)、東京の下町にある居酒屋「歌声」。元音楽プロデューサーだった旦那(佐藤達氏)と店を切り盛りする女将(かんのひとみさん)のもとに兄妹(佐藤銀平氏&宏菜さん)がやって来る。「天才的な歌声を持つ妹をプロの演歌歌手にする為、裸一貫大阪から上京して来た。ついてはしばらくここで働かせてくれ」と。そこに元教師(藤崎卓也氏)率いる商店街のアマチュア・コーラス・グループが稽古にやって来る。昼間は店を稽古場として提供していたのだ。頼まれた妹は彼等に混じり歌声を響かせる。フォーク・ソングにかなり小節(こぶし)を回して・・・。

各役者の役に仕込んだ細かなキャラ設定が抜群に味になる。
佐藤達氏のちょっとゲイっぽい仕草とか巧妙。
芸能プロダクション社長、板垣雄亮(ゆうすけ)氏は何かとボブルヘッド人形のように頭を左右に揺らす癖。
消えた演歌の天才作曲家、ジョージ相原役の宮地大介氏。これがへべれけの志村喬や由利徹のようでヨロヨロ歩くコミカルな動作が場内を爆笑に叩き込む。お見事!
藤崎卓也氏が身にまとう笑いのセンスは自分の大好物。この斉木しげる系の笑いを求めていた。
気田睦(けたむつみ)氏が咥えているのは禁煙パイポだろうか?水道橋博士を思わせる表情。
菅沼岳氏はBEGIN寄せ。
夫の佐藤銀平氏を追って上京して来た妻の山像(やまがた)かおりさんがまた最高。きっちり物語を構えてみせる。
酔ったかんのひとみさんが忘れられない見せ場を作る。

美空ひばりの曲が効果的に使われる。ひばりが亡くなったのはこの年の6月24日。美空ひばりの『みだれ髪』は最早文学の域にまで達している傑作だと思う。
是非観に行って頂きたい。そして宏菜さんのCDを買って欲しい。

ネタバレBOX

何となく『寝取られ宗介』を思い出した。
ビール大が180円とは安すぎだろう。それで煮込みが400円なのは何か高すぎる。

『兄妹(きょうだい)どんぶり』というタイトルがイマイチで、新規の客寄せに弱い。
朗読劇、余炎

朗読劇、余炎

三度目の思春期

マホラ食堂(小田急線経堂駅南口徒歩5分) 2階客席(東京都)

2024/09/27 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/09/27 (金) 14:00

6月の悲喜交交による「古民家上演版」を経ての朗読版。朗読劇だけに3人の登場人物に加えてト書き担当がいるので情景を思い浮かべたり上演版を思い出したり。
朝ドラをBSで一度観てから地上波を字幕・副音声で観るσ(^-^) にはピッタリ、的な。(笑)
そして会場が食堂の2階テーブル席で演者もテーブルを前に並んで座るカタチだけに台本を手に持つ「一般的な朗読劇」と違って木製の書見台に台本を置くという演出がまた別なオモムキでステキ。演者が劇中の衣装だったり当日パンフレットが劇中の俳句誌を模しているのも〇。
そうして語られる内容が「戦意高揚に文学(を筆頭とした芸術)が使われる時代が二度とあってはならない」なのは秀逸。(10年前に書かれた作品とのことだけれども)

Flower

Flower

兎団

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

現代と過去(戦国時代)を往還する というよりは綯交ぜの混沌とした物語。解ったようで実は理解が追い付かない独特の世界観だが、飽きることなく観ることは出来る。この団体 気になっていたので観に行ったが 満席いや増席するほど盛況。開場前から並んでいる人が多く、コアなファンに支えられているといった印象だ。

心の在り様は、時代が違っても…例えば 花にも色々あり 一輪でも存在感ある大輪を咲かせるものもあれば、人知れず野に咲く花もある。それを戦国武将の生き様に準えて描く。もっとも戦国時代と言っても柴田勝家とお市(織田信長の妹)が北ノ庄城で自害するところから大坂夏の陣(主人公 真田幸村が討死)迄を駆け足で描いている。そのため ある程度知られた出来事(史実)を掻い摘んで紡いでいることから、全体的に粗くなっていることは否めない。ちなみに、お市の娘 茶々(後の淀殿)を戦国時代に生きた女性の代表格のように描く。冒頭 お市の最期のシーン、たとえ女性であっても自立することが大切、そんな旨の台詞が現代へのエールに思える。

「兎団式、何でもありの一大絵巻」という謳い文句、個々の武将の心情の深堀というよりは、エピソード等を誇張することで興味を惹く。そしてその時代をどう生き抜くか、その生き様が華々しかろうが 枯淡や簡素であろうが<どう生きるか>が重要だと。これが現代(シーン)の悩める中年男へのメッセージに繋がる。

一見 雑然とした描き方のようだが、史実としての物語は流れており 観せる工夫として歌やダンス、そして衣裳やメイクといったビジュアルで魅せている。勿論 効果的な音響音楽や照明の諧調によって印象付け、それら舞台技術が物語をしっかり支えている。
(上演時間2時間 休憩なし) 

ネタバレBOX

暗幕で囲い 上手 下手に非対称の黒い階段状の段差、入口近くにある置台に黒電話。至る所に切り絵が貼り飾られているだけのシンプルさ。戦国時代という乱世の光景(殺陣・アクション等)を描くためにスペースを確保しているのかと思ったが、それほど激しい動きはない。動作には、パントマイムで観せる場面も多くある。

物語は、現代の名無し男が、車で東京(江戸)に向かうシーンから始まる。名無し男は、架空の電話相談へ掛けるが、その相談事が曖昧というか要領を得ない。高校を卒業して15年、何の変哲もない生活を続け このままで良いのか自問自答している。何の不自由もなく大きな悩み事もない。漠然と生き甲斐のようなものに憧れているよう。

戦国時代の武将は日々生きるか死ぬか、家名の存続と家臣の生命と生活を抱えている。主人公は真田幸村、父 昌幸と上田城にて関ケ原の合戦に馳せ参じる徳川秀忠の大軍を少数精鋭で足止めて、知略・勇猛を世に知らしめた。勿論真田十勇士といった魅力ある人物が登場する話もある。戦国時代の終焉となる大坂の陣(冬と夏)の活躍を描いており、そこでは勝ち目がない豊臣方に味方している。そこに戦国の世を、そして武将としてどう生き死ぬかといった生き様を見せる。

現代の平凡なサラリーマンと戦国時代の勇将を比較するような描き方、そこに人それぞれの考え方や生き方を投影する。ちなみに大坂の陣では、後藤又兵衛・木村重成といった歴史好きには馴染みの人物も登場するが、真田幸村に比べると華がない(語弊があるかもしれないが)。そこに歴史に埋もれそうな人物をも照らし出す。戦国という刹那的な時代を取り上げながら、ダンスや生歌という魅せる演出で盛り上げる。そこに 独特の世界観の演出する巧さを感じる。
次回公演も楽しみにしております。

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