THE STUBBORNS 公演情報 THE ROB CARLTON「THE STUBBORNS」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「言語と記憶の誤解が生むディスコミュニケーション・コメディ」

     周到に練られた脚本と俳優の力演が客席をわかせるコメディである。

    ネタバレBOX

     とある国際会議に親に同行してきた高貴な家柄のファロニア・デッドライン(村角ダイチ)とバッソ・フェルボーミ(ボブ・マーサム)は、ドルベルト・デュマック(高阪勝之)の斡旋で限られた人たちしか使用できないマッケンジールームなる瀟洒な部屋に集う。親たちの目を盗み深夜の会議室に集った御曹司と御令嬢は何やら商談をしているようだ。

     出演者は非日本語話者が話すたどたどしい日本語を操り対話を展開するが、それがあたかも海外ドラマの吹き替えを観ているかのような心地がしてまず面白い。「すり合わせ」を「すなぎも」と言ってしまったり、お茶を汲みに部屋を出る際カジュアルな挨拶として悪気なく「殺してやるからな」と言ってしまうなど、覚束ない対話を繰り広げている。ファロニアを警戒するドルベルトは、バッソに対し「隙を見せないでほしい」「援護射撃を頼む」と念を押し己のプランへの賛同を頼んだつもりが、バッソはそれをドルベルトのファロニアへの密かな好意(隙=好き)と誤解してしまう。気を利かせて二人きりにしたバッソだったが、部屋にいたファロニアはバッソの日和見主義的な態度に「ほれてしまう(呆れてしまう)」と誤って発音してしまい、ドルベルトはそれをバッソへの好意と誤解するのだった。当然話し合いはうまく進まず、ここまでのディスコミュニケーションを解消したところで暗転すると、時代は30年後に移る。

     熟年になり立場を得た3人は再びマッケンジールームに集い若き日の一夜を思い出す。この30年で皆の日本語はだいぶ向上したようだが、曖昧な記憶がまたしても相互理解の足かせとなってしまう。ファロニアは当初ドルベルトが自分に惚れていたはずだと言い張り、ドルベルトはファロニアについてバッソに「生き馬の目を抜かないでくれ」と言ったはずだと譲って聞かない。バッソはドルベルトとファロニアが二つの扉から入れ違いで出入りした場面を「ドアノブコメディ」と評した筈だと声を荒げるものの、そんな訳はないと他の二人に窘められる。ここまでくるとじょじょに観客の記憶も曖昧になってくる。やがてタイトルが意味する「頑固者」通りに三者が譲らないため各々の勝手な記憶の再現が舞台上に展開するが……

     言語と記憶の誤解によるディスコミュニケーションの連続に会場は大いに湧いた。物語が進むにつれてパターンが見えるきらいはあったし、前半部のコミュニケーションの答え合わせがややくどくもたついたが、丁寧な作劇のおかげで最後のいい加減な記憶の再現の場面が盛り上がったことは言うまでもない。ボブ・マーサム演じるバッソが、場を仕切りながらも決定的な場面では「キングメーカーになりたくない」と明言を避ける情けなさ、高阪勝之演じるドルベルトの育ちの良さゆえの鼻につく態度、そして村角ダイチが女形で演じたファロニアの高貴な天然ぶりなど、役者が皆イキイキしていた。

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    2024/10/13 11:19

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