ベター・ハーフ
ニッポン放送/サードステージ
久留米シティプラザ (ザ・グランドホール)(福岡県)
2017/07/28 (金) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★
中村中さんの弾き語りが素敵で鳥肌が立った
Endless SHOCK
東宝
博多座(福岡県)
2017/10/08 (日) ~ 2017/10/31 (火)公演終了
満足度★★★
数年ぶりにSHOCK観劇
メインメンバーにはもちろん、ダンサーさん達にも魅せられた
関数ドミノ
ワタナベエンターテインメント
J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
2017/10/21 (土) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★
イキウメを観に行った時のゾクゾク感が少し軽減されていて
初めての人でも観やすい感じに仕上がっていた気がする
それでもやはり恐ろしさはあり、
クライマックスに向けての盛り上がりが楽しめた
寺島浴場の怪人
シアターキューブリック
墨田区・寺島浴場(東京都)
2017/09/30 (土) ~ 2017/10/11 (水)公演終了
満足度★★★
銭湯を舞台にした作品。“ああ‼︎”と思わせる出だし咪は見事。物語も悪くないが、上演時間が短く少し物足りない。 あと、折角銭湯で上演しているのだからもっと関連を持たせた方が良かったと思う。でないと、単に奇抜な場所で上演しただけという印象が強くなってしまい勿体無い。
エクスカリバーズ
オリゴ党
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2017/09/08 (金) ~ 2017/09/10 (日)公演終了
満足度★★★★
いつもSNSなどのネット情報で拝見していました。
なので、すっかり何度も拝見した常連のつもりでいましたが…。
なんと、オリゴ糖さん初観劇でした。
今まで観ずにご免なさい!
そして結成25周年おめでとうございます。
25周年に相応しい超豪華な役者陣。
2時間の大作でしたが、あっという間でした。
出るつもりの無かった中学校の恩師の葬儀。
そこで出会った妖精?とともに中学時代にタイムスリップ?
文化祭でアーサー王物語を公演しようと稽古に励む中学生。
クラス内の権力争いとアーサー王の戦いが交錯。
中学時代が…、そして現代が…、思わぬ方向に展開する。
愛だ
X-QUEST
新宿村LIVE(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/22 (日) 14:00
座席d列12番
殺陣、ダンス、場面場面の芝居は大変面白く流石
ネタバレBOX
どんでん返し物になるわけだが、そこに至る詰めが今ひとつ無駄に混沌としていてドンデン返しが腑に落ちなかった、(理解できたできないではなく)最期の音の演出も蛇足。
若干マンネリ化してはいないか?千穐楽でダブルコール それがものがっているように思える
ハイツブリが飛ぶのを
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/24 (火)公演終了
満足度★★★★
本当は何が起こったのか、謎めいた冒頭のシーンが印象的で、
ミステリアスな展開に最後まで引っ張られる。
この緊張感と、とぼけたやり取りのギャップが可笑しい。
若者の天然傍若無人ぶりに飄々と対する関西弁のお人よしぶり。
衝撃のラストまで、演じる役者さんの巧さが光る。
ネタバレBOX
激しい嵐の夜、稲妻に浮かび上がるのはスコップを片手に仁王立ちの女性…。
「火サス」の犯罪シーンのような幕開けにちょっと驚く。
そこへ登場した男に、彼女は「アキラ!」と呼びかける。
元々この避難所には9人が暮らしていたが、火山の噴火により8人が死んでしまい、
生き残った彼女は8人を埋葬、一人で外出していて難を逃れた夫の帰りを待っている。
「アキラ」と呼ばれた男は、実は夫ではなく、ここに住んでいた妹を探しに来たのだった。
記憶を失くして夫の顔も忘れてしまった女は、彼を「アキラ」だと思い込んでいる。
似顔絵を描きながら避難所を渡り歩く「夜風っす」と名乗る男、
出先で噴火に遭い、妻も死んだと思い込んで一か月後に帰宅した、女の夫も加わって
4人の奇妙な共同生活が始まる…。
明るく笑いながらためらいなく人の心に踏み込む“夜風っす”(佐藤和駿)が
結果的に“偽アキラ”や“本物アキラ”の心情を掻き出して語らせる、
というスタイルが面白く成功している。
オバサンとしては“夜風っす”のキャラはどうも心情的に疲れるけれど、それは
演じる佐藤さんが“イマドキの若者が自然にやらかしてる”感じを上手く出しているから。
夫と思い込まれた男(緒方晋)が、追いつめられて不安定な女を
突き放すこともできず寄り添うところがとても良かった。
柔らかな関西弁で、“夜風っす”に反発しながらも、彼の質問には率直に応えていく。
その素直さが彼の誠実な行動の根幹にある。
本物のアキラ(平林之英)はイマイチ気が弱くて
妻の生死を確かめる勇気もなく、1か月も経ってから避難所に戻って来るような男だ。
かつて同じ避難所にいた別の女性(それが偽アキラの妹)と不倫したという
負い目もあってますます妻との距離をコントロールできない。
その気弱さから“偽アキラ”を強く追い出すこともできず、
そもそも妻に思い出してもらえないという存在感の薄さが露呈する。
夫の情けなくやるせない思いが台詞の行間に滲んでいた。
8人を埋葬するという壮絶な体験から記憶の一部が欠落したように見える女
キナツを演じた阪本麻紀さん、どこか“心ここにあらず”な浮遊感が良い。
本当に「埋葬した」だけなのか、何かあったんじゃないか、と思わせるものがあって
謎に奥行きを持たせる。
不自然なほどの白髪や、噴火前から避難所で暮らしていた、という設定に
この国の不安な未来が透けて見える。
それにしてもこの二人、これからどうなるのだろう。
田園にくちづけ
ブルドッキングヘッドロック
ザ・スズナリ(東京都)
2017/09/22 (金) ~ 2017/10/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
公演が終了していますので、気にしなくていいのかもしれませんが、とにかく長い感想を書きましたので「ネタバレBOX」の方にUPします。よろしかったらお付き合いくださいませ。
ネタバレBOX
「記憶は思い出す度に強化され、思い出し味わい直すほど鮮明になる。」
そんな台詞があった。
千秋楽から三週間が経ち、消えずに積もった思いは、熟成され旨味を増したと感じている。
そして、大きく二つの思いが発酵し始め芳醇な香りを広げている。
食と家族のことと、マイノリティとコミュニティのこと。
それを今、味わい直してみたい。
「くちづけ」…憧れのkiss。
なのにそれが、口を付ける=食事をする…でしかない美男美女が現れたら…。これは文化の違いによるカルチャーショックの比では無い。
さらにそれを「美味しい」とか「不味い」と評価されたら、我々は「上手い」と「下手」のテクニックの問題だと勘違いする。
それはもう、アイデンティティを揺るがす大問題だ。
そんなギャップが、世の中の「常識」や「当たり前」や「普通」、そして「道徳」や「倫理」といった物差しに個人差があることを突きつける。理解しようとしても埋まらないその感覚に「正義」の判断が伴った時、生じる摩擦は大いに人を苦しめる。
相手を大切に思う人物のその姿は痛々しく、胸を締め付けられる思いがした。
懐かしい味…田舎の味…おふくろの味。
どれも旨いものとして好意的に響く。もしそれが、かなり残念な味だったら、それはやはり不幸なことなのだろうか。
食事の栄養が身体を作るのと同じように、母親の手料理が心を作るのかもしれない。
他界した我が母の料理(新メニュー)は最初が一番旨かった。
何度か作っているうちにいろんな手を加え始める。だんだんと味が変わっていき残念に思ったことを思い出した。
でもそれは不幸ではなかった。
母も幹枝(深澤千有紀さん)も、おそらく同じ気持ちなのだと思う。
「作ってくれてるんで」という息子(浦嶋建太さん)と夫(永井秀樹さん)は黙って食べる。残念な味は大量の調味料で包み込んで。
娘(山田桃子さん)は反抗期でジャンクフードばかりに手を出し幹枝の怒りを買ってしまう。
そんな彼女が、兄を誘惑する女にクギを刺すのは、同じ「家族を思う」気持ちに他ならない。
これは全て「愛ある残念な味の母の手料理」によって育まれたもの。
農家を継いだこの次男夫婦と他界した父親が暮らした田園の中にある「家」が、かつてあった日本の家庭の姿として温もりを持って迫ってくる。そこに家長としての男の自負のようなものも感じる。
次男でありながら兼業農家として家と田を守ってきた草次(永井秀樹さん)の毎日の葛藤や、父への尊敬の念と喪失感が、冒頭の、縁側に座り空を眺める抜け殻のような姿に凝縮されている。
その背中を見つめる人たち。
あの、時が止まったような静かなシーンがなんとも美しかった。
伏せっていた父が他界した日から物語は始まったが、この父の存在感がなんとも偉大だ。それはまるで、大きな愛でできた蚊帳で家族を包み込んでいるよう。
自由気ままに蚊帳から転がり出てしまった長男(吉増裕士さん)も、実はまだその中にいる。長男に代わって家を継いだ草次が、兄を立てつつも心配している姿の中に父の思いも映る。
奥手の三男(寺井義貴さん)の恋愛を見守るのも同じこと。
こうした姿が、新米で握った塩むすびにだけは「余計なことはするな」と嫁に唯一の注文を付けた亡き父の大きな愛情を浮かび上がらせる。
ラストの草次の「うまい…」に深みと味わいを与える。
日本人は、やはり米だ…と思う。
「田園」…の風景は、肥よくな土壌に育った広大な田畑を思い浮かべる。
それは、東京と地方との格差の問題への警鐘も含まれているように思う。
居心地の良さは距離に関係する。物理的な距離と心の距離。
その距離と心地良さは比例しているとは限らない。
年齢によってもその感じ方は違うものだし、一定であるはずもない。
そこで必要なのは言葉であり、言語だ。標準語は無機質でカラッとしているように感じる。それに対し方言や訛りは何だか人肌の温もりを感じる。電車に乗って帰省する時、故郷に近づくにつれて車内の空気が変わってきて『嗚呼、帰ってきたなぁ』と感じるのは、そこで交わされる言葉の変化によるものだ。
この作品には三者がいる。
ずっと田舎に居る者、田舎を出て東京へ行き戻ってきた者、東京から来た者。
それぞれが違和感や疎外感を感じるのは仕方ない。同じ立場の者に親近感や安心を抱くのも人情である。
田舎は隣の家までの物理的な距離は遠いだろう。けれども心の距離が何とも近い。それを東京から戻ってきた者が最も強く感じているに違いない。
作品の視点であろう草次の息子の耕太(浦嶋建太さん)はそれを好意的に感じているように思う。
三男の竹三の見合い相手でミステリアスな空気を纏う美女の伊織(山本真由美さん)は、嬉しさと違和感を感じているように見える。
孤独の闇を持つ彼女は東京に戻るのか、ここに残るのか。それが正に地域格差への回答のように思う。何を選択したとしても、寂しさの滲む伊織の幸せを願わずにはいられない。
くちづけが食事の日暮(吉川純広さん)と穂波(葛堂里奈さん)は、ある意味奇病を持っていると言える。あるいは記憶を餌にするエイリアン的な未確認生物。実際の設定はわからない。
彼らは身を隠して生きることを強いられる逃亡者に近い。それはかつてのハンセン病や、最近ならHIVなど。日常で言えばイジメもそれだし、歴史的には身分制度や同和問題もそうだ。さらには同性愛や性同一性障害なども含むマイノリティの苦しみにも思えた。
彼らの未来を案じる川面(瓜生和成さん)が「特殊な生き物だと思われながら暮らす…」ことの苦しみを案じ、「そんな目で見ないでいただきたい」と静かに、それでいて揺るぎない強さで話す言葉が、小さな棘のように胸に刺さり、ゆっくりと確実に深いところへ沈み化膿し始めている。
学校教育の現場には、普通学級と特別支援学級のボーダーにいる児童生徒が少なからずいる。その児童生徒本人ばかりでなく、家族が「そんな目」に対してどれほど恐れているのかを、理解しているつもりで全く寄り添えていなかったのではないかと恐くなった。
川面は「おっぱいをあげるような感覚」と表現した。親身になることをこれ以上的確に捉えた言葉はないだろう。
我が家に双子の娘が生まれたとき、彼女たちは2000gそこそこの未熟児で保育器に入っていた。周りのベビーベッドには健康そうな赤ちゃんが並び、その家族や親族がガラス越しに嬉々として眺めている。そこで保育器を覗き込み、未熟児の父がいるとは知らずに憐れむ。その声を聞き空気を感じながら『いやいや全然大丈夫だから』と思うのと同時に、「そんな目」で見られていることに僅かな苛立ちと、彼女たちへの不憫さを感じたのを思い出した。
千秋楽のカーテンコールで、客演の永井秀樹さんに呼び出された主宰の喜安浩平さんの挨拶が、劇団の現在地を示しつつ、活動の姿勢を伝える素敵なものだった。
客演の功績を讃えた上で、劇団員の頑張りと成長を喜び、今作に出演していない俳優の作品に関わる姿勢と、スタッフの力を誇る言葉から、井出内家の家長として一家を見守った父のように大きな蚊帳で包み込む劇団への愛を感じた。
美しいセットと照明と音響の中で、キャストが確かに活き活きと生きていた。優れた俳優を招いて上演すれば、どうしたって劇団員が割を食う。それはいたしかたない。だからこそ、短い出演時間であっても存在感を示し得る役柄を劇団員に当て書きする喜安さんの脚本と演出に敬服する。
冒頭の鉄矢(竹内健史さん)がその最たるもの。あのカレーの話しから腰砕けで膝から崩れ落ちるまでの日暮とのシーンに、今作で展開される全てのきっかけが詰まっている。あっという間に客席が作品世界に飲み込まれていく圧倒的なエネルギーを感じた。
劇団員の一人ひとりがまた、作品に貢献すべく様々な仕掛けを施していて、隅々までご馳走が詰まったおせち料理に仕上がっていた。
例えば、出落ち的な風貌で切り込んできた真木志(高橋龍児さん)は庭に吐き出された浅漬けを弔い、生徒の穂波に心奪われた常川先生(猪爪尚紀さん)は川面の追求から逃れる去り際に襖の間から僅かな視線の動きで後ろ髪引かれる思いを可視化した。
一人ひとり挙げていけばきりがない。
そうした劇団員が持ち寄った燦めきの粒が、作品に力を与え輝かせていた。
特筆すべきは、今回出演されなかった劇団員が劇場グッズコーナーに立ったばかりでなく、稽古期間に街へ繰り出しフライヤーを手渡すイベントを何度も行っている。
もちろんフライヤーは永井幸子さんのデザイン。ビジュアル的に目を引く素晴らしい出来映えであるのは言うまでもないが、公演を観てから改めて見ると、その的を射た見事な作品である事実に驚愕する。ちなみに赤い唇の美女は…吉川純広さんであることにさらに驚愕。
畏れ入った。
長々と書いた。
書き始めてから既に三日が経つ。
それでもまだ書き切れなかった思いはあるし、うまく言葉にできていない感も拭いきれないが、それはもう仕方ない。
とにかく、随分と久しぶりに、公演を観て心に刺さったものや染み出てきた思いを書き残しておきたいと思う作品だった。
食卓を囲む家族を舞台に、優しさと可笑しみをちりばめ、劇団員の総力が結集された秀逸な作品『田園にくちづけ』。
おかわりを下さい。
ハイツブリが飛ぶのを
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/24 (火)公演終了
満足度★★★★
iakuらしい好編で、常に新たな地点を探り出している、今回もその生々しさがあった。噴火後の避難所跡。「鹿児島カルデラ」が最も新しい大規模噴火で、その前から避難所はあったような説明もあったような・・従ってこれは「噴火災害」の時代に入って以降の話なのだろう、くらいに解釈した。その詳細な設定は、ここでは大きく問題にならない。そういう芝居に仕立てており、書き手の技、演出の技でもあろうか。どこかユーモラスで、災害とそこに一人留まる女性と記憶喪失、災害で死んだ人間を8体埋めたが掘り返してはならぬという女の言葉、トラウマを思わせる所作の片鱗・・陰惨さが匂う設定を十分に飲まされた上で、展開する人物らのやり取りはひどく昼ドラ的で、深刻なのだがどこか楽天的な面が見えておかしい。
奇妙なミュージカル仕立ての展開が、ツッコミが来ない漫才の如くにあったり、ペチャクチャよく喋る青年のサラっと鋭く突っ込むキャラや、真顔の喋りが常に笑いと同居する緒方晋の風情も助けて、軽妙かつ、深みのある芝居になっていた。
渡り鳥であるらしいハイツブリは、劇中では絶望の象徴として、終幕近くでは希望の象徴として使われる小道具だが、これをタイトルとしたのもうまい。
現在進行形に進化しつつある才能と、感じる所大である。
かさぶた式部考
兵庫県立ピッコロ劇団
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/10/14 (土) ~ 2017/10/15 (日)公演終了
満足度★★★★
ピッコロ劇団初観劇。「かさぶた式部考」のほうも秋元松代の「常陸坊海尊」と並ぶ<不気味系>作品?と認識するのみ、初見だった。兵庫県立劇団は、実力を感じさせる安定した演技ながら、オーソドックス。藤原新平の演出は、舞台装置ともども、変化を持たせ、終幕まで引っ張っていた。休憩入り二幕2時間半。
凄味のあるドラマだ。炭鉱事故で精神を病んだ男とその家族(母と妻)が、巡礼からはぐれた母子と出会い、やがて巡礼の本体である教団と遭遇する。念仏を聞くと「蝉が啼いている」と耳を塞いで狂乱状態になる男は、妻にべったりと頼り切っていたが、ある時母がうっかり家内で焚いた炭の匂いにパニックを起こし、家を飛び出してある場所に迷い込む。そこには泉式部の末裔を教祖に頂く教団の、その美貌の女教祖がたまたま一人で佇んでおり、一目で虜となる。
家には帰らないと言い張る男に、教団の男が「その方は仏様である、会いたければ信心をし仏を拝みなさい」と教えられ、巡礼に加わる事になる。妻は事故以来不能になった夫に甲斐甲斐しくしながらも、別の男と不貞を働き、同居する母は自分を邪険にするように振舞う妻を快く思っていない。そして息子思いの母も、巡礼に加わることになる。
そして後段、ガラリと変わった美術は、山深い場所を示し、外界から一定離れた空間で、教団のより生々しい内情に迫ろうとする予感を促し、胸が騒ぐ。
ネタバレBOX
予感のど真ん中をついて、聖地である山中、教祖女のお篭り小屋を、主人公の男が訪れ「いつものようにやってくれ」とせがむと、女が現れ、妖艶さを振りまきながらつれなく袖にするくだりが演じられる。表向き男関係の許されない女が、犬のように自分を慕う男を弄び、関係を持っているらしい様子が、木々に囲まれた山中で信憑性を帯びて迫ってくる。
その後、教団員の目撃者が絡んで痴話喧嘩の様相を呈するが、その男と争って谷に落とされた主人公を、母が助け出した美談を称える立て看板が聖地の一角に据えられたり、目撃者(元々精神を病む)を病院行きにさせたり、秘密裏に事は運ばれる。
このかん、谷底に落ちた主人公は一時的に正気を取り戻して「迷惑をかけて済まない」等と、まともな話を母にし、母は狂喜する。だが、その頭で男は女教祖に向かい、自分らは恋人であり、正式に交際したいと申し出るが、正気になった男は要らないと女がすげなく関係解消を言い渡すと、男は再び「蝉の声」を聴き、不確かな頭となる。
正気の息子を見た母は、実家に戻ってその事を嫁に伝え、夫を迎えに行くよう諭す。嫁と母の関係では、母子が家を去る前、嫁の腹に子が出来たことが知れ、母は問いただす。その以前、出かけがちな嫁を見て「息子がああなった以上いつ出ていってもいい」と母が気を利かせたのに対し、「上の方はダメでも、下のほうは健康そのもの。外で男を作るなど濡れ衣」と嫁は答えていたが、嫁の懐妊を見て母は息子の状態は日々暮らしていれば判ると言い、嫁の証言を引き出す。女は決して夫と別れるつもりはない、子供がほしいのだという。事実、嫁は二人を養うために汗して働き、夫にも丁寧に接する姿があった。
時を戻して現在、夫を失った悲しみをこぼす嫁を母は説得し、二人は山へやって来る。ところが男は元に戻っており、嫁はここでも憎まれ口を叩く。母は失望に膝を落とすが、教団の底が割れた母は決意を秘めて女教祖に談判をする。息子を翻弄せず、どうか実家に帰してやってほしい、息子にそう諭してほしい・・その代わり自分がこの場所で奉仕をする。この会話の中で息子が「元に戻った」事も女に告げると、女は答えを保留する。
やがて女教祖を追って姿を現した男。下手に母が、上手に妻がそっと様子を見守る。まず妻が夫の様子を見て折れ、女に対し「夫を譲るから末永く面倒を見てくれ」と言い置く。が、女教祖は男に実家へ帰りなさいと諭す。男は苦悶し、女は母に「あなたがそうしろと言った結果です」と突き放し、去る。母は苦渋の顔で見送る。しかし妻は(芝居中)初めて氷解したように夫の元へ駆け寄ってかき抱き、家に帰ろうと告げる。男は失意の内に女を受け入れる。この一連のやり取りの中で男への妻の愛が浮き彫りになり、来るべき結末に森の木々が震える。
暗転後、後日談。「母子の美談」の看板の下で火を焚いて働く母の姿があり、観光スポットとして訪れる若者はみすぼらしい老女を蔑み、看板に描かれた美しい母を賞賛してはしゃぐ・・といった世の人の浮薄さがさらりと描かれ、教団メンバーの巡礼の列が通るも、腰を屈めて働く母と視線を交えることなく、幕となる。
精神を病んだ主人公とその妻が役にはまり、好演。母は設定年齢に届かない女優が老けメイクで臨んだが、表現力豊かにドラマの軸として劇を支えた。
2014年上演したものの再演で東京遠征、この演目がレパートリーに選ばれた背景は判らないが、この戯曲の高いレベルでの舞台化を観ることができ、感謝。
消滅寸前(あるいは逃げ出すネズミ)
ワンツーワークス
ザ・ポケット(東京都)
2017/10/20 (金) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
自分の実家のあたりのことを考えるとひとごとではないと思いますが、さりとてどうしたらいいのやら。今回の選挙で当選した人たち(落選した人たちにも)にしっかり考えてほしいもんだ。
ネタバレBOX
なんで「ひろおか」と言ってしまったのか聞こうと思ったのに忘れてしまいました。
playroom〜硝子の中の金魚〜
ひまじん企画
GALLERY LIPP(東京都)
2017/10/20 (金) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
詩の如きテクストの朗読を背に女性2人によりパントマイム的に演じられる金魚の生活、紙芝居でも観るような45分、音楽のチョイスも素敵。ライブペインティングなど独自な試みも。
JOE MEEK
ピストンズ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
ステージセット、各場面の見せ方、深み、音楽への理解など、あらゆる点で初演時の10倍はパワーアップ。次々に新しい才能が現れる音楽業界の群雄割拠のダイナミズムを、ちょっとオカルトを交えながら、生き生きと表現。作品を再演するならこうあるべきだというステージになっていました。
刻印
劇団活劇工房
明治大学和泉校舎第二学生会館地下アトリエ(東京都)
2017/10/21 (土) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
ドタバタ喜劇の多い劇団がちょっと怖い系のミステリーに挑戦。ステージセットや効果音の使い方も進化。雑誌記者ふたりにもっと怖い思いをさせちゃえばよかったのに〜とも思いました。あの村、さらに黒歴史が続きそうですね。
ブランコを蹴飛ばして
近女迷惑
桜美林大学・町田キャンパス 徳望館小劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★
石の粉みたいなものが入った小さなガラス瓶がチケット(記念に机の上に飾っておきます)。若者たちが厳しい社会の中で味わうなんとなくレベルの挫折感を描いた群像劇で、全般的にしっとり暗めの雰囲気だったので、もう少し緩急が欲しかったなあというのが、生意気な客の感想です。ひとつひとつのエピソードによって私の人生のプチ黒歴史を思い出させられ、登場人物への共感半分、自分を恥ずかしく思う気持ちが半分の90分でした。時にはこういう演劇もありでしょう。ネガティヴなことばっかり書いちゃってますが、それだけ心にチクチク刺さったってことですよ。これからの活躍に大いに期待。近所にたくさん迷惑をかけてください。
ビルクリ〜こればなおして そこ はわいとき!〜
劇団PA!ZOO!!
博多リバレインホール by Active Hakata(福岡県)
2015/08/29 (土) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
強烈なキャラのおばちゃんがとっても面白い劇でした。
また機会があったら見たいです。
ARE YOU HAPPY ???〜幸せ占う3本立て〜
東京デスロック
STスポット(神奈川県)
2017/09/30 (土) ~ 2017/10/14 (土)公演終了
満足度★★★★
「再生」当日券にて。KAATでの岩井秀人演出版の衝撃パフォーマンスを思い出すと、STスポットという狭小空間でのオリジナル版をどうしても目にしたくなった。ネットで売止めだったが当日訪れ、どうにか客席に押し込んで頂いた。
やはり、三度「再生」する。曲は6種。この芝居は男女が飲んで浮かれ騒ぐの夜の風景であり、曲のたびに踊るという「騒ぎ方」が特徴だ。
熱演というものは、あるのだと思うが、どんな舞台も役者は本番では本域でやるものだろう。だがその後、疲労という負荷を背負いながら「再生」させられる様は、異様である。この異様さは観客にも高揚をもたらす。
芝居の一連の流れには噛み応えのあるおいしい箇所が仕込まれており、逐一再生されると、見る側も楽しみになる。
選曲が良い。shangri-laで締めるなどは憎い。
今これを思い出しながら、あのシーンをまた見たい(確認したい)、などと思っている。噛み応えあるシーンを、また噛みたいと思うこの欲求は、演劇という一回性の芸術の本来の姿と背反しているが、レパートリーということで言えば、「あの旅一座がやってた沓掛時次郎を見たい」、なんてのは「再生」への欲求の原形ではないか。
ただ・・録音録画と再生技術を実際に手にした時、どうなるのかは、科学の進歩が見せる「未来の風景」に属した。演劇の「再生」不可能性を、この舞台は示すもののようでもあり、ここからあらゆる芸術の「再生」について考えさせられる。
ファンタズマゴリア
天幕旅団
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/07/06 (木) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★★
3編交互上演かと思いきや、旧作の新バージョンは前半・後半に分けての上演(それを踏まえて新作も前半と後半で演出が変わる)と知って慌てるも無事に3作コンプリート。
【エメラルドの都~sentimental happy days~】 (7/11 19:30)
ペシミスティックな「チーム対抗オズの魔法使い」、以前観ていたので「そうだったなぁ」とか「そうだったっけ?」とか思いつつ観る。映像で言えば「短いカットを重ねる」ような場の畳みかけとそのスピーディーな転換が流石。
【僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪】(7/23 14:00)
7人のアレの設定が鮮やかで赤いアレの使い方が見事。いやホント犯行動機に説得力がある。なお、選んだ席は白雪姫の「行ってらっしゃいの笑顔」の特等席。
【天幕旅団の遊園地】(7/23 18:00)
天幕旅団としては珍しく本歌取りでない中編にして多分にリリカル。
冒頭場面で漠然と星新一を想起したもののやがて「いや、違うな、他にこんなタッチがあったようだが誰だっけ?」状態に。
『バイカル湖プラス』『親不孝』
劇団ピアチェーレ
日本女子大学西生田キャンパスB棟37番教室(神奈川県)
2017/10/21 (土) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/22 (日) 14:00
価格0円
無題2152(17-156)
14:00の回(かなり強い雨)
13:40開場、13:56前説、14:00開演~14:14終演。
久しぶりのピアチェーレ、初めて観た公演から6年半、就活などを考慮すると3回くらいの世代交代。
日女祭は2回目(2015)でしたがあいにくの大雨、にもかかわらず用意された座席は埋まったようです。
会場は教室、テーブルがひとつ、照明、簡単な造りですが、そこが教室公演の面白さを生む要素のひとつ。
14:00の回は全員1年生(ダブルキャストの柏山さんは2年生)。
作品は別役さんのものでまず観ない作家さん。短編というよりショートコント。
個人的には登場人物(両親、先輩)をもっと濃く(絵にかいたようなorステレオタイプ)描くとひっくり返った時の面白さがより出たのではないかな、と思いました。思いましたが女子大なので男性役を演じるのも難しそうですね。
学園祭お疲れ様でした。次回は12月@梅ヶ丘BOX、楽しみにしています。
くれなずめ
ゴジゲン
駅前劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
「愛すべきおバカな輩たち」これまでの持ち味はそのままに、ゴジゲンさんにもようやく哀愁の香りが漂ってきた様に感じられたのが良かった。
かつてはこじれた童貞ゴコロを熱演していた劇団さんが大人味を醸し出してくるのは、ごく自然な事でありながら何とも感慨深いです。
ストーリーの中には自身のプライベートを切り売りした様な面白味があり、そこから劇団の歴史が垣間見れた気がして、ちょっとした記念公演の様にも感じました。
等身大で描かれるであろう今後の作品にも期待が繋がります。