
インテリぶる世界
箱庭円舞曲
ザ・スズナリ(東京都)
2017/05/10 (水) ~ 2017/05/17 (水)公演終了
満足度★★★★
ガレージのような場所で、女が取材している。
その場所は、かつて人気を博したアーティスト集団「深八幡朱理子」の活動拠点だった。彼らのファンだったその女は、どうやら彼らの活動を再開させたいらしいが、リーダーだった男が今は自分一人でその名を引き継いでいる、という。
女が取材している「現在」と「深八幡朱理子」が活動していた「過去」が絡まりあうように物語は進む。
描かれる「過去」は、それほど遠い時代ではない。パソコンや携帯端末もあるが、まだインターネットが普及し始めたばかりのころだ。いまとは異なる当時の状況が懐かしく思えたりする。
観ているうちに、取材する女の語る「深八幡朱理子」の印象と、実際に描かれる「深八幡朱理子」のギャップ。
仲間の名前から1文字ずつ取ってグループ名にし、先生に無理矢理書かせた看板を無断でサイトに掲載し、パズルゲームの数学的な解法を示した式を、もっともらしいムーブメントにしたてあげる。
にじみでる、ある種の子どもっぽさと自己顕示欲。
グループのメンバーにも温度差や意識の差がある。加えてそこに人間関係や恋愛模様もある。
それが特に強く感じられたのは、先生との議論の場面だ。ひとりは先生とある程度同じ土俵で議論している。先生が若者をあおり、若者は先生を糾弾しつつ、それぞれの間に共感があり、一定の問題意識を共有し、客席にいてもその高揚感が伝わってくる。その傍らで、同じグループのメンバーのある者は憧れめいた視線を送り、ある者は疎外感と焦燥をあらわにする。
そういう人間関係等に頓着せず独自のスタンスでアートを探求している者もあれば、サークル活動めいた感覚で加わっていた男は堅実に就職しようとしたりする。
そこに、リーダーの家族が加わる。活動の場所が生活圏と隣接しているため、彼らの活動や人間関係に無関係ではいられない。今と過去。家族の変貌と喪失。
現在の場面では、彼らに執着して取材を続ける女の苛立ちやひとりでグループ名を引き継いでいるリーダーの模索、当時と変わらずマイペースにアートを探求し続けている男、そして現在の家族たちの様子が、そのガレージで描かれる。
そして、父。すでに亡くなったその人のある行動が、割り切れなさに似た余韻を残す。遠慮がちに応援していたように見えたその人は、彼らに対して、いや息子に対して何を求めていたのか。
生と死とパフォーマンス。
喪服。中毒。首吊り。飛び降り。死を想起させるモチーフが散りばめられつつ、それでも彼らは生きていくのだろうと思った。
個性的なキャスト陣が繰り広げる絶妙なやり取りが、共感とは異なるレベルで妙に身につまされる舞台であった。

『死なない男は棺桶で二度寝する』 &『オハヨウ夢見モグラ』
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/05/03 (水) ~ 2017/05/14 (日)公演終了
満足度★★★★
『死なない男は棺桶で二度寝する』
タイトルのとおり、死なない男の話。『錆びつきシャックは死ぬほど死にたい』などとも共通する不死の哀しみを題材にした作品だ。
ヒロインである信子が、偶然(?)知り合った1人の男。名は六郎。とても優しくて、でもちょっと世間からズレているその男には、ある秘密があった……。
楽しいクリスマスパーティのはずが、半裸の男女が血まみれで飛び込んできたりする予想外の展開、破天荒なキャラクターたち、社会風刺すれすれのナンセンスさなど、笑いの要素をたくさん詰め込みつつ、物語はしだいに孤独や哀しみに寄り添っていく。
主演の吉田翔吾さんは、可愛らしいルックスとどこか浮世離れした演技で死なない男の孤独を描き出していく。
特に印象的だったのは、人魚の肉を喰らう場面だ。
グロテスクな姿の悪臭を放つソレを、たらいからつかみ出しナマのまま貪る。妹を守りたいという想いに突き動かされて。
ふだんの優しい印象からは想像できないほど壮絶な怒りと哀しみと焦燥と……。
圧倒された。
彼の秘密を知る男 大島。記者である信子は、精神病院で彼の話を聞く……。その内容の奇妙さと男の苦悩。横尾さんは他の作品でも似た感じの痛ましい役を演じて印象的だったが、ここでも物語の暗さを引き受ける役柄に説得力があった。
さまざまな出来事を重ねて、終盤に登場する、小岩崎さん演じる老女がとても好きだ。この方の老け役は他の作品でも何度か拝見しているが、いつもなんていうか、メイクや髪以上に声や仕草が重ねてきた年月を感じさせる。
この作品でも、過ごしてきた半生がにじみ出るような、素敵なおばあさんだった。
忘れてしまったその人との日々。それでも、運命に逆らうように刻みつけた名前。
いくつもの伏線が気持ちよくハマってラストの感動につながる。いろんな意味で綺麗な物語であった。
観終わったとき、すべての登場人物が懐かしく愛しく感じられるのは、六郎の孤独と思い出に気持ちを重ねているからかもしれない。
『オハヨウ夢見モグラ』
こちらは短編集だ。ただし、短編の外枠となる物語があって、全体ではひとつのストーリーとも言える構成となっている。
子どもの頃の事故が原因で、眠ったまま生き、年に1日だけ目覚めることとなった男の物語。目覚めた時に彼が語るいくつもの奇妙なお話がそれぞれ短編となっている。
『きみはぼくのやさしいともだち』
リストラされた武田が出会った若者 江尻の提案は、大金と引き換えに自分の友だちになってくれ、というものだった。
金を使い続け、引き返せないところまで来てしまった武田は妻や元上司にも裏切られ……。
武田を演じる加藤さんの、平凡な元サラリーマンとしてのとまどいや欲や打算に共感しつつ、その運命がどこへ向かうのか、ハラハラしながら観ていた。
『無音はお前の耳にも届いている』
マスター:渡辺裕太
バーのカウンターで、マスターと客が交わす何気ない会話からはじまるとっても怖い話←語彙力(^_^;)
マスターの静かな狂気と死んでいく正田の傍らで微動だにしない客。彼には聴こえているのか、いないのか。
ホントに怖いのは幽霊とかじゃなく人間なんだよな、などと改めて思う。
『いつでもいつもホンキで生きてるこいつたちがいる』
冴えないサラリーマンの松本には、かつて人間ではない大切なともだちがいた。ある日、人間に駆逐されたはずの彼らが蘇って……。
ま、なんていうかこういうの、この劇団らしいって気はする。怒られそうなスレスレの悪ふざけをしつつ、芝居も登場人物も一生懸命な感じにちょっとうるっときたりするのだ。
『黒豆』
これ一編で上演されても満足できそうな完成度とボリュームのある作品。
加藤さん演じるブラック・ビーンは、クールなエージェントとドラーグクイーンという2つの顔を持つ。決めポーズがばしばし決まるカッコいい昼の顔と、セクシーかつナイーブな夜の顔の振り幅が素敵。
妹のジェシカと同僚のソフィーを演じる増田赤カブトさんもタイプの違う役なのに、それぞれピタリとはまってチャーミング。
物語の中で2つの顔を持つ男と、2役での2つの顔を持つ女。トリッキーな構成で、たくさん笑いながら、実はとてもロマンティックだったりするのも面白かった。
『じかんをまきもどす』
星新一のショートショートみたいな、時間モノの洒落た短編。でも、まきもどす様子を目で観る面白さは舞台ならでは、かも。
そして、それぞれの短編をつなぐ軸となるストーリー。
『モグラの見た夢』
野口オリジナルさん演じるミツオは、年に1日だけ目覚めて、少年の精神のまま老いていく。
眠りの中で集合知にアクセスしているのかもしれない、という医師の説明を背景に、彼の語るたくさんの物語が、それぞれの短編となっていた。
目覚めるごとに、1年が過ぎている。気がつけば月日は過ぎ、自分も老いていく。無邪気な少年らしさは失わないまま、過ぎた時間は確実に彼の心にも積もっていったのだろう。そう感じさせる変化が切ない。
母役の高橋ゆきさんをはじめとする家族や幼馴染の様子も笑いを交えつつ丁重に描かれて、ミツオのいない時間の経過を感じさせた。
行き場のないそれぞれの想い。それでも、この物語は悲劇ではないのだと感じさせてくれる優しいラストがかえって涙を誘った。
同時上演の『死なない男……』ともつながって、二本のPMC野郎を堪能した一日の終わりにふさわしいエンディングとなった。

憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
この作品で初めて劇団壱劇屋さんの舞台を見たのですがノンバーバル芝居を見たとき感動しました。
姉が妹を守り妹が姉を守ったりとかなり感動しました。

果ての踊り子
劇団晴天
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/12/23 (土) ~ 2017/12/30 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/28 (木) 19:00
価格2,800円
19:00の回(晴)。
18:15外は寒いからというのでスタッフの方の誘導で階段半ばまで入れていただく。ちなみにその制作の田中亜実さん(劇団女体盛り)は桜美林出身の方で、在校時に@PRUNUS HALL、@徳望館の公演でお会いしたことがあります。
そういえば寒くなってから時間前であっても中に入って待つように促された公演が今までどのくらいあったか..もちろん、会場の構造上無理なところが多いので...。いつ頃だったか、同じこの会場で雨風が強かった日、そこそこ並んでいるお客さんに指摘されてようやくスタッフの方に中に入れてもらったこともありました。
こちらは2公演目「羽とままごと(2016/11@SOOO)」以来。
鈴木彩乃さんは今回も出演、他には「マウント(2017/4@王子)」「男装音楽劇 くるみ割り人形(2016/3@シアターウエスト)」。
また、森原彩夏さんは本年4公演目。永野百合子さんはダンス公演(@スパイラルガーデン/@あうるすぽっと)を含め4公演目。
鳥井響さんは「檄熱(2017/5@ユーキース)」。
18:50前説(100分)..この時、かなり大きな音で音楽が流れていたのが気になりました。諸注意はちゃんとお客さんの耳に届けないと...。19:00開演のお知らせ~19:03開演~20:39終演。
神話か、古事記のような、アラビアン・ナイトのような、どこか遠くの世界のお話のようでした。
生贄あるいは人身御供。自然に対する恐れと生存に対する危惧から生まれたもののお話。古今東西、同じような儀式があったようで、メル・ギブソン監督「Apocalypto(2007)」、「ラ・ドンチェラ」、「フワニータ(悠久の大インカ展 1999/4@三越美)」など。
舞台美術によって2つの時間軸が見えてきますが、そのつながりを理解するのに少し手間取りました。早い段階である程度の世界像が掴めないと、登場人物への共感が生まれにくくちょっと勿体ないところも。
高低差のある舞台造作も危なげなく、ダンスも綺麗でした。
当パンには役名も載せていただけるとありがたいです。

心踏音 -Shintouon-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/10/27 (金) ~ 2017/10/30 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
盲目の男と声が出せない女、その設定だけで五彩の神楽で一番、個人的に興味と期待が高かった作品。期待は裏切られることなく、それ以上のものを見せていただきました。吉田さん演じる盲人の凄みのある殺陣が素晴らしい。今中さんの演じるフミも可憐で美しかった。よく泣きました。笑

蒼い刻
≪ thorough ≫
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2017/11/17 (金) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
設定、世界観が好みでした。生演奏やライブペインティングなどの演出があり面白かった。しかし、少し説明じみた台詞が多くてくどく思えた。全部言わなくても観客が察するだけのヒントは与えられていたと思う。

戰御史 -Ikusaonsi-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/11/24 (金) ~ 2017/11/27 (月)公演終了
満足度★★★★★
ここまでの三つとは全然違った作品だった。五彩の神楽で一番難解な印象。しかし、とにかくかっこいい!最初は「どういうことだろう?」と首を傾げながら観ていたのですが、途中からは考えることをやめて、ただただ食い入るように観てしまいました。大熊さんの奇怪なマイム、赤星さんの破壊的な殺陣、伊藤さん、満腹さん、サリngさん、河原さん、竹村さんのキャラクターがどれも魅力的でした。カテコまで鳥肌立つほどかっこよかった。

指と爪
劇団洒落乙。
OVAL THEATER & GALLERY (旧・ロクソドンタブラック)(大阪府)
2017/12/29 (金) ~ 2017/12/31 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/12/30 (土)
【年末レズ爆走公演】だけあってぶっ飛んでて痛快でした☆あそこまで振り切れてるともはや美しいです☆ぶった斬れのベディさんはあれが女優としてのベディさんなのか素のベディさんなのかがとても興味深いです★挨拶文で姫初め予定日を告知するクレイジーさが魅力な人なんだと解釈しました♪

藁藁・餅・まめまめしい女
演劇ユニット「みそじん」
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2017/12/28 (木) ~ 2017/12/30 (土)公演終了

果ての踊り子
劇団晴天
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/12/23 (土) ~ 2017/12/30 (土)公演終了

朧の森に棲む鬼
関西大学劇団万絵巻
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2017/12/08 (金) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
朽ちた白骨が 遠い昔の出来事の様に見える。嘘 裏切り 企み 欲望だけの思惑 一つの人の姿に見えた。 嘘と自分の欲望で真実が見えなくなる人 嘘と解りながら毒を飲む人。 学生演劇に有りがちな始まりの不安定感もなく無く 神の舞で神秘的になる。 殺陣 シブキ ツナ シュテン 女達の揺れる心 キンタの視線 マダレの悪意の変化 引き込まれた 面白かった。

憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
ノンバーバルですが、ストーリーも分かりやすく、かつ舞台がヨーロッパぼいので衣装も華やかで、老若男女楽しめる作品だと思います。何度か戦争のシーンがあるのですが、ど迫力の集団殺陣は一見の価値ありです

賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/09/22 (金) ~ 2017/09/25 (月)公演終了
中村るみさん、めちゃくちゃ可愛い義賊でした!バトンみたいにクルクル小道具使って、キュートな表情で殺陣する姿にただただ釘付けでした🎵
しかし、主人公以外にも見せ場が何ヵ所もあり、岡村さん演じる裏切られても許す男には涙が止まりませんでした。ほんまに壱劇屋さんの作る舞台ってハンカチ必須ですよね😅

賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/09/22 (金) ~ 2017/09/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
中村るみさんの華麗なボアクションはもちろん、井立天さんと湯浅さんのキャラがコミカルで面白いかったですね。ホロリとさせられるところもありますが、基本的にはコミカルで純粋に楽しめる作品だと思います

憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
末満さん目当てで観た舞台でしたが、とにかくアクションモブが凄かった❗今までセリフある舞台しか観た事無かったからめちゃくちゃ新鮮でした。初めから最後まで、延々動いて演技して殺陣も本格的で…。ただただ圧巻でした…。

戰御史 -Ikusaonsi-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/11/24 (金) ~ 2017/11/27 (月)公演終了
満足度★★★★★
誰かにどんな内容か、はっきりと説明できない舞台です。でも、目が話せない程に面白かったです❗赤星さんの殺陣が半端ないくらいに速い!そして、絶対しんどいと思うのに、ラストまで笑いながらめちゃくちゃ楽しんで動く姿に観ている私までワクワクが止まらない!ほんまに面白かった❗

心踏音 -Shintouon-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/10/27 (金) ~ 2017/10/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
壱劇屋さんの五彩の神楽で一番好きな舞台。
とてもとても心にくる話です。
主人公を取り巻く優しい人達に泣くし、最後の最後哀しくてそして、ホッとして…。
要するに延々泣いてました。今年一番の私の推し舞台はこれです❗

第25次笑の内閣『名誉男性鈴子』
笑の内閣
KAIKA(京都府)
2017/11/09 (木) ~ 2017/11/14 (火)公演終了
満足度★★★
かなり前に西部講堂で見たときはまさに腹筋がちぎれるほど笑いました。
今回も満席ですごく楽しみにしていたのですが、笑っていたのは一部の人でした。
話も出演者も作品としてすごく完成度が高いのは間違いありませんが、劇団名からさぞかし笑えるんだろうなと思って期待してただけに少し拍子抜け。
思想云々ではなく、好みの問題として表現がストレートすぎて自分の中では笑いに昇華できなかったかな。

楽屋ちゃん2017
中野劇団
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2017/07/21 (金) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★★
人気劇団と言われる公演は何度か見てきましたが、概ね前列に陣取るファンと初見の温度差が激しく、それに引いてしまうことが多かったのですが、
この劇団は(少なくとも自分が見た回では)むしろ後方部からの笑いが大きく、比喩でなく、物理的に客席が揺れるほどの笑いが起き、まさに一体となっていました。
内容についてはいろいろ好みがあると思いますが、公演中の楽屋が舞台という、一見、演劇関係者向けの設定であるにもかかわらず、いわゆる「一般の人も楽しめるクオリティを有している」、当たり前のようですが、それが実践できる数少ない劇団の一つであることは保証します。

遠き山に陽は墜ちて
劇団肋骨蜜柑同好会
シアター風姿花伝(東京都)
2017/04/28 (金) ~ 2017/05/02 (火)公演終了
満足度★★★★
開演してまもなく、姉の述懐で過去のシーンへと遡る。弟がいなくなる一年前のことだという。
姉は、オレンジ色の髪の少年とも少女ともつかない奇妙な生き物と公園で出会う。正確に言えば、職務質問されていた「それ」を助ける形でともに団地に連れ帰ることになる。
姉と弟の暮らしに突然加わった「それ」は、ある日花屋で薔薇を見かけて言葉を話し始める。
続く赤いワンピースの女性と「それ」の2度目の会話。(『星の王子さま』じゃないか!)とそこでようやく気がつく。
それまでにもいくつかのキーワードがあったのに、と前の場面が脳裏をよぎる。ついたて、毛布、水。
でも、『星の王子さま』だけじゃない。
ロズウェル事件(墜落した未確認飛行物体をアメリカ陸軍が回収したと言われる)との関連を思わせるプレートを身につけていた。
それから『ジギー・スターダスト』、あるいは『地球に落ちてきた男』、そしてロックンロール。昨年亡くなったスーパースターだ。
オレンジ色の髪の「それ」は、さまざまな寓意を抱えつつ、寂しげな声で話しかける。
哀しいくらい綺麗な夕焼け。むかし愛した一輪の薔薇。故郷を離れて出逢う人々。登場人物はみなどこか歪んでいて、この地上では生き難そうに見える。
モチーフとなっている童話より少し可笑しくて少し痛々しいのは、大人になってしまったからだろうか。
夕焼けに染められた屋上に太陽風が吹く。低緯度オーロラが空を染める。遠い星へ帰っていったロジー。姉弟のうちの弟も一緒に行ってしまった。
『星の王子さま』のラストと同様、それは死であり帰郷であった。
降りそそぐ薔薇の花びら。客席まで染め上げる紅い光。ロジーの髪は王子と同じ小麦に似た黄金色かと思っていたけれどそうじゃない。オレンジだと再三言われてたじゃないか。それは夕陽の色で、薔薇の色だった。