キャガプシー 公演情報 おぼんろ「キャガプシー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    当日、上演前は強風で天幕の隙間から冷たい風が吹き込んでいたが、物語が進むにつれて寒さも忘れ話にのめり込んで行く。観る者の心を揺さぶり体内を熱くさせる、そんな4人の熱演が素晴らしい。
    さて、今回は特設劇場ということもあって、事前に何度も案内(道順の動画まで)等のメールを配信するなど丁寧な対応が嬉しい。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    閉ざされた森というシチュエーション、それを表現するための特設劇場(葛西臨海公園内)。その前衛的(外観はファンタジック)セットは衣類などを張り合わせたもの。場内は雑然とした配置のように思うが、それは人の心の表れか。パイプ組した櫓が対角に2つ。その上り下りの動作によって躍動感とテンポの良さが生まれる。

    物語は、人間の穢れを人形(キャガプシー)に押し込め、その人形同士を戦わせて穢れを浄化させるというもの。人間の勝手さ、人形の哀切が鮮明に描かれる。もちろん寓意を籠めている、その訴えは強く明確に伝わる。
    先代・人形師が作ったキャガプシーは10年間無敵。その人形師が殺され娘・ツミが後継した。その娘が作ったキャガプシーは無敵の人形を兄と慕い、殺し合いを望んでいない。逆にこの森から逃げ出すことを提案するが…。

    特設劇場内を森の中(戦いの場)、そして観客やTV視聴者(参加者)を借景として、演者(語り部)をキャガプシーに見立てた劇中劇のような気がする。公演中は風の音、それによって軋むテントの支柱が不気味な効果音になっている。そして遠くに聞こえる花火の音が幻想的な気分にしてくれる。

    人間の穢れを他者(人形=ギャガプシー)に負わせ、人間は素知らぬ顔の傍観者。また自身もギャガプシーでありながら、興行主になるネズミ。自分のこと、または身近な周りのみに気を配る、そんな視野狭窄で安全地帯の世界観が描かれる。しかし、森の外は素晴らしい世界、その開眼と広がりに幸せを見出す。”おぼんろ”らしいファンタジー、そこに籠められた悲しく、しかし優しく美しく力強い物語であった。同時に葛西臨海公園の自然そのものが、劇場内と対比した小宇宙のような壮大感を表しているようだ。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/11/10 20:46

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