
ヤシの木
トリコロールケーキ
北とぴあ カナリアホール(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
とにかくシュールな世界観にハマってしまいました。巧みな女優陣に混じって、作演出の今田さんが何か言う度に面白い。どうしてこんな演劇を発想できたのか不思議です!

徒花
teamキーチェーン
d-倉庫(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
「笑い」や「デフォルメ」には一切頼らないドラマ“力”。
水が高い所から低い所へと流れるが如く、主人公達の抗えない運命が徐々に見えてきたとしても、この目で彼らの行く末をしっかりと見届けたい!と強く思いながらの観劇でした。
私にとっては1年チョイぶりのteamキーチェーンさんですが、その進化ぶりは目ざましく、若くしてここまで円熟した公演を打つまでに達していたとは・・・驚きです。
事件勃発前、和やかな日常シーンからもう既に漂う哀しい予感・・・その理由は舞台上手にもあるのですが、それ以外でも何かあったはず・・・一体何が隠し味なのか、後々まで残る不思議感・・・以前の公演でも似たような感覚になった記憶が蘇りました。
その後の展開は、もう一気にストーリーの波に飲み込まれるしかなく・・・
主演以外の役者さんの存在感もどんどん肉付けされ、作品がより大きく、より豊かなものへと成長していく醍醐味。
これだけの豊富な人材は劇団の財産であり、見事に活かしきったのは劇団の力量があっての事。
東野圭吾張りの面白さだったなーと思いつつも、仮にその小説をそのまま表現したからといって同等の面白さが保証されるものではないのが舞台の難しさ。
やはり良質なストーリーがあって、更にそれを最大限に引き出す演出と演技力が伴わなければ中々到達できない生舞台の底意地悪さを見事にクリアーしていたのだなーと納得しつつ、今夜は回想に浸りたいです。

焔~ほむら~
JACROW
駅前劇場(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了

海賊
NBAバレエ団
東京文化会館 大ホール(東京都)
2018/03/17 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/17 (土)
大好きで応援していた宝満直也くんが、新国立劇場バレエ団からこちらに移籍しました。
その初めての作品で、彼は悪役のボスパシャ・ザイードを演じ、振付助手も担当しました。
この新製作の海賊では、パシャ・ザイ-ドもたっぷりとダンスがあり、すご嬉しかったです。
演技力もあり、キレキレダンスの彼は、とてもかっこいい悪役でした。なので、逃げ出したいギュルナーレ(佐藤圭さん)はここにいてもいいじゃないのぉと、思って観てました(笑)
振付はどこを担当されたかは知らないですが、男性ダンサーさんの踊る場面がたくさんあって、大満足でした。迫力があり、盛り上がりました。
宝満くん、新国立劇場バレエ団を辞めたのはバレエ団にとって大きな損失だと思います。彼ほどの才能を生かしきれなかったのは、残念としか言いようが無いです。でも、彼が選んだ新天地で、彼の持ち味をたっぷりと生かし、これから世界に通用する振付師、ダンサーになっていただきたいと思います。応援します!
奴隷アリが、なんと!新国立劇場バレエ団のプリンシパルの奥村康祐くんでした。すごいことですよ!
我らの王子が奴隷あせるしかし、ダンスシーンたっぷりで、そのクオリティの高さを、しっかりと見せ付けてくれました。
品のよさと輝きは隠せないので、どこかの王国の王子が幼い頃に誘拐されて、奴隷になったのね・・・・と、お友達と話してました。
しかし、まさか奥村くんのアリを観れるなんて!至福でありました。
申し訳ないほどにこの二人しか観ていなかった私ですが、新しいものを作り出したバレエ団のエネルギーに拍手です。
ちょっと欲を言えば、主役二人の女性ダンサーさんの衣装がとても似ていて、わかりにくい感じでした。
もっと変化があったほうが、良かった気がします。

平穏に不協和音が
演劇企画集団LondonPANDA
小劇場 楽園(東京都)
2018/03/29 (木) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
見てきましたー.
めっちゃ良かったですー.
仙台公演もあるらしいので,オススメします!
日常をあれだけ見事にすくい上げた脚本もすごいですし,
それを芝居で再現する役者さん,演出さんもすごかったです.

アメージング八犬伝
サムライ・ロック・オーケストラ
ディファ有明(東京都)
2017/04/28 (金) ~ 2017/04/29 (土)公演終了
満足度★★★★
今回の演目は「アメージング八犬伝」もちろんあの「南総里見八犬伝」が元になっているので、ヒーローはそれぞれの玉を持つ8人です。そして自分の得意な武器(?)をもって玉梓やその家来の魑魅魍魎たちと戦うという、サムライにはぴったりの演目でした。ヒーローたちがかっこいいのはもちろんですが、玉梓や蜘蛛女、蛇や化け猫もその身体能力がすごかったです。原作ファンの私としては、八房もちゃんと登場させてほしかったですがあの長い物語を全部と言うのは無理でしょうね。

曖昧な犬
ミクニヤナイハラプロジェクト
吉祥寺シアター(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
舞踊のほうでなく演劇舞台であるミクニヤナイハラを観るのは昨年の吉祥寺に続き二度目。nibrollは何度か観て既にお気に入りだが、こちらは実験的「演劇」である。以前NHKで放映された『青ノ鳥』、DVD『五人姉妹』を映像で観たが、このプロジェクトはかぶりつきで、息がかかる距離で観たい、と思った。今回は「台詞はまくしたてながら走る」ノリを離れ、比較的穏やかに発語していた。いずれにせよ台詞がミソなのに変わりなく、矢内原美邦が自身のテキストで勝負したパフォーマンスという事になる。舞台成果は、この時の自分の注意力では台詞を「追う」のが精一杯、パフォーマンス全体を見渡せず。昨年と今年、吉祥寺シアターの後方の席は「遠く」感じてしまった。一回り小さな劇場空間で狭い思いをしながら観てみたい。

わが家の最終的解決
SOLID STAR
シアターサンモール(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/01 (日) 17:00
Aga-risk Entertainmentが2年前に初演した大傑作。前半は登場人物にアガリスクのメンバーの残像が重なりましたが、後半は今回のメンバーのペースにぐいぐい乗せられました。人類の黒歴史の時代を愛と友情とその場の取り繕いで乗り切るという猛毒と大爆笑の2時間。モンティーパイソンも彷彿。

トリスケリオンの靴音
サンライズプロモーション東京
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/29 (木) 19:00
赤澤ムック演じるロックンロール姉ちゃんが大迫力。最近、脚本や演出が多い人なだけに、久しぶりに生の演技を見ることが出来て感激。ちょっと泣ける話。

ハムレットマシーン
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了
満足度★★★★
東独の演劇人として伝説的に轟くハイナー・ミュラーの代名詞的作品を、初めて目にする。絶えずよぎる「旧作品を今やることの限界」への懸念と、演劇史に刻まれた作品に触れることの期待を、ともに燻らせつつ座席に着いた。
OM-2は二度目になるが、いずれ抽象的な舞台になる事は覚悟の上で、「お茶を濁す」のでなく前傾で表現に向かう作品になっているかどうか・・境界を超えられるのかどうかを見ようとする自分がいた。
某評論家と同姓同名の中心的俳優が登場。と、いきなり金属バットでテレビや冷蔵庫を叩き始める。ステージでギターを壊すジミヘンやら鍵盤にナイフを突き立てるキースエマーソンが頭をよぎる。・・60~70年代の前衛表現は破壊にあり、(冷戦を淵源とする)構造は自分らを囲う目に見えない堅固な壁であって、「壊す」表現は「壁」の発見・再認識を促す運動的意義があった訳だった。
一般論を続ければ・・いま物を叩き壊す行為が、プロテストの行為として飲み込みづらいのは、今の時代は様々なものが本質のところで壊され、または壊れている。破壊の向こうに、何か(希望)があるとは考えにくい時代なのである。とすると破壊は「贅沢な遊戯」の類か、出口を失った自暴自棄のイメージしか浮上しない。
ただし、この公演のパフォーマンスは「一般論」からの把捉を許さない毅然とした何かがあった、ような気がする。そう思いたい? いや実際、目を離させず飽きさせず、興味の持続を可能にしたのは、役者の仕事に拠るところが大きい。そして演出・・円形に囲んだ客席のその後ろを自転車が走る。冒頭、中央に巨大な壁があって電話で会話する男女の片方は見えない。やがて巨大壁は吊り上げられ天井に張り付く。当日パンフにもあるタイトル付の数場面が、それぞれ異なる趣向で展開する。この構成からして詩の構成に似て断片的だが、それぞれ視覚・聴覚、また触覚を刺激する印象的な情景が作られ、場面に潜む美学的なメッセージを読み解こう(感じ取ろう)と味わうことになる。
『ハムレットマシーン』は今年の「現代劇作家シリーズ」(d倉庫)に取り上げられ(OM-2公演もその関連企画)、ハムレットマシーン特集年である。テキストは翻訳本で15頁程度。詩的で難解な、隠喩に満ちて皮肉の利いた、シェイクスピアのテキストや社会状況をいじり倒したような文章だ。どの役がどの台詞を言うように指定したいわゆる戯曲でもなく、H・ミュラーがこれを演劇として世に出して評価されたならば、(テキストとしては現代批評性において評価はされようが)上演の形態に特徴があったのではないか・・とは想像である。
ストーリーは編まれておらず、ベースとなる「ハムレット」以上のどんなストーリーを貴方は欲するのか?と反問されそうな勢いで従来の戯曲様式を平然と踏み倒し、ただただ言葉が連ねられる。これを読み解いてからでなければ判らない舞台、とは演出の敗北だろうが、高度に「現在的」な原文を、上演することとは上演する「現在」へ翻案するという事であり、演出家にとっての難物であると同時に挑戦しがいのある山であるのかも知れない。
「観る」自分は、何か言語で表せる「意味」に読み替えようとするが、文脈のみえない示唆的な場面を「意味」に読み換えることは(原作を結局読まなかったし)できなかった。感覚的な刺激の中からサブリミナル効果のような「意味」的なものを感覚的に感じ取っていて、眠っているのかも知れない。

春暁-しゅんぎょう-
野生児童
「劇」小劇場(東京都)
2018/03/29 (木) ~ 2018/04/02 (月)公演終了
鑑賞日2018/03/29 (木) 19:00
価格3,000円
中国人である母が統合失調症になってしまった家族の話にして「半分事実・半分フィクション(冒頭の主宰曰く)」というしんどい内容に加えて徒に時制をシャッフルするのでその度に「いつに飛んだ?」と考えさせられて疲れた。
現在以外に主人公ポジションである次女の大学時代、高校時代、少女時代、まだ彼女が生まれる前で長女のみの時期、両親の馴れ初めなど決して少なくはない過去を細切れに何度も出して見る側を混乱させるのは効果的とは思えない。
そんな内容に加えて公開ゲネプロとはいえタイムスケジュール管理が恐ろしく杜撰で開演前にストレスを与えられたこともあり「So what?」に終わったのは残念。

ブラインド・タッチ
オフィスミヤモト
ザ・スズナリ(東京都)
2018/03/19 (月) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
通し券があれば毎日観たい芝居だった。
その理由は置いて・・
二人芝居。観客にとっても、視線を散らす事のできない濃縮された時間だが、開幕から力みなく、いつしか誘われた。
燐光群の、というよりは、坂手戯曲の調子であったと、体言止めや「である・だ調」の頻出に改めて思うところなれど、会話で状況が立ち上がるストレートプレイのモデルのような作品である。刑務所の面会室のボード越しでなく生身の再会を十数年ぶりに果たした男女二人が、新たな二人の結婚生活を始める一軒家にやってきた、その瞬間からの恐らく何ヶ月間かの物語。関係の物語だ。
少し遠めの過去と、ある事に関する真相が、徐々に顕現してくる。まずは場を認識させ、近い過去を類推させ、二人の距離を推測させる、言わばベールが剝がれて行く過程がうまい。
男は「運動」の中で、ブラインドタッチというバンド(二人組み)の片割れとしてライブ活動をしていたが、騒乱事件(抗議する市民と機動隊との衝突)に巻き込まれ、騒乱を主導したとしてバンドのもう一人の男と共に有罪となり服役する。よりリーダー的存在とされて冤罪で服役する片割れを残して、彼は再審の結果16年目に釈放された。
男と知り合って間もなかった女は、二人を救出する運動に打ち込み、その過程で男と結婚した。女は男との関係について、また相手への配慮について、言葉にし得る限り言葉にし、二人の間の信頼関係が続くことを前提にあらゆる事を話題にする。それは男の社会復帰への道を伴走しようとする行為であり、男は女に応答するべく、言葉を紡いでいく。
その中心にあるらしいのは、音楽、ピアノであった。
女は新しく借りた部屋にピアノを置いている。運動の世界では著名なバンドであったブラインド・タッチの一人が解放された・・男の釈放は「運動界」ではそう認識される。だが沖縄の集会に招かれ、ジョイント演奏を乞われたと女に告げられた瞬間、彼は演奏を強く拒む。
理由はひどく納得できる衝撃的なものだった。即ちバンドを主導していたのは譜面が読める獄中の片割れであり、曲の主軸は彼が演奏し、男のほうは破壊的な音の介入をして掻き回す役であった。譜面も読めない。
この告白への女の反応がよい。少なからず動揺して一瞬視線が宙を泳ぎ、「事実」の確認のための質問を続けた後、女を支えていた何かが脆く崩れそうになる予感が走るが、女は彼との関係を続ける方途を探るのだ。
借りた一軒家の庭に、男は離れを作り始め、暗転のたびに基礎、柱、全体と出来上がっていく。ほぼ囲いができたある暗転の後、なぜか女がその部屋に閉じこもっている。「独居房」的に使った感想を言う。「あなたはよくこれで何年も耐えられたわね。」
場面は前後するが、話題は性的な事柄に及ぶ。つまりは、何でも話題にする女のある種の意志の表れだ。と、男はアレが「できない」事を女に詫びる。女は自分が悪いという。私の方が年上である事を言い、何かの団体の○○さんとはやれたのかと訊くと、男は強くは抗わず、認める。「一緒に住む意味とは」「結婚とは」「繋がる事について」・・。
女は自分が出て行く、と言う。男が自分のほうこそ、と。すると女は「この部屋の家賃もあなたの救出支援活動のカンパが財源。あなたに住む権利がある」と明快に答える。執着を断ち切った、突き放した語りの後ろに、女の内にある情熱を、観客は仄かに感じ取る。女は男へ介入し続ける。男の意固地な拒否をみて、怪我を装うために指に包帯を巻きはじめる。「これは二人の新婚旅行だね」と知人に言われた沖縄行きを断行する決意を示すと、男は渋々首をタテに振るのだった。
会話の前後関係まで覚えていないが、女は男のその「演奏」に対するこわばりまでも最後は溶解して行く。ある一言が確か、あった。が忘れた。いやそれは女が弾くピアノの音だったか。。
「離れ」の壁を引ん剥くと、そこにはもう一台のピアノがあった。女はそれを貯金をはたいて買った自分用のピアノだという。男には、男のために買った、部屋に置かれたピアノを「あなたはそのピアノを弾いて」と、あてがう。
無言の間。男は、ピアノへと近づき、手を伸ばしてみる。その意味するところを観客が回顧する間もなく、二人は「演奏」を始めるのだった。

赤道の下のマクベス
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/03/06 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/16 (金)
作・演出 鄭 義信さんです。
舞台両端に並ぶ独房、奥には大きな厳重な扉、下手手前に簡単な水道、中央の広場には縁台が置かれ、そして正面奥の高いところには絞首刑台がある・・・・囚人たちを見下ろすように。
ここはシンガポールのチャンギ刑務所、ここにいるのはBC級戦犯たちで、捕虜収容所監視員をしていた者たちだ。その中には、朝鮮人の若者も3人いた。
暑い太陽が降りそそぐ日も、雨の降る日も彼らは日中は広場に出され、ビスケットとスープの日に二度の食事で、刑の執行する日を待たされていた。
父親に反抗し、日本の軍隊に志願した若者(池内博之)は役者になりたかった。マクベスを片手に、陽気で、粗雑な振る舞いをするが、みんなのムードメーカーだ。でも、死を意識しながらの毎日にぎりぎりの精神状態にいるのが、苦しいほどに伝わってくる。
彼が陽気に振舞えば、振舞うほど、悲しくて、切なくて・・・・。
一番の年長で、辛い行軍の中、人を殺めてしまった男(平田満)は、いつも穏やかな笑顔で、苦しむ若者たちを慈愛に満ちた目で見ている。だけど、彼が経験した飢餓に苦しんだ戦争体験は凄惨で、非情だった。人間の限界を見てしまった彼の死を既に受け入れている気持ち・・・・普通に暮らして、温かな父親だった人が最後に行き着いた場所が、ここだったなんて。
平田さんの温かさ、深さに若者たちがどんなに癒されたか・・と地獄の中の救いのような気がした。
厳しい軍曹(だったかな?)、ただ静かに死を待ち、皆から憎しみの言葉を浴びせられたも顔色一つ変えず、背筋を伸ばしている男(浅野雅博)は、何を思っていたのだろうか・・・酷い体罰を部下にしたり、命令を下したり・・・一切の言い訳はしなかったけれども、彼もまた命令を受けていた一人には違いない。部下の妻への手紙を代書した時に彼が自分の妻への気持をこめたことが、彼もまた一人の人間であり、愛する気持ちを持っていたことに胸が詰まる。
浅野さんの軍曹からは繊細に心の動きが伝わってくる、彼の持つ矜持、責任の重さ・・・最期までそれを貫いたのだ。死への旅だちは、とても静かだった。
まだ少年のあどけなさが残る一番若い朝鮮人の若者(尾上寛之)は、看守からもいじめられ、母を想い、涙の止まらない日々を送っている。病気に苦しむ捕虜さえも労働に送らなければいけなかったこと、同じ年くらいの若者たちを見殺しにするようなことになってしまったこと・・・・彼が背負うには酷すぎる、重すぎる。
こんな子どもにもこんな酷いことをさせるのが戦争なんだと、あらためて心に刻む。
故郷に新妻を残し、無学の彼(木津誠之)はただ誠実に自分の人生を生きた。捕虜とも気安い仲だったであろうが、上官の命令は絶対だった。それがどんなに相手を傷つけたか知るよしもない。
彼の主張こそが、あの時生きていた日本人の気持だった気がする。彼に何が出きただろう、一番下っ端の彼が捕虜を呼びに行き、拷問される捕虜をただ見ていることしか出来なかった。それが正しいことではないけども、彼にいったい何が出来たというのだろうか・・・。死刑に値することなのだろうか。
死刑宣告をされたが放免され、また捕らえられ、そしてまた無罪になる朝鮮人の若者(丸山直人)は、希望と絶望の間を行き来する。これもまた相当辛い・・・怒りをどこにぶつければいいのか、彼の悔しさ、憤りは、自分を気絶するまで殴り、親友を自殺へと追いやった山形(浅野雅博)に向けられ爆発する・・・でも、なんてむなしいんだろう、本当に彼が怒るべき相手は別にいる。不条理の極みを見ているような気がした。誰も彼もが不条理の中にいるんだけども・・・。
本当に死刑に値する人たちは生き延び、彼らのような人がBC級戦犯として死刑になる。
朝鮮人だった若者たちは好き好んで、日本人として戦争に関わってはいない。そうしなければ、その当時、家族たちも生きられなかったからだ。決して、祖国を裏切ったわけではないのに、彼らは生き残ったとしても辛い人生が待っていたそうだ。
一般の日本人にしても赤紙が来たら、拒否することなど出来なかった。
戦争とは、何と酷いことなんだろうか。
限られた時間、閉塞された空間で、彼らは残り時間を懸命に生きた。命の輝きは最期まであったし、最期にはしっかりと自分と向き合っていた。
涙はとめどなく流れ、私は心の中で手を合わせた。
渾身の舞台・・・作り手皆がこの物語を咀嚼し、滋養とし、融合し、見事にその世界を作り上げた。
鄭 義信さんの作品は、見事な役者さんたちによって、観客へと届けられた。
私は戦争を体験していないが、私の伯父はフィリッピンのルソン島で戦死した。まだ20歳そこそこだったから、陸軍の歩兵であっただろう。実家に残されたはがきには、当時小学生だった弟(私の父)に両親を大切に・・と、後を託した言葉が並んでいたのを思い出す。
雪国で生まれ育ち、暑さの中で死んだのか・・・・と、そのはがきを読んだときに無性に悲しくなった。
ラストシーンは悲しいほどに美しかった。
素晴らしい舞台でした。
再演を望む舞台です。
ありがとうございました。

ビューティフルサンデイ
BASEプロデュース
ギャラリーLE DECO(東京都)
2018/03/20 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/22 (木)
BASEプロデュース「ビューティフルサンデイ」
再演ながらも同じメンバーで嬉しい。2年前の想い再び+今だから…もたくさん。初演を観てたら?初演の客席反応は?とか…
ボビさん藤本くんに目が行くけども生見さんにも注目ネ!
丁寧に作り上げてくれたであろう皆さんに感謝!
#中谷まゆみ
#ビュサン

袋とじ「根本宗子」
東葛スポーツ
3331アーツ千代田/スーパーデラックス(東京都)
2018/02/16 (金) ~ 2018/02/27 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/18 (日)
新鮮なねもしゅーが目の前に居た笑
"月刊「根本宗子」"好きな方にはどう写ったのかな?根本宗子ファンとしては満足度高し!
東葛ワールド以外でも演出されて欲しい!!
#東葛スポーツ
#根本宗子

聞き憶えのある名前
le 9 juin ルナフジュアン
デザインフェスタギャラリー・EAST(東京都)
2018/02/10 (土) ~ 2018/02/12 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/12 (月)
公演は1年ぶり。1年間、治香さんの中に溜まった想い・葛藤・コトバが溢れだしてました。
近しいヒトとの関わり方にふと立ち止まってしまうと、実際どうして良いか分からないもの...デスね。
#藤井治香
#安久津みなみ
#酒井進吾

鵺的トライアルvol.2『天はすべて許し給う』
鵺的(ぬえてき)
コフレリオ新宿シアター(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/13 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/11 (日)
あの始まり&終わり方イイね。鵺的にはぴったり。広まって欲しいね。
マチネ故か、会場入り口の扉が開く度に射し込む陽射しが、照らし出す彼女たちの悲愴感を増していた。。。なんかそれだけで惹き込まれてしまった…
#鵺的
#天はすべて許し給う

まるでデジャヴな眠り姫
BASEプロデュース
BAR BASE(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/25 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/01/24 (水)
この本だと50分Verでも120分Verでも行けそうだけど、心地よい笑いと色々身につまされ感が出るwタイミングで終わるのがよかった笑
それと、あーこの後どうなるのかなぁ〜と、色々想像が出来るお話は好きですね。
#デジャ姫
#舞台の余韻

滅びの国
ロ字ック
本多劇場(東京都)
2018/01/17 (水) ~ 2018/01/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/01/18 (木)
ヒトとの繋がり、組織との繋がり、家族としての繋がり…あのヒトと知り合っていなかったらとか、いろーんな事を考えてしまう。
そんなStageでございました。
#お初な劇団 #吉本菜穂子 #三津谷亮 #小野寺ずる #日高ボブ美 #山田佳奈 #大竹ココ #Q本かよ #滑川喬樹 #大鶴美仁音 #小林竜樹 #冨森ジャスティン #水野駿太朗 #東谷英人 #キムラサトル #ホリユウキ #オクイシュージ #黒沢あすか #土居歩 #乘峯雅寛

生き返るなら早めに言って
劇団鴻陵座
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★
正直、好みではありませんでした。台詞が聞き取り難く、あまりにも残酷なストーリーで、笑いを交えていましたが、全く笑う気になれませんでした。後味の悪い舞台でした。