
ニッポン人は亡命する。
うずめ劇場
シアターX(東京都)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
二十歳代に来日してそのままこの国に定住して三十年、日本語堪能のドイツ人の演劇人による問題劇である。さきに詩森ろばによる性行為のハラスメントが問題とされた劇を見たが、こちらは広く日本に拡がる生存権、表現の自由と権利、国家権力を問題にしている。
問題は。福井県の職業高校で起きた演劇部への差別事件である。全県の高校が参加する演劇祭の作品を地域のケーブルテレビが中継放送した。しかし、この職業高校の作品だけ、県の原子力発電所の是非を扱っているため放送しなかった。これは表現の自由に関する侵害ではないか。また職業高校に対する差別ではないか。
この高校の演劇部を指導してきた地元の教師や指導者は異議を唱えた。しかし、同じ高校の教職員からもも、同意が得られず、県の教育委員会も同意しなかった。さらに、全国組織でも、教員組織のみならず、劇作家協会や演出者協会に訴えても、支持は得られなかった。みな、あれこれの理由をつけて(ここはいかにもありそうなことで笑ってしまうが、もちろん舞台では笑い事ではありません!と正論である)。福井県が、全国4位の原発受け入れ県で、一方でははかばかしい産業もないという現況を背景にしての職業高校の持つ周囲への配慮である。しかし正論を言えば、これは憲法違反である、とてもこんな生き苦しい国には住めない。生存権の問題だと、ドイツに亡命しようと、ドイツ大使館に亡命させてくれと訴え出る。ここからドラマが始まるわけで、ドイツ大使館も在日本大使館だから、窓口は責任者「代理」として日本人を雇っていて対応する。奇妙な亡命申し出に大使館も辟易して、対応時間を決める。問題は次第に矮小化して肝心の問題はどこかへ行ってしまう。
問題素材提示劇である。
まぁ、よくあることだが、現代の日本人はこういう問題の処理と解決はあまり上手くない。そこをこの「問題提起素材劇」は面白く展開して2時間、飽きさせないが、そこでどうなるというものでもない。しかし、この課題をいろいろ考え話し合ったりするのは今後の役には立つだろう。現代版のブレヒト劇である。一つのジャンルにはなるだろう。
このドラマの感想となると、内容は、国を超えて理解することは出来るが、共感は作りにくい。ということだろうか。ドイツでも同じような問題は難民問題で起きている、どのような国でも、人間が作る社会があれば対立する問題は起きる。ドイツを諦めてカナダで亡命希望しても結局亡命者として受け入れないだろう。それならカナダは自由の国ではないというのか?。結論が諸般の事情で出せないことはある。それをなんとかやりくりして過ごすのは社会の必然で、この国には、無理矢理解決を図って身の程知らずの戦争で国民の命も財産を大いに失った経験がある、どこで妥協点を見つけるかで、その方法は一つづつ考えていくしかない。
亡命で解決するというのは劇の脚本の面白さである。現実の問題解決になるためには劇の現実化への可能性がなければならない。いい妥協点が見つかればドラマの効用である。
久し振りで登場した作者は・鈴江俊郎、健在だったのか! かつて、自殺した学友が自転車に乗って現われる青春劇に共感したことを思い出した。もう四十年近く前のことだ。

『マリンスノーの雪解けを』
演劇集団MALACHITE
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
満足度★★★
過去作品は基本ファンタジーの劇団だが、今回はファンタジー感はほんの少しで、リアル会話劇 前半でこうなるだろうな〰️と思っていたとおりに進み、中弛み感はあったが、最後は定番のハッピーエンド 物足りないかな〰️

生ハムの原木
月曜劇団
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了

正しいホシの見つけ方
アカルプロジェクト
アカルスタジオ(大阪府)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
満足度★★★★
最後が意外な展開でしたが、あれでは組織として…😞
ミシュランの星🌟ではなく、自分自身の星❇️を見つけようってことですね➰

押絵と旅する女たち
犬儒派リーディングアクト
アトリエ三軒茶屋(東京都)
2025/01/10 (金) ~ 2025/01/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初犬儒派リーディング観劇はとても小さなアトリエ三軒茶屋というこちらも初のスペースにて。コロナに入った2022年から凡そ年3回ペースで独特な作品をやってる模様だが、どうやら日本文学史上の品々を翻案ないしはコラージュした作品を披露するものであるらしい。そのコンセプトはシンプルで、複数の乱歩作品を引き摺り出しある視点(糸)通して括り、抒情の内に幕を閉じて作品或いは作中人物(それは作者にも思われる)を元居た場所(冥界?)へと送り出すかのようである。乱歩の作風がそうさせるのか、ちょっとした儀式に立ち会った感覚に見舞われたのだった。
個人的には初のユニットながら見ればお馴染みの俳優たち、特に先日の二人落語第二弾を見そびれた北澤女史の「名調子」を図らずも味わえてラッキー。

会想列車
劇団 枕返し
遊空間がざびぃ(東京都)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても面白かったです。
不思議な世界観を持ったストーリーも良いし、役者さん達は、登場人物達を魅力的に演じていて、どんどん惹き込まれました。
シリアスなのかコメディーなのか、絶妙な所も良かったです。
笑いに中に、善悪や生きづらさを考えさせられ、そして愛ある作品で、良い舞台でした!

おもいだすまでまっていて【東京公演】
Pityman
シアター711(東京都)
2025/01/16 (木) ~ 2025/01/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/01/20 (月) 14:00
母娘3人の東京観光という事前情報から漠然と小津安二郎監督「東京物語」(実は未見(爆))を思い浮かべたこともあってか、ゆったりと間をとった(広島訛りの)会話で描かれる「家族」の物語に1950年代の日本の白黒映画を想起。
また、既に両親とも亡くしている身として娘の側になることはもはやないものの将来自分もなるであろう母の様子が身につまされると言うか迫ってきてしんどいが、全体的には温かさでくるんでいるのでそれが緩和される感じ?
そんなところも巧いと思った。

カンテン「The Foundations」Final.
カンテン事務局(Antikame?)
座・高円寺1(東京都)
2025/01/22 (水) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/01/26 (日)
価格4,000円
これはこりっち年間面白かった演劇ランキングに(自分の)1位で載せる気になれた演劇。
帰り、台本を買えば良かったと小さく後悔した。
素舞台。前半「9人の佐藤」
団地という世界での佐藤さんの織り成す人生。特に呆けたおばあちゃん役が素晴らしかった。
後半「名前のない空」はまさに演劇でやるべき作品。
終演後に作家と話す機会があったが聴きそびれたのが2点。
1点、どういう着想からこの芝居を書こうと思ったのか。
2点、一番やりたかったシーンや展開はどれなのか。

誕生の日
ONEOR8
ザ・スズナリ(東京都)
2025/01/23 (木) ~ 2025/02/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観てきました☆ 舞台セットがとても雰囲気良く出来ていて始まる前からワクワクでした☆
初演も観たのですが、ずっと良くなっていたと感じました☆ 最後の歌のシーン感動でした☆
終演後の矢部さんの挨拶、らしさが出ていてほっこりしました☆

メモリーがいっぱい
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2025/01/24 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

ニッポン人は亡命する。
うずめ劇場
シアターX(東京都)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2025/01/25 (土) 18:00
ベテラン劇団だが実は初見。厳しい台詞が続く問題提起型演劇かと思う。(前説等で7分押し)120分。
ドイツ大使館に1組の男女が現われ、男がドイツに亡命したいと言い、語り始める、日本の暮らしにくさの数々、…という物語。エンディングはファンタジーにしているが、聞いてて落ち着かない台詞の連鎖で心穏やかではいられない。「明日のハナコ」の話題を中心に教育の問題を語る時間が長いが、全体に通底するものがある。

『幻書奇譚』
ロデオ★座★ヘヴン
新宿眼科画廊(東京都)
2025/01/23 (木) ~ 2025/01/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/01/25 (土) 15:00
2014年初演の作品の再々演。最古の文書を巡る、サスペンス風コメディ。面白い。70分。
とある博物館に集まってきた7人の人物が、一時は紛失したと思われた「世界最古の文書・ナノ文書」を巡って、真偽や、過去の経緯を探るが、…の物語。70分の尺なのに多くの伏線と笑いあり恐れありというバラエティ豊かな展開になっている。途中から、こうじゃないのかな、と思った結末になったのは、ある意味で残念だが、ありそうな物語だった。2014年に同劇団で初演、2018年にも同劇団で再演された作品の再々演だが、同劇団の音野と澤口は同じ役を演じたのだろうか。

誕生の日
ONEOR8
ザ・スズナリ(東京都)
2025/01/23 (木) ~ 2025/02/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
田村孝裕のOne Or 8は昔のトップス時代から見ている。小劇場時代も無鉄砲に突っ走ったりしないで、よく、時代と人を見てきた。ちょっと前の世代になる鈴木聡のラッパやの世相喜劇の21世紀版、といった感じ。その田村もそろそろ50才。芝居の素材は困ったら30年前をやれ、という説もある。これは40才の誕生日を迎えた独り身のバーのマスター(山口森広)の誕生日を廻るその世代の人たちの物語である。
田村が最初に本を学んだ向田邦子も、素材は30年前の自分の少女時代の一般サラリーマン家庭をよくネタにしている。「誕生の日」は向田とも鈴木とも違う、いま世代の中軸を担う40才年代の哀感を巧みにすくい取って時代の姿を舞台にして、見事な現代世態喜劇になっている。
舞台は独身のバーテンが経営するバーの一杯セット。ここに現代の映像機材を操る自己しか主張しない口の利きようも知らない若者があらわれて、と言うところから始まる。この主人公の性別がホントは男性か女性かなかなか解らないところがミソだ。上手い!ここでバーテンの40才パーティを同窓会でをやろうと言うことになる。ここまでが1時間半ほどあって、現代風俗はそれなりに面白いが良くあるような話、だがこの後、終わりの30分がよくできていて、現在のジェンダー問題、職業差別、人口のいびつな構造問題など、現代社会の基本課題をひろく踏まえて大詰めに持っていく。上手い!!笑えるし、今の人らしい感動もある。田村だてに年を食っていない。それぞれの人物がさり気なく暮らしているようでも、生活の苦しさや孤独を抱えこんでいる今の世態を見事に描ききっている。笑ってはいるが、引きつりがちな現代人たちである。
主役の山口森広は後になるほど良くなる。それは本がそうなっているからであるが、前半良く押さえた。登場人物はそれぞれ説明が付くように台詞があるが、ここにもう一段の円熟があれば、もっと芝居は面白くなる。役の押さえ方がいささか単調なところが残炎なところだ。2時間。補助席も出て満席。

ミュージカル チキチキバンバン
avex live creative
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2025/01/17 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
この会場は二度宝塚OBモノを観に来たことがあって、その時の席は一階後方。今回は二階、全体としては観易いが人物の細かな表情までは見えない。
発明家カラクタカス・ポッツ役・長野博氏は南原清隆に見えた。
その父、グランパ・ポッツ役・別所哲也氏は野性爆弾のくっきー!に。
バルガリア国のバロネス・ボンバースト役・愛華みれさんは渡辺えりに。
ジェミマ・ポッツ役・三木美怜ちゃんがMVP。彼女の溌剌とした生命の躍動こそが観客を元気にさせる。ここを基調として作劇すべき。
異様なまでのスタンディング・オベーションと複数回観劇を重ね出来上がってみえる客層はジュニアの小山十輝(とき)君のファンがメインだったのかも知れない。皆さんやたら好意的。

メモリーがいっぱい
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2025/01/24 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

ベッカンコおに
川崎市アートセンター
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)
2024/10/05 (土) ~ 2024/10/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
人はみな、鬼になりうる。
踏みとどまるには真実を「見る」ことが必要だが、それは決して容易なことではない。
現在進行中の戦争や虐殺、メディアと私たちの関係を見つめざるを得ない、苦しく、鮮烈な舞台だった。
児童を対象にした劇としては衝撃的な展開、帰結に向かう物語を、だからこそ豊かな歌や踊り、身体表現で綴っていこうという心意気、そこに宿る実験精神が胸を打つ。そして善竹大二郎の鬼のキュートなこと。

生ハムの原木
月曜劇団
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2025/01/24 (金) ~ 2025/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/01/25 (土)
みんな、おしゃべりしようぜ!そして、仲良くしようね😃
無駄なことも大切だよ。
お芝居観られてありがとう❤️

『リタの教育』『オレアナ』二作同時上演
稲葉賀恵 一川華 ポウジュ
シアター風姿花伝(東京都)
2025/01/11 (土) ~ 2025/01/19 (日)公演終了
実演鑑賞
『リタの教育』を観劇。
2つのエリアに分けられた客席が舞台を挟む構造になっており、
ごく間近で、二人のやりとりを見守ることができる。
芝居の立ちあがりで、二人の人物造形に吹き替え的なバタくささを感じてしまったり、
この市民講座がいったいどういう枠組みでどういうテーマで行われているのか、いまひとつ腑に落ちない——ということはあったものの、二人のすれ違いが露わになってくるほどに、引き込まれ、身につまされるものがあった。
フランクがリタのような「無垢な素人」に刺激を受けること、その根底には女性や労働者階級への偏見があり、搾取があるという問題意識の一方で、成長を見せるリタ/スーザンの姿は、頼もしく美しいが、ある種の「意識高い学生」の類型としか感じられない自分勝手な失望——というのもよくわかってしまう。
二人のすれ違いは、というより、フランクの危機は、はじめから、無垢な素人/搾取の対象によって救われるべき問題ではないのだろう。終幕に訪れる二人のわずかな触れ合いが、髪を切るという「ケア」であることが、皮肉でもあり、切ない。

レ・ミゼラブル
東宝
帝国劇場(東京都)
2024/12/20 (金) ~ 2025/02/07 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/01/22 (水)
やっぱり良いです。帝国劇場が最後と言う事で昭和の高級な劇場が一つ消えるのかと言う寂しい思いで劇場に会いに行きました。もちろん、舞台も最高でした。ネタバレあり

二十歳の集い
アガリスクエンターテイメント
上野ストアハウス(東京都)
2025/01/02 (木) ~ 2025/01/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ナイゲン初演版リーディングを拝見。「ナイゲン」という演目の上演は2度ばかし観たが、Aga-riskの観劇は(他演目も含め)初めて。開演すると進行役が出て来て説明。その後ほぼ劇団員+αの面々がガヤガヤと入場。ナイゲン内部限定の会議風景、という劇の枠組みと何名かのキャラ以外は残っていない初演版台本を皆も初めて渡され、くじ引きで配役を決めた後、ト書きを作者・富田氏が担当して読みが始まる。
ナイゲンを演るチームが醸すノリそのまま、劇団員らがコメントしたりはしゃいだり、読みが始まれば真剣モードにはなるも笑いあり、他の読みが面白かったりトチったりキャラ全開だったりに笑いが起きたり「通して読む読み稽古」の風景である。
ガッツリ90分読み終えると、総員居ぬきでトークも。
再演で現在の原形が出来、劇団での再演の度に若干の改稿で更新されている「ナイゲン」らしいが、こうして改めて味わうと作品が持つ時代的特徴についても思いが湧くところである。演劇好きの今の若者が「ハマる」理由、その背景としての今の日本の風潮を、(作品の持つ限界として)感じる所でもあった。
また時間があれば劇を振り返りつつその事に触れてみたい。