イノセント・ピープル
CoRich舞台芸術!プロデュース
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
非常に重いテーマの舞台でしたが、考えさせられる素晴らしい舞台でした。
人が人を殺す戦争という狂った状況におかれた当事者は、被害者/加害者の感情や差別意識をどうしても拭えないことを舞台から強く感じ、戦争経験者が少なくなった現代だからこそ、客観的に強く反戦・反核の意思を継いでいけるように思えました。
プレイ
KENプロデュース
シアターシャイン(東京都)
2024/03/14 (木) ~ 2024/03/20 (水)公演終了
キラー・ジョー
温泉ドラゴン
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
なんと言っても脚本がよくできている。現代の最後の晩餐である。
五年ほど前には俳小が池袋で上演したときも、前評判で完売した戯曲を演出のシライケイが自らの劇団温泉ドラゴンに持ち帰っての再演である。主演のイワイノフだけが同じジョーを演じるほかはキャストは全員変わって、レベルは大きく上がった。俳小が海外戯曲上演の枠を出なかったところを、おもいきり温泉ドラゴン的に振り切っていて、テキストレジも前回とはかなり違う。その功罪はあるが、今回はかなり手練れの客演俳優たちが、生き生きと底辺生活者の切ない物語を力演していて劇場内息をのませる迫力はある。五十嵐明の無気力、谷川清美の勝手放題、内田敦美の無知の純情など、胸をつく力演である。内田敦美は新鮮な上、技術的にも幼児性を工夫して演じていて、ここは特筆されて良い。クリスも脇に助けられた。俳優の力演が見所である。
一方、舞台は初演より、かなりダイナミックな悪党ものの作りになっていて、そこが疑問でもある。
細かいところから行くと、場面をトレーラーハウスから、廃屋ふうな一軒家にしたのが解らない。折角の絶妙の舞台設定の象徴性を捨てている。その上、客席の蹴込みに花を飾ったのはオセンチでいただけない。登場人物のキャラクターにも、アメリカの原作にはなかったに違いない日本的情念(例えば、兄の犯行への突然の変心、とか妹のヴァージン性の強調とか)が組み込まれていて、それが折角の作品独特のドライなタッチを、日本観客向けにしてしまっているようにも思う。(現戯曲の翻訳をきっちり読んでみたくもある)。
中段まではほとんど初演に沿っていると思うが、中盤の家族内の目を覆いたくなるような争いが、目に見える形で演じられていて、それはそれで舞台表現になっているが、そこまでやる必要があるかどうか。ジョーのペニスをドッテイに口淫させる魔面などは戯曲では裏にしているのではないだろうか。倉の善良な客は息をのんでみていたがやり過ぎである。
と、いろいろ言いたいことはあるが、シライケイタがこの戯曲を俳小の初演ような翻訳調(それでも十分に面白かった)でなく、温泉風に取り組んでみた成果は上がったし、良い試みだった。昼間から満席の劇場には、中年の下町の観客もいてそこも新鮮な劇場風景だった。
田園に死す
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2024/03/14 (木) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
終盤の劇中、流山児祥氏が叫ぶ。「これのどこが『田園に死す』だ!?」、どっと笑う観客。『田園に死す』を叩き台に使った、天野天街大全みたいな舞台。ループ・ギャグ、駄洒落、時空間の割れ目、消失、入れ替え、デジャヴ、現実と虚構、無限問答、メタフィクション、昭和初期のギャグ、盆踊りのような群舞、飛ぶフィルム、言葉遊び···、天野天街ワールドを堪能するのだ。好きな奴には堪らなく好きな御馳走だろう。
やはり振付は夕沈さん。
中学生の寺山修司(木暮拓矢氏)と母(平野直美さん)、隣家の沖田乱氏と嫁入りした伊藤弘子さん。沖田乱氏は快楽亭ブラック&荒井注っぽい。
寺山修司は母親の支配から逃れて、女と東京へ駆落ちする妄想を抱いている。
村に来た怪しいサーカス団に潜入するのは少年探偵団。それを率いる小林芳雄を演じるのはさとうこうじ氏。せんだみつおのような、レツゴー三匹のじゅんのような、中川剛のような、躁病スタイル。
サーカス団の空気女他は新部聖⼦(にいべみなこ)さん、印象に残るおかっぱ。
竹本優希さんはやたら綺麗。目鼻立ちのハッキリしたJAC顔。簪代わりの五寸釘。
寺山修司は分裂する。眞藤(しんどう)ヒロシ氏、五島三四郎氏。
そして寺十吾氏はここでも当然のようにいた。遺影の父であり、怪人二十面相でもあり。だが彼は本当は実在しないのではないか?昔、押井守が『ルパン三世』の劇場版をやる事になった。その時の押井守のネタが、「ルパンは実在せず、次元五右ェ門不二子が代わる代わる演じ合っている共同幻想であった」というもの。それに怒り狂った上層部は押井守を引き摺り降ろし、突貫工事で『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』を全く別のスタッフに作らせることに。何か寺十吾氏も舞台上にだけ漂う如く存在する共同幻想なのかも知れない。
天野天街作品で一番観客にドッカンドッカン笑いが起きていた。是非観に行って頂きたい。
プレイ
KENプロデュース
シアターシャイン(東京都)
2024/03/14 (木) ~ 2024/03/20 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
電車に持っている序盤から、だんだんと物語の深みに入るにつれて、心の奥へ奥へと切り込んでいく展開が痛烈に感じました。
イノセント・ピープル
CoRich舞台芸術!プロデュース
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
「CoRich 舞台芸術!」初のプロデュース公演。まず、長引くコロナ禍で活動が困難になっている舞台芸術業界に少しでも協力したいという思いから立ち上げたと聞いて、「なんて尊い!」と驚きました。小劇場系カンパニーの名作戯曲を探し出し、新しいキャスト・スタッフとともに再演するというコンセプトも、集客などの問題で再演が難しい小劇場界にも、短い上演期間に「見逃した」と悔しい思いを抱いていた観客にも、優しい企画。そんな記念すべき第一弾は、青森県を拠点に活動する劇団、渡辺源四郎商店の店主・畑澤聖悟の戯曲を、社会派なテーマを扱う骨太な作品で知られる劇団チョコレートケーキ主宰の目澤雄介が演出。出演は、山口馬木也、川島海荷、池岡亮介、川田希、森下亮に加え、オーディションから選抜された(700通もの応募だったとか)メンバーも含む、総勢16名。
キラー・ジョー
温泉ドラゴン
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人間の欲と色と愛憎がぎゅっとつまった、こってりどろどろの濃ゆい芝居であった。面白い。殺し屋ジョー(いわいのふ健)以下、兄クリス(山崎将平)、妹ドティ(内田敦美)も、それぞれの役をよく演じていた。
後半の見込み違いから、フェラチオみたいなきわどいシーンも直球ど真ん中で堂々と演じ、壮絶な家族(?)喧嘩の熱演はすさまじかった。本物かと見まがうような血みどろの熱演である。そしてこの熱い悲劇が、人間の愚かさを語っていて、俯瞰してみれば笑える。ジョーが最初にいう「家の中のけんかが、警官がもっとも怪我をするものなんだ」とか、ドティの「誰かが私を怒らせないかぎりね」とか、何気ないセリフが伏線になっている。話の展開の面白さといい、よくできた台本である。
波間
ブルーエゴナク
森下スタジオ(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
北九州で10年ほど前に旗揚げし、京都に、また宮古へとその活動を広げている穴迫信一の関東での最初の足掛かりとでもいうべき公演で、これからは関東でも年1回はやっていきたいという
森下スタジオは初めて行ったが、演劇・舞踊の分野を対象にした、稽古専用施設ということで、コンクリ打ち放しの壁に鏡やバーがある
アフタートークでは夢という空間性に相応しいと考えたという話だった
そこで開演前(?)から20個のパイプ椅子を並べ始め(フロアに椅子は23個あった)、カーテンを閉めて行く
アフタートークで生前葬の印象という話があったがなるほどと思う
また、始まりはカフカの「変身」に影響を受けたという(夢から覚めたら)
シュールだが流れは分かりやすい
ただ「時間」をつかみにくいところはあった
非常にナイーブな内容で、大量のモノローグが多くを占める
中学のいじめが一つの要因となり、「夢は現実に影響され、現実もまた夢に影響される」状態を経て自死へ
ラストで窓が開き光が差し込む(照明により表現)ところが救い
照明がとても印象的だった
REspiration-呼吸-
Actoring Be
萬劇場(東京都)
2024/03/13 (水) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
60年前にタイムスリップした情景が、よく見えて感情移入できた。
ステージは狭いが、出演者がリズミカルに演ずる事でダイナミックさに変わることがてきた。よい経験になれました。
東京輪舞
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2024/03/10 (日) ~ 2024/03/28 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
シュニッツラーの「輪舞」を学生時代に読んだのが懐かしくて、見に行った。男と女がベッドインする前後を描くオムニバスになる。前半は、ナンパや口説きの場面が続き、飽きてくる(そういう話であることは分かっていたのに)。休憩時間に帰りたくなったが、そこは我慢した。後半になって、いまのジェンダー問題を取り込み変化してくる。
高木雄也目当てらしい若い女性客で満席だった。
美術、空間づくりはうまかった。白い壁面と床に「東京、とうきょう、トーキョー、TOKYO」をずらーッと並べ、高さ2メートルほどの「RONDE」の文字パネルも同様にもじだらけ。このパネルと、最低限の家具を組み合わせて、次々異なる場面をつくって変化をつける。
休憩15分込み2時間50分
雨降りのヌエ
コトリ会議
扇町ミュージアムキューブ・CUBE05(大阪府)
2024/03/09 (土) ~ 2024/03/30 (土)公演終了
実演鑑賞
面白かったです。
大きなところでみても、小さなところでみても、コトリ会議はコトリ会議でした。
第形話を拝見しましたが、何から観るかで「兄」の実像の結び方が違って来るのかもと、思っています。
公演以外のものも興味深くて、コトリさん達と一緒に会場で遊んでいる気分になるのが楽しいです。
『人形の家』激論版/疾走版
アマヤドリ
シアター風姿花伝(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
【疾走版】
予てより芝居やドラマで「女性の自立」の代名詞的に引用されていて内容を漠然と知っていたものの観るのは初めての人形の家、いわば複数の知人からウワサに聞いていた人物と初めて対面した、みたいな(笑)。
事前にWikipediaなどで予習していたことに加えて当日パンフレットに「構成劇」とあったこともあり、出演者の人数が激論版よりも多いことや構成劇たる所以も冒頭場面だけで理解し、以降「あー、そう来たのね♪」と頬が弛みっ放しで観る。
いわば「人形の家 re-mix」あるいは「コラージュ人形の家」かもなぁ。(笑)
あと、漠然と思い浮かべていたタイトルの所以もちゃんと台詞で出てきて大いに納得。
ホームシック!?
演劇ユニットタイダン
荻窪小劇場(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
舞台奥に生バンド(ギター・キーボード・パーカッション・トランペット・etc)を配置し、ダンスあり、生演奏による劇中曲あり、のミュージカル調上演。個人的には小道具へのこだわり方に興味を持ちました。きっと、観客に見せたい「画」が沢山あるのだろうなぁ。 老舗の温泉旅館を生家にもつ姉弟。訳あって実家を離れた姉は、これまた訳あって15年ぶりに帰郷する。温泉街の観光協会を切り盛りする幼馴染み、姉が去った後に一人で旅館を継いだことを根に持つ弟、年老いた母。15年ぶりに過ごす故郷が迎える結末とは…。
イノセント・ピープル
CoRich舞台芸術!プロデュース
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
副題の「〜原爆を作った男たちの65年〜」が正に的確で、1945年8月に日本へ投下された原子爆弾の開発に携わった米国人たちの半世紀以上に渡る物語。史実を織り交ぜて描かれる群像会話劇は、友人や家族の相関を丁寧に見せる人間ドラマ。かつ、日本人作家だからこそ書けたであろう踏み込んだ台詞も多く、良い緊張感を保ちつつ観劇することができました。
諜報員
パラドックス定数
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/03/07 (木) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
風姿花伝での過去作連続上演か、サンモールでの潜水艇の芝居かが最後で、二、三年振りのパラドックス定数観劇になった。
新国立への書き下ろしも未見、芸劇Eの広い空間でこの劇団の芝居を観るのは初めて。
ゾルゲ事件(1941年)を扱った脚本で、ずんと闇の時代へと連れ込む音楽と、何処かの収容施設内(二段ベッドが置かれた空間とそれを取り囲むように敷かれた廊下に当たる通路、上手斜め奥に面した通路とを区切る縦格子の壁)の装置、終始暗めの照明が雰囲気を作り、周囲を闇に溶かしている。
今しがた覆いを被せられ、時間差で連れて来られた四人が、まず事態を確認すべく言葉を交わす。後に分かるが一組だけ互いを知る間柄だったが(連行理由に心当たりはない)他は見知らぬ者同士。やがて警察だと名乗る男が現れ、一人ずつの尋問が始まる。
史実をこういう角度でドラマ化したかと新鮮さを覚えるが、話を追うのに実は必死。どうにか付いて行けたように思うが脚本の完成度としてはもう一つという感想だ。時間があればまた改めて。
波間
ブルーエゴナク
森下スタジオ(東京都)
2024/03/15 (金) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
久々のブルーエゴナク、青?エゴナク?(今更な疑問)以前観た微かな記憶を手繰れば、、ある仕掛け(ルール)を施した時間の中で俳優が動いている。法則に準ずる事により示唆的な空間が浮かび上がる。最後までしぶとくそのタッチを維持して中々挑戦的ではあるな、と感じたように思う。ワークショップ的な発想と言うか、思考実験の要素が強いが、作品としての統一感はある。。
実は北九州市で10年以上続けられた、市井の人々の人物史を掘り起こす『Re:』なる試みの集成を一昨年芸劇にて目にしたが、戯曲化を北九州在住の若手劇作家たちがやっていて、コンスタントに作品発表している名前の一つが穴迫信一氏。戯曲は北九州芸術劇場のサイトにupされており、時折楽しく読み進めていたので本ユニットの主宰という顔とは別の「書き手」としての印象が自分の中で育っていたのが、「そう言やそうだった」と今回符合した。
森下スタジオは好きな場所であるのでそれが大きく後押しして観劇に至ったが、「試み」のためのスペースにとも思える空間で、文字通り試みそのもののステージであった。未知なる領域に足を踏み入れる静かな感興があり、4人の役者が「出来る」若手(と言っても相見えてより10年経ってればもう中堅の部類か)でもあり場面を面白く味わえる。「夢」の風景を夢から覚める直前まで再現する、との宣言から始まる舞台では、文脈があるようで無く、無いようである夢らしい浮遊するような、逆にじっとりとした手触りの中から次第に、現実に起きたある事の輪郭が、ちょうど夢から醒めようとする時間に現実感が増すあの感じと重なる案配で浮上して来る。着想は面白く、舞台としても面白く観られる部分は観られたが、掴めない部分もあり、惜しいという感じを残した。
アフタートークでは役者4名と演出が登壇したが、役者のコメントに演出が逐一それが責務だというように返そうとしていてそれ要らんかなぁと。まあキャラのようであるが。。
実は私の観劇回ではハプニングがあり、奇妙な体験になった。
宇宙論☆講座 the BEST & the WORST
宇宙論☆講座
北とぴあ カナリアホール(東京都)
2024/03/14 (木) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
観客6人。関係者抜いたら3、4人だろう。まあ酷い。ただ楽しそうに仲良く演っているのが良い。武者小路実篤の「仲よき事は美しき哉」だ。
いい旅、現実気分。
人間嫌い
小劇場 楽園(東京都)
2024/03/13 (水) ~ 2024/03/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
旅にまつわるあるあるとガイドブックに書かれている理想の謳い文句と現実のギャップが描かれていて楽しかった。
女子だけで旅行にいくと、こんな感じになるのあかぁという面白味と、どこか一緒に旅行しているような不思議な舞台。
キャラクターがしっかり立っていて大変面白く見させていただきました。
イノセント・ピープル
CoRich舞台芸術!プロデュース
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
観劇後にタイトルの意味が響く。クライマックスの因果応報に泣けた。アメリカ側の視点、日本側の視点が容赦なく刺さった。いい舞台でした。
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
ホリプロ
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2024/03/09 (土) ~ 2024/03/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
次々人を殺す陰惨な話なのに、楽しく見られるという不思議な作品。ホラー・コメディというところか。市村正親・大竹しのぶのオーラがすごい。オーケストラも生演奏で、音楽が実に雄弁である。