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百年の孤独

百年の孤独

月蝕忌実行委員会

オメガ東京(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千穐楽観劇。面白い!
久し振りの寺山修司作のアングラ劇。物語の筋を追うというよりは、その場面ごとの特異さを紡ぐことによって全体像が明らかになる といった感じ。些細なことに拘っていては、物事の本質を見失ってしまいそうな危うさ。

「百年の孤独」は、ガブリエル・ガルシア=マルケスの長編小説。ブエンディア一族が「蜃気楼の村」マコンドを建国し、その隆盛と滅亡に至るまでの100年間を描いた物語。それを寺山修司が上演 そして映画化しようとしたが、係争になり改題(『さらば箱舟』)等して上映。現在は無関係な作品として扱われるらしいが、ストーリーは共通している と。

相当 刺激的な作品で、独特な世界観に魅了される。勿論 その世界観を立ち上げていくキャスト陣の熱量が凄い。少しネタバレするが、小さな貞操帯を付けただけの全裸の女優、その貞操帯を外して情交したい光景が至近距離で繰り広げられる。性的な場面だけではなく、現世と来世を繋ぐアナログ的な奇知が面白い。脈絡が有るのか無いのか判然としないが、ラストは そういう事なのかと…。
(上演時間1時間45分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は暗幕で囲い、中央上部に柱時計が吊るされている。その下に箱馬が3つ。上手/下手に物語を暗示するような支柱。上手は冥途/一族/手紙、下手には極北/魔境/科学と書かれた矢印。中央客席寄りに平箱が1つ。劇中やカーテンコールでの役者紹介でマッチを擦り火を灯す。その儚くも幻想的な光景が印象的。公演の妖しい魅力は、特殊なメイクや衣裳、光と影の陰影(モノトーン)の中で紡がれる幻想的な妄想。

物語は、世間の中傷や因習の中にありながら 従兄姉同士で愛し合う一組のカップル(近親婚による「豚の尻尾を持つ子」が生まれるというと迷信に捉われ貞操帯を付けている)。神父不在で結婚式を挙げられなくなってしまうカップル。身に覚えのない夫から次々に遺品が届く年増おぼこ(処女)。村人の手紙を冥土へ送る郵便配達人。やがて彼ら全員で記念写真を撮るに至るまで綴る。遭遇する不可思議な出来事の数々、それは夢と現、または過去と現在を彷徨する迷宮(もしくは迷走)する村のよう。

公演の表現的な魅力は、得体の知れない世界観とそれを表出していく偏執的とでも言う情熱。1人ひとりの独特な存在感と奇妙なパフォーマンス、その表現し難い魅力に圧倒される。当時の社会情勢など関係なく、ひたすら自分たちが信じた道を突き進む。そんな熱に浮かされた心象。シアトリカル(=劇的)に演じ、語り、怒り、笑いといった素直な感情が炸裂する。

この村から出られない不自由と閉塞感等、それは当時の時代の情勢を表しているのではなかろうか。人は社会(村/国)という共同体の中で生き、そして死んでいく。死は本人の肉体の焼失だけではなく、他人の記憶の消失によって その存在が亡(無)かったことになる。ラスト、平箱に入っていた過去帳を取り出し、百年経ったら(皆)記憶から抹消され村が消滅する。そこに救いがあるのか否か。
次回公演も楽しみにしております。
氷河の果てに

氷河の果てに

虚空旅団

AI・HALL(兵庫県)

2025/11/21 (金) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

2時間強の間大きな事件が起きる訳ではない(震災は別)けどずーっと見てられるの🎵高橋恵さんの「日常こそリアルなドラマ」と語り掛けてくる本が魅力的で高橋さんは関西演劇界の向田邦子さんに他ならないです🎶そういう意味では連続ドラマで観たいと思わす素敵な作品でした☆
僕自身印刷会社で勤務してた時期あったんで知ってる専門用語が沢山出てきてよりお芝居に感情移入する事が出来ました🎵正にアナログからデジタルへ移行する時代も経験してるんで自分もこの会社の一員みたいな気分になって戸川賢一なんか「当時の僕ちゃうん⁉️」て思ったもん☆同僚の女子へちょっかい出したり憧れてた女子との恋は成就せずへコンだりした思い出が蘇ってなんか嬉しい気持ちになりました♪

THIS HOUSE

THIS HOUSE

JACROW

新宿シアタートップス(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/11/24 (月) 14:00

座席1階

政治をテーマにした劇では最早、右に出る者はないと思われるJACROW。今回、主宰の中村ノブアキが挑戦したのは初の翻訳劇で、座員がジェームズ・グレアムの作品を翻訳した。休憩を挟んで3時間を超える大作だが、JACROWお馴染みの俳優たちによる迫力ある熱演に時間を感じさせない。

舞台は労働党政権の英国議会。ビッグベンの大時計を模した舞台美術が効果的だ。2大政党が多数を得られないハング・パーラメント(宙吊り議会)で、与党の法案を通すための多数派工作など議会の舞台裏を描いている。

田中角栄のシリーズでも政争劇をリアルに展開したこの劇団の得意技。同じ多数派工作でも、英国議会の歴史と伝統を織り交ぜた慣習が示され、とても勉強になった。2大政党が病欠など欠員数を「ユージュアル・チャネル」と呼ばれる場で調整するなど、なるほど伝統の英国議会はこうなのかと何回も感嘆した。議場を閉鎖して中にいる議員だけで採決するのは日本も同じだが、興味のない法案採決には出てこない議員がいるからあの手この手で引っ張ってくるというのは面白かった。数の論理で政治が動くさまをリアルに体験できる。
2大政党の議員だけでもかなりの数に上り、シアタートップスの最前列を俳優の待機場所にしているが、これが客席との一体感を生む迫力を醸し出している。2大政党両党の院内幹事室の舞台転換も、照明が当たらない方の俳優をストップモーションにしてすばやく切り替えるなど、なかなか切れのいい演出だ。
一つだけ物足りなかったのは、数多く出てくる対決法案の具体的中身だ。日本人向けの舞台だから法案の名前だけでなく、もう少し背景を説明してもよかったのではないか。例えば社会保障法案にしても、労働党政権が出した法案がどんなものだったのか、保守党はどこがまずいとして反対したのか、単なる政争劇でなく当時の英国の社会情勢を理解できる助けになったと思うのだが。少しの説明でよいので加えてほしかった。

鉄の女・サッチャー政権前夜の内閣不信任案可決までを追った舞台だが、納得感が得られるのはラストシーンの字幕だ。演出家の意図を十分に感じ、同意することができる。次回作にも大いに期待!

音楽劇『プレビュー』

音楽劇『プレビュー』

劇団青年座

吉祥寺シアター(東京都)

2025/11/20 (木) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

戦後80年にあたる今年の戦後80年に関する最後の観劇です。と言っても舞台は昭和20年代、いろんなことが混沌としているなか、それでも前を向いて生きていく人々=特に解放された?女性の生き様の話です。
戦争が終わっても戦争が落とした暗い影を引きずっている人、逆に吹っ切れて自分の時代が来たとブルドーザーのように生きていこうとする人。翻弄されながらも自分の力で未来を切り開いていこうとする姿勢は、今の世の中でも変わらないのでは、と感じました。音楽劇なので最後のシーンはみんなで明るく歌って踊って締めくくる。音楽劇は、最後はるんるんした気持ちで送り出していただくのが最高だなと感じました。

ミュージカルなら劇中の歌が終わったあと必ず拍手があるだろう瞬間の数々、拍手で舞台と一体になりたかったなとちょっとおもいました~

広島に原爆を落とす日

広島に原爆を落とす日

9PROJECT

シアターX(東京都)

2025/11/21 (金) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

千穐楽。本作は'89年12月に本多劇場でやったのを一度だけ観たなあと思っていたら、今回の上演はそれとは違い、舞台版の再演ではなくて小説版(登場人物や設定等が違う)の舞台化だった。熱演。

お寺でポンポン‼︎

お寺でポンポン‼︎

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い!
劇団の特長である舞台美術、その見事な造作の中で紡ぐ家族と衆人のスラップスティック・コメディ。劇中の言葉(台詞)を借りれば 「我欲」が爆発したようで収拾がつかない。その壊れた家族をいかに再生させるかが見所の1つ。勿論 舞台美術がその比喩になっている。

少しネタバレするが、主人公の澤瀉長一郎が定年退職し、縁もゆかりもない田舎に家を買って一人住まい。悠々自適な暮らしを満喫しているが、亡き妻の七回忌法要の件で子供達(娘3人)と相談することに…。娘たちもそれぞれの生活と思惑があり、早い段階で一筋縄ではいかないことが透けて見える。法要に絡み お寺との関りが物語をとんでもない方向へ。

衆人の我欲が、時事問題に絡むような描き方ー例えば SNSを使った選挙運動、宗教と政治の関係・影響、ジェンダー問題、投資の自己責任などーで、社会性が垣間見えてくる。家族という「人間」とは 切っても切れない「社会」を さり気なく繋げる巧さ。
(上演時間2時間20分 休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、ほんとうに住めるような造り。正面奥には障子戸、それを開けると山並みが見える。天井には太い梁。上手は仏壇と床の間 上部は欄間、下手は階段があり2階へ。畳の居間に和箪笥が置かれている。最初と最後は 色違いだが お揃いの法被を着た群舞。

長一郎は写経をするなど スローライフを楽しんでいたが、妻の七回忌の相談のため娘たちを呼び寄せた。そんな時、昔 寺で修行していた時に世話になった住職とその妻が巡礼の途中で立ち寄ったと。そして2人は 法要を依頼した尼寺の悪い噂を言い出し…。御仏に仕える僧侶が金儲け(投資)や政治家(選挙活動)、さらにはインバウンドを当て込んだ観光施設の誘致など<仏>ならぬ<物>欲にまみれ、それに澤瀉家の相続問題が絡んでトラブルが勃発。再演であるから、”令和の不謹慎エンターテインメント”といったところ。

僧侶と言えど人間、生きていくためには我欲もあろう。それが罪深きことなのか自然なのか、僧侶という立場が物語を面白く味わい深くしている。長一郎の暮らしは、変な者たちに翻弄され 当たり前の生活が崩壊していく。しかし ご立派で窒息しそうな日々が、騒動によって何故か生き生きとしてきたように思える。暮らしは消費され田舎と都会という境界線を越えた。物理的には、煙草の引火爆発によって家が崩壊/焼失したが、一方 家族(娘たち)との蟠りは霧消したようだ。まさに家族の崩壊/炎上であり再生/出発が描かれる。この家屋(舞台装置)の崩壊シーンが 歌舞伎で言うところの屋台崩しのようで 迫力がある。

この劇団の強みは、役者陣のチームワーク。ベテラン団員だけというマンネリ化ではなく、ワークショップ生を順次登用する新鮮さ、そのバランスある構成が好い。例えば、澤瀉家の父親役の鷲巣知行さんは2003年から客演し団友といった存在。長女 高子の沢井エリカさんは2011年、次女 咲子の梨本りえ さんは2012年、三女 友子の寺岡遥さんは2024年、そして居候を決め込む住職 音羽澄珍の小倉昌之さん(座長) とその妻 菊代の高畑加寿子さんは創団間もない頃からのメンバー。チャイナ服を着た<小美人>2人はまだワークショップ生。まさに家族ぐるみの安定感ある公演。
次回公演も楽しみにしております。
お寺でポンポン‼︎

お寺でポンポン‼︎

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

いやはや実に盛沢山のコメディ。一体どうやって着地するのかと集中観劇。これも大団円なのかな?大いに楽しめました。

ティボルトとジュリエット 1曲だけのミュージカル

ティボルトとジュリエット 1曲だけのミュージカル

明治大学シェイクスピアプロジェクト

明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 言わずと知れた「ロミオとジュリエット」に登場する人物たちの内、ヒロインのジュリエットとロミオに殺されたティボルトが登場し、シェイクスピア原作の骨組みの一部を借りて創作されたシナリオを用いMSPメンバーの父兄らをも招いて他の多くの作品と共に公開される作品の一つ。
 まあ、学生さんたちの姿を実際に観て貰おうとの趣旨なので台詞も現代日本の若者用語が頻出するから最初びっくりしてしまった。ティボルト役の学生さんは極めて良い声の持ち主で歌も上手かったが、ジュリエット役の学生さんは声の質は良いものの音程を外す場面があってやや残念であった。基本的には42時間仮死状態になる薬を飲んだジュリエットの仮死状態の夢現にティボルトが登場してロミオに殺された恨みつらみを述べ復讐して欲しいと頼むことに対し、ジュリエットが案外冷ややかに応じたりする内容のものでそれなりに楽しめた。
 無論、本番上演時は、シェイクスピアの英語原書から学生さんが翻訳し、稽古期間も長く取って台詞を身体化させる作業を経て上演するから興味のある方は時期が来たら応募すると良い。毎年通うファンも多い学生演劇とは思えない程レベルの高い公演である。

お寺でポンポン‼︎

お寺でポンポン‼︎

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 今年拝見した作品中、最高傑作の1つ、観るべし。文句なしの華5つ☆

ネタバレBOX

 先ずは舞台美術が凄い。演者達が全員で舞台美術を作っている。障子を開けたホリゾントに見える山々は無論のこと、上手に見える仏像は木彫で手作り。オープニングでのダンスも上手いし何より全員の息が見事に合って音楽も良く実に楽しい。物語の設定も都会に住む人々が憧れる豊かな自然に恵まれた地方での悠々自適、晴耕雨読の理想的生活と屋敷を退職金と持ち家等を売った金で購入、屋敷の障子を開ければ眼前に聳える山々が、二階に上がれば山々の向こうに海が広がる。村の人々のサポートを受けながら広々とした邸宅で騒音の無い日々を過ごしている男。男には三人の娘があり、長女はライター。ジャーナリスティックな記事も書く。次女はイベント等の特殊効果の専門家と結ばれ、三女は良く気の付く淑やかな女性である。娘たちが登場するのは、母の七回忌が近々あることと、父が足を骨折してそのケアをする為だが、長女はジェンダー関連の取材がメインである。というのも山一つ越えた処に親に虐待されたり、DV被害に遭ったり、様々な形で傷つけられた女性達をケアし駆け込み寺として有名な尼寺が在ったから、この寺の庵主を取材するのが主目的であった。父とは意見の対立が絶えない。
 その他にかつて父が一時家を空け仏門の修行をしていた時に教えを受けた僧侶夫妻が遍路の如き旅の道すがら立ち寄った。この夫妻の旅が長旅であり、舞台となる屋敷に辿り着く迄の行程の長さを象徴する劇場の脇から登場し客席間の通路を上って一旦捌け上手袖を通って屋敷を訪れる演出は見事。ところでこの和尚夫妻、かつて父が師と仰いで仏の道を学んだ縁もあり好意からお泊りになってお寛ぎ下さいと言われたのを契機にいつまで経っても立ち去らない。その訳は自己破産の果ての逃亡行脚であった。而も彼らは評判の駆け込み寺は、大和天法という住職の居る寺の末寺に当たり庵主は兎も角天法は金に汚く、女癖が悪いと言い出し、尼寺では駆け込んだ女性達に接待業をやらせているということを吹き込んだ。更にイタコの口寄せの如く妻に降りてきた予言は七に係る破滅。この予言を巡って様々な解釈が為されるが母の七回忌との関りが疑われ尼寺の庵主にお願いしていた法要はキャンセルしようという流れになった。
 さてそうこうしているうちに次女とその連れ合いが父の面倒を見る為と称して家財道具もろとも引っ越してきて二階の部屋を占拠するわ、時折特殊効果に用いる機材の不具合で大きな音を出すわと様々なメッキが剥げてくる。更にこの屋敷の手洗いの便壺の一部が破損しておりキチンと直しておかなければガスが発生して大変なことになると隣家のいつも父に野菜その他をくれるおばさんが何度も忠告してくれていた。然し、この屋敷を観光スポットの1つにしようと中国人が訪ねてくる。大和天法は市会議員に立候補するとやってくる。尼寺は実際は避難女性達をウェイトレスとしてカフェを経営し資金難を凌いでいたが、大和の地域ファースト戦略に父購入の屋敷も尼寺もインバウンド目当ての地域活性策として公約に取り上げられ、あれよあれよという間に屋敷のオーナーたちの静かだった生活は変容させられてゆく。而も尼寺の庵主を盲目的に尊敬している長女は父の承諾も得ずに勝手に屋敷を尼寺が観光スポットとして機能させ記事を書いてSNSでバズるきっかけを作り遂にTV取材迄入るようになって事務局として使う。大変な騒ぎである。このしっちゃかめっちゃかは、当然笑えるシーンがたくさん出てくるが幾ら芝居だからといっても他人の不幸を嘲笑う気にはなれないという気持ちも湧くから笑い自体が複雑な笑いになって作品の深みとして観客に受け取られこれが作品の深さに繋がっている点も見事だ。ここから先、更に思わぬ人間関係が明らかになり、大ドンデン返しがあるが、それは観てのお愉しみ。文句なしの傑作。脚本の深さ、役者各々が台詞を生きていることの妙。本当に様々な要素が恰もごった煮の如く詰め込まれているが、その一つ一つが独立しつつ全体と調和し、分かり難さや不自然は全く無い。全員が協同して一種のハーモニーを奏でるような自然で無駄のない役作りが出来ている。大団円では、親というものの本当に深い愛の姿を感じた。
星降る教室

星降る教室

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/12/01 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ホンが良いんだろうな。宮沢賢治の世界がそこにありました。物語に浸れる65分間でした。

千一夜の物語

千一夜の物語

ヨビゴエ

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2025/11/08 (土) ~ 2025/11/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/11/14 (金) 14:00

一言で表現すれば「策略/陰謀渦巻くダークなアラビアン・ナイト」。アウトローなシンドバッドがアラジン、アリババらと冒険しつつ王を目指し、やがて……なピカレスクロマン。
分不相応な野望を抱いた主人公がそれを達成するも自滅する内容に(3人の魔女がいることも含めて)「マクベス」を連想しつつ観ていたら終盤にはギリシア悲劇の要素まで織り込んでニヤニヤ。
あれこれ知っているとより面白いよね♪

リーディング版『春はやて』

リーディング版『春はやて』

虚空旅団

AI・HALL(兵庫県)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

失ったものは元に戻らないけと、これからは新しく作っていける。この台詞が、あぁ、彼は居ないのだなあと思ってホロリ、いや、皆さん温かかったよ。
お芝居で観ると、もっとぐっとくるのだろうなあと感じました。
上演してくださってありがとうございます🤟

山吹

山吹

遊戯空間

六本木ストライプスペース(東京都)

2025/10/18 (土) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

遊戯空間の「妖話会」は二度目。リーディングを彩る「場」の選定(前は確かプロトシアター)、ストライプスペースは以前オフィス再生「正義の人々」で訪れ(その時出演の加藤翠が勧めたもの哉)、三年振りに六本木駅から坂を下った。
さて「山吹」、一年以内に読んでいるのだが、鏡花流の耽美な小品で「舞台化」を思い描きながら(ある人が本作の上演を目論んでいると耳にしたので)読んで興味深かった。が「興味深かった」記憶のみで他の収録作品と判別つかず、会場で確かめる事に。
リーディングであった事を開演して合点し、脳のスイッチを慌てて切り替えるも疲労の身がこれに堪え得るか一抹の不安。予感通り、開幕後暫く状況が把握されず時々意識が飛んだ。
だが和楽器の設楽瞬山、篠本氏(人形使い)、加藤翠(小糸川子爵夫人)の妖気立上る演技、中村ひろみ(その他の役、ト書)の語りが濃密空間を作り、話の抜き差しならなさとこれを包む心地良さの角突き合わせに身を任せる。そして朧げな記憶がぼんやり蘇り、終幕を前に一気に鮮明になった。
元料亭の娘で華族に嫁いだ縫子が、身分を隠しつつ修善寺を訪れている事実、その理由が詳らかにされるよりは、ただ夫人の宙吊りにされた心の「昇華」を切望する心身状態が、たまたま遭遇した裏通りの店に飲んだくれていた辺栗という人形遣いに受け止められ、当てのない旅へ出る、という事の中から浮かび上がらせている。一方の自棄飲みの辺栗も、かつえた魂の昇華を淫靡な方法で遂げるのに夫人の手を借り(という場面があったが原作にあったかは思い出せず)、殆どあり得ないカップルの道行きが、夫人の強い意志に引き摺られるようにして始まる、というものであった、と思う。強風の吹き荒ぶ荒野へ何も持たず拠り所もなくただ二人が互いを支え合う信頼のみを頼みに、歩を踏み出す姿が、鮮烈であった事を最後に思い出したものであった。
世のままならなさ、個人の夢も国家の理想も、私利私欲と小賢しい計略、右へ倣えの非主体と裏切りによって穢され、魂の擁護のためには死か飢えか苦痛の道を行くしかない選択の局面が誰がしも、遠くない場所に潜んでいるのではないか。
この物語は修善寺を訪れた画家の目によって捉えられ、描写されている。画家が目撃した奇異な光景を、追体験する。画家という人物の感覚というフィルターを通す事により、より幻想的な趣きが加わる。画家はただ見たものを紹介しているが、この事件の本質は観客の想像に委ねられている。

「カエル。」

「カエル。」

インプロカンパニーPlatform

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

現在と過去を行き来する脚本、演出はとても良いですね。
お客様からのキーワードで展開してお芝居で、一生懸命に演技される姿はさすがですね。
笑いを誘うシーンが多々あり、とても楽しませていただきました。

お寺でポンポン‼︎

お寺でポンポン‼︎

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

多種多様な坊主が出没し、坊主同士が対決したりのドタバタコメディー的お芝居で面白く観劇させていただきました。
映画がテレビのお芝居を生で観ているようでとても良かったです。

PINK THUNDER

PINK THUNDER

Superb Sick Squad

萬劇場(東京都)

2025/11/19 (水) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

女性だけのパワーあふれる舞台で、観応えがありました。
ストーリーは個性をテーマにしたファンタジーで面白かったです。
そしてキレキレのダンスには、様々の要素があって、圧巻でした。
個々のダンスも良いし、揃った群舞も素敵でした!
出演者は皆が可愛く、可愛いだけじゃなく実力もすごかったです。
本当にカッコ良い舞台でした。

AI(アイ)

AI(アイ)

こぬかーめ

studio BLANZ(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Aチームを観劇しました。面白かったです!
AIのミコに芽生える感情が丁寧に描かれていて、切なくなりました。
登場人物達は性格の良い人達ばかりで、それぞれの恋愛事情にリアル感がありました。
役者さん達は、それぞれのキャラクターを好演していました。
AIについて考えさせられ、人間の優しい気持ちを感じる良い舞台でした。

真夜中に挽歌

真夜中に挽歌

Y.T.connection

上野ストアハウス(東京都)

2025/11/20 (木) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

文学座から『太陽にほえろ!』の主人公に抜擢されてブレイクした若き松田優作。多忙な裏で同期を集めて劇団F企画を作演出で主宰。劇団解散後も、3本の舞台を個人プロデュース。朴李蘭名義だった為知る人ぞ知る話。文学座付属演劇研究所12期生の同期であった野瀬哲男氏とは一生を通じて付き合う兄弟のような関係。1978年11月初演の今作は唯一脚本が残っているものだそうだ。当時主演、とおる役を務めた野瀬哲男氏が演出に回る。

松田美由紀さんのビデオメッセージからスタート。松田優作の唯一無二の魅力はエネルギーだと話す。彼よりも演技が巧い人、ルックスが良い人は幾らでもいるが、彼のようなエネルギー、人に何かを伝えようとするエネルギーが溢れているような人はいないと。自分が松田優作に夢中になったのもそれかも知れない。作品以上のものを提供しようとする有り余るエネルギー。勝新もそうだけれど100で充分の作品に無理矢理1億ぶっ込もうとする。その溢れ返った余剰なエネルギーに心酔するのかも。

冒頭、松田優作っぽい男(上西雄大氏)が無言でステージから客席へと通り過ぎる。

青森から上京して一ヶ月、自動車整備工場で働く青年
とおる(船津祐太氏)。殺風景な倉庫を改装して暮らしている。鎮座したピカピカのバイク。何処からか船の運航する音が聴こえる。やって来た関東狂走連合京浜支部リーダーのジョージ(徳田皓己〈こうき〉氏)とその情婦ハクラン(世森響〈よもりひびき〉さん)。ディスコで知り合った都会に憧れる田舎もんを食い物にしようと企んでいる。ダセえ世間知らずの素朴な田舎もん、東北訛りの腰抜けに現実分からせてやる。

ジョージ186cm、とおる182cm、モデルの世森響さんと、手脚が長いスタイリッシュなダンスが映える。必殺シリーズを現代に置き換え漫画化した「ブラック・エンジェルズ」みたいなルックス。

映画を判ってる人間の作る舞台。しょぼい嘘がない。安っぽい誤魔化しがない。
場内に流れる松田優作の歌がかなり良かった。これは一度ちゃんと聴いた方がいいかも。

船津祐太氏は魅力的な役者。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

前半は退屈な遣り取り。不良が真面目な田舎もんをからかう描写が延々続く。だが時折のダンスシーンやフォトセッションなんかは魅力的。後半、一転してとおるのキャラが変わりいよいよ本筋に。そこに乱入する謎の男(上西雄大氏)、無言で全員ぶっ殺す。発砲音がリアルで良かった。北野武映画に通ずる暴力の無意味性。暴力とは意味不明で圧倒的で全ての人間性を踏み躙る戦車のキャタピラだ。終わった後にいろいろ類推するしか手はないが、今更どうしたってそこに意味などない。松田優作と北野武に通ずるものがある。

松田優作は在日朝鮮人であったことを非常に気にしていた。それがバレると全てはおしまいだと。そんな松田優作が書いた戯曲では不良の出自に拘る。名字が李や知念の奴が日本文化を語るなと。

修学旅行で上京した際、暴走族に轢き殺された弟。弟の復讐の為、とおるは関東狂走連合に所属する連中を地道に一人ずつ殺してきた。謎の男(上西雄大氏)はそんなことお構いなしに皆殺す。その不条理性が作品の味。

アフタートークとして演出の野瀬哲男氏と上西雄大氏(映像劇団テンアンツ主宰)がトーク。松田優作の人気テレビドラマ『探偵物語』の話題。当時、兄貴と心酔する松田優作の運転手兼付き人だった野瀬哲男氏。新宿のロケ現場で松田優作と監督が揉めている。用意された20人のエキストラを帰し、急遽野瀬哲男氏一人にやらせることに。ロケバスに戻った野瀬哲男氏は裸になって背中にマジックで「イレズミ者」と書く。現場に入ると松田優作は大受け。レギュラー化が決まる。そのまま撮影の日々が続いていたがある時居眠り運転で改造したハイエースが大破。電柱が助手席に食い込む程。後部座席で寝ていた松田優作は足を怪我。事務所社長は激怒し野瀬哲男氏は降板。「イレズミ者」は前田哲朗氏に。
山吹

山吹

遊戯空間

六本木ストライプスペース(東京都)

2025/10/18 (土) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。泉鏡花原作「山吹」の独特の世界観を見事に表しており観応え十分。心地良い緊張感に包まれた舞台空間、そこに妖しげな物語が描かれる。まさしく「妖話会」に相応しい話。キャストは3人(篠本賢一サン、中村ひろみサン、加藤翠サン)、その少ないメンバーによる濃密な会話が観客の心を捉えて離さない。

原作の魅力もあろうが、物語に登場する人物の心情が切々と伝わり、その情景/状況を生演奏(設楽瞬山サン)が支える。また この会場の特徴を活かした演出が余韻を残す。物語全体の世界観というか情景は上演前から既に始まっており、その雰囲気作りが実に上手い。客席配置は観客をも劇中の民衆として取り込むような工夫であろう、その没入感に浸る。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

この会場は、中央に折り返しの階段があり、これをどう使う(演出する)か関心があったが、本作ではラストに活用。舞台を中央にした対面客席で、劇中にある<祭>の見物客(群衆)に見立て 物語へ誘うよう。会場入り口近くの紗幕、上演前に<祭>の映像を映して雰囲気を盛り上げる。逆に、奥に 語りと登場人物の島津正(洋画家)を演じる 中村ひろみ さんの立ち位置。イーゼルとその足元に絵画が数点。中央階段下に演奏スペースで和楽器(チベットベル、能管等)が置かれている。

物語(2場)は、時・場所・候を語り 始まる。舞台は修善寺温泉近くの山中。人形遣いの辺栗藤次は、寺の祭りの日に、木に人形を立てかけたまま 酒屋で飲んでいる。そこへ洋画家 島津正と小糸川子爵夫人の縫子が現れる。縫子は 料理屋の娘として働いていた頃 島津を見かけ、密かに憧れていた。嫁ぎ先での惨い仕打ちもあって家庭を捨て島津の許へ。しかし、芸術にしか興味を持たない島津は彼女の想いを受け入れない。絶望した縫子、そこへ酔った辺栗が現れる。縫子は、自暴自棄になり辺栗に「何でも言うことをきく」と。辺栗の望みは「女に(鞭で)打たれること」、縫子は傘骨で打つ。辺栗は若い頃、女絡みで罪を犯し その罪悪感から折檻されることで贖罪している と。縫子は島津に問う、「応えてくれなければ、この人形遣いと生きる」と。島津は「仕事がある」と答え 拒絶。縫子と辺栗は、念仏を唱えながら闇(階段を上り階上)へと消えていく。

物語は現実か夢想か、または現世か来世か そんな揺蕩うような雰囲気を漂わせている。その曖昧さが島津の「仕事が…」という逃げ口上を巧く引き出している。そして この「仕事」こそが洋画家としての島津の関心事ー縫子と辺栗の道行を絵に描きたいのでは と思ってしまう。能でいえば、縫子と辺栗はシテで、島津はワキ(始めに登場し時間や場所、状況を語る)のような役割を担っている。また傘骨で半裸になった辺栗を打つ、その異様にして耽美的な光景、それを(生)楽器の効果音によって艶めかしく響かせる。

謳い文句にある―魔界の誘惑、現世と来世のはざまで揺れる、女と男たちの一瞬間のドラマが、鏡花の豊饒な言葉で浮かび上がる―、それを見事に体現する3人の役者の演技が見事。至近距離で異様にして唯一無二の世界観を堪能する喜び。
次回公演も楽しみにしております。
AI(アイ)

AI(アイ)

こぬかーめ

studio BLANZ(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 Bチームを拝見。尺は若干長く2時間25分程。然し全く飽きない。オープニング場面こそ、研究所の模様や出演者が、それも所長役が長髪でその髪をポニーテール宜しく後ろで束ねていたり、やや遅れて入って来た研究者たちが何人も白衣を着ていなかったりで聊か調子が狂わされた感を持ったが、各キャラの特徴や好きなことが分かり、可成り早い段階でAI自体がヒトの心を持ったような伏線が敷かれて以降、今作に対する見方が180度変わった。
 現在実際にAIの進歩は日進月歩等というトロイものではなく秒進分歩以上のスピードで開発競争が進捗していると考えるべきであろう。そしていつか進歩したAIがヒトの心のような働きを獲得するかも知れないという想像は、SFファンのみならず多くの方々にも共有されているのではないか? 無論、より慎重に考察するなら現時点でAIが獲得できているのは既存の発表データを網羅・集約したり分析・統合・解釈して表示したり音声で伝えたりすること等で、己の“存在”としての体験を自らの原資として今までに無かったものの見方や想像力を新たに付け加えることは出来ないと考えられる。(追記24日12:55)

ネタバレBOX

 つまり、AIは情報を収集し処理しているということだ。そこに実存としての存在は関わらない。飽くまで電気によって駆動されCPUのような演算装置によって膨大なデータを処理しているに過ぎないから、人間が例えば事業の失敗や失恋、希望の根絶、病による死への恐怖や苦しみ、人間関係の様々な苦悩によって発狂に至る程の悩みに責め苛まれる経験を通して獲得した今迄思いつくことすらなかった精神的地平に気付き新たなものの見方や新たな価値観の発見等をするようなことは、今の処できていないと考え得る。然しこの思考が正しいと自信をもって言い切れる者は多くはあるまい。それほどの大問題を今作は提起しているのである。ひょっとして、と期待していたことが裏切られなかった。尺の長さは以上のような理由で全く問題にならず、最後迄集中して拝見することができた。場転の際暗転して移動式テーブル上に必要な場合はその都度小道具を置いて対応する手際も良い。集中が途切れることもなく、休憩が無いにも関わらず兎に角夢中になって観ることができた。始め学生っぽく思えた演技もアンドロイド、ミコに心の萌芽が芽生えたことが伏線として表現されて以降全く気にならなくなっていたので問題無し。 
 板上は観客席対面に大きなぬいぐるみや地球儀、幾多の小さな人形たち、真ん中にポスト型の貯金箱等が置かれた長方形のテーブル。上手に矢張り大きなぬいぐるみ、人形の他にノート、スマホ、タブレット等々の置かれたテーブルがある。出捌けは主として上手ホリゾントの奥から。ホリゾント裏側が袖。下手は場転で用いるテーブル、小道具類の収納場所として機能するので出捌けは上手が殆ど総てを占める。
 既に記したように今作の素晴らしさは、アンドロイドが心を持つ事態を想定して脚本が書かれていることだと考える。それは単にヒトが他のヒトを恋する場合に対し単に異種との恋というコンセプトで括り切れる事象ではなく、ヒトの心に極めて良く似た而も情報量や情報処理能力に於いては人間を桁違いに上回るAIのような知的産物VSヒトの倫理的問題を含む社会問題として極めて本質的且つ深刻な大問題でもある。本当に優れた作品がこのような事象を具体性を通して描くように今作もアンドロイドがヒトを恋する物語として紡いでいる点がグー。而もこの具体性が今作を単にSF的なお伽噺ではなく、近未来に実際に起こってもおかしくないようなリアリティーを持った物語として着地させている。

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