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『砂の女』

『砂の女』

キューブ

シアタートラム(東京都)

2021/08/22 (日) ~ 2021/09/05 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

配信うれしや。当然、うずめ劇場と比べている。うずめ版は狭いせんがわ劇場仕様、こちらはケラにしては狭いつってもトラム、十分広い。だが両者の共通点の多さに最初は驚く(どっちか参考にしたのでは?と思った程)。まずあばら家、四角の台上にひと間あり、奥にスダレ、その裏が台所(うずめ版は狭い廊下程度、ケラ版はひと間と同じ広さがあり180度回転して裏側にある)、下手端に小さな土間。他の演出では、土を搬出するロープが中央から下りる、昼間戸外に出た瞬間に鳴り出す音(強い日差しが頭を殴るような金属=鐘に近い音)、砂かきをボイコットした結果受ける攻撃?(あばら家が砂によって受ける衝撃音)のガーン!という音。そして人物形象は原作イメージが確固とあるとは言え、自分で意図せずとも重なり合って来る感覚があった。
他にも男女の他の4名の俳優に男女以外の役をコロス的に配し、うずめ版では舞台のあちこちからゲリラ的に登場、ケラ版では付加された場面(他役者による)がゲリラ的に登場、など。素人の目が見るニワハンミョウとカミキリムシの違い程度の差だ。

ケラによる独自演出は、男女(仲村トオル、緒川たまき)以外の役者(オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲)が、例えば傀儡を操り、あるいは男の妻のいる東京の家の近所の交番で巡査や交番を訪れる人を演じ、時に男の前に突如現れて男を東京(回想)の場面に引きずり込むなど、書き加えられた部分。
あばらやの周囲には暗い色彩のシートが垂れ、砂の壁を表す。最初の夜、女が家の周りの砂をスコップで掬う「チャッ・・サッ・・チャッ・・サッ。」と動作に合わせてSEが鳴るのが時計の秒針の如くで、延々と続く時間を表して効果的。

beside U : わたしいましたわ

beside U : わたしいましたわ

あまい洋々

新宿眼科画廊(東京都)

2021/10/08 (金) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 タイゼツベシミル 華5つ☆ 新たな才能、発見! 暫くしたら拝見した演技・演出について追記予定
 「甘い蜜の部屋」というタイトルを聞いて直ぐ何かが分かる人がどれだけ居るだろうか?

ネタバレBOX

 ある女流作家の作品名である。作家の名は、森茉莉、森鴎外の溺愛した愛娘である。今作の作者は若い。その若い作家がまさか森茉莉を読んで居ようとは、正直驚かされた。相当の読書家であることは間違いない。あの鰻の寝床のような新宿眼科画廊で賢い舞台の使い方をしているのもさることながら、舞台美術というか装置もシンプルでありながら、それ故にこそ如何様にも見せることが出来ることを利用して各場面をキチンと見事に変換して見せる。小屋の使い方は一般的で入口のある側の短辺の反対側をホリゾントとしホリゾント手前下手に脚立が1つ、脚立スペースの手前が演技用板の載った舞台だ。各コーナーから柱となるスチールパイプを立ち上げ天井部分もスチールパイプで連結した矩形。下部の各コーナーには対角線上の柱2本の下にストッパー付き滑車、他の2カ所は滑車のみが付けられ4人の登場人物の内、板上に居ない2人がこの矩形を動かして各場面に対応するよう調整する仕組みだ。壁面に当たる4面は総て左右に開くレース状のカーテンが付けられ開閉することで様々なシチュエーションに対応する。尚、今作の劇作家は谷崎潤一郎の「痴人の愛」を2度目に読んだ時に今作を書くことを決めたという。劇作家の視座は主人公“なおみ”を中心に展開するが、台詞は実にシャープで而も自然である。ずっと年上のパパさんとして譲治が登場するが、「痴人の愛」との関係で2人の関係は類推できよう。譲治がなおみの成長日記と称して撮る写真や、彼女の住いが変わるなどの状況変化がある度にその名と年齢がカーテンに映し出されるのも頗る効果的だ。また、孤独な少女の魂が運命的な出逢いを遂げ、仲良しになるが、互いにベタベタせず、まるでムルソーのような異界を抱えた人間同士である点も素晴らしい。それだけ、2人の悩みの深さも孤立感も、また非情緒的だが極めて知的な者のみが体験する迷い方の持つ深刻性も際立って表現されているからである。因みに仲良くなった女友達の名は‟ノラ”でありイプセンの「人形の家」の主人公であるのは、劇作家のイプセンへのオマージュでもあろう。
土のバッキャロー!!

土のバッキャロー!!

株式会社Ask

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/12 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

面白い。開幕するや山形のぶどう園の幼馴染の青年二人の会話からスタート。これが説明口調の台詞の羅列、如何にもな大仰なリアクションの遣り取りが続き、わざとらしい空気感の醸成にげんなり。TVドラマ調の説明演技ばかりでリアリティーが感じられずこれは···、と思っていたのだがそれは杞憂ですぐに引っ繰り返る。
オガタワイナリーの社長である斉藤レイさんの登場だ。その地での日々の暮らしを纏った訛り、汚れたスニーカー、ずっと舞台を動き回り視線で空間を広げ会話の一つ一つに観客が気になるようなボールを投げ入れる高度なテクニック。一気にこの世界に引き込まれた。何かしら観客に感情移入させる取っ掛かりがあれば、話に入っていけるもの。
コメディ・リリーフの大林素子さんも大活躍。ちょっと痩せ過ぎなのが心配だが、彼女の登場で舞台がパッと明るくなる。國島直希氏演ずる狂気のシスコン男も観客を沸かせた。涎をダラダラ垂れ流ししつこく繰り返すボディタッチ、計算尽くなら天才的。妹役森崎りなさんは指原莉乃似で可愛かった。

山形県のワイナリーが舞台。次期後継者の娘(中右遥日〈なかうはるか〉さん)が四年間のワイン造りの研鑽の旅を終えて帰郷。その彼氏(杉江優篤〈まさひろ〉氏)は近くの果樹園を継いでいたが、退屈な日常からの脱出を思い描いている。そこに東京から見学に訪れる甲斐千尋さん。“ワイン馬鹿”の女達と”どうにか自分を変えたい“と願う人達のささやかな巡り合い。

兎に角観ているだけでワインについてかなり詳しくなった気が。異常なワイン人気の理由もどこかしら腑に落ちた。葡萄とワインの事だけで一年中頭がぐるぐる廻っている斉藤レイさんと中右遥日さん親子が羨ましくも思える。ずっとワインのつんと鼻を突く芳醇な香りと、舌の奥をもわっと刺激する濃厚な酸味が甘く漂っているような空間だ。品のある上質な会話劇。

ネタバレBOX

甲斐千尋さんを山谷(やまや)勝巳氏が旅館に送っていく件があった筈だが、何時の間にか國島森崎兄妹と迎車に同乗することに。自分の見落としか?

台詞と演出の乖離が甚だしく感じた。会社の面接のような理路整然とした台詞の遣り取りが情感を損ねている。そこまでハッキリ説明しなくてもいいシーンが沢山あった。台詞ではなく演出で表現すべき勿体無いシーンも。小説だと秀逸な描写でも、舞台となると手触りが違ってくる。

この話をどう終わらせるのか?と気になっていたが、國島氏の提案する「芋煮会」の開催で皆が盛り上がる。「成程、これは上手い」と感服したところに、中右遥日さん運転の車とトラックが正面衝突したとの知らせが入る。衝撃のラスト。「ここで終わりかよ?」と呆然。後から今作は前後編の二部作だと知った。
山梨県を舞台にした『丘のバッキャロー!!』前編(2020年10月公演済み)、山形県を舞台にした『土のバッキャロー!!』前編(今作)、来年春に合同の後編が上演されるとのこと。気になる。
SessionYoshiya 5stag

SessionYoshiya 5stag

かわせみ座

プーク人形劇場(東京都)

2021/10/08 (金) ~ 2021/10/12 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初日を見てきました。毎回、人形が動き出すと、まるで命を吹き込まれたようで感動します。今回もとても楽しんできました。今年は5日間しかありませんが、ぜひたくさんの人に見て欲しいです。

クロノス

クロノス

LOGOTyPE

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

キャラメルボックスは未体験のままだったから、本作は原作しか知らない状態で鑑賞。うーん、こんな話だったっけ。いや、確かにこういう展開ではあるのだけど、主人公の感情一本槍で押しきる、最初に発表された短編の印象からすると、舞台用に増やした人物たちの設定とか、特に余計なギャグめいたセリフが出る度に、俺の好きな「吹原和彦の軌跡」とは何か違う…という思いも。とはいえ、研究員役の推し役者さんを堪能できたので☆1つ追加。

がん患者だもの、みつを

がん患者だもの、みつを

うずめ劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

内田春菊さんがそんなことになっていたなんて全然知りませんでした。内田さんの体験が元になっているのでしょうが、そこはいろいろ脚色され、乳がんになった人の話から始まり、女同士の微妙な関係も繰り広げられて面白かったです。
内田さんのサイン入り漫画本も売られていたので購入しました。

がん患者だもの、みつを

がん患者だもの、みつを

うずめ劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/10/06 (水) 14:00

座席1階

かつては宣告されたらもう人生おしまい、という病気だったが、今は二人に一人が患者となる時代。若くしてがんになった人も治癒して社会復帰している人もたくさんいる。それでもやっぱり、日本人の死因の1位であるだけに怖い病気だ。今作は、がんを患ってストーマ(人工肛門)をつけるようになった内田春菊さんが、劇団に書き下ろした快作である。

設定の妙というか。乳がんと診断されることになる職場の先輩と、励ましているのか迷惑がっているのかよくわからない後輩のアイドル系ユーチューバーという年が離れた二人の女性。これを軸にした舞台は、暗さをまったく感じさせないポップなムードで進んでいく。

大腸がんでストーマを造設した男性がこの二人の女性の間に入って微妙な三角関係を作っているというのもいい。笑える場面はたくさんあるが、先輩の女性がユーチューバーのオタク女性を「オタクだから生身の男性と付き合ったことなどないだろう、ましてリアルなセックスなど」と思い込んでいたのが、実は子どもまで作っていたという衝撃の場面だ。このほかにも、タイトルにあるように「がん患者だもの」という現実世界で「あるある」の小ネタがたくさんあって、飽きることはない。

初日だったので、内田春菊さんが舞台終了後に登場してミニライブをしてくれた。ちょっとしたお得感があった。不勉強だが、「うずめ劇場」は初めて見た。また、新しい注目劇団を見つけたぞ、というお得感もあった。

子供の時間

子供の時間

劇団文化座

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2021/10/08 (金) ~ 2021/10/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/10/08 (金) 17:00

座席1階

何という悲劇的結末。映画にもなったリリアン・ヘルマンの有名な戯曲で、その結末は分かっている。分かっていてもズシーンと胸に重たいものが響く、悲劇的な結末である。

最初は他愛もない子どものウソ、言い逃れだったのかもしれない。いや、言い逃れというには少し悪質なのだが、いずれにしてもちゃんと調べればウソだとわかる与太話だったのだ。それが、大人の世界の世間体とか、あるいは自分のかわいい孫を守りたいという思いとかが、大人たちの判断を狂わせる。そして、本来は平穏な毎日と達成感を得るはずだった大人たちが自滅していく。ここまで悲劇的だと、その原因を作った孫娘のメアリーがどんな思いを胸に成長したのか、という後日談を知りたくなってしまう。普通なら、正気で生きてはいられないだろう苦しみが、彼女にものしかかっていくだろう。

真摯な舞台を通して客席と向き合ってきた文化座が、80周年記念作にこの戯曲を取り上げたわけはいろいろあるらしい。だが、半世紀以上も前の、インターネットも携帯もなかった時代に書かれた戯曲が胸に迫ってくるのは、今の世の中を見通しているからだ。半世紀後にも、フェイクニュースや根も葉もないウソで命を落としている人が現実にいるという世の中を、だ。この戯曲が記念作に取り上げられた理由は本当はそこにあると、私は思う。

子供じみた悪口や、冗談のつもりで流したでっち上げニュースは、ネット社会にあふれている。プロレスラーの女性が自殺した事件は、ネットに悪口(もちろん真実ではない)を書き込んだ人は書類送検されただけだった。そうしたことを目の当たりにして、私たちはフェイクニュースの恐ろしさを知る。ネットに書き込む前に、その話が真実なのか、真実と信じるに足るものであるのか、私たちは考えなければならない。

ニュースを扱う世界では、発信されようとしているニュースが真実か、真実と信じるに足るものであるかを検証する作業、業界用語で「ウラを取る」なんて言われる作業を行っている。いや、最近は行っていないメディアもある。しかし、ウラを取らなきゃ怖くて書けない、という感覚は、ジャーナリストには最低限必要な資質なのである。ニュースがウソだったために人が死ぬなんて結果を招いてはならないのだ。

今回の舞台を見て、ズーンと重苦しい気分になったのは、この舞台があまりにも現代社会を深く映しこんでいるからなのかもしれない。そして、ここが舞台の力強さ。カレンとマーサを演じた二人の女優の、感情や思いが黙っていても胸の内からあふれてくるような見事な芝居。そして、文化座を今も率いる佐々木愛さんの、動きは少なくともどっしりと胸に迫るセリフが、舞台の迫力を支えているといっていい。

舞台転換の際の長さと物音が気になったが、休憩を挟んで3時間。長さを感じさせない舞台だった。

眺め

眺め

ブルーエゴナク

THEATRE E9 KYOTO(京都府)

2021/10/08 (金) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

満足度★★★★

ゴキブリも観劇に来ていて、気になった(何時飛んでこないか…)。
内容については、時間がシンクロして、ゴキブリも気になる中、ついて行けない場面もあったが、父親の気持ちも理解できた気がします。
関西では味わえない、良い時間でした。

HOPE

HOPE

HOPE製作委員会

本多劇場(東京都)

2021/10/01 (金) ~ 2021/10/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/10/04 (月) 18:30

いつもはステージ上であばれまくっている新納慎也が初演出の作品なのだとか。チラシやウェブに名前が載ってるのにステージで姿を見ることができないなんて寂しいですが、今後はこういう形で応援することが増えるのかな。主人公の女の狂気と原稿の「精」のピュアさと世間の汚さがぶつかり合って面白い作品でした。欲を言うと、音楽にドラムとベースが欲しかった。

暫しのおやすみ

暫しのおやすみ

劇団競泳水着

駅前劇場(東京都)

2021/10/02 (土) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

グッときましたね。派手さはないけど、とても細やかで淡々とした舞台。ちょっと戸惑いましたが、するりと入り込むことが出来ました。

クロノス

クロノス

LOGOTyPE

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

展開が早く、劇的な効果もあり。夢中で観ました。楽しかったです。
ありがとうございました。

海賊の時間

海賊の時間

劇団イン・ノート

OFF OFFシアター(東京都)

2021/10/07 (木) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

演者の会話がコミカルで、時間が行きつ戻りつしていても混乱することなく、楽しく観ました。
出だしはセリフがあまり聞き取れなかったけれど、海賊の時間になったら皆さんクリアなセリフ回しで安心しました。

クロノス

クロノス

LOGOTyPE

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 舞台美術・演技が良い。

ネタバレBOX

 通常のSFで守られているタイムパラドクス等を総て無視し、取り敢えず主人公即ち作家の頑固と一徹を通すことで一途なメンタリティーの純粋性に惑わされそうになったのは、主役を演じた南翔太氏の演技によるものだろう。無論、主役が引き立つような脇の演技も気に入った。然し5度目のチャレンジ辺りから鼻白むシナリオである。単に好きというプラトニックラブだけで少なくとも研究所のスタッフになれるだけの頭脳を持った人間が収まるハズはないからである。掛かるのは己の命より大切な欲望である。その欲望が綺麗ごとで済むハズが無かろう。この辺りから鼻白んでしまった。舞台美術は可成り洗練されているし役者陣の演技も良い。然しシナリオの終盤でアラが完全に露呈してしまった。演劇としてのリアリティーを失ってしまうのである。プロデューサーはもう少し勉強し、良い原作を選ぶべきであろう。少なくとも大人には底が割れてしまう。とはいえ、役者陣の頑張りと舞台美術を評価して星は4つ。
ヒ me 呼

ヒ me 呼

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2021/09/24 (金) ~ 2021/10/03 (日)公演終了

実演鑑賞

久々に天野天街演出舞台を拝めると密かに期待したが・・所謂「天野作品」は演出は脚本と一体であったと思い当たる。
今作は単刀直入に言えば脚本に難がある。冒頭、古からの由来のある温泉(というより遺跡?)から一気に古代へ飛ぶ。仮想の古代王国で奇想天外かつ希有壮大な物語が展開するが、話の定着と飛躍のバランスがSFチックな話では難しい。天野節は散発的に織り込まれるが、原作は「設定」を正当化するストーリー説明に終始してどうにか結末にこぎつけた印象で、天野トリックを優位に効かす余地がない。「天野天街世界」に塗り込まれる事のない天野氏演出舞台を初めて観た。私的には残念な出来。

自由恋愛を「知らなかった」という設定に、やはり無理があったと思う。
火(ヒ)族、水(ミ)族、木(コ)族という三民族は、ジャンケンのように互いが接触するとどちらかを消滅させてしまう存在。だから共存していても「恋愛対象」とならなかった。というより互いに反目しつつもヒミコに従う事で共存していた。ところが女王ヒミコの下命または死により、王命ではなく部族同士のコミュニケーションで国を運営する必要が生じ、悶着がありつつも交流が生まれる。これが「一目惚れ」の機会を作る。
惹かれ合う二人(男女関係に限らず)が部族の違いを超えて繋がろうとする所の描写が面白いが、複数カップルで同じ意味合いの場面が描かれると、やや冗長。二人は接触するとビリっと来るが、最終的には「最初は怖くてもこうしていれば・・」と、皆が手を繋ぎ合い、分立を乗り越えて行くというクライマックスは神話的な描写で「自由恋愛発祥」が標される。

着想は面白く、「接触」こそ生命の源だ、というメッセージは現在を意識したものであるのは間違いない。
ただ、「まだ自由恋愛を発見していない」未開の状態から、「何だか惹かれてしまう」事の発見、そしてそれが常態化するまでのストーリーでは、ドラマに必要な葛藤や障害が希薄になる。単純化すればこの芝居は、三部族が生物学的に接触困難であった、という障害を、生物学的な変異に拠って克服した、というだけの事になり、カタルシスがない。細かなエピソードや歌・踊り、笑いで肉付けし、それが話の前進に貢献してもいるが伏線回収の構成として弱いのは否めない。

恋愛を縛るのはむしろ社会システムが構築され、しきたりや制度が作られて行く段階だ。統治者は統治に不都合な「自由」に制約を課して行く。支配層や一定の地位を有難がる人々にとっては、現状維持が至上命題であり、体制に揺らぎが生じるのは人民に「富」や「余暇」が生じて「知」を手にする時だ。領土を超えようとする人々と押さえ込もうとする領主の相克の光景がみられるのは、文明興隆の時代、産業革命以後~現代。為政者は常に人民に「知」を与えまいとする。現在の日本では現状維持層の広がりが目立つが、反知性主義に表れるように「知」を手放し、後は何を指針に生きるのか(朝のワイドショーの占いか)。。
このような時代に自分を見失わないために、素直に自分の「好き」を殺さず育てよ、とは正しいのであるが、ピンと来なかった理由には物語の起伏という事以上に、何かある気がするがまだぼんやりしている。「ああなりたい」人物像として、古代の人々が迫って来なかったから、だろうか。

終わり良ければ、という話もある。冒頭エピソード(現代)では中年男と若い女性のカップルが登場し、男が誘った秘湯に着いてみたが地元旅館の女将っぽい婆が「先ごろの地震で地下水脈が割れて枯れた」との説明で、女は男を見限る。残った男が温泉に建った碑に手を触れると古代に飛ぶ、という運びなのだが、さてラスト。同じ場面に戻り、古代に紛れ込んだ男が現代に戻った体。そこへ女が別の若い男と登場する。先まで自分と居たはずの女は男を覚えておらず、周囲の者も現カップルを承認している。狐につままれた中年男、という「現実は厳しい」オチである。これが捻りがない。冒頭の予感を裏切る展開か、何か中年男にもたらされる教訓(獲得物)がせめてあれば何だが、惨めな三枚目で放置される。作者が考えすぎて一周してしまったのか・・。例えば若い男女を結び合ってる動機が不純で、今見た「純粋な惹かれ合い」と遠くかけ離れてしまった現代をチクリとやって終わるとか、それだけでも感触は違ったかも。

ネタバレBOX

役所は市民の側か、為政者の側か。・・新型コロナに関しては東京都庁は「為政者」マインドで人民に対峙し、情報を制限した。検査、入院等に関する数値情報の、保健所を通さなかった数も重要なはずだが管轄が民間となったら手も出さず、「これが感染者数であり検査数である」と流し続けた。
ある場合には役所は市民を「コントロールすべき存在」と扱い、仕事として与えられた限りで、「市民の側」に立つ。だから、公務員が「市民の側に立つ」ためのルールを明文化しなければならない。
夏の夜の夢

夏の夜の夢

演劇集団円

吉祥寺シアター(東京都)

2021/10/02 (土) ~ 2021/10/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この作品は今までは野田秀樹版とブリテン作曲のオペラをみただけ。初めてオーソドックスな舞台を見て、思った以上に面白かった。大公の婚礼という大きな枠組みが強調されているが、恋の糸がもつれた4人の貴族の若者、オーベロン夫妻の痴話喧嘩にふりまわされる森の妖精たち、大公の婚礼の芝居の稽古に励む職人たちという3層構成がクッキリ見えた。

媚薬でかく乱された恋人たちの罵り合い。とくにずっと「なんのことかわからない」と戸惑っていたハーミア(平田舞)が、ついにブチギレるあたりは傑作。職人たちの中の、ボトムのいろんな役をやりたがる、出しゃばったおどけも傑作。客席も始終クスクス笑いがもれ、楽しんでいた。
そもそもこの芝居はお節介の喜劇といえる。ハーミアとライサンダー(近松孝丞)が森に逃げたのを、ヘレナ(藤好捺子)がディミートリアス(平野潤也)にチクるのが始まりで、これがおせっかい。妖精王のオーベロン(石井英明)が、ヘレナにつれないディミートリアスを見て、惚れ薬で改心させようというのが混乱の始まり。これが最大のおせっかい。パック(玉置祐也)がボトム(金田明夫)をロバの首にしちゃうのも、おせっかい。全然そんな必要も必然もないことが今回のテキストレジーでよくわかる、事前になんの脈絡もないから。

金田明夫の堂々たるとぼけぶりがよかった。俳優たちの、シェイクスピアの細々したセリフを、立て板に水でまくし立てていくのは、感心した。特に恋人たちの女優がうまかった。演出では職人たちの芝居も最後にきちんとやるとは意外だった。大いなる蛇足だ。最後までバカバカしくも陽気な気分に満ちた、堂々たる祝祭劇を楽しめた。たまにはこういう頭空っぽになる古典があってもいい。

舞台も二階建てにしてバルコニーを設け、空間に上下の変化をつける。二階の下を奥の通路まで見通せるように奥行を生かして、狭い空間を広く使っていた。森を走り回る場面などに生きていた。上下に移動する階段を舞台の左右と、はしごを組み合わせた逆立ちしたくまでのような中央のオブジェにもうけている。舞台の出入り口も左右、上下、手前奥の8箇所もあり、変化に富んだ出入り。シンプルだがよくできた美術だった。
休憩なし2時間とコンパクトなシェイクスピア

心は孤独なアトム

心は孤独なアトム

“STRAYDOG”

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

7日の公演を観てきました。コロナ渦のなか延期延期でしたが遂に観る事が出来ました。観終わった後またすぐ観たくなるのはどうしてでしょうね。あーこれDVDにならんかなぁ。

ピンク

ピンク

猫のホテル

ザ・スズナリ(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/13 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/10/07 (木) 19:00

110分。休憩なし。

レプリカシグナル

レプリカシグナル

たすいち

シアター711(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2021/10/07 (木) 14:00

105分。休憩なし。

土のバッキャロー!!

土のバッキャロー!!

株式会社Ask

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/10/06 (水) ~ 2021/10/12 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ほっこりした人情喜劇で癒された。役者さんの熱演がビンビン伝わってくるいいお芝居でした。
ワイン好きの人にはたまらなくいい、と思う。
ワインにさほど興味がない私も興味をそそられた。
次回はどんなバッキャローがあるのか、楽しみです。

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