夏の夜の夢 公演情報 演劇集団円「夏の夜の夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    この作品は今までは野田秀樹版とブリテン作曲のオペラをみただけ。初めてオーソドックスな舞台を見て、思った以上に面白かった。大公の婚礼という大きな枠組みが強調されているが、恋の糸がもつれた4人の貴族の若者、オーベロン夫妻の痴話喧嘩にふりまわされる森の妖精たち、大公の婚礼の芝居の稽古に励む職人たちという3層構成がクッキリ見えた。

    媚薬でかく乱された恋人たちの罵り合い。とくにずっと「なんのことかわからない」と戸惑っていたハーミア(平田舞)が、ついにブチギレるあたりは傑作。職人たちの中の、ボトムのいろんな役をやりたがる、出しゃばったおどけも傑作。客席も始終クスクス笑いがもれ、楽しんでいた。
    そもそもこの芝居はお節介の喜劇といえる。ハーミアとライサンダー(近松孝丞)が森に逃げたのを、ヘレナ(藤好捺子)がディミートリアス(平野潤也)にチクるのが始まりで、これがおせっかい。妖精王のオーベロン(石井英明)が、ヘレナにつれないディミートリアスを見て、惚れ薬で改心させようというのが混乱の始まり。これが最大のおせっかい。パック(玉置祐也)がボトム(金田明夫)をロバの首にしちゃうのも、おせっかい。全然そんな必要も必然もないことが今回のテキストレジーでよくわかる、事前になんの脈絡もないから。

    金田明夫の堂々たるとぼけぶりがよかった。俳優たちの、シェイクスピアの細々したセリフを、立て板に水でまくし立てていくのは、感心した。特に恋人たちの女優がうまかった。演出では職人たちの芝居も最後にきちんとやるとは意外だった。大いなる蛇足だ。最後までバカバカしくも陽気な気分に満ちた、堂々たる祝祭劇を楽しめた。たまにはこういう頭空っぽになる古典があってもいい。

    舞台も二階建てにしてバルコニーを設け、空間に上下の変化をつける。二階の下を奥の通路まで見通せるように奥行を生かして、狭い空間を広く使っていた。森を走り回る場面などに生きていた。上下に移動する階段を舞台の左右と、はしごを組み合わせた逆立ちしたくまでのような中央のオブジェにもうけている。舞台の出入り口も左右、上下、手前奥の8箇所もあり、変化に富んだ出入り。シンプルだがよくできた美術だった。
    休憩なし2時間とコンパクトなシェイクスピア

    0

    2021/10/08 11:10

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大