最新の観てきた!クチコミ一覧

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踏切のサーカス

踏切のサーカス

キキタガリ

座・高円寺2(東京都)

2025/07/19 (土) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

20日バージョンを観劇。
昨年のポラリス同様、今年も素晴らしい劇空間でした。
きちんとした美術に、美しい照明、実力ある演者(声のプロ多数)。
激動の時代に、一篇の詩が生まれる話。
芸術家(クリエイター)の生みの苦しみや嫉妬心。
美しい言葉の協奏曲が、耳からも目からも届いて、吸い込まれるようシーン多数でした。

全体の構成が前回に比べると、藤丸亮さんの作・演としては、散漫で中弛みを感じるところがあったのですが。
今振り返ってみると、全編があまりにも構成的にかっちりしてるよりは、作品全体の構成も詩的だったのかも、とか。

一応、朗読劇分類ですが。美術、衣装、各種演出に簡素なところは無く。
演者の立ち位置も目まぐるしく変わります。
一般の舞台劇と違うのは、演者が台本を持ってるところと、演者は演者同士で芝居するとゆうよりは、観客に向かって芝居を届ける形になってます。
これ、よくある朗読劇ともストレートプレイとも違って、新しい表現に感じる。

こちら、やはり一人でも多くの人に触れてもらいたい舞台だと思うので、昨年と同様2日間、4公演のみというのが非常にもったいなく思われます。
円盤や配信もありませんし、口コミで広がるだけの余裕も無い。
お忙しい方ばかりなので、こういう形らしいのですが……。

りすん 2025 edition

りすん 2025 edition

ナビロフト

岡山芸術創造劇場「ハレノワ」小劇場(岡山県)

2025/07/19 (土) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

岡山公演を観劇。
きっかけは、アステールプラザの舞台技術講座で出会った舞台監督・山中秀一さん。
この「りすん2025」ツアーに関わると聞いて、面白そうだと思った。

観客席三方に囲まれた小さな空間。
2時間の芝居は、私を予想もせぬ世界に連れて行く。
簡素な舞台美術に、音と光、役者たちの緊張感が加わることで、空間は広がり、鋭く変化していく。

観劇後、ハレノワ1階の喫茶室での「劇場デ読ム会」に参加。
原作を読んだファンの熱量に圧倒されつつ、私が思わず漏らした本音——

「自分が感激したいばかりに、つくづく観客や読者というのは、残酷なものだ。登場人物に人格があったら逃げ出したいだろう心境もよく解かる。」

役者陣も印象的だった。
朝子(加藤玲奈)の利発さと脆さ、隆志(菅沼翔也)の優しさ。
そして祖母役・宮璃アリの、予想のつかない登場にワクワクした。

舞台監督・山中秀一、舞台美術・田岡一遠ほか、多くのプロフェッショナルが「寄ってたかって」作り上げている舞台の贅沢さに、私は目眩がしそうだった。

ネタバレBOX

この作品では、ある瞬間から“物語が変調する”ような構造に驚いた。
時間が巻き戻り、眼の前で起こる突然の断絶。
その緊張感のあるやり取りの中で、観客も次第に「何が本当なのか」を問われていく。
そして、終幕の朝子の科白——

「出られた!」

そのとき舞台に取り残されていたのは、私(観客)のほうだった。
“作り物の世界”に取り込まれたまま、唖然とするしかなかったあの瞬間を、私は忘れない。
役に立たない言葉が欲しい

役に立たない言葉が欲しい

GORE GORE GIRLS

駅前劇場(東京都)

2025/07/16 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても笑わせていただきました。良いお芝居でした。次回作も観たいです!

この暮らしにタイトルを付けようとした、日々

この暮らしにタイトルを付けようとした、日々

劇団 Rainbow Jam

シアター711(東京都)

2025/07/15 (火) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

言いたい事が凄く伝わるお芝居でした。考えさせられる事が多かったです。観られて良かった。

始まりの終わり

始まりの終わり

ムニ

アトリエ春風舎(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

難しくは、ないんじゃないのかな。

全部理解しようとすると難しいかもしれない。

でも、感性に従って勝手に個人個人が好きに解釈すればいいと思う。

勝手な解釈に味が出る。

おでんみたいなもので、個人の感性がしみたら真っ黒くろすけな染みたおでんなのか、あたまでっかちな無味乾燥なおでんなのかの違いが出てくる気がする。

みんな、好き勝手に感想を書くといいと思う。ここは北朝鮮じゃないんだから、どんな感想を書くのも自由だよ、好きに作者の感性の世界を遊ぶのがいいと思うよ(笑

ネタバレBOX

さいしょにけっこうな謎として、そもそもグミは2036年に生きているのか?というのがある気がする。

物語構造としてよくあるのに、死んだ友達から招かれてかつて親しかった友達たちが長い年月を経て再び邂逅するというのがある。そのように書かれてはいないけれど、あらすじを読んで自分はそのような物語の可能性をまず考えた。

そしてそもそもグミなる男が存在したのかも含めて。登場人物五人の心のなかの理想のキャラクターなんじゃないのかな?とも思えたりもした。そしてそのほうが救いがある。

それらの連想はさておき、この物語の世界の好きなところは、そもそもがほぼこれから起こる事件として時間軸が設計されているということだと思う。こういうのって意外とない。そしてこの物語のなかではこの時代感はかなりポジティブな印象として働いていると思う。

…物語のほとんどが、これから起こる事件であり、かつ未来の五人の心のなかの思い出。構造として意外と見かけないし、詩的なのに懐古的過ぎなくていい気がする。

…なんだろう、僕らは作者から物語のバトンを手渡さたされたような気もする。それはある意味音楽的な発想なのかもしれないけれど、とりあえず自分はそんなことを感じた。

自分が考えたのはこんなふう。これからグミ(これはグミが同級生から誘われた二丁目のビアンバーで作者の分身にも思えるハーフの女性が邂逅した夢のキャラクター…それは前者の五人の友達のパターンの踏襲にもなるのかもしれないが…そしてそれが現実問題として物語を一番ロマンで満たす妄想ともいえる気がする)が、未来の渋谷でワールドカップのベスト8進出の騒乱騒ぎのなかで、見知らぬ死神から銃を受け取って、アジトで自殺する(これは僕の解釈)するのを止めて別の世界線に導くとか…自分はグミの物語が90年代のカート・コバーン(もちろん彼は銃によってニルヴァーナに向かった)の連想もあるのだが、それは傷ついた魂を痛みから救い出す甘い夢(しかもそれは懐かしい思い出のようで)でありながら、繊細な魂をこの荒れ果てた世界線で生き残らせる希望をもたらす可能性を僕らに夢見させてくれるんじゃないかな、とか、勝手に思ってみた。

考えてみると、不景気によって失われたゼロ年代のように当時は言われていたのだけれど、それがのちの今となっては外国から人を惹きつける時代(活気のある昭和とバブル後の内省的な雰囲気が融合されたような、と言ってもいいのか)であり、新しい文化の生まれた活気のある夢のような時代のように参照されるようになるとは夢にも思わなかった、というのもある。自分としてはそのゼロ年代は苗場のアーケイド・ファイアのあたりで少しゼロは過ぎるけどピークを迎えて終焉した気がするのだけれど、今生きている人たちにはその時代の蜜というのはリアルタイムではたいがい気づかないものだと思う。

人は人生を生きるに従って、かけがえのない大事な人間を次々と失っていくもので、それは悲しいことにたいてい繊細で優しさに満ちた人たちから消え、さいごには頭のおかしなことを大声で喚き立てる人間しか残っていないことすらある(苦笑

自分は生きてきて、目の前にどんな権力や暴力があろうとも、最終的には命を賭しても身の周りの傷ついた人間を救うのが、自分の人生を最も美しく生きる糧になるのだと思った。

グミというのはメタファーなのかもしれないけれど、人生を、表現を生きる糧にしてサバイブする自分のような演劇バカには、変わり者を言葉で支えて良さに気づかせ救い支える指標でもある。

…考えてみれば、公園だって造花ばかりでただ飾られて、隙間に美しく生きる昆虫すらいなければ、地獄じゃないだろうか?書き割りも隙間に台詞を囁く役者がいなければ卒塔婆である。

未来を生きるには、可能性を信じて傷ついた変わり者を目を皿のようにして見つけ支えなければ、自分の人生も美しくは彩れない。

恐怖や脅迫で人を脅し傷つける時代(とくに最近になって思うのだけれど、正気とは思えないくらい事実とは懸け離れためちゃくちゃなことを偉そうに言う人が偉いと勘違いされる時代でもある)だからこそ、弱いもに優しい目線を送る美しい物語は、大きな拍手で迎える必要があるのだと思う。(ちなみに以前の上司(しかも役所の部長)がどこかの病院に殴り込んで意味不明なことを騒いでその病院の精神科医に「間違いなく発狂している」と診断され警察に通報され、都内の警察で情報共有され有名人になった挙げ句クビになった。議員と友達だと自慢している重役でもおかしなのはいる。地位と正気とは現代では完全に無関係なので、繊細な変わり者は勇気を持って生きていってほしい、なんてな(苦笑))
家畜追いの妻

家畜追いの妻

劇団俳小

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

オーストラリアの国民的作家、ヘンリー・ローソン。オーストラリア・ドル紙幣の肖像にも選ばれた程。『家畜追いの妻』という9ページの短編小説はオーストラリア人なら誰もが知っている古典。今作の作家、アボリジナルであるリア・パーセルはこの題名を敢えて使用してアボリジナル目線から物語を綴った。闇に封印されてきたもう一つのオーストラリアの物語。

アボリジナル(オーストラリア大陸の先住民)。従来日本ではアボリジニと呼称されていたが、現地ではアボリジニは差別用語扱いらしい。アボリジナル独自の文化、ドリーミング(アボリジナルの人生観、世界観、民族としてのアイデンティティ=自己認識)。アボリジナルの世界観は時間と自然と祖先とが混ざり合った霊的世界で暮らすもの。アボリジナルは今尚精霊達と交流し互いにメッセージを送り合って生きている。

主演モリー・ジョンソン役、月船さららさん。四人の子供を抱えた妊婦。劇団がオファーを掛けた意味が判る。今を必死に生きている存在。息絶え絶えに目をギラつかせて今日をどうにか生き延びる獣。肩に掛けたマルティニ・ヘンリー銃。欲望と暴力だけが支配する土地で女手一つ子供達を一人前に育て上げねばならぬ。口ずさむ歌が最高。皆忘れてるかも知れないが元宝塚女優、辞めなければトップ確実とまで言われていたエリート。

アボリジナルのヤダカ役、筑波竜一氏は千葉真一の弟、千葉治郎(矢吹二朗)っぽいかも。渡瀬恒彦風味も。鎖の付いた首枷をはめられたまま何処かから脱走してきた原住民。生きてゆく方法、生きてゆく意味を知っている。

不在の夫、ジョー・ジョンソン。雇い主から預かった家畜の群れを安全に生活させながら長距離移動させるのが仕事。羊が放牧地の草を食べ尽くしたら次のパドック(屋外の放牧地)に移動させる。長期間、家を空けることになる。

モリーの息子、ダニーは根本浩平氏。ヤダカに憧れる。
浮浪者トマス・マクニーリ役、大久保たかひろ氏は適役。カウボーイハットにスタッズを吊るすセンス。
行商人ドナルド・マーチャント役、佐京翔也氏は水を得た魚。虫歯の抜歯からのいい流れ。
レズリー巡査役、駒形亘昭(のぶあき)氏。
家畜追い仲間、ロバート・パーセン役、岡本高英氏はまさにリアルな荒くれ者。とても話が通じそうにない。お手上げだ。
同じく家畜追い、ジョン・マクファーレン役、井上覚氏。反吐が出るキャラ設定に徹する。

アフタートークで翻訳家であり、早稲田大学教授、オーストラリア演劇研究者の佐和田敬司氏の話が興味深かった。民族のアイデンティティは目に見えない部分にこそある。そここそが重要、核となるのは精神性。

本物の手斧を小道具で使用している。重々しい。
きびきびとしたスタッフの西本さおりさんが印象的。
佐和田敬司氏翻訳のオーストラリア演劇シリーズは必見だと思う。これは鉱脈を掘り当てた。劇団俳小の看板になる。もっと広く世間にアピールすべき。知れば興味ある人は必ずいる筈。何故今これを観るべきなのかを論理的に伝えなければいけない。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

『みんな鳥になって』もアイデンティティの物語だった。自分が自分である根拠、所以。敬虔なユダヤ教徒のユダヤ人一家に生まれた主人公はアラブ人の恋人と結婚したい。家族にそれを許して貰いたいが、拒絶される。宗教だの民族だの歴史だの伝統だの下らない戯れ言。自らのアイデンティティはそこにはないと思う。ユダヤ人であることに誇りを持っていた父は実は赤ん坊の時盗まれたアラブ人だった。ユダヤ人として育てられただけ。そのことを知った父は壊れてしまう。アイデンティティ・クライシス。自分が自分である根拠を失った。自分の拠り所の何という脆弱性。そこで皆アイデンティティを探す。自分が生きていく為の心の地図を。自分という存在のしっくりくる生き方を。自然に在るべき姿を。

今作ではモリーが自分の出自がアボリジナルであったことを知り、いろいろな謎が解ける。孤独だと思っていた自分の生き様は祖先達がずっと見守り共にあったことを。アイデンティティは道しるべ、ずっと精霊達が道を照らしてくれている。自分は独りではなかった。

演出が振り切れていない。シリアスでドロドロなものが観たかったが何処か中途半端。アメリカの90's 西部劇っぽい軽さ。何か時代と地域の閉塞性、重圧やストレスが感じられない。踏みしめる大地の砂埃。日々の生活の苦々しさ。物語が転調する一番重要な場面、家に踏み込んだ巡査を殺してしまうくだりが段取り芝居。これではしらける。

演出の山本隆世氏は今作についてかなり口ごもる。いろんな制約があって自由にやれなかったのだろう。ブラックフェイス(黒人ではないものが黒人風にする舞台化粧)をしなかったこともその一つだろう。自分は敢えて今作こそやるべきだったと思う。この物語を的確に伝えるには必要な効果。高度に差別の概念を弄ると逆効果になる。(精神性の過剰な押し付けは作品を台無しにする)。モリーの母親、二人の赤子を抱くブラックメアリーがタイトルロールで登場する。(演出助手で今作に関わっている諸角真奈美さんか?)彼女だけブラックフェイス。だが作品としての効果はてきめん。作品イメージを司るイコン。物語にとって視覚効果は重要。まず観客に作品を誠心誠意提供すべき。物語にのめり込み興奮高揚したからこそ作品を愛す。全てはその後のこと。その前にぐだぐだやるとフェミニストの演説みたいで味気無い。全ては観客のものだ。肌の色の違いこそ、当時の世界を司る極めて単純なルール。その虚しさ、無意味さをも表現すべき。(トランスジェンダー〈性別と性自認が一致していない人〉を巡る競技についてのトラブルも同様な混乱)。

レズリー巡査役、駒形亘昭氏の場面はコントっぽい。作品世界との違和感。アフタートークの司会は絶妙だっただけに不思議。もっと暴力的で感情的な演出が合ったのかも。
井上覚氏のSEXはもっとリアルな方がいい。観客を心底どんよりとした気持ちにさせるべき。本当、今後顔を見るのも嫌な位トラウマにして欲しい。

※月船さららさんの歌った曲が今も脳裏に流れる。
スコットランド民謡「Black is the color of my true love's hair」。

黒は僕が心から愛する彼女の髪の色
彼女の唇は美しい薔薇の色
誰よりも愛らしい顔と優美な手
彼女が立つこの土地が僕は愛おしい

※The Corrsの『Black Is the Colour』がカッコイイ。
あの夏の夜の夢

あの夏の夜の夢

演劇ユニットキングスメン

LIVE HOUSE 曼荼羅(東京都)

2025/07/18 (金) ~ 2025/07/19 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/07/18 (金) 19:00

 前回観た座·高円寺の『マクベス』では、マクベスが悪の権化と化して、最終的に野望欲望が肥大化していった結果、全てを失い、身の破滅に繋がるピカレスク悲喜劇だが、それを野性味溢れ、残酷で、エログロな場面も露骨に導入しながらも、最後の最後までマクベスが良心や理性との葛藤で揺れ続ける、1人の等身大の人間として描かれる。
 周りの持ち上げや、唆し、畏怖によって、マクベスが独善的で独裁的な怪物と化していくといった風に描かれ、むしろ哀れにさえ思えた。
 しかし、世の独裁者はこうやって形作られていくのかと思うと、背筋が凍り付き、襟が正される思いがした。

 その『マクベス』に引き続き、今回は同じくシェイクピアの『真夏の夜の夢』を曼荼羅という吉祥寺の老舗ライブハウスで、それもバンド演奏付きということで期待しかなかった。
 今回は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を、シェイクスピアの台詞の良さや世界観は残しつつ、ジェンダー問題の観点から『夏の夜の夢』を捉えるということで、現代的な価値観をいかにこの劇にアレンジとして活かしつつ、どう本編と融合して、違和感なく観れるのかということに、興味が湧いた。

 実際に観てみると、アテネの公爵のシーシュースが結婚前に公爵の婚約者ヒポリタを力で従わせていることがよく分かる演出として、血だらけのドレスに黄色の鎖をヒポリタの首にかけ、鎖の先をシーシュースが持ち、時々鎖を引っ張りながら会話するという、明らかに対等とは言い難い、シーシュースに隷属する婚約者という構図が、DV夫とその妻の関係性を如実に連想させる。
 そのシーシュースとヒポリタの関係性は、家父長制、現代日本においても完全に消えたとは言い難い男尊女卑観を視覚的にも体現しており、鬼気迫る迫力、強烈な印象を与えられるとともに、深く考えさせられてしまった。
 忠臣イージアスの、イージアスの娘ハーミアの意志とは関係なく、ディミートリアスと結婚させようとする独善的で父権的、家父長的、封建的価値観に支配された行動、森で身体関係をハーミアに拒まれ、不気味で謎めいていて、神秘的で不穏な感じに描かれる妖精王オーベロンの臣下妖精パックの惚れ薬によって、ライサンダーがヘレナに目を向ける。
 ディミートリアスは、元々はヘレナと仲が良かった筈だが、今は心変わりして、ハーミアを追いかけ回すという勝手過ぎて、やりたい放題の男たち、それに翻弄され、尊厳も何もかもズタズタにされる女たちという構図を普段の『夏の夜の夢』よりも露骨に強調していて、ジェンダー問題について考えさせられた。

 妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの妖精の女王タイテーニアと上手くいかないとなると、急に柄にもなく大声で手足をジタバタさせて、まるで赤ん坊か3歳児のように泣き喚く場面などは、ギャップ萌えで大いに笑えた。
 妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの両乳首が見えて、ガタイが良くて引き締まって、筋肉質な身体には、男の色気を感じてしまった。
 妖精王オーベロンを演じる平澤智之さんの身体にフィットし過ぎて下半身の大事な部分が露骨に強調されている海パンに上半身裸に白い布を引っ掛けただけ、頭にもお粗末な冠のようなものを被っているという出で立ちも妙な生々しさと渾然一体となった不健康な色気が漂っており、しかしその露骨な感じが寧ろ笑えてしまった。
 妖精の女王タイテーニア役の高村絵里さんも黒のブラジャーに黒のパンツ、腰布を巻いただけといった出で立ちで、そのあまりのもろ出し感と、艶感に驚いてしまった。
 まだ役者が河原乞食と呼ばれていた頃の荒々しく、過激で、エロティックで、残酷で観客に媚びてなかった頃の原初の演劇を思い出さずにいられず、今演じられるどんなシェイクスピア劇よりも、シェイクスピアの根幹となる部分や匂い立ち上ってくるような、舞台と客席の距離がなかった頃の大衆性が今ここに現出したかのような舞台に、演劇ユニットキングスメンに可能性を感じた。

 妖精パックが暗くて不気味で、闇感があって、神秘的で不穏な、声の出し方1つとってもこの世のものとは思えない感じに高村絵里さんが演じられていて、妖精パックっというと、大抵は軽くて、イタズラ好きで、でも何処か憎めない道化的に描かれることが多かっただけに、良い意味で、新鮮で衝撃を受けた。
 しかし、よくよく考えてみれば、妖精パックは妖精なのだし、人ならざるもので、人智を超えた能力を有しているとしたら、そんな人好きのするような感じではなく描くのが、リアルみを感じるのだと思えた。

 アテネの庶民や妖精たちの役をバンドFURUCHANSが演じるという、役者だけでなくバンドメンバーまでもが劇に参加するというところが、ライブハウスという特殊性も相まってか、全然違和感なく、寧ろ自然に見れた。
 
 妖精王オーベロンの妖精の女王タイテーニアと関係性が上手く行かないことで癇癪を起こし、タイテーニアとアテネの庶民で妖精パックの魔法でロバの顔にされたボトムとを惚れ薬で無理矢理くっつけようとしたりと強引で、勝手過ぎるが最後は、惚れ薬の効き目を解き、オーベロンを疑う妖精の女王タイテーニアと仲直りして、人間界では、ハーミアとライサンダー、ヘレナとディミートリアスといった感じで、お互い本当に好き者同士で結ばれ、シーシュースとヒポリタの関係性も逆転して、今度はヒポリタがシーシュースの首に鎖をかけ、鎖の先を自分が持って時々引っ張るといった感じに、主従の立場が逆転し、忠臣で封建的、家父長的で偉そうで傲慢だったハーミアの父親のイージアスもヒポリタに鎖を首にかけられ、大人しく従うといった感じに、大袈裟で視覚的も、見ていて大いに楽しめて、みんな幸せになって心底安心した。
 だが、これで本当に良かったのだろうか、少なくとも一時的にだとしても妖精王オーベロンの妖精の女王タイテーニアが別れ話を切り出してきたことに逆ギレして、タイテーニアと人間で、妖精パックのイタズラでロバのあたまにされたボトムとくっつかせ、後で、あれは夏の夜の夢だったんだと弁明するこのエピソード1つ取っても感化できない女性軽視、女性蔑視、女性をただの物として扱っているように思えて許せず、他の登場人物の男性たちも同様で、現実としてはまだまだジェンダー問題が解決したとは言えない日本において、この劇や、この劇に出てくる登場人物たちの言動行動を通して、深く考えさせられた。
 自分もあんまり考えずに普段、大なり小なり女性に不快な思いをさせていないか、良かれと思って言ったことでも、相手を深く傷付けていないか、改めて自分を振り返る良い機会になった。

音楽劇 金鶏 二番花

音楽劇 金鶏 二番花

あやめ十八番

座・高円寺1(東京都)

2025/07/07 (月) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/07/11 (金) 13:30

レビュー系でのオーケストラピットと客席の間に横向きの花道があるものを想起させる(しかも一部は可動式の)舞台と上手上方のレフ板のような白い大きな円型の装置、舞台後方中央から下手に下げられたカーテン状の布等が特徴的な空間で語られるのはテレビ放送黎明期の逸話。
その内容はもちろんだが個人的には冒頭場面をはじめとして先述の円型装置・布などを活用した影を使った照明効果に心惹かれる。
また、実在のものをベースにしたのではなく完全オリジナルな(推定)劇中歌にも感嘆。
さらに戦争が人々に残したものをさりげなく盛り込み声高ではなく反戦を訴えたのもイイ。
あと、狂言回し的な役どころを演ずる金子侑加・中野亜美お二方のメインパート(過去)と現在パートの老若の演じ分けも見事。
これだけのものがB席3000円ってウソだろ!?

大塚ショートストーリー

大塚ショートストーリー

萬劇場

萬劇場(東京都)

2025/07/17 (木) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

めあては !ll nut up fam (イルナップファム)さん。初日の17日ソワレ。

萬劇場 夏の短編集。8団体が参加。1公演に3話、それぞれ異なる団体でひとつ30~40分。
2年ぶりの開催ですね。前回は近くの公園で祭りもありました。今年は猛暑のため公園はやめて劇場でのお祭りになったようです。

(1) こわっぱちゃん家 「HOTELタイムポート大塚」
(2) えのはぐべる 「やおよろずの銀の祈り」
(3) !ll nut up fam 「FruuÜuuit!」

各団体それぞれテイストがバラバラなのが楽しかったです。

ちなみに「えのはぐべる」さんは、「劇団えのぐ」さん「ハグハグ共和国」さん「Jungle Bell Theater」さんの複合団体とのことです。


ネタバレBOX

(1) こわっぱちゃん家 「HOTELタイムポート大塚」
建設計画中の大塚のホテル。地元企業が集まって、何かの「世界初」を考える。
舞台後方の夫婦だけがメインの話と関連ない様子で。それがなぜなのかは終盤に分かりました。未来から、亡くなった母親の若いころをリアルタイムで観察していたのですね。
現代でたどり着いたアイデアは、タイムマシンの離発着のための広いスペースを作って待つという「未来からのタイムトラベルの誘致」。なるほど!と思いました。その発想はなかったです。

(2) えのはぐべる 「やおよろずの銀の祈り」
カップルが神社で神頼みしていたら、神様たちが現れました。戦時中の恰好をした若者も。そして米軍の空襲がやってきました。
観劇したあと、不思議な気持ちになりました。神様たちの中にいた仲の良い男女は「天祖神社の夫婦イチョウ」なのですね。空襲を生き抜いて、樹齢600年とか。
大塚駅の近くにあるので、実際に行ってみました。老いてもなお力強く太い幹と枝を見て、また不思議な気持ちになりました。

(3) !ll nut up fam 「FruuÜuuit!」
ピーチ姫、桃鉄、松坂桃李、山口百恵、さくらももこ、MOMO、桃太郎、桃三郎。
田中沙季さんの芋虫が進んでいくさまがすごく面白かったです。昨年の舞台「Spirit Seek Story」で拝見した面白さそのものでした。沼舘ミオさんの切れのある動き、松岡里奈さんの歌声、太田彩佳さんは何かいろいろ、良かったです。
男性陣はほとんど初めて演技を拝見しました。「ドウトク」のイメージが強かったからか、想像以上のおふざけに驚きました。いい意味で。

21日にも行きました。それはまた別の記事で。
美談殺人【劇団狸寝入】

美談殺人【劇団狸寝入】

劇団狸寝入

関西学院大学・上ヶ原キャンパス旧学生会館2階・ママ上ホール(兵庫県)

2025/07/19 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

長すぎ…
オリジナルで、過去2作と比べると内容はしっかりしていたが…
言いたいことはなんとなくわかるが、日本の歴史や大戦に興味が無い僕にはわかりづらい面も…
次回作に期待

短篇集『四十五の事情』

短篇集『四十五の事情』

中野劇団

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2025/07/19 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

あれ?どこかでみたな…と思ったら、過去作のオムニバス
新人も加入して、これからも楽しみですね!

星降る街に住む君へ

星降る街に住む君へ

ROOT

近鉄アート館(大阪府)

2025/07/19 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

最初からなんとなく展開が分かってしまうのは残念だが、それでも高橋節が所々に散りばめられ、3回泣いた🥹
笑いもあり、人情と愛情と僕にはない一筋さには脱帽
制作対応以外は文句無し

夕凪の街 桜の国

夕凪の街 桜の国

“STRAYDOG”

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2025/07/17 (木) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

原作は「この世界の片隅に」のこうの史代さんが描いた広島への原子爆弾投下をテーマに描かれた漫画で、2023年の再演です。ストーリーは、娘が父親の挙動を怪しみ、散歩すると出かけた父親を弟の彼女と一緒に尾行すると広島に行きつきます。
そこで、かつて広島で被爆し亡くなった父の姉の事を知り、並行して原爆投下から10年ぐらいまでの戦後まもなくの時代を描いています。
原爆投下後に、徐々に放射能に蝕まれていく姉の皆実(みなみ)が健気で、危うくてそれでいて明るく、周りの人々も本当に良い人ばかりで、一番印象に残りました。
原爆そのものの描写はないのですが、現在の色々なことに影響していることが分かり、胸を打ちます。
悲しいお話ですが、ところどころに歌や踊り、笑いも入り、子役の小学生達もたくさん動き回って、元気をたくさんもらえました。ありがとうございました。また見に行きます。

六道追分(ろくどうおいわけ)~第七期~

六道追分(ろくどうおいわけ)~第七期~

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2025/07/09 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

第三期だったかを観劇し、いたく満たされた時間であったのでもう一度観ようか、と思い立って観た。
結論的には、前回観たのが大変良かった分、今回点数が落ちてしまう。席も前回は前から二列目、今回は後ろから二列目。見え方も違ったが、俳優が違うとノリも深みも変わる。
とは言え、物語の骨格がしっかりしており、要所を締めて最終盤、本作の(自分としては)売りである現代に通じる世評を問いかける場面、人物それぞれ意を通じさせる場面で観客をぐっと引き込み、最終場面に持って行くのは流石。自分の周囲の女性たちは一様に落涙の様子。
と書きつつも、やはり前回は人の人間味や、細やかな機微が体現されており、序盤から個々の俳優に愛着が湧いていた。台詞のテンポの良さは今回が上であり、拍手や掛け声が湧く場面も前回以上であったが、自分が芝居そのものに引き込まれたのは終盤漸くであった。
私の好みはテンポ、粋なノリより「中身が沢山詰まっている」事なのやも。
第八期、最後のチャンスだが、さて。

始まりの終わり

始まりの終わり

ムニ

アトリエ春風舎(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

小難しいの極みなのかなと思ってたけど見方色々なんだろけど先ずシンプルおもしろかった!

家畜追いの妻

家畜追いの妻

劇団俳小

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今春の「血の婚礼」に続いての翻訳劇で、前回同様に、日本人には少し想像しにくい他国の社会背景が強く顕れたストーリーで、上演する上で難しいところもあると思われるが、また、うまく構成された物語という感じでもない台本かなとも思うが、うまく雰囲気を創り出していた。劇中の歌は、オーストラリア的なものなのかどうか不明だが、ストーリーにうまく絡む良い歌であったし、斧を切り株に刺したり、ちょっとだけ出てくる役柄も手抜き無くインパクトがあって、演劇として楽しめる演出が施されていると感じられた。

「さよならノーチラス号」/「ナナメウシロのカムパネルラ」

「さよならノーチラス号」/「ナナメウシロのカムパネルラ」

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『さよならノーチラス号』
関根さんが演じているのでつい忘れがち(私がです)ですが、回想シーンのタケシは小学6年生なんですね。そのころの子どもの心の揺れを思ったら泣けてしまいました。
老犬のはずのサブリナがとても可愛かったです。

ネタバレBOX

サブリナを演じていた方は若いかただと思うのですが、犬の時はちゃんと老犬らしくて良かったです。
阿佐ヶ谷に死す

阿佐ヶ谷に死す

劇団ドラハ

シアターシャイン(東京都)

2025/07/18 (金) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

(笑えた度)5(今感)5(完成度)5

そんじょそこらの演劇愛を軽く謳いあげたくらいの表現ではもはや何も感じなくなり、引き返せなくなってしまった小劇場観劇フリークの麗しい皆様に向けて、南阿佐ヶ谷の中心の席数80やそこらのちっこい小屋(失礼!)で、小劇場愛を、上天丼にうなぎの蒲焼と三元豚のロースカツをトッピングするが如くこれでもかというくらい屋上屋の過剰さで謳いあげた極めてマニアックなPOP、パンク、ファンキー、トランスMAXな逝っちゃってる系形而上学的メタシアター。

褒めてます。

ネタバレBOX

ダンス、照明、音楽、衣装、最高にクール。

アングラや野田あたりね、と思っていたら大○計画、松尾○ズキをガチ目に○○しだす、○○さ、(自主規制)

幕開き、暗転板付からのカーテンコール。
アフタートークをアウフヘーベンするうちに遡って入れ子の本編が完成していく鮮やかさ。

演劇のことを考えすぎておかしくなってしまった人でいっぱいの地獄、
阿佐ヶ谷○妹やもたい○さこ、ワンピースにセカオワ、奇妙奇天烈、豪華絢爛、
ありがとうございます。世界に充満する数多のナラティブに囲まれて、もう満腹です。
え、物語の工場?これって、わんこそばなの?

小劇場演劇最適上演時間は90分という奇しくもかの澤田育子氏と全く同じ結論に到達した作者モへー氏が劇中に素のまま登場し、小劇場演劇はカネがかかるだけという関係者大喜びの自虐ネタをひとしきりボヤいたあと、白塗りでダンスしたせいで上演時間が90分を超えるという味わい深いオマケ付き。

激狭な小劇場空間を野田秀樹真っ青な過剰な言語で満たしまくった挙げ句の果てに、言葉は無意味でダンスするしかないという世界の真理に到達するやり口は、見事すぎて思わず入信契約書に実印を押す寸前だ。

もう2度と観られなさそうな雰囲気を醸し出しているが、こういうものは本当に奇跡の一期一会。うっすら寂寥感。
TOKYO NIGHT CRAB

TOKYO NIGHT CRAB

株式会社NLT

博品館劇場(東京都)

2025/07/17 (木) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

タイトルに偽りなく、やっぱりカニでしたか。何か嬉しいな。ブラック効き過ぎ、クド過ぎる連作コント集、なかなかに楽しめました。

消えていくなら朝

消えていくなら朝

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2025/07/10 (木) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

7/21観劇

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