ロンリー・アイランド 公演情報 ティーファクトリー「ロンリー・アイランド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    冒頭、前説かと思いきや月船さららさんの挨拶からスタート。劇中劇の前説シーン。トライアウト(試験興行)として上演後に観客を交えたディスカッションを行なうと。

    ところは新宿歌舞伎町のバー、マスターで劇作・演出家の田中壮太郎氏がいる。トライアウトが終わり、打ち上げを兼ねた意見交流会。加藤虎ノ介氏は役者を辞めたいと相談。月船さららさんは日系アメリカ人の鈴木裕樹氏の演技が大仰なので本公演では代えてくれと言う。それを聞いた鈴木裕樹氏はエキサイト、差別ではないか?と。近くのガールズバーで働く水野花梨さんが顔を出す。「東日本大震災の年に生まれたから絆と名付けられました。この名前は嫌いなのでキズって呼んで下さい。」田中壮太郎氏の古くからの友人、沢田冬樹氏が訪れる。反社らしい。舞台のテーマである「今現在の日本人と戦争」についてのディスカッション。突然そこに轟音と振動、爆発。北朝鮮からのミサイルが着弾したらしい。パニック。

    白地に墨筆の斜線が幾筋も入った背景。セットの椅子やカウンター、テーブルにもそれに合わせた斜線が。戦場のシーンになると背面の幕がステージ全体に掛けられ裏地になる。赤地に黒の斜線。カウンターやテーブル、椅子の凹凸で戦地の地形を表現。

    加藤虎ノ介氏は桑マン似。
    月船さららさんは漫画顔。『この世界の片隅に』の義姉、黒村径子や時代劇漫画に出て来る女キャラのよう。独特な目。特に今作は表情が多彩。
    新宿周辺に今夜も棲息する業界ゴロ、沢田冬樹氏。宇崎竜童や成田裕介監督とかミッキー・カーチスみたいな風貌。じゃあ飲み屋はburaか。
    水野花梨さんは巨乳で可愛い。『abc♢赤坂ビーンズクラブ』からの振り幅。
    鈴木裕樹氏は目が薬物中毒者。

    ネタバレBOX

    昨年『ヘルマン』を吉祥寺シアターで観て、余り好意的には受け止めず。金と時間を持て余している老人相手のステータス舞台。(老人客は今更何を学ぶ気もないのでステータスにしか関心がないという偏見)。こういうのも必要だろうけれど自分には関係ないなと思った。今回、月船さららさん出演ということでチケット購入。また難解な詩的演劇かと思いきや全く違って攻めに出てる。観客に伝えようとしている。(分かる人にだけ分かればいい、的な偉そうな態度がない)。前半はかなり面白かった。これこそmétroで演るべき舞台だと。だが演劇人が戦場に出てからが幼稚。安易に志願し安易に戦場で無力さに打ちのめされる。そこから先は天願大介氏に任せるべきだった。

    新宿に北朝鮮のミサイルが着弾。混乱の中、南から中国が北からロシアが攻めて来る。北朝鮮は誤射とのことだが裏で中国がやらせたらしい。全ては計画通り。安保条約からアメリカが介入、自衛隊と民兵が入り乱れ日本国内は地上戦に。沢田冬樹氏は志願者を民兵として戦場に送る手配師に。水野花梨さんは頭が悪く貧乏に育ったので戦地に適応していく。月船さららさんは野村秋介的な男の娘。賢く恵まれて育ったので戦場では使い物にならない。

    加藤虎ノ介氏の父は町中華の店主。アル中で手が震える為、彼の作るチャーハンは「アル中チャーハン」と呼ばれた。

    北の地震、南の台風で戦争が継続困難に。停戦という名の分割統治。加藤虎ノ介氏は発狂して拳銃自殺。沢田冬樹氏は裏切り見捨てた水野花梨さんに復讐され絞殺される。残った田中壮太郎氏と月船さららさんに鈴木裕樹氏は演劇をやろうという。今こそが演劇をやるにふさわしい時。ずっと続いてきた人間の歴史とは光と闇の繰り返し。こんな気持ちこそがずっと皆が抱いてきた本物の人類の歴史。永劫回帰。無限の繰り返しの中で生きている。

    まあ戦場に話が移ってからかなり話は散漫。いやこれ戯曲内の話だったってことにしてくれよ。これで戦争と日本人を語らせるのは無茶だ。ぬるい日本人と戦争論を聴かされても···。

    ロマン・ポランスキーの『戦場のピアニスト』が素晴らしかったのは追い詰められた人間は食うことしか頭にない様の描写。思想も哲学も余裕からしか生まれない。戦争とは余裕の全くない状態。如何に物を考えないか。キューブリックの『フルメタル・ジャケット』みたいにやれたなら。戦争は知性の放棄なので知識人には戦争を止められない。止めるとすれば知性とは全く関係のないものだ。

    『フルメタル・ジャケット』は第一部でベトナム戦争に送られる新兵の教育が描かれる。徹底的な人間性の破壊、精神的肉体的に極限まで虐め抜き、何も感じない軍隊の機械にしていく。鬼教官役の退役軍人R・リー・アーメイはテクニカルアドバイザーとしての参加だったが、演技指導として行なった罵倒が凄すぎて実際に演じて貰うことに。そして第二部、ベトナムに送られた普通の青年は普通に殺人を犯す。映画の2時間の間で観客も戦争に参加し、何も感じず人を殺したような気分に。凄くリアルな感覚。誰もが仕事として人を殺せるようになるシステム。

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    2025/10/16 09:57

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