最新の観てきた!クチコミ一覧

181-200件 / 180692件中
獅子の見た夢―戦禍に生きた演劇人たち

獅子の見た夢―戦禍に生きた演劇人たち

劇団東演

俳優座劇場(東京都)

2024/04/12 (金) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

桜隊が原爆で全滅したことをめぐる芝居だが、桜隊(特に丸山定夫=南保大樹)よりも、演出家の八田元夫(能登剛)と劇作家の三好十郎(星野真広)が強く印象に残る。最後に、丸山の死に責任があるのは誰か、丸山の堕落を厳しく批判して映画をやめさせた三好十郎が丸山を殺したのではないかと、二人が語り合うシーンが印象に強いせいだ。また、桜隊の「獅子」の稽古を三好が見に来て、我慢できなくなって、役者たちをくそみそにこき下ろすシーンが格段に秀逸だからだ。

1940年から次第次第に厳しくなる新劇人へのしめつけと、その中で芝居を続けるためには、移動演劇連盟に入るしかなく、また広島へ行くしか選択肢がなかったという苦境が、劇団内の議論で示されていく。疎開や、軍都・広島に感じた危険性から、俳優がどんどん抜けて、その代わりの俳優を探す。そうして彰子が加わるのである。彰子は、大映の女優の友達も誘い、その彼女も原爆で亡くなった。

桜隊の話に並行して、出征した夫・かもんに宛てた新妻・女優の彰子(あきこ)の手紙が挿入されていく。彰子は結局、桜隊に加わって、原爆死する。(原案になった本を読むと、この手紙は、戦後50年以上、カモン(映画「無法松の一生」で、息子役を演じた俳優)が保存していた、妻からの手紙の現物である。それを知って、感動した)

桜隊が演じる「獅子」のラスト、丸山定夫の獅子舞は、それまでの2時間の集大成にふさわしい、リアルで生き生きした場面だった。園井恵子(  )の演じる慌てふためく農家の国策おかみをおしのけて、丸山の堂々としたせりふ「それが人間じゃぞ」の晴れやかさがよかった。2時間20分(15分休憩込み)

ネタバレBOX

観劇後、原案の堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たちー演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇」を一気に(特に後半を)読んだ。三好の「獅子」の稽古でのダメ出しは、八田の遺した膨大なメモに残っていたもので、だから罵倒言葉が格段に個性的でリアルだったのだ。他にも丸山についての三好の言葉など、ほぼ八他の記録からそのままとっており、舞台でも非常に強い印象を与えた。三好と八田が戦後に抱え続けた「戦争責任」のとげも、本書でより深く知ることができた。
丸山定夫の戦意高揚映画出演や、戦時ラジオへの出演の問題も、これまでになく掘り下げて書いている。その堕落から脱却を目指した丸山の再起をかけたのが「苦楽座(=桜隊)」であり、その良心的行動が、広島での被爆死に結果したという歴史の皮肉には、簡単には素通りできない重いものを突き付けられる。


八田が自身の戦争責任と向き合った戯曲「まだ今日のほうが!」は5年前にみたことがある。本書によれば、「まだ今日のほうが」のドイツ語挨拶をめぐる兄妹の会話が核心だそうだが、私の感想を見直すと、そのことは全く触れていない。妹と元活動家の恋人の、左翼活動の堕落をめぐるやり取りに目を奪われてしまっていた。
人形のいいえ

人形のいいえ

劇団しようよ

仙川 POSTO ( 調布市仙川町1丁目19-10)(東京都)

2024/04/11 (木) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/04/12 (金) 20:00

85分。休憩なし。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/12 (金) 19:00

真っ暗な空間に浮き上がるテロップ、突然俳優たちが交錯しだす手法、30年前にNYオフブロードウェイで観た手法に似ていた。繰り広げられるのは日本のドラマである。役者陣の演技は吉本新喜劇を凌ぐ味がある。この余韻を楽しみたく、役者の挨拶まで待たずに劇場を後にした夜です。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/12 (金) 14:00

言葉の大切さが伝わる素晴らしい舞台です!大満足です!

ノゾミのない

ノゾミのない

プテラノドン

シアター711(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

是非観てください。とても良かった。役者さん全員しっかりと心に残るとても素敵な舞台でした。

東京の恋

東京の恋

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

よく狙いの解らない短編上演である。テーマは「東京の恋」で、岸田国士、別役実、現在の深井邦彦、と三人の戯曲(深井は新作)から過去東京の百年の三時代を背景に短編集としている。恋と言うが、戯曲の内容は、男女の夫婦への思いが素材になっている。岸田本は結婚以前のお見合いの若い男女、別役本は中年の再婚のお見合い、深井本は妻が亡くなった良人の慕情と、恋と言うより結婚に関する「男と女」の意識のすれ違いがドラマになっている。岸田本(「頼もしき求婚」)は昔どこかで見た記憶があるが、今となっては、こういうお見合いは、若い男女や仲人役も含めて、観客にも俳優にもリアリティのきっかけがなく、空転している。別役本(「その人ではありません」)恋の機微を突いているわけでも、男女の関係の面白さが出ているわけでもない。本の出来もあまり良いとは言えず、繰り返しが多くて退屈する。深井本は新作だが、亡くなった妻に再会したい、という主筋は前作に引きずられてか、古めかしくラストに置かれた現代の挿話が、百年の鏡にもなっていない。東京の恋と言いながら焦点が見えてこない。
俳優はよく小劇場でお目にかかるベテランもいるのに、言葉への神経が行き届いていない。ことに、岸田、別役と言えば戯曲の台詞としては(内容については別にしても)、定評がある。観客も舞台の日本語としてはいままでも聞いてきている。この台詞表現の無神経な単調さ、鼻濁音一つ、友達言葉や敬語も出来ていない東京言葉の(ほとんど)無視はどうかと思う。過去を引きずらないというなら、先週見た若い加藤拓也・演出(「カラカラ天気と五人の紳士」)のように、原戯曲の台詞のまま現代の言葉にする努力をしなければ、過去の戯曲を再演する意味がない。
先年亡くなった劇団主宰の中島敦彦の劇風をつなぐなら、人情の機微を観察して、表現していくことが、この劇団の劇界での位置取りだと思う。中島敦彦の作品を始め、前世紀末から現在にかけても、幾つかの埋没させてしまうには惜しい戯曲が発表されている。松原俊春、宮沢章夫 如月小春 山田太一(戯曲もある)などなど。そういう作品の小劇場での再演も新しい役割になると思う。

ハナコトバ -朗- for spring

ハナコトバ -朗- for spring

Daisy times produce

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

ワイルド番地

ワイルド番地

ホチキス

あうるすぽっと(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

マイクパフォーマンス華やかでいいですね。ベタなのに最後まで飽きずに楽しめます。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

源泉枯渇に客離れ
閑古鳥の鳴く老舗旅館が舞台であるけれど、悲壮感はほぼ感じられない
旅館の亭主をはじめ中居さんや料理人、観光協会の方々が、めっちゃ面白いから
もう お客欲しがり過ぎ(笑)
沢山笑える喜劇として成立しているのだけれど、この物語にはもうひとつの側面が

作品を生み出す人にとっては常に付きまとう問題
本当に自分のやりたい作品か、一般大衆の欲しがる作品か
売れる要素も取り入れながら自分の表現世界を創り上げるというのが売れっ子であり続ける秘訣ではないかとも思うのだけれど、そこに人生観が絡んでくると本当に難しい、特に本作のような場合は・・・
ネタバレ厳禁でこれ以上は ですが 自分の絶対だと思っている価値観を他者(特に近しい人)の価値観と照らし合わせて、それが本当に“絶対”なのか検討してみるのも決して悪くない と主人公を観ていて思ったのでした
暗転中、モニターに提示される言葉の数々にも興味を惹かれるので、暗転時間にも価値を生み出せる という見せ方も良かったです

La Mère 母

La Mère 母

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/29 (月)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/12 (金) 14:00

座席1階

心の内外、つまり妄想と現実がクロスオーバーするような筋立て、演出で、舞台から目が離せない迫力ある作品だったが、なにせ後味が悪い。どよーんという重苦しい空気が劇場を包む。それだけ作品にインパクトがあるということだろうが。

父、息子、そして母という家族三部作の一つ。フロリアン・ゼレールの作品で、世界中で上演され映画化もされているという。今回の「母」のテーマはエンプティ・ネスト(空の巣)症候群。家庭の主婦として子どもたちを育て上げ、そればかりに力を注いだ果てに、子どもたちが巣立っていったときの空虚感に心が折れる。仕事ばかりで妻を省みず、さらに浮気までという夫の行状が追い打ちを掛ける。舞台は冒頭から、ほとんど正気ではない妻の状況が展開される。
最初からこのような追い詰められた状態なのだから、これがエスカレートしていけば破局は明白だ。仕事に浮気で忙しいが、そうはいっても妻に視線を少しは向けようとする夫が哀れにも思える。息子を溺愛し、息子の彼女にまで悪態をつく妻は醜悪だ。ラストシーンもさることながら、こうした場面場面にもはや、ため息をつくしかない。だが、そんな筋書きでも目が離せないのは、息をもつかせぬ緊迫感がずっと舞台に張り詰めたままだからだ。
そうした舞台を実現した若村麻由美の演技に拍手を送りたい。最初から最後まで彼女の独壇場である。お見事の一言に尽きる。

テーマはエンプティ・ネストだが、そこに至るまでに既に家庭には修復不能な大きなひびが入っている。息子は自立したいと考えていたようだが、母の溺愛にからめ捕られてしまって身動きが取れない。一直線に破局に向かう前に、何らかの救いの手はさしのべられなかったのか。やはり、後味が悪い。 

第37回公演『ライダー』

第37回公演『ライダー』

激団リジョロ

シアターシャイン(東京都)

2024/04/12 (金) ~ 2024/04/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/12 (金) 14:00

135分。休憩なし。

ノゾミのない

ノゾミのない

プテラノドン

シアター711(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/11 (木) 19:00

115分。休憩なし。

東京の恋

東京の恋

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/11 (木) 14:00

座席1階

100年前、50年前、そして今の東京を舞台にした3本立て。1作目が岸田国士、2作目が別役実という演劇の教科書に出てくる劇作家による原作で、3作目が深井邦彦によるオリジナル。3作目が一番、道学先生らしい舞台で、この一作だけでも十分に見る価値がある。あえて言えば、3作目をもっと作り込んで上演してくれたらいいのに、と思った。

3作目は、亡き妻への忘れ得ぬ思いを描いた作品だが、これがなかなか面白い。妻が亡くなった後父と娘の二人暮らしだったが、いよいよ娘が結婚する。家を出て行くことになり、冷蔵庫から娘が「これ、捨てていい?」と持ってきたタッパーには、妻が生前に作った肉じゃがが入っている。妻が死んでから6年。ずっと捨てられずにいた。なぜなら、食べてしまうと、もう同じものをつくってくれる人がいないから、ということだった。
これだけでも、ちょっとパラノイアかなと思うようなエピソードだが、本作のメーンテーマとなる物語はもっとすごい。ちょっとたそがれ気味で生気がない感じの初老の父を、青山勝がうまく演じている。
自分的にはもう一つの注目が、娘役を桟敷童子の大手忍がやっているところ。いつも、桟敷童子での迫力ある舞台を見ているせいか、今回の物語での役割には少し物足りない感じもした。だが、人間の理解できない行動の裏に隠されている心の動きを描き出している今回の物語は、やっぱり観てよかったと思う。
おまけ、ではないけれど、2作目の別役作品は、かんのひとみのさすがの演技が見られる。お見合いをテーマにした別役の不条理劇を初めて見たが、やっぱりくせになる面白さだ。

エージェント・クリミナルズ

エージェント・クリミナルズ

劇団ペガソルProject

王子小劇場(東京都)

2024/04/11 (木) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/11 (木) 19:00

B班を観た。本作が旗揚げのユニットで、アクションをメインにしているみたいだが、いろいろな意味で若い芝居だと思う。(2分押し)50分(10分休み)84分。
 犯罪者を集めて特別捜査チームを作り、医療メーカーの軍事産業進出を調べるが、…という物語。アクションを軸に構成しているが、一応興味深く観ることができた。ストーリーはご都合主義的だが、マンガチックな演出もあるので、あまり気にならない。場面によってセリフが巧く言えなかったり、アクションの効果音が合わないところがあったり、技術的にはまだまだな感じもあるのだが、若さで押し切っているという感じか。ただし冗長。フライヤーでは120分、3日前のXで140分と予告して、実際は146分。その長さが必要だとは思わない。セリフフェチの私としては「闇献金」「ワクチン」という用語に違和感を覚えた。舞台美術ももう一工夫が欲しかった。天才科学者を演じた演出兼務の塩澤くらい振り切った演技を見せてほしい。

S高原から

S高原から

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/22 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

青年団で「今的にgood」という意味で評価したのは、いずれも新作の「ニッポン・サポート・センター」「日本文学盛衰史」で、他の旧作再演は興味深くは観たが淡泊さが勝ち、ぐぐっと差し込んで来るものが無かった。
だが今回は(本演目は二度は観ているが)意固地に淡泊、と以前見えた印象がなくなり、実にハマった俳優とその演技が最大の貢献であるが、刺さって来た。何度か観た演目だから、確かこの人はこの先痛い目に遭うのだっけ、とか、先を楽しみに観られた面もあるし、アゴラでの最後(大規模なのは)のステージという事が俳優もそうだろうが自分も喰い気味な眼差しを送っていたかも知れぬ。
が、やはり、「死」と直面している場所である事と、その事実を踏まえての敢えての「意識してなさ」という微妙な線が、微妙に絶妙に出ていたから、と思う。
最も印象的であったのは、「死」に近いだろう存在として、中藤奨演じる福島が、友達三人(内一人が恋人、他二人が別のカップル)の訪問を受けて対応するエピソード。他の訪問者や入院者のエピソードの合間に、観客は断片を眺める事になるが、彼らは散歩から戻った所での会話で、じゃテニスをやろうとなり、福島当人は医者からストップが掛かっているので「見てるよ」と言い、皆が一旦部屋のほうに下がって後の展開。
どうやら当人は眠くなって暫く部屋で寝ちゃってた、と後で分かる。その前に三人組の一人の男が先にラケットを持って降りて来て暫~く滞在し、お喋りに参加するのだが、「見て来る」と絶妙に去る。やがて降りてきた福島と、三人が又喋ってる間、福島はまたソファに横になり、「すぐ行くから」と追いやる。恋人が気にして「寝れば」と告げ、他の二人(カップル)は先に行く、と去る。和田華子演じるその恋人も絶妙な距離感を出す。彼女も去り、その後他の人物が登場したり、最後は医師と連れだった看護師が、ある話の続きを「ここでいいから」と話して聞かせるも呆れられる、というくだりを二人は福島の様子を見ながらやるのだが、まだ起きない福島に部屋で休むようたしなめる。スタッフもこの場所が「死」と隣り合わせである事を一切おくびに出さないよう慣らされているらしい節度で、入院者に対している。その眼差しの奥を、観客は想像するしかない。
相変わらず寝ている福島。先の別のメンバーとの場面でも、話しかけられて返事をせず、寝ていると思わせて肝心な所では「違うぞ」と口を挟む。顔の前で腕を乗せて休んでいて、顔は見えない。
観劇中の居眠りに掛けては人後に落ちぬ自分だが、体内のコンディションによって睡眠量にかかわらず「どうしたって眠くなる」事は、それなりの歳になれば心当たりがある。福島の様子は、「横になる」という控えめな行為によって内臓がそれなりにやられてるだろう事をリアルに告げており、にも関わらず、認知的不協和を嫌う空気感も手伝って、あたかも何も起きていないかのよう。音楽もなければ劇的に不安を煽るような台詞もない。だが・・一つの肉体が滅びようとする時も、多くの人たちの生活の時間は刻まれ、淡々と流れて行く。
他の主なエピソードとして、恋人が訪ねて来たと喜んだのもつかの間、同伴したという友人から別れの通告を代弁された青年の背中が語るダメージも、かつての婚約者の訪問を受けた青年画家の語らない内面と表面的な対応の「大人」感も、味わい深かった。

平田オリザ氏が(恐らくは新劇や過剰なアングラへの「アンチ」として)日常性、現代口語へのこだわりをもって演劇を始めた事を、いつも念頭に青年団を観劇して来たんであるが、いつもそれを裏切って非日常が高揚をもたらす瞬間こそ面白いと感じ、感動を覚えてきた。
さて今後青年団はどういう変遷を辿るのか、未知数だけに楽しみである。

三人姉妹

三人姉妹

ハツビロコウ

小劇場B1(東京都)

2024/04/02 (火) ~ 2024/04/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「ワーニャ伯父さん」に続いてのチェーホフ作品公演。今回は異色であった。というより、ハツビロコウの真骨頂はこれなのか。古典・名作の上演ではテキレジが優れていると感じたのだが、今回の「三人姉妹」は場面の構成、つなぎも含めて大胆な展開であった。特に私にとっては「こんな三人姉妹は初めて」な部分は、チェーホフ作品の厭世観、救いの無さを前面に押し出したようなラスト。軍楽隊の音を聞きながら、不幸と不運にまみれた姉妹らが「それでも生きて行く」意思を確認するような堂々としたラストが、今作では力なく弱々しい、没落し行く人間の等身大の没落ぶりがあった。ただしその事を強調したというよりは、三人力を合わせれば・・と希望がのぞく青春物語のラストを止め、淡々と終わらせる事を選んだようであった。普通ならとうに別れを告げたはずの軍医がまだ居て、最後のニヒリズムな台詞を、長女オーリガの「それが分かったらねえ」の直前に持ってきて、去らせるテキレジである。
私としては、地元の学校長に担ぎ上げられた事でモスクワが夢となった長女、恋する軍人と永遠に別れしょぼくれた夫の元に残された次女、本物の愛の到来を諦め誠実な結婚生活を選んだ矢先に夫が殺された三女。等しく不遇に置かれた事で三人が漸く手を取り合う場面でもあり、劇的なラストなのだが、今舞台はそれを敢えて回避した。
要は、「変えた」所がはっきり見えてしまった。そこがこれまでの古典の舞台化と異なる点(といってもどの程度知っているかで「分かる」かどうかも決まる訳であるが..)。ラストの手前までは出はけを壁際の椅子で処理したのも含めて華麗な捌き方を味わって観ていた。私的には「危うい」挑戦であったが、ハツビロコウの志向がもたらした必然であれば、また前進して頂く他はない。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今までに複数回拝見してますが、モニターで紡ぐ言葉にも慣れて、内容も心に響く内容でとてもよかったです。演技も脚本も期待どおりで2時間を超える上演時間もあっという間でした。ラストもよかった。押しの団体さんです。20周年も納得です。優しく有意義な時間ありがとうございました。

La Mère 母

La Mère 母

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/29 (月)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★

「父」をやった頃は公演情報にも触れなかった(多分現代翻訳劇にさほど食指が動かなかった)が、「息子」は観たくなって岡本父子共演を観た。息子が亡くなったという事実に直面できない父が最終的に死と向き合う話だったか、逆だったか・・実際には分かり合えなかった息子と「出会い直そうとする」父の姿があったと朧げに記憶する。
生活問題・金銭問題を捨象した近代的な室内で、家族の「関係性」のみを描写対象としたドラマであった点に、当時私は限定的な評価をしたように思い出しているが、観劇日はそんな事は一切忘れ、今回のゼレールの家族シリーズ第三作という事と、目玉である俳優・若村麻由美ともう一人いた(舞台上で伊勢佳世だったと確認)を観に行った。
若村氏の役者力炸裂であった。遅く戻った夫を迎える彼女が、認知の障害が危ぶまれるかと思うような応答をする。夫を翻弄するために敢えて演じている(身体をコントロールしている)のではなく、コミュニケーション意欲満々でいながら「そうなってしまう」内的必然性が「ある」と感知させる演技の流れがあり、圧倒され始めるのだが、その序盤はそれを受ける側の夫の当惑を想像して笑ってしまいそうになる。
そこで例によっての話だが、隣に地声の大きな、笑いが声に出る(しかも1テンポ遅れて次の台詞にかぶせて来る)男性がいて、「まじか・・」と自分の不運を嘆きそうになったが、何度目かの笑いのタイミングでため息と同時に姿勢をぐいっと変えるアピールした後は、どうやら自制をして下さった。さすがに入場料の額が札ビラの画像と共に頭をよぎったが・・助かった。
演技モードと照明と、若干の台詞の変化のある同じ場面が、不規則にリプレイされる構成が意味深で、今は何の場面なのか、訝りつつも場面の(日常性豊かな場面でさえ)張り詰めた空気に目が釘付けになっている。現実の場面なのか、彼女の想像なのか、実際の場面の回想(再現)なのか、彼女の記憶の再現なのか、あるいは上書きされた記憶なのか・・。
さほど違いのない(若干のニュアンスの違いはある・・淡泊だったり明るかったり)シーンの繰り返しは、彼女の認知と記憶は正確だが主観が反映されてる、という事が示されてるのか、法則性のある展開のされ方でないから、観る者にとっての拠り所もない。認知症患者の心情を想像した事があるが、自分の認知と記憶がブレている事それ自体に、彼らは不安を覚えている。パーになった訳ではないのだ。それゆえ、とも言えるが感情が増幅したり、逆に無気力(諦め)になったりする。
話は子供が自分の手を離れた寂しさから、不安定になった母の内面のループ化した変化の軌跡のようでもあり、現実での変化のようでもある。
後半になるとエッジの鋭い場面が訪れる。人生の目的を見失った母は、あろう事か息子の彼女をあからさまに敵視し、排斥して息子を自分の物に(まるで恋人のように)しようとするが、これに対しその恋人はあっさりと明るく「自分たちは若くて先が長い。貴方は残り少ない」と母に死刑宣告をする。また明らかに母の妄想だろう、夫とその愛人が妻の前で平気でジャレつつ出発していく場面。すなわち同じ場面の中で両者の認知がズレを起こしている。
だが認知の混沌は、主体が湛える感情の真実性を壊すものではない・・人は理解の壁に対面した苦しみを超えるため、そう信じようとする。感情は嘘がつけず、人はそこに真実の効能でもある信頼と安堵を見出す。
母は自身の人生への嘆きを、心を委ねる者の腕の中で、心を込めて嘆く。その姿を残像に最終暗転、芝居は終わる。

前公演と同様、本作も仏の演出家と装置家により作られた。発語のニュアンスの違いを、場面の変化に反映させ、構築する作業が、異言語によって進められた事に素朴に感心する。作為のない瞬間が一瞬もない精緻に作られた芝居。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

暗転多いがそこで映し出される短文に「うんうん」と。
様々な対人関係における心情を緻密に紡ぐストーリーがとても良い。
あの土下座、ジーンときた。
終盤の3人の生き方の対比が胸を打ちじわっと涙。
あっという間の2時間、観て良かった。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

このページのQRコードです。

拡大