らっかせいの観てきた!クチコミ一覧

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青色文庫

青色文庫

青☆組

ゆうど(東京都)

2012/04/07 (土) ~ 2012/04/14 (土)公演終了

満足度★★★★

Cプロ、面白かったです
Cプロ。2編リーディング。一人暮らしの女の部屋への奇妙な訪問者、というモチーフ、現実感が揺らぐような感覚は共通しつつ、物語への回収のされ方に作者の成熟も感じる。2編とも面白かった。この回が一番気に入りました。

今回の企画はとても面白かったです。是非またこのような機会を作ってください。

青色文庫

青色文庫

青☆組

ゆうど(東京都)

2012/04/07 (土) ~ 2012/04/14 (土)公演終了

満足度★★★★

AプロとBプロ
Aプロは白基調。「幸福の王子」が面白い。4人の女優たちによって童話の世界が鮮やかに立ち上がった。場所も味わい深く、(案内にあったとおりの)贅沢な大人の絵本の時間でした。衣装も素敵。

Bプロは黒基調。戯曲もダーク面を描く。「恋女房」が面白かった。

プログラムごとに色彩の変化が鮮やか。作者の幅を示してますね。

平成中村座 四月大歌舞伎

平成中村座 四月大歌舞伎

松竹

隅田公園内 仮設会場(東京都)

2012/04/02 (月) ~ 2012/04/26 (木)公演終了

満足度★★★★

大サービスの法界坊
かなり笑いがある舞台。歌舞伎の喜劇的な部分、奇抜な部分をさらにもう一押ししたドタバタが結構強烈。観客サービスは決して「笑い」一辺倒ではなく、「芸」も「趣向」も総動員して。なんといっても勘三郎さんの法界坊は身のこなしが軽やかで、かっぽれを踊りながら花道を引っ込んでいくところでは、大いに笑いつつ、体の切れの良さに感嘆。お年だとか、昨年は病気だったとか、全然感じさせず・・・
大詰の「双面」では姫と法界坊の合体した怨霊)の踊りもキレイで迫力あり。劇場奥を開放して隅田川の桜を望みながらのフィナーレはここならではの趣向でしょうね。大いに盛り上がっていました。

まほろば

まほろば

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/04/02 (月) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★

帰りにいろいろ
2時間はあっという間。笑わせられつつ、帰りにいろいろ考える。お芝居を観て、自分の人生に照らし合わせ、本当の「感想」を持つことができたことに深く感謝。

ガラスの動物園

ガラスの動物園

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2012/03/10 (土) ~ 2012/04/03 (火)公演終了

満足度★★★

追憶のかたちが立ち上がる感覚
薄汚れたまだら模様の灰色の壁で三方囲まれた箱形の舞台装置と、壁と同色の衣装のダンサーたちの存在で、冒頭のトムの口上から、脳内の記憶が立ち上がっていくような錯覚を見事に見せてくれました。アマンダ役の立石さんが元気よく威勢よく演じるので、かえって過剰な愛と愚かさ存在のかなしさが、透明感を伴って立ち現れたように思います。

くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

DULL-COLORED POP

アトリエ春風舎(東京都)

2012/03/14 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

「名は体をあらわす」
DULL-COLORED POP という劇団名は、ちゃんとやっていることを伝えているなあ。人間の見たくないような醜い部分、それをあくまでPOPに描くって。
・・・正直、見たくないものを見た感じです。私が(娘として)自分の母に言ったこと、母から言われたこと。あるいは、私が(母親として)子供たちに言っていること。結構、出てきました。笑えるほど・・・。母親って、病の一種かもしれません。男性が母親役、また母親の回想シーンはネコが代弁することで、「生々しい痛み」は少し和らいでいる気がします。

「人生って甘いもんじゃないのよ、我慢よ。」なんて台詞、そういえば「ガラスの動物園」のアマンダの台詞でも同じようにあったかも。

「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2012/03/02 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

余韻残る最終景。
本公演は2本立てですが、核戦争の前後のような感じでつながりを持っています。この2本の微妙なつながりを、本公演ではキャストのつながりとして、また小道具の「赤い傘」をモチーフにして描いていた。
「ザ・シェルター」は、核戦争に備えるための家庭用シェルターの製品テストで、社員の家族がシェルターの中に閉じ込められてしまう物語。シェルターの中に閉じ込められる境遇に陥って、なぜか「台風」の話で盛り上がってしまう。
台風って日本に住んでいる人は皆持っている災害体験。でも深刻な被害だけでなく、気分が高揚する感じとか、安全な場所(家)から、荒れ狂う外界を観る密かな喜びだとか、そういう共通した既視感が面白かった。
台詞にもあったけど、家族でシェルターに入るとしたら、やはり台風の話をするんじゃないかって。
2本目の「寿歌」は、核戦争により人類が殆ど消滅した世界を描いており、まさに「生き残った」世界そのもの。そう、シェルターに入るとは、「そのあと」への想像力が必要なのだと。
最終場面の雪(核の灰らしい)が降りしきるなか、地球丸と名づけられたリヤカーを引く男女二人の姿が明るく印象的。不思議な希望感。

今回は小松和重さん出演の楽しみもあって伺ったが、予想に違わぬ活躍ぶり。
ザ・シェルターのシェルター製造会社のサラリーマン役も、寿歌のキリストを髣髴させるヤスオ役も奇妙に重なりながら、小松さん独特のキャラクターが生きていて面白かった。

アンナ・カレーニナ

アンナ・カレーニナ

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2012/03/16 (金) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★★

濃密な時間
アンナとカレーニン、ヴロンスキーの三角関係に焦点を当てて、トルストイの長大な原作からシンプルに、想像した以上にスピーディに迫力をもって展開。アンナとカレーニン夫妻の踊りは二人の関係が表面的で不自然さを表現するために逆に技巧的で難しいのだと推察。チラシにデザインされていた写真は、夫婦の「愛のない夫婦関係」を描いていたのだと戦慄した。一方アンナとズロンスキーの踊りは伸びやかさな自然な美しさを感じる。
三人の主役と同じかそれ以上に群舞が迫力ある踊りを見せてくれて素晴らしかった。華やかな舞踏会、酔っ払った仕官たちの踊り、最後の機関車を表現する踊り。情景描写と心理描写交互に肌理細やかに表現されていました。濃密な面白い舞台でした。

うれしい悲鳴

うれしい悲鳴

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2012/03/03 (土) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

大爆破の日に初めて。
3月11日の大爆破の日に初めてのひょっとこ体験でした。
群舞は、さながら魚群(泳ぐ魚)のごとく、舞台が一つの有機体としてとして感じられ、素晴らしいエネルギーと統率力(ネガではないです勿論)が感じられました。戯曲は綿密ながら、時間の往来が自由で、詩のようなリズミカルな大量の台詞。これらを実現する、動く身体としゃべる身体、強いからだ達が躍動していました。
「泳ぐ魚」というのはなんとも示唆的ワードで、統率がとれているものの、意思決定主体の見えない感じ、中心の不在を示しているようで、いかにも日本なのではないかと思えてきました。
主人公にあたる二人のエピソードから、「個」の存立、世界との関係性、いろんなことを考えながら、豊かな余韻を味わいました。
大爆破の日に初めて行って、これでお別れだなんて少し悲しいくらいです。新生「アマヤドリ」は別のコンセプトになるのでしょうかね。

プチフェニックス企画の「ほのお」公演、私としては、観ること出来て、貴重な言葉に触れたと、思います。機会を作って下さったことに感謝します。

豊かな観劇体験でした。素敵な時間を有難うございました

朗読劇「幻色江戸ごよみ」

朗読劇「幻色江戸ごよみ」

Team申

PARCO劇場(東京都)

2012/03/01 (木) ~ 2012/03/07 (水)公演終了

満足度★★★

リーディングも面白いね
出演は、佐々木蔵之助×市川亀治郎×佐藤隆太。
日替わりゲスト、3/4は手塚とおるさん。
宮部みゆきの小説を朗読用に再構成した台本で、三話。
「首吊りご本尊」「神無月」「紙吹雪」

宮部みゆきなので怪奇ばなしかと思いきや、江戸の人情風情のお話でした。
とはいえ、「神無月」は強盗を、「紙吹雪」は殺人を扱っているのですが、犯人の心情に肌理細やかに描いていて、リーディングに相応しい味わいのある文章でした。聴いているだけで人物像がいろいろ想像できて、ぞくぞくしました。

出演者の個性が違っているのも、聞いていて逆に楽しい。
亀治郎さんの語りはやはり江戸情緒豊か。遊びも十分。
佐々木さんも安定しているし声もいい。佐藤さんは「まっすぐ」な感じ。それが「神無月」の
ゲスト、手塚さんも「首吊りご本尊」の大旦那役といい、「紙吹雪」の主人公の伯母さん役といい、滋味がありました。

不機嫌な子猫ちゃん

不機嫌な子猫ちゃん

水素74%

アトリエ春風舎(東京都)

2012/02/15 (水) ~ 2012/02/20 (月)公演終了

満足度★★

母子観劇を真剣に考えた身として
ちょっと評価を辛めにさせていただこうと思います。私は(演技以前に)主に戯曲、あるいはその前段階でのつめが甘いのではないかと思ってしまいました。不条理劇であればあるほど細部のリアリティが必要なのではないでしょうか。
まったくの素人で偉そうにこんなことをいうのもお恥ずかしいのですが、正直、娘を連れて行かなくて良かったと思っています。
少なくとも「母子観劇」のようなプロモーションを企画するのであれば、「母子関係の異常性」について、もっともっと追求していただきたかったと思っています。
辛口で申し訳ありません。本当に偉そうに言える義理は何もないのですけど。

ロマンサー-夜明峠編-

ロマンサー-夜明峠編-

モダンスイマーズ

シアタートラム(東京都)

2012/02/23 (木) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

別世界広がる2時間
席に座って顔を上げると、舞台は山水画の世界。シアタートラムって天井が高いのね。
山の世界の広がりに一気に吸い込まれていった。
山の奥深さ、静けさ、無彩色の冷たい空気・・・

物語・・・見開きのパンフレットの散文詩のような文章が、じつは「あらすじ」でもある。
(前略)
いつの間にか人の闘い。
嗚呼、世を知らぬ息子よ。
何を信じる。
誰に従う。
というより、お前は誰だ。
お前の心はどこにある。
お前のロマンはどこにある。
夜明峠の小さな戦争。

しっかり2時間、別の時空へ観客を連れて行ってくれた。

どの役者さんも鍛えられた方々で、しっかりと定められた世界を提示してくれました。
ヒサノを演じた石田エリさんの抑えられた凄まじさと、コロク演じた古山憲太郎さんの透明感と、オド役の千葉哲也さんの作り物っぽい男くささと軽さ、が対照的でした。

ところで、ロマンスには「恋愛」と並んで「伝奇物語」の意味もあるそうな。若い健全な恋愛(ロマンス)より、若干倒錯した老練なロマンスのほうが、ヤミクイに対抗するには相応しいだろう。
見えない大きなクマをめぐる物語はこの後も三部作として続いていくのだろうか。

パンフレットに書いてあった散文詩のような文章を、観終わってから改めて読むと「あらすじ」以上に示唆的であることに、気づく。

作者の「企み」って、すごい。

『THE BEE』English Version ワールドツアー

『THE BEE』English Version ワールドツアー

東京芸術劇場

水天宮ピット・大スタジオ(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

繰り返される「暴力」を描く難しさ
野田氏は若いときに自分を評して
「明るく爽やかなうえ、芯まで暗い
---考えれば考えるほど分析気質」と書いたそうですが、このお芝居も暗い暗い。これほどのネクラはないんじゃないかって思うほど(NODA・MAP公演は大人数による豊かさが救い。小人数の番外編のほうが暗いと思う)
報復の連鎖、暴力の連鎖を描いて、再演を重ねた本公演の評価は定まったものなのだろうけど、始めてみる者としては観て改めて味わう恐怖感もあり。

当日券は、前日12時に専用ダイアルで予約。毎回10枚程度あるのでは?意外と簡単に入手できました。

ネタバレBOX

恐ろしいのは、
朝起きる、ひげをそる、朝食を摂る、背広を着る、(相手からの)封筒が届く、子供の指を切り落とし刑事に渡す、その後オゴロの妻を犯す・・・・
この一連の流れが日課になっていく様子が描かれていること。
良識あるイド氏(名前自体が精神分析みたい)の暴力性が一度発露した後は、日常の中に埋め込まれていくこと。・・・状況違えど、児童虐待やDVは、「ひげそりと、朝食と、暴力と、強姦」がきっと日常サイクルの中に埋め込まれているんだろう、そういうどこにでもある怖さだと思う。

この公演では、イド氏を演じるのは、キャスト4人中唯一女優のキャサリンハンター。オゴロの妻(美人豊満で夜の仕事をしているらしい)を演じるのが野田さん。キャサリンは小柄だけど、スーツを着て胸張って声も低くて、男性にしか見えない。野田さんは序盤は別の役を演じるため、化粧はせず、派手な衣装を引っ掛けるだけで女性をあらわしている。男女逆転していることで強姦シーンが生々しく見えることはない。

また「指を切る」シーンも、これも一種の「見立て」であろうが、鉛筆を指に見立てて、それを折る(ポキッと音がする)。これも暴力の描き方としては明らかに抑えたものである。

「暴力」について、真正面から語ろうとする場合、恐らく「暴力的描写」は邪魔なのだろう。描写が生々しく扇情的であると、私たちは過度に自分に引き寄せて「痛い」「目を背けたい」と思ってしまうだろう。だからリアルな暴力は描かない。

リアルに描かず、様式的だからこそ、身体的な強さが求められるのだろうなと推測。キャサリンの身体が一際目を惹くけど、グリン・プリチャードさんは、警官から一瞬にしてオゴロの息子、オゴロの息子から一瞬にしてオゴロその人に変わったり、まったく緩みなく進行するから息つく暇がない。やっぱり「すごい」と思う。
2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」

2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2012/02/20 (月) ~ 2012/03/01 (木)公演終了

満足度★★★★★

「企み」がすごい!舞台美術必見!
上演時間3時間40分。密度の濃い時間を堪能しました!

まず全体の企み、完璧に蜷川氏にお手上げです。
とりわけ舞台美術は驚きです!(ネタバレに当たるので・・・)
さい芸大ホールインサイドシアター以外ではなかなかできない試みでは?

「蒼白の少年少女」の「蒼白」は彼らの世代の戦略であるということを、蜷川氏はご存知なのであろうな、と思いました。
このお芝居「ハムレット」は、世代間格差の問題を問い、旧世代の新世代への恐れを描きながら、世代間理解が可能かを問い、あるいは革命的世代交代が起きるとしたら、という仮想を試みているとも読める、そういう企みをまた感じてしまうのです。

彼らより上の世代はそれを心せねばなりませんと、言いたいのであろうかな、と。そのリトマス試験紙がこまどり姉妹だったと思うのです。

こまどり姉妹ですが、一番ぶっ飛んだのは、ハムレットがオフィーリアに「尼寺へ行け!」と叫ぶ、そのときに登場!したことでした。

では、こまどり姉妹の登場で、川口覚さんのハムレットと、深川美歩さんのオフィーリアは喰われてしまったか、というと、そんなことはありません。(深川さんは昨年の「美しきもの~」の伊藤野枝役が印象深いですが、今回は真反対のオフィーリアでありました。
お二人だけではなく、ホレーショーもガートルードも名前のある役だけでなく、旅芝居の「黙劇」部分の役者たちもよかったです。

ネタバレBOX

さい芸大ホールインサイドシアターということで、普段舞台となるところに座席を持ち込んで、三方囲み舞台で客席から見下ろす感じなのですが、舞台床がガラス張りでその下(奈落)が見通せる仕掛けになっています。この「奈落」は開演前は楽屋として、役者たちが着替えたり化粧してたりが見えます。天井からシャンデリアが降りてきて「開演」。その後は、床の下(ガラスの下)が第2の舞台として、役者たちは2段構造の舞台を走り回ります。で、逆にこのガラスの床とシャンデリア以外の美術はありません。

このガラスの床と奈落の底、の2重構造の舞台の効果は圧倒的で、
・楽屋を見せることで高まる「お芝居ですよ」雰囲気、
・ガラスの箱の中で演技しているように見え「標本箱」のような印象もある、
・地下、に当たるので、地下=墓場、もう死んでしまったものの物語
・・・そういう何重もの「虚構性」仕掛け作りに成功している

・王、王妃が現れると、それ以外のものは下に下がり、上下関係を見せ付ける。
・あるいは簡単に踏みにじることもできる
・ガラスの箱であることで、王が王国を掌握している
・・・そういう何重もの抑圧感を表現できる

・亡霊は、舞台の下からせりふを言う場面がある、それに対してハムレットが「天晴れモグラ殿」と答える。
・また、オフィーリア埋葬の場面では、文字通り
・・・戯曲に何回も「地下」が描かれている、それをそのまま表現できる

・だいたい、ガラス箱のような王国「デンマーク」だからこそ、「箍(たが)が外れてしまった」のせりふは意味を持つかも

なんて、いろいろ刺激され、とにかく、ガラス張りの舞台と奈落の底、この二重構造の舞台の「企み」に痺れてしまいました。

ネクストシアターの演技に、こまどり姉妹の企みも加え、これは4000円の価値以上のハムレットと思います。
沈黙

沈黙

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2012/02/15 (水) ~ 2012/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

虚心で観よう
日本のオペラといっても、「夕鶴」だったら絶対に行かないと思う。今回の「遠藤周作原作、松村禎三作曲」さらに今回「指揮は下野達也氏、演出が宮田慶子氏」は演劇中心の舞台ファンとして惹かれます。

最終場、踏み絵に足をかけるまで、葛藤の長い時間を音楽がつむいでくれます。同席した家族は自らの葛藤に姿を重ね合わせてこの場面で涙を流していました。虚心で観て、そういう風に感激出来る。素晴らしいことだと思います。

個人的意見ですが、ずっとメジャーな「夕鶴」より深く素晴らしい作品なので、新国立劇場のレパートリーにしてほしいと思います。
尚、中劇場公演でしたが、合唱も楽器も多く、手狭な感じがしました。(演劇の中劇場公演では考えられないことですが)、舞台が狭すぎて、舞台装置が簡略に過ぎる感もしました。

ネタバレBOX

最終場の、主人公ロドリゴの心理は、音楽により厚く描かれています。また、その前の棄教のきっかけが「処刑前日の自分をいらだたせている牢番の愚鈍ないびき」と思っていたものは実は「信徒たちの拷問に苦しむ呻き声」であったという物語上の転換も鮮やかでした。あの「呻き声」が、コーラスによって、松村の書いた音楽で表現されるということも、体験するに相応しいと思います。
誰も知らない貴方の部屋

誰も知らない貴方の部屋

庭劇団ペニノ

アトリエ・はこぶね(東京都)

2012/02/10 (金) ~ 2012/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★

予想を裏切らぬ美しさと「なにか」
「誰も知らない貴方の部屋」
「貴女」ではなく「貴方」なのがポイントですよね。
覗くに相応しい秘密の部屋「はこぶね」。40平米の2/3が客席で残りが舞台だそうな。狭い舞台にもさらにいろんな工夫がしていって、演者も背筋を伸ばして演技できないくらい狭い。舞台の美術や登場人物の衣装・意匠?は長い時間考えられ磨き抜かれた感漂う。最初のワンシーン見ただけでその完成度に圧倒される。
タニノ氏の妄想世界は魔術的な美しさ!!
青いタイルの部屋は夜の森の如く、白いタイルの部屋は手術室の如く、椅子も机もランプも徹底的に男性器意匠化していますが、生々しいはずなんだけど綺麗だなって思えるし、普通に笑えるし、実はこの妄想世界って誰も知らなくて誰もが知ってる世界何かもしれないって。
動物が出てきますが、ファンタジック。ドイツかロシア民話みたいな感じ、寓話絵本の挿絵殻出てきた感じ。こういう造形ってどういう発想でできるんだろう?
とにかくどこをとっても完成度高く美しい!!これで2500円で本当にいいのかな。面白かった。ただ、あまり「演劇」っぽくないかも。
あと、これからいらっしゃる方、お席を選ぶとき、できれば一番前のお座布団のお席がよいように思います。ただ足は痛いと思いますけど。

ネタバレBOX

リコーダーのハッヘルベルのカノン、よかったですね。タニノ氏こそが「芸術的で、革命的で、女性的で、ポップな」な方なんではないかと思う。一人で芸術をしないで、なぜ演劇という複雑なことをしているか伺ってみたい気持ちになる。
渡辺美帆子企画展「点にまつわるあらゆる線」

渡辺美帆子企画展「点にまつわるあらゆる線」

青年団若手自主企画 渡辺企画

アトリエ春風舎(東京都)

2012/02/05 (日) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★

劇場が溶けて・・・
・・・いくような感じを持ちました。「劇場がまるで美術館に溶けて・・・」あるいは劇場空間にいる演者と観客(さらにスタッフ)の間が溶けて・・・」。
「人間の展示」で、展示されている人間は「部屋にいるようですが、部屋の周りにもさながら現代美術の展示館の様相。人間のデータもアートの形で展示されています。私は「肌の固さ」と、「足の親指の長さ」「第七肋骨の長さ」が気に入りました。観客も動くよう促されますが、その前にかまわずいろいろ動いたほうが楽しめるのではないかと思いました。あとトークンをもらいます。使ったほうがいいです。せっかくのサービスですから。

ロゼット〜春を待つ草〜【ご来場有難うございました!】

ロゼット〜春を待つ草〜【ご来場有難うございました!】

ハイリンド

「劇」小劇場(東京都)

2012/02/03 (金) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★

「あなたに会いたかった」
お初の劇団「ハイリンド」さん。

他人とのやり取りのなかでコトバで相手にちゃんと伝えているのってほんの氷山の一角だなあ。「会いたいときに、あなたに会えて嬉しかった」。友人でも家族でもこういう言葉が一番いえないですよね。大事なことをちゃんと伝える伝えられる人でありたいなあ、と思って劇場を出ました。

ハイリンドさんは、「全ての世代へ面白い質の高い演劇を発信する集団」と標榜していますが、その標榜どおりの活動なんだなあ、って思いました。多分皆さん演技が非常にこなれており「過剰」でもなく「過少=素」でもない、でキャラクターとしても魅力的な方々がそろっているんだと思います。

こうもり

こうもり

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2012/02/04 (土) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

現代の大人のファンタジー
ふうふうは倦怠期、夫は浮気性で毎晩こうもりに変身して飛んで息夜遊び。妻は男友達ウルリックの手助けで妖艶な美女に変身し、逆に夫を魅了を口説かせる・・・って、こういう幻想って女の人はみな持っているのではないかな。
ウルリック役の八幡さんの跳躍が見事で、人間じゃないみたい・・・って、これがおとぎ話だったら、魔女や妖精なんじゃないかしら。普通の男だったらベラを口説いていいはずなのに。
2/5の主役ベラを勤めた本島美和さんが素敵なことを書いていて「ベラの変身を助けるウルリックはプティさんの代弁者なのではないかと思えてきました。プティさんはウルリックを通じて「人生を嘆いてばかりいないで、笑顔で切りぬけなさい」とメッセージを送っているように感じるのです。
本当にそうですね。
昨年亡くなったローランプティさんの作品ははじめて観ましたが、コミカルかつ深さもある。踊りの種類の多種多様、フレンチカンカンチャルダッシュ、期待通り最後はウリンナワルツで終わる。バレエが始めての人にも安心して薦められる

新春浅草歌舞伎

新春浅草歌舞伎

松竹

浅草公会堂(東京都)

2012/01/02 (月) ~ 2012/01/26 (木)公演終了

満足度★★★★

第2部千秋楽は亀治郎さん卒業式
いってきました!新春浅草歌舞伎千穐楽、亀治郎さんの最後の浅草の公演に。
第2部敵討天下茶屋聚(かたきうちてんかちゃやむら 通称天下茶屋)のほうです

お年玉といわれるご挨拶、亀治郎さんは決してくだけずまじめに固めに。
笑顔も少な目の珍しいお姿。

亀)「10年間(14年間?)浅草で公演して、浅草に育てていただいた。
初期は2階席なんか数えるほどしかお客さんがいなくて、どうすれば歌舞伎が根付くのか試行錯誤してきた
今日のように満員で、浅草では平成中村座も公演している、2座公演できていることはすごいと思う
400年の歴史のある歌舞伎を、今後もお見捨てなきよう」

ネタバレBOX

メインの天下茶屋ですが、亀さん演じる元右衛門は小悪党の典型のような男。恩ある主を裏切って敵に寝返りながら、自分が殺されそうになると逃げ回る。これ、シリアスなお芝居じゃないんです。人は何人か死ぬんですが、小悪党が逃げ回るところを楽しむドタバタ喜劇なんだと思います、ドリフのコントが長いような芝居。難しいこと考えなくて単純に笑い転げて楽しむんです。
筋も簡単、難しいこと考えなくても良い、たまにはそういう観劇があってもいいですよね。

普通の歌舞伎では、最後大団円でお辞儀して幕。おしまいのはずが、なぜか再び幕が開き、片岡造酒頭姿の亀治郎さんご登場、その後ひとりひとりの役者が登場しては礼って、えーーカーテンコールするの?歌舞伎で?って思ったのですが、違う趣向でした。いつのまにか亀さんは舞台にいなくて・・・

最後に登場したのは地獄に行った三角の布を付けた元右衛門(小悪党)姿の亀治郎さん。
それで、地獄の責めにあい、閻魔の口上が「14年間、この浅草を騒がせた咎により」・・・
ここで横断幕が広げられるんです
「亀治郎さん
14年間お疲れ様でした
猿之助襲名おめでとうございます」の大きく書かれた文字。
布にはファンからの多数の寄せ書きがありました。

千秋楽を観にいけて亀治郎さんの感慨も受け取った感じです
-----
ただ、こののお芝居の筋書きは決して面白いものではありません。歌舞伎に良くある、実は、実は、の入り組んだ展開は全くなく、どちらかといえばこのくらい筋が簡単なら心情描写するとか小悪党の元右衛門の社会的地位によるゆがみだとか、そういうむしろ「近代的何か」で脚色した上演も考えられないかと思った次第です。もちろん亀さんの「ドタバタ喜劇」もこれかこれで大いにありで、何も考えずに大いに笑えたというのは喜びではあります。



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