満足度★★★★
別世界広がる2時間
席に座って顔を上げると、舞台は山水画の世界。シアタートラムって天井が高いのね。
山の世界の広がりに一気に吸い込まれていった。
山の奥深さ、静けさ、無彩色の冷たい空気・・・
物語・・・見開きのパンフレットの散文詩のような文章が、じつは「あらすじ」でもある。
(前略)
いつの間にか人の闘い。
嗚呼、世を知らぬ息子よ。
何を信じる。
誰に従う。
というより、お前は誰だ。
お前の心はどこにある。
お前のロマンはどこにある。
夜明峠の小さな戦争。
しっかり2時間、別の時空へ観客を連れて行ってくれた。
どの役者さんも鍛えられた方々で、しっかりと定められた世界を提示してくれました。
ヒサノを演じた石田エリさんの抑えられた凄まじさと、コロク演じた古山憲太郎さんの透明感と、オド役の千葉哲也さんの作り物っぽい男くささと軽さ、が対照的でした。
ところで、ロマンスには「恋愛」と並んで「伝奇物語」の意味もあるそうな。若い健全な恋愛(ロマンス)より、若干倒錯した老練なロマンスのほうが、ヤミクイに対抗するには相応しいだろう。
見えない大きなクマをめぐる物語はこの後も三部作として続いていくのだろうか。
パンフレットに書いてあった散文詩のような文章を、観終わってから改めて読むと「あらすじ」以上に示唆的であることに、気づく。
作者の「企み」って、すごい。