住み込みの女の観てきた!クチコミ一覧

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ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス

ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス

公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/10/03 (金) ~ 2025/10/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

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三鷹市立芸術文化センターの期待の若手劇団シリーズ

東京にこにこちゃん『ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス』を観劇。

あらすじ:
 テレビアニメの創成期から現代までの声優たちの物語。
まだ舞台に立った事のない新人俳優・小山笑子が、テレビアニメの声優に抜擢される。スタジオには癖のある声優たちがおり、初の声優体験は不安だらけだが、周りのアドバイスで日増しに上達していく。
仕舞いには長寿番組になっていくが、年齢と共に声が痩せていく声優たちは少しづつ引退し、小山笑子だけになってしまう。
そこでプロデューサーが生成AIを使い、永遠の声を手に入れようと画策するのだが…。

感想:
 子供の頃に見続けていたテレビアニメの声が声優の都合で交代し、違う声を当てられた衝撃は経験あるだろうが、それを基に昭和から現代までのテレビアニメ界の裏側を描いている。
 時代の変化と波、それに抗う声優たちの葛藤を存分に味わうことが出来、朝の連ドラを一気に見ているような物語は全く飽きさせない。
ボケとツッコミが満載だが、展開の匙加減としては悪くない。演出家曰く、『漫才のボケとツッコミを演劇に転用するとボケと困惑になる』と言っていたが、その困惑の上手さを演じているのが小山笑子役の
『西出結』だ。間違いなく今後、小劇場のヒロインになるであろう、彼女の演劇におけるキャラクター作りはいつも抜群だ。
 演劇を観て、笑いながら涙が出たというのは初めての経験だったが、とても良い気分で劇場を後にした。
 今後の追っかけ劇団になったようだ。
『REAL』

『REAL』

metro

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/09/11 (木) ~ 2025/09/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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metroの『REAL』を観劇。

 長女は不在で、次女が質屋を営みながら、寝込んでいる三女の看病をしている三人姉妹の話。
前作から感じ取れた物語不在の展開は同様で、チェーホフの三人姉妹、ニーチェ、宮澤賢治と時代と場所に関わりがなく、物語に交差するはずがないと観客は確信するが、天願大介という劇作家にかかると全てが交わってしまい、「我々は芸術文学ショーを見せられているのか?」と疑念を抱きながらも、二時間近く付き合わなければならないのが今作なのだ。だからか睡眠薬を飲まされた様に眠りこける観客も多数出てくる(開演前の注意事項で、寝ている人がいたら起こしてください、というお願いがあった)
更にドイル君と垣乃花顕太郎という謎の人物が現れて混乱を極めるが、少しずつ隠れていた戯曲の核が見え始めてくると、俄然面白くなっていくのだ。
 全く関係性がない時代と人物を交わらせて、物語を作ってしまう野田秀樹は天才的だが、どうやらもう一人ここにいたようだ。
ただ物語をあえて作ろうとしない作劇は凶と出るか?吉と出るか?は分からないが、今作は吉と出た為か、ラストに向けて、かなりの破壊力があった。眠気が吹っ飛び、鳥肌が立ってしまったほどだ。
われわれなりのロマンティック

われわれなりのロマンティック

いいへんじ

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/08/29 (金) ~ 2025/09/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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いいへんじ
『われわれなりのロマンティック』を観劇。

毎年行われる、三鷹市立芸術文化センター主催の期待の若手公演。

あらすじ:
 茨城から東京の大学に入学した茉莉。フェミニズムサークルで蒼という男性と知り合うも、彼氏を作った事がない為か?蒼が恋人か否かと戸惑いながら親密になっていく。
社会人になり、蒼とはあえて同棲はせず、同じアパートで隣同士で住みながら関係を続けるも、仕事で知り合った女性との出会いに感情が揺れ始める…。

感想:
 学生から社会人になり、価値観の違いから異性と己の関係が変わっていく様が丁寧に描かれている。青春ものと捉えて良い作品で、時代の変化を敏感に感じ取れる内容だ。
登場人物たちは傷つきながらも、成長していくという展開は王道で、終点は見えてしまうのが戯曲の欠点でもあるが、私自身の観劇率の高さ故か?そのような事を瞬時に判断してしまうのは観客としては失格である。
 劇作家は登場人物たちの感情を大切に扱っているからか、寄り添いながら物語に身を委ね、心地よい気分で彼らの人生を見ていられる。
社会背景を上手く取り込んでいる戯曲、演出力、俳優陣の芝居は侮れない。群像劇にありがちな、主役ではない俳優に感情を寄せてしまうのはよくある事だが、『百瀬葉』という女優にやられてしまったことだけは隠さずに言っておこう。
八月納涼歌舞伎

八月納涼歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2025/08/03 (日) ~ 2025/08/26 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ネタバレ

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八月納涼歌舞伎『野田版・研辰の討たれ』を観劇。

あらすじ:
守山辰次は元は刀の研屋で、殿様の刀を研いだ縁で侍に取り立てられたものの、武芸はまったく駄目。家中の侍に打ちのめされた辰次は家老へ意趣返しをしようとします。ところが、仕返しのために仕掛けたからくりが元で家老は死んでしまい、辰次は家老を殺した敵として追われる身となります。仇討ちの旅に出た家老の息子二人に追われて、諸国を逃げ回る辰次でしたが……(チラシより)

感想:
 今作を観る機会はシネマ歌舞伎しかないと思っていたが、息子たちで再演で観れたのは嬉しい限りだ。
 20年ぶりの再演ながら、時代は初演当時とかなり変わってきている。世界では戦争が至る所で行われ、混沌としている。
舞台では、赤穂浪士たちの仇討ちで街は湧き上がり、やられたらやり返すという『義』がまかり通っていた当時と同じような事が、現実に起こっている世界情勢と重ね合わせている。
 今や野田秀樹の芝居は「夢の遊民社」の頃とはかけ離れ、悲惨な出来事を受け止め、己の舞台で描いているが、歌舞伎でもブレることはない。歌舞伎界隈の時事ネタや見立てはもちろんだが、歌舞伎特有の華やかさを借りながら、仇討ちに逃げ惑う守山辰次の「死にたくない!生きたい!」という叫び声は現代に至るまでの戦争犠牲者の叫び声だ。
華やかさと軽さが相反するように闇が迫ってくるラストには唖然とし、「町民・守山辰次の叫び声は永遠に誰にも届かないのだ」と訴える劇作家の願いは絶望に等しく、終演後には座席から立ち上がれなかったほどだ。

 再演とはいえ、見過ごしていけない。
料金が高いので、歌舞伎シネマで済まそうなんて思ってはいけない。
歴史的傑作なのだから…。
海と日傘

海と日傘

R Plays Company

すみだパークシアター倉(東京都)

2025/07/09 (水) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

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松田正隆『海と日傘を』観劇。

1996年に岸田戯曲賞を取った作品

 長崎に住み、床に伏せることの多い妻と教師をしながら細々と作家を営む夫。大家夫婦や医者、雑誌編集者を囲みながら、ゆっくりと時間は過ぎていくのだが…。

 今では観る機会の少ない松田正隆の戯曲で、前後して平田オリザが岸田戯曲賞を取っている。
 1990年代の演劇界は、80年代小劇場の勢いが下降し始め、若者たちが離れていく中、口語演劇が狼煙を上げ、小劇場ではなく、演劇として評価され始めた時期だ。
 平田オリザの口語演劇に感情を揺さぶられることは無いが、松田正隆に描かれる日常に、少なからず80年代小劇場の匂いを感じ取る事が出来、劇的なるものが隅々に存在している。
 余命3ヶ月の妻と最後の旅行をする夫の下に、元雑誌編集者の女性が現れ、ふたりの間柄を察知した妻が、突然止まってしまったかのように、死の世界に導かれ、白日夢の夫は妻に永遠の愛を約束するという流れだ。演じる俳優陣もかなり強者ばかりで、主人公だけが物語の軸ではないと言わんばかりに、各々が強烈な役柄を演じている。
 余計な情報を一切与えず、静かな日常を延々と切り取っているだけと思い込んでしまい、物語に妄想に妄想を膨らませるも、瞬時に割ってしまう作劇の巧みさには唖然としてしまった。口語演劇と80年小劇場が見事に混じり合った傑作である。
 初演を観ずに、今観たからこそ、このような感動を得ることが出来たのだろう。
 大傑作である!
ガマ

ガマ

劇団チョコレートケーキ

吉祥寺シアター(東京都)

2025/05/31 (土) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ネタバレ

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劇団チョコレートケーキ『ガマ』を観劇。

再演である。

 沖縄戦でガマに追い詰めらた人たち。
 戦場は地獄化して、勝てる見込みのないと訴える脱走兵たち、沖縄戦の真の意図を知り尽くしている少尉、天皇陛下の為に戦い続けると言い続ける女子学徒隊、沖縄戦について疑問を呈する先生、地元民など、
食料すらない中でどうにか生きながらえている。
ガマの入り口まで米兵が迫る中、降伏をするか否か?
各々の立場で議論をし始めていくが、気がつくと六人の集団劇に見えなくもない。沖縄県の歴史観、沖縄県の存在意味、洗脳教育などが浮き彫りにされていき、「戦争とは?」を知らず知らずと観客自身が問いただしてしまう。あまりにも息苦しく、涙してしまうが、戦争経験のない我々は時々、この状況を俯瞰して見てしまう。感情に溺れさせずに見せる事に今作の意図はあるようだ。
 この劇団は歴史物を描くことが多く、「何故、そのような事が起きたのか?」を常に考えさせる戯曲作りをしているので、後を引くのはいうまでもない。
 過去作『帰還不能点』で、閣僚たちが止められなかった戦争に、自ら戦争責任者達を演じて、問題点を洗い出すということもしており、歴史物を別な視点で描く面白さを秘めている。
 初演でかなりの評判を得た再演だが、演劇史に残る傑作が今、上演されているのを知っておいた方が良い。
ずれる

ずれる

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2025/05/11 (日) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

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イキウメ『ずれる』を観劇。

 親の会社を継いで財をなしている輝の下に、精神疾患で入院していた歳の離れた弟が自宅に戻ってくる。この辺りは豪雨災害の影響か、野生動物たちが街に下りてきているようだ。秘書兼家政婦と整体師を雇い、在宅勤務に変えたが、弟の怪しげな友人によって輝の様子が少しずつ変調していくのだった…。

 現実には起こり得ない事柄から、人間の精神に食い込んでいく作劇で観客を物語に没入させて戯曲は毎回驚かせるが、奇ッ怪シリーズを全て観ているか、現代版の奇ッ怪かと思ってしまうのが常だ。ここ最近の精神に深く踏み込んでいく様は、以前にも増して濃いようだ。
 非科学的な出来事と人間の魂のぶつかり合いはギリシャ悲劇とは似て非なるものだが、決して精神論を謳ってはいないのがイキウメの魅力で、あり得ない出来事があり得てしまう?と思わせてしまう執筆力に観客の没入度はかなり高い。
 今作は劇団員のみで行なっているからか、全員の芝居に何かが降りてきていると思わせるほど、役柄に成りきっている。戯曲の出来と作家のメッセージを一段、いや二段ほど上げているのは間違いない。
現実に起きている出来事の根本を我々に問いつめ、追い詰められた観客は逃げ場を失い、終始緊張しながらの観劇体験であった。
 『イキウメ』はしばらく休むようなので、必ず観ておいた方が良いのである。
明日、泣けない女/昨日、甘えた男

明日、泣けない女/昨日、甘えた男

株式会社テッコウショ

シアターサンモール(東京都)

2025/05/03 (土) ~ 2025/05/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度

ネタバレ

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北海道の漁師町での様々な問題を描くが、全く回収せずに終わらせている。
どうしたらこのような戯曲が書けるのだろうか?
何を演出したいのだろう?
これじゃ、熱演する俳優陣が可哀想だ。
散らかした話を回収せずに、面白く展開出来るのは長塚圭史のみだ
そんな中で、関幸治という役者の上手さはピカイチだ。
そよ風と魔女たちとマクベスと(2025)

そよ風と魔女たちとマクベスと(2025)

フライングシアター自由劇場

すみだパークシアター倉(東京都)

2025/04/25 (金) ~ 2025/05/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

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串田和美『そよ風と魔女たちとマクベスと』を観劇。

 日本人は本当にシェイクスピアが好きなのだろうか?
故・蜷川幸雄が有名人を使って、埼玉県の田舎でシェイクスピアをやり続けたのは原因の一端だが、アングラ演劇人・串田和美が和製ミュージカルとコクーン歌舞伎で世間を席巻し、シェイクスピアには関心がないと思われていたのも事実だ。
どうやら日本人をシェクスピアフリークにしたのは、彼らだったのは間違いないようだ。

 いきなり銀髪ロックスターのような若者が、聴衆を魅了する。舞台を見せられているのか?それとも学生運動のリーダーか?はたまたボディビルダーか?
そこからマクベスの人生が始まるのだ。厄介なシェイクスピアを見るのは困難だ!という思い込みも、始まりから崩れ去っていくのだ。
魔女の囁きにより、将来に希望を見出し、強力な力を得てしまった人間に起こる、長く辛い悲劇が面白さだ。マクベス夫人の戯言も我が妻の囁きに聞こえ、仕事での地位をもっとあげ、沢山の給料を貰いたいという己の果てしない欲望に悶え苦しんでしまうのである。
 そして誰もが迎える老の姿まで見せてしまう残酷さ。誰もがマクベスに寄り添いたくないが、喜びを見出せるのは観客の勇気次第だろう。もし劇場からこっそり立ち去ろうとするなら、スカイツリーが立ちはだかり、逃げられないのである。
 元ボディビルダーが演じる若きマクベスは見事である。
 お勧めである。
遠巻きに見てる

遠巻きに見てる

劇団アンパサンド

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/04/18 (金) ~ 2025/04/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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劇団アンパサンド『遠巻きに見てる』を観劇。

一昨年、三鷹市主催の期待の若手劇団シリーズに登場したと思ったら、あっという間に岸田戯曲賞を取ってしまい、今やチケットが取りづらい劇団になってしまったようだ。
因みに私の一昨年のベストワン劇団だったのは言うまでもない。

あらすじ:
小林さんとユウコは仕事帰りの道すがら、マラソンランナーに道を邪魔したといちゃもんをつけられる。歩行者優先なのだが、マラソンランナーが勝手に私用道路にしてしまっているのだ。
あまりの理不尽に頭にきた小林さんとユウコだが、その道を逆に走ると異次元の世界に行けることを発見する。
そこでユウコは彼らをその世界に追いやってしまおうと考え、小林さんはトリカブトでマラソンランナーの水に毒を盛るという作戦に出るのだが、果たしてどうなるのだろうか…?

感想:
前々作もそうだったか、身近な出来事が一瞬にして変わってしまう展開はシュールとも取れなくないが、ドリフターズ的なドタバタ調と生の舞台だからこそ出来る手法をフル活用し、虜にさせてくれる。勿論、演出と俳優陣の芝居があってこそ成立するのが最大の特徴だ。
あらすじだけを読んでも明らかに観たくなるが、どうやら期待の新作は不出来だった。
劇作家が岸田戯曲賞を取る前後作は、他者を寄せ付けないほどの傑作を作るのに、今作の消化不良は一体何なのだろう? 前々作の期待値が高かったからか?
導入部から期待を裏切らない展開と見事なキャスティング(永井若葉、西出結、奥田洋平、岩本えり、重岡漠)には笑わされ、これからどうなっていくのだ?という期待が高まった瞬間に幕が閉じてしまうのだ。何とも言い難い虚しさを感じるオチは満足だが、この終わり方をするなら、もうひと山欲しかったなぁ〜と思った観客は沢山いただろう。いやそれとも気分が高揚した時に閉じてしまうのは劇作家の意図なのだろうか?そのお陰で観劇後は未だに引きずっているのは間違いない。観客を遠巻きに見て、微笑んでいるのは劇作家なのだろうか?
全ては謎だが…、次回作も必ず観ようと思う劇団なのである。
淵に沈む

淵に沈む

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2025/03/07 (金) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

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内藤裕子『淵に沈む』を観劇。

昨年の『カタブイ1995』から追っかけている演出家の新作だ。
八王子市の精神科病院・滝山病院事件が元ネタになっている。

あらすじ:
統合失調症の三男を二〇年も精神科病院に預けている母親は、息子の症状が寛解期あると主治医から伝えられ退院を勧められるが、長男、長女は反対し、病院長までもが経営の為か?首を縦に振らない。看護師らの患者への虐待という報告が上がり、精神保健福祉士は自分の身を切るつもりで内部告発をし、病院長に掛け合うのだが…。

感想:
長期間、息子を病院に入れた家族の苦悩、一日も早く退院をさせて社会復帰を願う主治医、病室を満床にして経営を優先にする病院長、患者を虐待してしまう看護師など、様々な視点で目を背けている暗部を見つめることが出来る。90%が民間の精神科病院で成り立っていて、国があまり触れない精神疾患への偏見がおのずと見えてきてしまう。
途中に日本国憲法、障害者基本法、スイス・ジュネーブ障害者権利条約を説明しながら進めていく技法は『カタブイ1995 』でも行っていたが、『人間が生きていく権利とは?』について掘り下げていく。
ややお堅い芝居になりながらも、正義と悪という構図が作られているので、精神保健福祉士が退職覚悟で病院長に切り込んでいくクライマックスに熱いものを感じずにいられない。
決して逃げはせず、理想に向かっていく姿勢こそがメッセージなのだ。
そして患者が吐く最後の一言が、精神疾患を救う最善策だとも思えるのだ。
見応えあり!
Lovely wife

Lovely wife

劇団青年座

本多劇場(東京都)

2025/03/06 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

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青年座『Lovely wife』を観劇。

作・演出 根本宗子が青年座に依頼された作品で、高畑淳子主演ありきのようだ。

売れっ子作家を夫に持つ雑誌編集者・妻の出会いから結婚、終焉を迎えそうな夫婦の顛末記。
同世代の些細な事を描くのが得意な若い劇作家が、枯れていく夫婦の姿をどのように描いていくかが焦点だ。
常にテンションが高く、演技へのエネルギーを一瞬たりとも休ませない演出が持ち味の劇作家の下、老舗劇団の俳優陣はどのように対応していくのだろうか?いやどのように演出されるのだろうか?
過去作では、狭い小屋では収まりきらない俳優たちのエネルギーに何度も圧倒され、劇作家を追いかけ続けたが、今回の厄介な座組で出来るのだろうか?という心配はあり、それを無くしてしまうと全て欠けてしまうのだ。だが俳優たちに狙いをやらざる得ない戯曲を与え、ほと走るエネルギーが劇場に蔓延していた。
ただ圧倒的な劇的な力も、残りの人生を考えなければいけない老年を迎える大人たちを描くには説得力には欠けていた気がする。舞台装置を駆使し、過去から現在、そして若い頃の自分を客観的見れる演出もしていただけに惜しい。小さい劇場なら許されていた表現方法も本多劇場となると観客は納得したくなる終わりも見たくもなるのだと思って劇場を後にしたが、よくよく考えてみるとこの批評は間違っていたと後で気付く。
劇作家は徹底的に男性を罵倒し、女性優位を謳っている過去作を鑑みると、今作も同じような試みがなされている。いつまで経ってもだらしない夫が妻へ投げかけるクライマックスの陳腐な愛の讃歌の場面こそが、劇作家の持ち味を最大限に表している。この箇所に賛否が起こりそうだが、今作の面白さを垣間見れる瞬間と別れ道なのだ。
流石、根本宗子である。
GIFT

GIFT

metro

小劇場 楽園(東京都)

2025/02/27 (木) ~ 2025/03/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

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metro『GIFT』を観劇。

あらすじ:
女優・星影は戦争の夢をたびたび見る。
枯れてしまっている才能を認識しての現実逃避の夢なのか?
時代を跨いで、様々な人物を演じている中、才能は神様から貰ったただのGIFTに過ぎなかったのか…。

感想:
早川雪洲、太宰治、ブルース・ウェインなど時代と場所を飛び越えながら、女優・星影は旅をしているのだが、「何の脈略があるのだ?」と毒づきながらも、唐十郎とスタニフラフスキーの演劇論が始まった瞬間、「なんて面白いのだ!」と思わず声を上げてしまったのだ。彼らを演じた俳優が汗と怒号を上げて、観客席に迫ってくるのだ。
本来は女優・星影の旅を楽しむのが見所で、演劇論で喜んでいるようでは観客失格なのだが、年配客が多いせいか?あの時代の知っているのは、どうやら私だけではないようだ。
『夢の遊眠社』『第三舞台』『第三エロチカ』『3○○○』などが疾走していた80年代小劇場から現在の『青年団』『城山羊の会』まで、今作のような作劇は貴重で、もう誰も作れないだろうとも思っていたら、暗く、狭く、見ずらい地下劇場で細々と作っている劇作家がいたのが驚きで、観る価値十分ありと言っても良いだろう。
女優・星影を見ているとタイトルは『GIFT』ではなく『GIFTED』にしてくれれば、「彼女の苦悩の旅に一緒に寄り添えたのになぁ〜」と思っただけに残念だった。
ロマンス

ロマンス

北区つかこうへい劇団

滝野川会館 大ホール(もみじ)(東京都)

2011/06/25 (土) ~ 2011/07/01 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

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北区つかこうへい劇団の熱海殺人事件・売春捜査官を観劇。

かれこれこのシリーズは5回目だ。熱海は出演者全員(4人)の役者のレベルが一人でも劣ってしまうと失敗作になるが、今作は皆が高いレベルで演じていたので、作品の出来も良かった。そして木村伝衛浜役の女性の弾けまくりが素晴らしかった。それに少し秋山菜津子にで綺麗だし。名前は分からないが、彼女には今後売れてほしい役者の一人だ。しかしこんなに面白い芝居に空席が目立つのは何故だ?このコメントを読んだ君!彼!彼女!俺?まだまだつかこうへの公演は観れるので是非、劇場へ!
ALL THAT 飛龍伝「飛龍伝90‘」

ALL THAT 飛龍伝「飛龍伝90‘」

北区つかこうへい劇団

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2011/06/07 (火) ~ 2011/06/09 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

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北区つかこうへい劇団の解散公演・飛龍伝・80年版(初級革命講座)を観劇。

飛龍伝は初演版・初級革命講座から改訂を重ねて、重ねて、様々なバージョンがある。その内に観たのは飛龍伝・90年版、飛龍伝・2000年版だ。ただ内容的には極端には変わってなかったので、今作の初演版も内容的には同じだろう?と高をくくっていたら、まるで違っていた。90年版、2000年版は革命家と機動隊長と革命女史・神林美智子(実在した樺美智子をモデル)の恋愛物であったが、今作は、落ちぶれた革命家を戦いの場に引き戻す機動隊長との二人の話であった。どちらかというと90年版、2000年版の後日談に近い感じであった。そして落ちぶれた革命家を戦いの場に戻した機動隊長との対決が大音響と共に始まるか?と思わせといて、突然の幕で終わってしまった。なんともいえない消化不良だ。これは明らかに戯曲の段階では良かったのかもしれないが、演劇公演としては失敗作に違いない。明らかにつかこうへい自身が気が付いていたに違いない。だからそれ以降の改訂版は革命家、機動隊長、神林美智子の3人の話に変わったいったのだ。そして3人の話に変わっていった公演を20代の僕は銀座の劇場で体感出来たのだ!それが飛龍伝・惨殺の秋(90年版)。出演が富田靖子、筧利夫だった。
芸劇eyes番外編『20年安泰。』(各回当日券発売有り)

芸劇eyes番外編『20年安泰。』(各回当日券発売有り)

東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)

水天宮ピット・大スタジオ(東京都)

2011/06/24 (金) ~ 2011/06/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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袋芸術劇場主宰で毎年行われる期待の若手の演劇公演。

今回は20代の劇団の25分の短編公演。マームとジプシー、ロロ、範宙遊泳、ジエン社、バナナ学園純情乙女組の5劇団だ。流石に20年安泰というタイトル通り、30代、40代の演劇人を脅かすほどの実力の持ち主ばかりだ。特に今回選ばれた劇団には演劇というの概念が全くないの?というぐらいに誰にも真似を出来ないオリジナリティに溢れていて、唐十郎、つかこうへい、野田秀樹達が越えようとしていた演劇というジャンルのボーダーラインを簡単に越えているという点だ。そして彼らの興味は社会の外に目を向けている点も見逃せない。きっとこれからの演劇界は変わっていくだろう!それを期待する。そして今作もバナナ学園純情組に圧倒されてしまい、あの狂乱ライブに涙してしまった。
鳥瞰図 ―ちょうかんず―

鳥瞰図 ―ちょうかんず―

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2011/05/10 (火) ~ 2011/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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劇作家・早船聡の鳥瞰図を観劇。

かなり綿密に練られている戯曲であり、再演されるのは納得できるほどの完成度の高い戯曲。それを主演の渡辺美佐子がまるで舞台は初めてよ!と言わんばかりの初々しい演技で、共演者、観客、そして戯曲をも飲み込んでしまうほどの演技をさらりと行ってしまう。松たか子、宮沢りえが舞台に立つと男性に変わってしまうなら、渡辺美佐子は子供に変わってしまうほど魅力的な芝居をする。これは必ず見なければいけない芝居の中に入るだろう!
亜門版『太平洋序曲』

亜門版『太平洋序曲』

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2011/06/17 (金) ~ 2011/07/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

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神奈川芸術劇場で宮本亜門のブロードウェイ・ミュージカルを観劇。

日本が黒船来航によって開国していき、変わっていく様をアメリカ目線で描いている。エキゾチックな日本の描き方が外国人特有の勘違いの日本?という感じで、観ている観客はやや冷やかだった。でも舞台ならではの表現方法は抜群で、観客を魅了させてくれる。ただこれが宮本亜門かぁ?とがっくりしながら前半を終了。
期待せずに後半を観ていくと、開国した日本は明治時代に入ってから、舞台は突然アクセルを吹かしたかのように、大正、昭和、現代と一気に日本が変わっていった様子を戦争、原爆、宗教・・・を背景に怒涛の如く、ミュージカルの醍醐味で観客に迫ってくる。そして最後に宮本亜門の鋭いメッセージで締めくくる。前半はアメリカ目線、そして後半は宮本亜門目線で描いていくというのが狙いだったとは。これは非常に演劇的であり、非常にミュージカル的でもあった。そして明らかに傑作中の傑作。
チケット代金は高い、劇場は遠い・・・。でも観なければいけない舞台だと思う。
パール食堂のマリア

パール食堂のマリア

青☆組

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/07/29 (金) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

面白い演劇はドラマチックな展開、生舞台でしか見れない表現方法、そして劇場体験とこの三大要素が備わっていれば、ほぼ面白い舞台になりえるのだが、本日観劇した劇団・青組は、その三大要素が全て取り払われていながら、2時間を堪能させてくれる舞台だった。港町での戦後の混乱期から70年代までの2世代の家族の苦悩の物語を静かに、繊細に描いていく。話の展開自体はそれほど目新しくないのだが、作・演出・吉田小夏の多面的に描いていく人間像には新鮮さを感じた。グッドジョブ!という感じ。
愛・王子博

愛・王子博

INUTOKUSHI

インディペンデントシアターOji(東京都)

2011/07/27 (水) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

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王子劇場にて元・劇研(早稲田演劇研究会)所属の劇団・犬と串を観劇。

あの浪速のボクシングの亀頭(亀田)三兄弟の試合中の失態で、マスコミでのバッシングを受けて、矯正施設に送り込まれて更生していく話。だが何故彼らがバッシングを受けたのか?実は彼らはマスコミに操られたのではないか?それを操っている黒幕がいるのではないか?という展開で、亀頭三兄弟と黒幕の戦いを描いている。馬鹿馬鹿しい展開、ギャグ、エロで舞台は進行していくが、その中で日本の管理社会を批判しながら見せていく辺りは抜群だが、それ以上に徹底したぐだらない演出方が少しづつテーマをぼかしていき、見ている観客はただ楽しんでしまう境地に入ってします。そしてぐだらなさの最大のクライマックスは、10人のフルヌード男優と裸同然の女優VS黒幕との対決があまりにも驚愕?唖然?最低?涙?で締めくくる下りは爽快!

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